前回のブログ更新から10ヶ月も経ってしまいました。一年以上もグーグルの検索では一位だった毛皮のオーダーメイドも、二位、三位、四位、五位と順位が下がってきました。
さすがに更新しないとダメかと思い、何を書こうか迷っていて、毛皮で一番やっかいなチンチラをさらに突詰めて書いてみることにしました。
チンチラの良さや欠点をこれまでも、いろいろな角度から書いてきましたが、今日はチンチラの毛捌きというテーマで書いてみます。チンチラのいい商品として自分が上げるならば、フィンランドのリンナネンというメーカーのチンチラは私がみても綺麗だとおもえます。
以前も書きましたが、チンチラは皮の脂分が一般的にはとても多く、その脂分が下手な加工技術だと、というか、ちゃんとした設備と技術がないとうまくいきにくいのです。
加工技術の中に皮に水を含ませて皮を大きく広げたり、カーブに曲げたりすることがあり、もちろん乾燥をして元の乾いた状態にもどすのですが、水分を含んだ皮から水分が抜けるときには、皮裏面から抜ける水分と、毛の表面から水分が飛んでいく、この両面があり、どうしても毛の根元は一度は湿ってしまいます。
そして、毛の根元に皮の脂が水に混ざり、毛の根元5mmくらいのところまで脂が染みてしまいます。もちろん加工技術の差によって水の使う量を加減することは出来ますが、近年のコスト重視のもの作りのために、どうしても水を多めに使い皮を良く伸ばし、歩留まりをよくするというところに行きがちになり、その結果として、毛の根元を脂でべたつく状態にしてしまいがちなのです。
商品や、お手持ちのチンチラで、毛割れが極端に、パカパカ割れているものがありますが、それは、根元の脂分によって毛の根元が束になってしまい、さらに、空気中での汚れやほこりなどの目に見えないものによって汚され、あのように割れてしまいがちになります。
いつか、襟元の汚れ落としについても書きますが、チンチラのエリで襟元が汗や身体からでる脂でべたべたになってしまうのをよく、、というかほとんどがそうなってしまっているのを見かけますが、チンチラは毛管現象そのもののように、水分や脂分をどんどん吸収し、毛がどんどんくっついて束になってしまいます。そして、その脂が落ちないために黄ばみや、皮の劣化につながって最悪の結果になってしまうのです。
かと言って、チンチラは適度に毛がからんでないと本来のボリューム感がでないのも事実です。ですから当然ブラシをかけすぎてもいけませんし、オガドラムをかけすぎても、毛はパラパラと腰がなくなってしまい、ボリューム感がなくなります。私は、毛皮のなかでチンチラが一番、本来の毛の魅力を引き出すのが難しい素材だと感じています。
リンナネンはヨーロッパのメーカーで、中国のつくりとはやはり大きな違いがあり、毛皮本来の力を引き出す技を経験と豊富な感性のなかで熟知しているのかもしれません。具体的なごとはかけませんが、要は、作って形にしただけでは、メーカーにはなれないのです。毛をちゃんと一番良い状態にするというのは簡単なことではありません。そして、その最後の仕上げの部分にこそリンナネンのメーカーとしての力量が見えるのです。私が自社アトリエで作るもの以外で、いつも気になる毛皮のひとつです。
下のビデオはアトリエで作ったチンチラのヘチマカラーの裏地がつく前の状態です。仕上がりの確認をしているところですが、普通は手で触ると手の脂がすぐについてしまいます。そんなこともあり、私の手は溶剤で手の脂を取ってしまっていてカサカサの状態なのです。そんな手で触らないと、怖くて触れないくらいに繊細な毛皮がチンチラです。最後に、毛皮同士の色は合っているか、ボリュームは合っているか、腹の毛の白い部分は均等にバランスよく入っているか等、いろんなことをチェックして裏地をつけていきます。
長澤祐一