ミシン針の針先を研ぐ

今日は毛皮用ミシン(カップシーマー)の針について書いてみます。
毛皮用のミシン針は、通常の平縫いミシンの針より少しだけ長いのが特徴です。そのぶん針穴から針先までも長いのです。縫う素材によって太さが変わるのは当たり前なのですが、一般のミシン針よりは細い針の種類が多いかもしれません。
私の普段の仕事のなかでは既成で完璧に仕上がっている針先を研ぐというのは当たり前のことなのです。例えば、本縫いミシンであれば生地によって糸引きが起きないよう、先を少し丸くしたものとかがありますね。
私は、本縫い用の針でも毛皮用ミシン針459Rでも、針先が気に入らない時にはダイヤモンドやすりで削ります。毛皮ようのまつり針で三角針という、先が三角に削られているものがありますが、あそこまでにはしませんが、既成の針先が甘いと感じると必ず先を研ぎます。
その後、少し先がとがりすぎている状態で使うか、バフをかけて磨くかは縫うもの次第になります。
少し前のことですが、一度、過去にミシン屋をやっていた方と、一緒に仕事をする機会がありました。その彼に、針先を研ぐ話をしたところ、その彼は、ミシン屋として、完成されたミシン針の先を削るなんて邪道でありえないと、きっぱりと言い切りました。
しかし、仕事のなかで、その先の尖った、かかりのよい針の使い心地を知ると、いつしか、自分から針先を研ぐことするようになっていたのです。
既成概念で、新しい針なら大丈夫だと、そう信じてしまうのかもしれませんが、メーカーが作った針がすべてパーフェクトではないのです。一般的には毛皮の針はとくに先が欠けたら、もう使い物になりませんので100%取り替えるしかないのですが、私は針先が折れても針先を研いて使うことも試みます。
もちろん、コストのことも少しはありますが、それよりも縫い心地が優先します。毛皮のミシンは皮の薄いものだと、0.3mmくらいの薄さで縫わなければならず、わずかな針先の欠けでも皮が縫えずパンクする原因になり、とても神経をつかうところです。針先が曲がっても直すこともあります。意外に針穴にバリが残っていて、テンションを強くかけると、その針穴のバリのせいで糸切れが起こります。針穴が綺麗な状態の針は多少、曲がっても直しますし、先は削って使い、折れるまでは使います。
よくリフォーム品でほどきながら思いますが、糸切れ、パンクの量の多さに、ほどく気力がなくなるくらい糸切れ、パンクの多いものがあります。技術が未熟なことは当然なのですが、針先がかけているのに気が付かずに縫っていたりすることで起きるパンクも多いのです。
縫い目を見れば、技術者のだいたいの力量も解ってしまうほど、毛皮にとってミシンワークは大事な仕事です。もちろん、簡単に、いい加減に縫うことはどんな世界でもあることですが、毛皮ミシンのテクニックはいろんな素材を扱うということもあり、私はかなり難しいと考えています。
そんななかで針を研いで使う。そして、針の正確な知識を知るということが、ミシンワークのなかで意外に大きな割合を占めているということも見逃せないのです。
写真はシュミッツの459Rの一般的な太さの45番ですが、針先は拡大すると意外に丸いのです。写真ではなかなかわかりにくいのですが、倍率のすごく高いルーペ等を使えば想像したよりも先が丸いのが解ります。
長澤祐一
毛皮用ミシン針459R

 

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