ミンク2枚をジョイントするテクニック

新作の作りで少しブログの更新が滞りました。また今日から少しずつ書いていこうと思います。

せっかく新作を作ってきたので、少し新作で使ったテクニックを書いてみます。今日はミンクを2枚ジョイントしてからレットアウトした写真を紹介して、それについて書いてみます。

ミンク2枚をジョイントするテクニック

Mink_joint_1

写真1は仕上がったコートです。裾にカーブでミンクが三列はめ込んでありますね。使ったのは日本のミンクです。多分50本くらい買ったなかから6本選んでます。日本のミンクの生産は詳しくは知りませんが、一社しかないようで、その生産量もとても少なく、4月くらいに東京オークションというのがあり、そこで落としてもらったものです。

コートの写真を見てもらえばわかりますが、三列でグラデーションになっていますが、一応表向きはパステルミンクというロットになっていたようです。生産量が少ないこともあり、同じ色でロットが組めず、しかたなく50枚のなかにデミバフミンク、スカングローミンク、パステルミンク・・・というように混ざってしまったのでしょうね。

生産量が少ないと、綺麗に同じ色でバンドルが組めませんので、こんなことが現実に起きるようです。しかし、一般のオークションでは、ここまで色の違うものが混ざることはありません。生産量の少ない日本だから許されるのでしょうね。

大切なお取引先から、日本産の原料で日本の技術で、綺麗に仕上げたコートが作れないだろうかという、ご提案を受けての今回の新作作りですが、日本産の原料については、原料屋さんに聞けばすぐわかることですが、決してヨーロッパやアメリカのミンクに比べて同じレベルではなく、そんな日本産ミンクのなかから、せめて、ヨーロッパのミンクと比べて遜色のないもので綺麗なものだけを使って作ろうと努力してみたのが今回のコートです。

写真1をみればわかりますが、裾のミンクのラインで最上段がパステル、中間が多分スカングロー、一番下の列がデミバフミンクの濃い目のもの、、、というように並んでいます。

ミンクのジョイントの難しさ

Mink_joint_2

写真2を見てもらうとわかりますが、ひとつのラインだけでも、かなりの面積が必要になりますね。一枚の原皮では面積が不足しているので、今回はメスの2サイズを二枚使って縦にジョイントして、それをレットアウトしています。

ここで難しいのは、やられたことのある職人さんはわかると思いますが、ミンクのお尻側とミンクの首から上をカットしてその下をもう一枚のおしり側に縫い合わせるのですが、これが以外に難しいのです。ひとによってはVにカットしたりしますが、私は直線でカットしてジョイントしています。

この時の注意点ですが、ミンクは頭から首の部分(クロス)、そして胴体、お尻部分とすべて、少しずつ色が変化しています。ですから、お尻をそのままクロスから下でジョイントすると必ず、お尻の濃い部分が残りぴったり色が合いません。

写真3が二枚のパステルミンクを縦にジョイントしたものです。中央縦にうっすら接いだラインが見えますね。

Mink_joint_3

特に、パステルやブルーアイリスのように薄めで刺し毛が少し濃い、、、というようなタイプ、さらにデミバフミンクのような色はミンクの中でも、ジョイントするには、かなり難しい色です。

原料をもったいないといい、お尻の黒い部分を残すと写真4のようになりますね。

Mink_joint_4

これはわざと逆Vでカットして色の違いがはっきり見えるようにジョイントしていますが、直線でやっても、似たように色の差がはっきり出ます。以前も「ホワイト・ミンク・マフラー」のことで書きましたが、どんな仕上がりにしたいかで、原皮をどこまで使うかを決めるわけで、決して、無駄になるからもったいない、、、などといって色の違いをだしてしまっては何のために作るのかがわからなくなってしまいます。

でも、意外に職人さんは、少ない原料で作れるのがいい職人だとかいう、馬鹿げた発想を持っている場合も多く、もう少し落とせば綺麗なものができるのに、一歩手前で妥協してしまうケースも多く見かけられます。

それと、こんなに無駄にして、万が一綺麗にできなかったら、、、という自信のなさからくる不安もあるのでしょうね。

なんでもそうだと思いますが、頭で考えたことを実際にやってみると、高度なテクニックが必要なものもあり、頭で組み立てるのと、実際に作ってみるのとでは大きな差があります。

今回のように薄い色のパステルミンクで毛の短めのメスを横にカットしてジョイントするのは、毛を縫い込まずに、1mm以下で浅く、しかし、しっかり縫い目が開かないように縫うということができないとジョイント部分の毛が沈んでしまったり、割れてしまったり、溝になっていまいます。

その後にレットアウトを加えても、ごまかしが効かなくなってしまうこともあり、ただ、横に縫うだけなのですが、やってみると完璧な縫いというのは、思うよりも難しいものなのです。

ジョイント後のレットアウト

写真5をみてください。

Mink_joint_5

上がジョイント部分をレットアウトした縫い目です。ジョイントした部分が少しずつずらされているのがわかります。その下が毛の側からみた仕上がりです。

接ぎ目はうっすらと見えるのですが、レットアウトされたミンクを全体でみると、いつも言っている目の錯覚で、一本に綺麗につながってみえます。

今日書いた、このミンク二枚をジョイントするテクニックも技術者としては、出来てあたりまえのことなのです。しかし、職人さんひとりひとりの技術の差が、大きく出るテクニックのひとつでもあり、このくらいのことはあたりまえのこととしてできるようにならないと、その先のコートを綺麗に作り上げるところまで行きません。

長澤祐一

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