本日は弊社アトリエで島精機のCADがどう生かされているかをご説明したいと思います。
島精機のアパレルCADは通常のアパレルCADと違い、レイヤー形式になっていません。大きなキャンパスに、自由にパーツ化したパターンを置き、そしてパターン内部線やそれ以外の線も自由に書くことができます。
自由にパーツ化するというのが意外に他のレイヤー形式のCADではできません。出来ないというよりも、大変な労力がいるということになるのでしょうか。通常は透明レイヤーに線を引き、重ねてみることによって様々な作業をしていますが、島精機のCADはすべてがパーツ化してあります。
仮に100個の小さなパーツを使って”自由に”作業をすると、レイヤー形式のCADだと、多くのレイヤーが必要になりますが、島精機のCADはパーツが100個大きなキャンバスにあるということになり、都度、アクティブにするためにレイヤーを指定する必要もありません。
もちろん、一般のアパレルCADで出来ないわけではありません。しかし、苦労をしてやるのと、簡単にできるのとではツールとしては大きな違いがあります。そういう意味では島精機のCADは素晴らしいと思います。
アパレルであればパターンを展開したりする必要がありますが、例えば、車の座席シートなどのパーツをCAD上で使うのなら、島精機のCADのほうが絶対に使いやすいでしょう。島精機の一枚断ち裁断機とのつながりのよさも、想像がつきます。
毛皮のパターンの場合も、このパーツ化したパターン処理がとても使いやすく、一時、東レを導入し、すぐに切り替えたことは、弊社アトリエにとっても、今になって思えば大変な転換だったと感じています。あのまま東レのCADであれば、今、アトリエに根付いた作業も不可能になるものがたくさんあるのです。
最初は、レイヤー形式のCADに慣れてしまっていて、これは大変なことになったと正直、冷や汗をかいたものですが、今となっては、その後のアトリエ内作業のデジタルとの融合という意味でも、大きな役割を果たしたと言えるでしょう。
パーツ化しているために、細かいパターンひとつひとつを瞬時につかみ、移動したり重ねたりすることができ、パターン上で毛皮を一枚ごとのパーツに区切ったり、カットしたり、組み合わせをしたりと、様々なシミュレーションにつかうことが出来ます。
島精機さんが、何故、一般のアパレルCADのようにレイヤー形式にしなかったかは解りませんが、パーツ化するというところに、アパレル業界以外のもっと大きなマーケットを見据えた戦略・戦術がみえるような気がします。
下の画像は、レットアウトという原皮をカットして縫う作業の仕上がりをシミュレーションしたものです。パーツ化した島精機のCADだと、こんなことが簡単にできてしまいます。
一番上が、ミンクを背中心でカットして右半分を横に置いた図です。真中が、すべてのラインをカットした図、一番したが、計算されたピッチ(ずらし幅)でずらしたものです。頭の細い部分を最終的に細くならず、全体の幅が均一な長方形になるようにずらして縫い合わせしたシミュレーション図です。
これで確認して、PFAFF3560で縫います。いくら計算をしっかりしても、人間の手で縫うとすべてが同じようには絶対に縫えません。CAD上でシミュレーションをして機械で縫う。経験、デジタルシミュレーション、アナログ機械、この三つの融合が当社の最大の特徴です。