パショーネのアトリエには一般的な毛皮縫製工場にはない設備を揃えていますが、今回は、その一般的な毛皮縫製工場にはないというタイプのミシン、特殊ミシン「PFAFF343」をご紹介いたします。
このミシン、一般的には紳士服等の工場さんにあるミシンかもしれませんが、毛皮の工場では、ほとんど見かけません。紳士服の前芯などを取り付けるために一時的に粗止めをするためのミシンで、針を送る機能がなく、ランダムに手で自由に動かし針を落とすというミシンです。
特殊なしつけミシン「PFAFF343」 は、アームタイム(腕ミシンともいいます)で、テーブルから上に縫う部分が飛び出しているミシンですが、当社では、この腕ミシンタイプで使うだけではなくフラットなテーブルの状態でも使いたいので、テーブルを抱かして使っていました。
しかし、毛皮のコートでは小さいテーブルの上にのりきらず滑り落ちてしまうこともあって、最近、新たにテーブルを継ぎ足しました。白い部分がそうです。パショーネでは、大半の機械は、そのまま使うことはありません。どこかしら自分仕様にして使っていきます。特に機械が好きというわけではありませんが、使いやすさや効率を求めて改良していきます。(与えられた機械をそのまま使うだけでは独自の技術は生まれてこないからです)
毛皮作りにはとっても手作業が多く、どうしてもたくさんの作業時間がかかります。ただし、そのなかでよく見ると機械化できる部分が結構あります。一般の工場では費用対効果でみて合わないものは敬遠するのかもしれませんが、私たちは、それがどんなに小さな作業でも、機械化できそうなものは徹底して機械化を進めています。それが人の感性を生かした、最良のもの作りを行う助けになると信ずるからです。
そうすることによって、本来、人間の一番大事な感性や技工を生かすために費やさなければならない作業に、充分に時間を使い私たちの個性を仕事に生かしていけるからです。できる限り、人でしか出来ない仕事に時間を使おうという意識がそうさせています。
効率を上げて儲けるということも大事なことですが、どちらかというと、機械で出来ることは機械に任せ、人の手でなければ出来ないことに大切な限られた時間を使う・・・、これが私たちパショーネの設備投資に対するコンセプトです。
長澤