今日は商品に使われる素材について書いてみます。一般的には例えばミンクであれば、どういう種類の原皮を何枚使用しているとかが記載されるべきなのですが、ほとんどの売り場やオンラインショップでも、そこまで記載されることはありません。
自分的に言えば少し残念な気がします。毛皮は作るものによって、頭の部分が残ったり腹の部分がたくさん残ったりします。商品のデザインや作り方で残る部分が出ることが多いのが毛皮製品です。
その残皮をスクラップといって買い求めてリサイクルのように、その残皮で製品もたくさん作られています。主に中国やギリシャで作られるものが多いのですが、稀に国内でも作られています。ギリシャなどでは、小さなピースを集め仕訳・整理して、プレートにされることが多く見られます。インスタグラムのDMにもギリシャや中国のフォロワーから残皮を売ってくれと依頼があります。
例えば、ヤーンと呼ばれるネットに3~4mmのテープ状にカットされたセーブルを使い作る商品がありますが、腹の部分だけが綺麗に余りますので、それを大量に集めマフラーにしたりもします。もちろん、毛皮を100%使い切るという意味ではとても良いことなのです。
ただ、ネット等ではそういうものの販売については、本来であれば原皮の詳細を書く必要があると思うのですが、セーブルマフラーとしか書かれないケースが多く見受けられます。もちろん全部ではないのですが。
最近ファーマークという、いわゆる原料の生産地、鞣した場所、その他その毛皮の生産に関わったところが記載されたタグが付くことがありますが、それも大事なのですが、販売する側はもっと、元素材のどの部分から作られたものなのかを記載すべきだろうと思います。それによって同じセーブルでも価値が大きく変わるからです。どんなに長いロングマフラーでも、セーブルの頭だけを使って作られたものも良く目にしますが、本来のセーブル本体を使ったものから比べれば価値は大きく下がります。それを、価値のあるセーブルをリーズナブルに提供しますというような言葉で半分騙して売るようなことはすべきではないはずです。買ったお客様がどこかで恥をかくことがあるかもしれません。私達のように商品をみて原皮の頭なのか、腹なのか、一番価値がある胴体の部分なのかがすぐにわかるひとは別にして大半の顧客側に立った人たちは記載がなければ、それぞれの価値が解らないのが普通です。
もちろん、全てを教えればいいのかというと、知らなくてもいいものもあるはずです。そして、教え、伝える私達にも大きなリスクがかかります。私も現実に悩んでいます。どこまで伝えれば、本当の商品価値が伝わるのか、そして夢を壊さずに販売ができるのか。特にオンラインショップという場所で、テキストで書いたものは簡単に記憶から消せません。そして、知りたいと考えるひと、知らなくても良いと考えるひと、オフラインであれば、それぞれを見ながら対応できます。しかし、オンラインショップでは一方通行になりがちです。悩みます。
ファーマークも聞くところによるとかなり厳しい基準でマークを申請し提供されるということですが、何故か私は、表紙だけを変えようとしているだけのように感じます。申請・登録の基準が厳しく、小さなメーカーは、ほぼつけることができません。今流行りの、跡を辿るという意味では正しいのかも知れませんが、そんなことよりも、各メーカーや販売元がもっと丁寧な使用素材の説明をするべきではと感じます。そして以前も書きましたが自社が行う全てのことに対して、他の何かをもって証明したりしなければならないという仕組みを変えるべきであろうと感じます。私のところではファーマークは手に入りませんが、元々つける気はありません。自分の商品の良さや信頼性は自分のところの商品力やサービス内容で築くしかないと考えています。それが小さくてもブランドとして生き残る唯一の道であり私達の意地でもあります。
パショーネのオンラインショップでは、ほとんどの商品に使用原皮の内容と枚数を記載しています。たまに漏れているものがあるかもしれませんが、極力、商品の内容は細かく書くように努めています。
下に、原皮の使い方で頭や腹が余ることがあることの以前の記事がありますのでリンクを貼っておきます。作り方や作るものによって原皮の余る部分が出るということの参考になるかもしれません。よかったら見てください。 長澤祐一