今日は、以前少しだけ書いたロシアンブロードテールと島精機PGM(CAD)というタイトルの内容を少し掘り下げて書いてみます。
写真1はCAD上で、後ろ身頃の原皮の割り振りを書いたもので、矢印右側がバーツを分割したものです。 この割り方で気になるのは背中が一枚の毛皮の幅でカットされていて、その左右は何故細いのか?ということです。
これはイスラエル等で作られる手縫いプレートにも、よく見られますが、中心や身頃前端に安定感を持たせる意味で真ん中やプレート端に一枚皮を持ってくることがあります。
アトリエ(パショーネ)でのパーツ割りそんな手縫いプレートを少し意識してライン取りをしています。そして、中心を境にして左右に割り振っている原皮は、一枚の皮を中心でカットして左右に割り振っていいます。丁度、一枚のスキンを半分にしても入るような面積にラインを引いています。
このライン取りも、皮をアソートする前に決めるのではなく、実際にスキンをアソート(色合わせ)しながらスキンの大きさをみながら決めていきます。その分、手間はかかりますが、スキンのロスが少なくて済み、腹ギリギリまで使うことで、皮も中心の厚い部分だけでなく、腹に近づくにつれて薄くなっていく部分もしっかりバランスよく使い、毛並みの馴染みと軽さを求めていきます。
背中心に一枚皮を据えて、左右に皮を半裁にして割り振ることで、毛並みや色の安定感を出していき、自然な雰囲気を作り出すのです。
実際に作ったコートの写真を下に載せますので写真1と比べてみてください。
毛皮を自然に見せる技術ロシブロのカットについていくつか説明してきましたが、これはあくまで私のアトリエでの考えかたです。他にもいろんな考えかたや手法があり、それは職人さんひとりひとりが独自の考えかたで行っているもので、この記事も偏らずに読んでいただければと思います。
毛皮は天然産物なのですが、適当に配置して、それが自然にみえるかというと、そうではありません。基本的には毛皮は一枚一枚バラバラなのです。その一枚一枚バラバラな毛皮を不自然にならないように見せるのは、技術者の計算と感性で作り出されているのです。希に、適当に置いたものが綺麗に見えるときもありますが、実際には自然なものを自然にみせるには、毛皮独特の計算をして目の錯覚も利用し、自然に見せていくのです。
そういう意味では以前書いた、レットアウトという技術も、目の錯覚を利用した技術のいとつですね。カットしてづらし、色も毛の長さも違っているのですが、距離を置いてみることで、自然な一枚の長い毛皮に見せています。この目の錯覚を利用している毛皮のテクニックは以外に多いのです。機会があったらまた、この目の錯覚を利用したテクニックを書いてみます。
*関連リンク
ロシアンブロードテールのMEN’Sロングコート
長澤祐一