チンチラ 劣化 その2

このブログでも劣化についてはたくさん書いてきていますが、一般的な毛皮素材のなかで一番多いのがチンチラだと思います。

ヌートリアも劣化しやすいですがチンチラほど素材として一般的ではありませんのでチンチラについて、再度違う視点で書いてみます。

昨年、ナンタケットバスケットのトリミングを作ろうと思って、友人の知り合いの方からナンタケットバスケットと別売されているファートリミングをお借りしました。

販売したメーカーは有名なところで、フローラル・・・・ というところです。

チンチラは毛が3cほどあるので分かりにくいのですが、接ぎ目で5個所以上破れていました。ということは半分の接ぎ目が切れていたということです。

以前、ブログのどこかで記載していますが、チンチラでもクロム鞣しや薄い芯を貼れば簡単に切れることはありません。

今回のチンチラトリムははっきり言って論外というほど酷い作りでした。

元々チンチラは弱い素材ですが、それにしてもそうそう切れるものではありません。しかし、今回のものは半分の接ぎ目が切れてしまっていました。チンチラの皮が劣化してしまっていることと、補強の芯がまったく形だけで効いてないことが原因です。

さらに、正しい作り方などないのですが、それでも、ドラムという機械(乾燥機のようなもの)にかけて柔らかくしてから綿や裏地をつけるという作業をしていれば、多少の使用で切れることはありません。

お買いになられて、想像ですが仮に6年くらい経っていたとしても、こんなに簡単に縫い目のところで切れることはないのです。

あるとすれば、古い材料を使ったために加工する前から原皮が劣化していて、それを感じて知っていながら作成してしまったというような場合でしょう。このチンチラトリミングを修理するときに中を開きましたが、既に部分劣化ではなく皮全体が劣化していて接着芯はほとんど剥がれてしまっていました。

こうなるとどんなに慎重に作業をしても紙を縫い針で縫うようなもので、針穴からさらに切れてしまいます。

本来、作り手が気が付くはずですが、経験が不足していたり、高額なチンチラ素材を無駄にしたくないということで、無理に仕上げてしまうというようなことが起こりがちなのです。

そんなことでチンチラは弱い、というイメージがついてしまいます。

しかし、正しい扱い方をすればそれほど弱いという素材ではありません。もちろん、強い力には弱いですが劣化したチンチラとはまったく違います。

少し補足しますが、チンチラがもともと切れやすい弱い素材というイメージからか一般的なチンチラの鞣しは脂分が多く含まれているのです。一見、その方が柔らかく感じます。

しかし、この脂分が空気中の水分を吸収してしまい、皮に含まれてしまった水分が酸化して劣化するように感じます。

しかし、唯一デンマーク産のチンチラだけは皮の表面がカサカサして乾いていて、私の見解では逆に劣化しにくいと感じます。デンマーク産以外のものは時々ですが、仕入れたバンドルの状態で劣化しているチンチラがあります。

それくらい、チンチラは毛も繊細ですが、皮も繊細なのです。

お客様のためにできることというと、クロム鞣しをして劣化を少しでも止めることですが、それでもパーフェクトではありません。しかし、やらないよりは圧倒的に良いのです。

しかし、染色ではクロム鞣しは必然的にやりますが、ナチュラルな色ではコストをかけてやることはなく、そのクロム鞣しの重要性を知ってやっているところは、国内ではわたしのところと、ふぉく、、、ー  さんだけです。

ひとつ解説しますが、染色したものは染色のために耐熱処理のクロム鞣しが施されているという意味ですが、毛皮の染色は60度くらいのお湯につけて染色をしますので、通常の皮だと、縮んでしまい固くなって使い物にならなくなります。そのために耐熱処理をクロム鞣しという加工でしています。

これが、劣化防止の効果も生んでいるのです。

今日はチンチラの劣化に特化して記載しましたが、次回は、劣化そのものについて記載してみます。

長澤祐一