毛皮のオーダーメイド(原皮の調達)
当社の仕事の大きな柱の一つにオーダーメイドというくくりがあります。いつか、このことについて書かなければと思っていました。
同業者のサイトをみても、どこにでも、リフォームとともにオーダーメイドの言葉が見つかります。要はどこでもやってることなのです。しかし、そのサイトの多くが、サイト構築のためのオーダーメイドであって、ほんとうにやっているようには見えてきません。
一般的には、貴方だけの一着を・・・世界で一着しかない・・・などと言うどこにでもあるようなキャッチコピーがあって、後は、いくつかの行程が記載されているというのが多く見受けられます。
本当にどの程度のオーダーメイドをやっているのかが伝わってこないのです。オーダーメイドを現実にやろうとすると、いくつかの大きな問題にぶつかります。
ひとつは、原皮をどう調達するのか?です。
オーダーが決まってから原皮を調達するのでしょうか?サンプルの原皮を一二枚見せて、あとは仮縫いの時まで探すのでしょうか?私も仮縫いまでに探すことはよくありますが、なかなか自分の目にかなった原皮が仮縫いまでに手にはいることは珍しいのです。
受注の時期が1月くらいであれば、来期までにということで信頼出来る取引先に調達を依頼することは出来ます。しかし、あくまで来シーズン用にお作りするということが前提です。
今期の受注ということになりますと、原皮屋さんに原皮が一番豊富にあるのは、毛皮の販売のピークになるシーズンとは大きくズレます。
私たちの大きな悩みはここにあります。オーダーという注文の受け方になると、確かにシーズンオフの時期にも受注は出ます。しかし、やはり一番お客様の気持ちが動くのは、シーズン直前の11月くらいからです。
この時期になると原皮屋さんの在庫はピークからは、ほど遠い状態になり、問い合わせしてもないものが多くなります。
そんなこともあり、ロシアンセーブル、ロシアンブロードテール、アーミン、チンチラ、ミンク各種などを広範囲にストックしなければなりません。
セーブルに限ってみても、ワイルド、ファーム、ゴールデン、ワイルドシルバリーというように種類があり、これをオーダーと謳う以上、小物程度を作る数量で済むはずもなく、相当枚数をストックしなければなりません。しかも、オーダーである以上はランクの高い品質のものをストックします。
ミンクのオスは大体は原皮屋さんで手に入るにしても、メスのコート用バンドルなどはどの原皮屋さんを探しても、簡単に手に入れることが出来ません。
あっても、色が変わった売れ残りのようなものしかないことが多く、結局、気に入った原皮は早めに抱えておかなければならないということになります。しかもコートバンドルです。少なくても40~50枚です。
それをミンクの色ごとに揃えるといったら、一体どれほどのストックをしなければならないのかと、本当に毎年どの色をストックするか悩みます。そして、今年の自分のお勧めとして自分が惚れ込んだ原皮を常時5~6種類ストックします。
それでもメスのミンクのオーダーが毎年、ストックしてたものがちょうどよく受注があるとは限りません。
ロシブロやアーミンに至っては欲しいときに手に入るものではなく、気に入った出物があるときにストックしておかないと手に入りません。
オーダーが決まってから調達では、なかなか良い原皮が手に入らないのが現実です。そして、お客様のために原皮の目利きも高いレベルが要求されます。
さらにバンドルで買って使った残りも必ず発生し、それを小物にしたり、ベストやショールにしたりと、残った原皮の用途も常に考えて使っていかなければなりません。
必要な枚数ぴったりに仕入れられれば無駄は出ませんが、ちゃんとしたものを作ろうとすれば、必ず余分に仕入れることになります。
このように、原皮の調達ひとつをとっても、会社の機能として、またはサイト上に、オーダーメイドと謳えば、これだけの問題と常に向き合わなければなりません。
写真はアーミンの原皮です。 シッポの先が少しブラウンになっていますが、これは軽くブリーチしたためです。ナチュラルのシッポの先は本来は真っ黒です。次回はパターン、その他の問題についてお話いたします。
長澤