今日はPFAFF3560レットアウトミシンで縫った、毛皮コートの裏側をお見せいたします。
一般のかたのなかにも毛皮の裾がフラシ仕様(裏地の裾が閉じられていない仕様)になっている場合には、毛皮の裏の縫い目をみたことのあるかたがいらっしゃるかもしれませんね。
後日、理論的なことは書きますが、今日は裏の縫い目を見てください。(細い線すべてが縫い目です)
今日は見てもらうだけで、たいした説明はありませんが、よく、お客様のなかで、裏が見えるようになっているのが、お値段の高いコートだというような認識がありますが、それは間違いです。
そして、レットアウト(毛皮を斜めにカットして、ずらしながら縫い合わせること。毛の長さや色を大きく変化させずに、目の錯覚を利用して毛皮に長さをだす)してあればすべてが良いものともいえません。
技術が未熟な技術者が、レットアウトをしてしまったコートも世にたくさん出回っています。簡単に見抜く方法は、ラインが真っ直ぐになっていて、ゆがんだりしていないこと、縫い目が細く一定の太さで縫われていること、あとは見てもわかりませんが、毛が縫い込まれていないこと。
専門的なことを書けばきりがないのですが、ラインをしっかり身頃のフレアーに合わせて、綺麗な直線に作る技術があるということは、他の部分もしっかりできると想像ができるということで、ラインを綺麗につくれるか、ということを一つの基準にしました。
写真のコートは芯を据えたり裏地を付ける前に、ドライ処理をしました。そのときに業者さんに言われたことがあります。ドライしてオガドラムかけると、裏側に毛が一杯まわるよ、、、、っと言われたのです。要するに、一般的なコートでは、縫い目に毛をたくさん縫い込んでいるため、その毛がドラムのなかで揉まれることで、毛が皮の裏側にでてきてしまうよ、ということを忠告されたのでした。
そのときに私は、それは心配しないで大丈夫です。絶対に毛は出ませんからと伝えたのです。案の定、毛は一切、出ませんでした。しっかりと毛を縫いこまずに縫えば毛が裏側に回ることはないのです。
海外では、この裏に回った毛を綺麗にするために、バーナーで一瞬にして焼いてしまい、毛が裏側から見えないようにしています。もちろん当社ではそんなことはしていません。
このレットアウトされたコートは私の知る限りではヨーロッパのものは、あまり綺麗とはいえません。デザインにより重きを置いているからかどうかはわかりませんが、一般的に私にはそう思えます。
このタイプで綺麗なのは、昔のビスカルディというブランドのもので、実際にニューヨークでつくられていたものコートがあり、そのなかでたまに素晴らしい出来栄えのものがあります。
私も、何点かリフォームに来たものを見ましたが、1点だけですが、ほんとうに素晴らしいものがありました。思わず、お~~~っと声がでるほど素晴らしいコートでした。デミバフミンクでしたが、技術的なコンセプト、材料、すべてが完璧でした。
ただ、ひとつ欠点があるといえば、重いことでした。皮も豊富に使い、デザインもボリューム感のあるデザインでしたので、致し方ないのですが、やはり、付属が不要なものが多く、いわゆる日本的に丁寧に作る、、、ということが逆に商品の価値を下げてしまっているようにみえました。
昔は、着る人と作る人の距離がありすぎたのかもしれませんね。職人さんは、良かれとおもってやることが、お客様の望まない硬さや重さにつながってしまっていたケースが過去に多々あったのかもしれません。もしかしたら、今も、あるのかもしれませんね。
ということで、少し脱線しましたが、今日はレットアウトという毛皮の基本的で古典的ともいえるテクニックについて少しだけ解説してみました。次回はもっと、わかりやすくCADを使ってレットアウトの意味を説明しようと思っています。