今日は、当社のメインアイテムのシェアードミンクコートの仕上がりの特徴について書いてみます。当社のメイン商材のシェアードミンクの作り方は、一般的な、または中国製のものとは決定的に違う部分がいくつかあります。全体の仕上がりが違うのはもちろんなのですが、部分的に言うといくつかあり、その代表的な部分を説明してみます。
シェアードミンクコート(sheared mink coat)肩ラインの仕上がり
まずは肩の部分の仕上がりについて書いてみます。今、中国でつくられているもののなかにも、かなり上手に作られているものと、いまだに、10年前と同じレベルのものと二通りあります。おそらく、それは、今でも新規に工場が作られていて、技術が成熟していない工場もあり、そんなところで作られたものも市場に出回っているからなのでしょう。あくまで想像ですが。
当社の刈毛コートの特徴で一番簡単にわかるのは、縫い目がほとんどわからなく仕上がっていることです。この技術が生まれたのは、20年以上前くらいのことでした。まだ私のところが委託加工を生業としていた時代の頃です。
そして、それが大手百貨店の売り場で大きく評価され、さらに、国際見本市で海外のメーカーにも、パーフェクト!!と評価されました。その頃に完成されたものです。もちろん、その後も技術は進歩していて今に至っているわけですが、基本はこの頃に生まれています。
その後、当時、他社毛皮問屋さんにも卸をしていて、その問屋さんが中国に商品を持っていくか、中国のメーカーを国内展示会に招待するかして、少しずつ技術が中国に流出したと思われます。
しかし、中国と当社の縫い目の段差をなくす方法に決定的に違いがあり、そこが、未だに全てを真似されるということに至らない理由があります。
中国での縫い目を綺麗に刈り込む技術は、一般的に誰でも考えそうな技術なのです。それは、刈毛ミンクをおそらくですが、一度9mmくらいに刈ってから、コートの身頃になるようにプレートにして再度7mmくらいに刈直すのです。これで、縫い目はそこそこですが、綺麗に仕上がります。
でも、これは、日本でも同じように考えるひとはたくさんいるでしょう。
当時、私たちが大事な取引先に入る頃、あるメーカーが当社の参入をきらい、いくら金をかけてもいいからパショーネと同じ仕上がりのコートを作って、パショーネが、ここに入れないようにしろ、、、、というようなことが現実に行われたのですが、もちろん、同じ仕上がりになることなどなく、お金をかければできるというレベルの低い技術でもなく、未だに完璧に真似されることはありません。
立体になった刈毛を仕上げる難しさ
さて、少し核心にせまりますが、私たちは中国で行われているように大きな刈毛の機械に入れて最後の仕上げをしているのではありません。縫い目を一本づつ刈っているのです。方法はもちろん秘密です。
いつも言っていますが、特殊な道具は自分のところでつくります。もちろん、機械屋ではないので、すでにある機械を改造、改良していくのですが、これが簡単に真似されない理由です。
中国のように大きな刈毛の機械で最後の仕上げ刈りをするということは、立体になったものは仕上げられないということであり、仮にプリンセスラインのような身頃に切り替え(カットライン)が入るようなものは、立体になってから仕上げ刈りをするしかなく、無理なのです。
だから、平面的なフレアーやストレートラインのものしか綺麗に仕上げることができずにいるのが中国製品の現状なのです。
今日、写真でおみせする上の写真は、肩を縫い合わせただけのものです。刈毛は逆毛でつくるのが基本なので、肩は一般的にはこのように毛がぶつかり合い、縫い目の毛が立ってしまいます。
決して綺麗とは言えません。
下の写真は、同じコートの肩を綺麗に仕上げたものです。毛のぶつかり合いも消えて綺麗に仕上がっていますね。
ヨーロッパのひとたちにとってどうでもよさそうに思われがちに見える、日本人的な発想のこの刈毛の技術ですが、10数年も前の池袋サンシャインでの国際見本市のときに毛皮を熟知しているヨーロッパのメーカーの人たちのほうが驚き、そして評価してくれたことは意外でした。
次回は袖付、その他の違いを書いてみます。
長澤祐一