今日は、昨年9月9日に当ブログでご紹介したブルーアイリスミンクのオーダーメイド(ロングコート)の続きを書こうと思います。画質があまりよくありませんが、まずは上の動画をご覧ください。
メスの1サイズはカナダのオークションで買い付けた原皮で、オスに比べてサイズは同じでも毛質は総体的に柔らかく、そしてボリュームがある原皮です。
色は濃く、少しメタリックな感じがしますが、私がこの原皮で感じたのは濃いと言っても、綿毛はさほど濃くはない感じがしました。原皮に動きが加わり、綿毛の色が濃い刺し毛の隙間から飛び出してくると、青白いブルーアイリス本来の微妙な色がまるで蛍光色のように青白く光ります。私は、いつもこの感動を求めて、毛皮を作っているようなもので、それくらい綺麗です。
ビデオを見てもらってわかるように、ロングコートの割には、原皮一本のラインがとても太く、豪華なイメージが生まれます。これは1サイズを使わないと、この幅はでないのです。そして、いかにメスと言っても1サイズはオスの0サイズほどでないにしても、皮はメスの3サイズとは比べ物にならないほど厚みがあります。これを丁寧に再なめしをしてもらうのです。その後、また一枚ずつ自分でギリギリまで鋤きます。そして、レットアウトも糸のテンションを良く考え、浅く、毛を縫いこまないように縫います。もちろん、アトリエではPFAFF3560を使って縫うわけですが。
いつか、レットアウトという技術についても書いてみましょう。他のサイトでもたくさん書かれていますね。書いたときには是非他のサイトの説明と比べてみてください。レットアウトは基本的な毛皮の技術であり、当社アトリエのコンセプトでもある、あたりまえのことをあたりまえに、、、というものにぴったりのテーマです。
ビデオでは、毛皮の本来の風合いを存分に表現した仕上がりというものをしっかりと感じてもらえるとように撮れています。まだ裏地を付ける前ですが、前芯は据えてあります。それでも、これくらいしなやかなのです。レットアウトのカット幅は、5~5.5mmくらいでしょう。一般的には細いカット、例えば4.5mmくらいのほうが綺麗に仕上がると言われていますが、それは、アメリカもののコートでよくみられる、重い仕上がりのコートの作りに使われる手法で、日本のように、重いコートが強く嫌われる傾向にある国では、いかがなものかと思ってしまいます。
4.5と 5.5mmの幅の違いは二割あり、要は、ミシンの縫い目が二割増えるということです。当然、どんなに浅く縫っても縫い目の割合が触れれば、使う皮の量も増え、縫ってない皮の部分と比べれば硬さは格段にあり、柔らかさや重さに与える影響は多いのです。
一般的にレットアウトはキャラクター(背筋)がしっかりとおって薄い色、例えばパステルミンクやこのブルーアイリスなどはとても縫うのに難しいと言われています。毛を縫い込むと濃い刺し毛が縫い目で抑え込まれ沈んでしまい、その部分が黒く線になって目立ってしまいます。
しかし、要は毛を完璧に起こして縫い、縫い目も浅く一定に縫い、糸のテンションも締めすぎず緩すぎずというように正しい理論のとおりに作れれば5.5mmカット幅でもビデオのブルーアイリスのように充分に綺麗に作れるということです。
近々、レットアウトという技術そのものについて書いてみたいと思います。
長澤祐一