毛皮のクリーニングで使うオガの保湿力と吸収力 という5月12日の投稿でクリーニング関係の投稿は最後にしようと思っていましたが、また新しいことがあったので書いてみます。
今日のタイトルは オガの汚れ具合と吸収力 その2 というタイトルです。
数回前の オガの汚れ具合と吸収力 という投稿でオガを洗ったときの水の真っ黒になった画像をお見せしましたが、今回の洗濯機の中の水は、黄色く濁っています。前回とは洗うものが違うことで汚れる水の色もはっきりと違います。
前回は、染色の内容が酸性染料なのか酸化染料なのかはわかりませんがブラックのコートのクリーニングをしたオガでした。そのため洗濯したときの色は真っ黒です。もちろん毛から色がほんの少しは落ちしますが、実際にたくさん落ちているのは皮からです。
今回は通常の染色していないナチュラル素材のミンクコートをクリーニングしたオガです。
そのため今回の汚れた水の色は黄色っぽく濁った色でした。鞣し屋さんが皮を鋤くときにグリスのような油を皮に染み込ませて皮を膨らませて皮を鋤くと聞きますが、そのグリスのわずかに残っている分が有機溶剤で溶かされてオガに吸収されたものなのかどうかはわかりません。オガに吸収された汚れかもしれませんが、明らかに黄色い色です。もしかしたらオガそのものの色もあるかもしれません。しかし、それにしては異常に黄色く濁っています。
下の二つの画像の上の画像が今回のもので下の画像が前回のものです。画像では差がわかりにくいですが実際には上の水の色は油を溶かしたようなはっきりとした黄色の色で、下の画像は実際は真っ黒でした。おそらく、上の画像の汚れた水にプラスして黒の毛皮の皮についた染料が落ちたものだと考えられます。追記しますが、毛皮の酸性染料は毛にはしっかりと吸着しますが、皮には染料が刺さるような状態で付いていますので、このようにオガに染みこみやすいのです。決して毛皮の毛についたものが落ちる訳ではありません。
洗剤は前回同様、一般の洗剤では香料が入っているので、無香料のバイオクリーニング剤を使いました。お湯に粉を入れると強く炭酸が出るように泡立ちます。重曹と似ていますが、詳しくはわかりません。
バイオクリーニング剤で通常の油汚れを落としてみると確かに油が分解して落ちてしまいます。ですから、オガが吸収した脂や油を溶かして取り除くことが期待できます。
オガは、このバイオクリーニング剤を使った洗い方で数回繰り返して洗ってから濯いでいます。徐々に水が透明になっていき最後は無色透明の水になります。
乾燥も今回は扇風機をあてて乾かしていますが、やはりかなり早く乾燥します。前回は二か月以上かかりましたから。
今日はもうひとつ大事なテーマがあります。
前回洗ったオガで、原皮を長期保存用に有機溶剤にて脂を抜いてみました。結果は驚くほど綺麗に脂も落とせ柔らかさと軽さも出ました。
洗ったばかりのオガの効果と数回使ったオガとの効力の違いがはっきりでたと感じます。
洗ったばかりのオガと、数回使用したオガの匂いも明らかに違いがあります。洗ったばかりのオガの匂いはヒノキの匂いだけで、それ以外の匂いは無く無臭ですが、使用済のオガの匂いには、ヒノキの匂い以外に別の匂いがします。
ここ何回か試していることですが、オガと有機溶剤でドライクリーニングをしますが、このドラムを回す時間にも脂が綺麗に抜くための方法がありました。
オガは有機溶剤によって最初は濡れた状態になり、その濡れた状態のオガが毛や皮に付着して有機溶剤が皮や毛に少しずつ染みこんでいくわけですが、最近分かったことなのですが、オガに染みこんだ有機溶剤が毛皮に移動して毛皮の毛や皮の脂を溶かし、オガがさらにその脂を吸収していくのですが、そこで止めると中途半場な状態で終わってしまうことに気づきました。オガドライの効果をパーフェクトに引き出すことが出来ないような気がしました。もちろん、これは肌感覚でしかないのですが。
わずかな違いですが大きな違いです。
途中で止めずに、毛皮の脂を吸収したオガがドラムの中で少しずつ気化していき、ドラムの中でほぼ乾いた状態になるまで丸三日くらい回すのです。こうやって時間をかけて少しずつ脂を吸収した有機溶剤が気化するまでドラムを回します。
私のところのドラムは、クリーニング屋さんのような完全密封ではありません。ドラムが木製でできていることで、ドラムの蓋のわずかな隙間や木のつなぎ目または木の材質そのものから自然に有機溶剤が飛んでいくのかもしれませんが、時間をかけて徐々に気化していきます。
ドラムの蓋を網に変えて、オガを落とすのはオガが完全に乾いてからです。こうすることで毛と皮からバランスよく汚れや脂が取れて柔らかくなります。
毛からも脂が取れることで今後の毛の黄ばみとかも軽減するはずです。
前回投稿でも書きましたが、こうすればこうなるというような空想のようなものですが、何年もかかって黄ばみが出るものを時間単位で見続けることは出来ませんので想像するしかないのです。それでも、やらないよりはやった方が効果があるといえるものはやるべきだと考えています。
毛皮の作りも奥が深いのですが、この毛皮のドライクリーニングという作業も作りに大きく影響し毛皮の商品化にも最も大事な部分と私は考えています。少し、変人的というくらい、このブログでもたくさんクリーニングについて書いていますが毛皮の状態が上手く調整できると作業の半分くらいが終わったように私は作るときに感じます。
一般の技術者でもアトリエにきて原皮を見れば、その大きな違いがわかります。もちろん、素人の方でも見れば、いい状態になった原皮がいかに綺麗かが理解できます。見たいと思う方はいつでも連絡ください。 長澤祐一