今日は前回の当ブログ記事「シェアードミンクコート(Sheared Mink Coat)の仕上がり(1)」の続きで、アームホールを縫ったあとの袖山の縫い目の仕上げについて書いてみます。
そう言っても、たくさん書く事はありません。上の写真を見てもらうと最初のものは袖付の山の部分の縫い目が少し溝になっているのがわかりますね。
これは、袖付で通常の縫い目よりも少しだけ厚くミシンをかけることもあって、毛の根元を縫い込むことで溝が深くなりやすいのです。
これを仕上げると下のような状態になります。汚い、深い溝が80%くらい消えています。この技術は残念ながら、私のところでしか今現在も仕上げることができません。
前回、立体になったものを綺麗に刈り込むことが一般の大きな刈毛の機械ではできないといったのが、その意味です。
こんなところを、、、と思われるかもしれませんが、10年以上も前の国際見本市にでたときの海外のメーカーの人たちの反応は、うちのブースだけが海外の人で溢れてしまったことを見てもよくわかります。そして、パーフェクト!!と言ってもらえたことにも日本人技術者として素直に嬉しかったのを覚えています。
もともと、海外の毛皮業者のほとんどは、日本の毛皮の技術などは、ものすごく低いレベルにあると当時は思っていたことでしょう。ドイツのメーカーで名前を何といったか今は記憶にありませんが、そのメーカーの一人が私たちのブースのひとつ離れた大きな柱の横に立って、半日くらいずっと見続けていたことでも、彼らにとっては驚きだったことがうかがえます。
ロシアの出品者からも、名刺をいただき、是非、一緒にフランクフルトに行こう、、、と誘われたりと、、加工屋から必死に脱皮しようとしてメーカーになったばかりの当時の私たちには、海外にも自分たちの技術が通用するという自信をいただいたきました。
あれから10年以上も過ぎて、技術もさらに上がっているわけですが、今思うと、よくあのレベルでとおもいます。あの当時は、とにかく綺麗に作ろう、、、、 ということばかりで、今のように、どうしたらもっと軽くできるか、どうしたらもっと柔らかく出来るか、、、そしてデザイン、パターン、、と考えるようなゆとりも技術もありませんでした。
あれから、中国も技術が上がっています。海外の染色やなめし、今の日本では、太刀打ちできないものばかりです。
あえて、日本製made in japanなどと記載する意味もないほど、一般の国内技術は海外に遅れをとってしまっていて、末端の職人さんたちには、その新しい海外の技術をみる機会さえもないのが現状でしょう。
日本製made in japanの本来の意味を汚さないためにも、ヨーロッパや中国の製品に負けることは許されません。
もちろん、染色もなめしも国内で素晴らしい技術を持っていらっしゃるところもあります。しかし、ヨーロッパでは、やはりその先の特殊な染色技術や皮面の加工技術がどんどん進んでいます。国内ではマーケットがないこともあり、その辺の技術が進みません。残念なことです。
そんななかで日本製made in japanを毛皮の製品で自信をもって謳うには、独自でできる技術開発をする以外に道がないのです。
話、それましたが、今日のテーマである当社の刈毛の技術も、見ていただくことができるのは三越の日本橋本店毛皮サロンだけです。日本的な繊細で綺麗な仕上がりを見てみたいと思われる方は、是非、ご来店くださいませ。
長澤祐一