アトリエでの毛皮の保管方法

今日はアトリエでの毛皮コートや原皮の保管状態について書いてみます。

普段、褪色だの、やれクリーニングだの、と細かいことを書いていますが、じゃ、アトリエではどんな保管をしているのかと疑問に思われるかもしれませんね。

以前は、アトリエでも一般の会社と同じようにカバーに入れるか、むき出しでラック保管かというのが現状でした。コートを一点カバーかけして保管は当たり前なのですが、5年前くらいから少しずつ、ラックにも黒い生地をかけて光がほとんど入らないようにしています。

原皮も写真のようにワンバンドルごとに生地をかけて、さらにラックにも生地をかけるようになりました。

この写真は、二階のアトリエに頻繁に使うものだけを上げてあるものの一部で、カバーがかかっていないものもありますが、一階に置いてある在庫はすべてかけてあります。

Genhi

ホワイトニングしてある白のミンクなどは蛍光色が落ちないようにアトリエ内にあるものでもカバーをかけてあります。写真を撮るためにラックの生地は上げてありますが、本来は光が入らないようにラック全体を覆うようにかかっています。

写真右端のシルバーのカバーはリンクスが入っていて下に尻尾が少し見えますね。

ここにはありませんが、セーブル各種、すべてジッパー付きのシルバーパックにいれてあります。メタリックがかかっているセーブルは、空気にあたるだけで、少しずつ青みが消えていきますので、細心の注意を払って保管してあります。ですから、社内は、一階も二階のアトリエも毛皮屋には見えません(笑)

一般的には、毛皮屋であれば、原皮もコートも綺麗な彩りで並んでいて、毛皮屋らしい雰囲気を感じさせます。しかし、あれでは、日々、褪色をさせているようなもので、コートであれば、衿や肩や袖、原皮であれば外側の部分が必ず焼けていきます。

一般的にはナチュラルの、例えばパステルやデミバフミンクなどは焼けないように感じられているように見えますが、実際には少しずつ色が褪色していきます。

よく、古いパステルやデミバフミンクのコートの肩が焼けているのを見ませんか?

普段から、気にしてないと、なかなか気がつきませんが、気をつけて見出すと、意外に焼けているコートがたくさんあります。サファイアミンクなどのように黄ばみをもった焼け方ではないのですが、少しずつ薄くなっていきます。

毛皮メーカーとしてのあたりまえの保管方法

アトリエでは、お預かりコートはもちろんですが、自社ストック分の1000枚くらいの各種ミンクや染色済のミンク、セーブル、チンチラ、ロシブロ、アーミンスキン、等 オーダーとして受けらるように用意してある原皮もすべて同じような保管をしていて、ものによっては、シルバーパックの光をまったく通さないジッパー付きの袋に保管してあるものもあり、原皮保管にも、かなり神経を使っています。

今は自社のものであっても、いずれは、製品になり、お客様のお手元にいくことになることを考えれば、お客様と同じように扱うのはあたりまえだという考えかたです。

それが原因で社内は、仕掛り品でさえも、黒い生地をかけますから、ミシン、コンピュータ、バキューム台、プロッター、デジタイザー等の設備以外は、ほぼ、真っ黒なのです。

毛皮屋らしく、綺麗にアトリエを見せることよりも、何よりもコートや、お嫁入り前の原皮を大切にしたいという私の思いが、そうさせています。

褪色したものを直す技術も磨きながら、褪色しない工夫もしなければ、メーカーとは言えません。今はメーカーと言える、もの作りができるメーカーが少なくなりました。しかし、毛皮メーカーという本来の意味を考えれば、こんなことはあたりまえのことなのです。

長澤祐一

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