本日は前回書いた「シェアードミンクコート(Sheared Mink Coat)の仕上がり(1)」の続編として「刈毛の表面の仕上げ」について書いてみます。
刈毛の表面の仕上げ
刈毛は私のところでは、ニチロ毛皮㈱マルコ工場さんでやって頂いています。上の写真はマルコさんで刈っていただいたものです。
刈毛の表面も拡大してみると意外に凸凹しています。刈毛する前工程で回転アイロンをかけるのですが、これはかなり難しいのだろうと想像ができます。
毛質によって、サラサラになるもの、どうしてもガサつきがあり、サラサラとなってくれないもの、毛の根元のウェーブが強くボリュームがありすぎてサラサラにならないもの、上げていけばキリがないほど様々な条件があります。
そんななかでも、ほんとうに綺麗に仕上げていただいています。ただ、時々、マルコさんの問題ではなく、毛皮の問題なのですが、ミンクのとれた時期にもよるのかは解りませんが、刺し毛が生え切らずに綿毛の奥に残ってしまっているミンクがあります。特に頭の部分に多く見られます。
この刺し毛が綿毛のなかに残ってしまうと、どうしても綿毛の根元を抑えてしまって、表面に影響が出るときがあります。上の写真のように凸凹した状態になるのが一般的で、決してマルコさんの刈が悪いわけではないのです。
そんなときには、綿毛の奥に残った刺し毛を回転アイロンを表から、裏からとかけて抜くことで少し改善します。
ただ、しっかり残ってしまっている刺し毛は、どうやっても取れない時があり、さらに表からカミソリを使って引っ掛けて抜くことも試みます。
それでもダメな時があり、そのときには表面をもう一度刈るしかありません。もちろん大きな刈毛用の機械ではありません。
そして仕上げたのが、下の写真です。拡大しないと分からないレベルでも、綺麗に仕上がると全体の見栄えは格段に綺麗になります。手触りも抜群にいい感触になるのです。
仕上がりが気に入らなければ全体を刈ることもある
以前、ある取引先のメーカーの女性のデザイナー社長に「長澤さん、そんなに、舐めるように毛皮を作っても意味ないわよ・・」と言われたことがあります。「そんなところ誰も見ないわよ!」ということなのです。(ちなみに、この会社もいまはありませんが・・。)
パッとみて、簡単に違いはわからないけど、なにかが大きく違う、、、 ということを感じさせるのは簡単なことではありませんが、ここにはこだわる価値も意味もあり、これからも人から何を言われようとこだわっていこうと思います。
そして、この前回も書いた日本人的な細やかな発想で作られた刈毛のコートがいまでも、好んで買ってくださる、お客様や取引先様がいらっしゃいます。
私は特に、誰かに習ったというわけでもなくここまできていますが、やはり、日本人的な細やかな仕上がりを大事にし、その細やかな技術を土台にして、いずれ大胆なデザインや面白い展開を考えて行こうとおもっています。
長澤祐一