仮縫いや本仮縫いの意味

今日は仮縫いや本仮縫いの意味というタイトルです。

私達のオーダーやリフォームでは、トワル仮縫いや本仮縫いを抜きにして、コートを仕上げることなどありません。部分修正にしても、最低限一回は仮縫いをやります。場合によっては二回、三回となることもあります。

その理由は、最短でベストの状態にするためです。その為に膨大な手間をかけるのです。

最短の意味は、出来るだけ余計な修正ややり直しをしないでという意味です。

仮縫いせずに適当に早くやって、クレームが出たら何度でも直せばいいなんて発想は私達には、ありません。

毛皮はナチュラルな素材の場合は特に、毛の長さや色が頭や背中心、腹など、それぞれに違います。

だからこれほどまでに立体感があって平面の画像で見ても綺麗なのです。

このことを頭に入れてよく考えてみてください。毛皮という素材は簡単に切って継ぎ足すように縫って問題がないという素材ではありません。

特に毛の短めな素材、例えばミンクのようなもの、さらには繊細な毛質のチンチラなどは縫い直しは厳禁です。傷縫いも目立ちます。

私も、時にはどうしてもカットして縫い直さなければならない場合があります。ただし、その時にも素材の皮の厚さに注意し、色の違いを最小限にすることを注意し作業をします。

素材の色、毛の長さに細心の注意を払い縫うのですが、それでも簡単ではありません。

仮縫いもせず、求める仕上がりと違ったならば何回でもお直しが出来ますと言う素材ではないのです。生地のように直接接ぎ目が見えないと言うだけで、縫い直しの影響はフォックス以外で毛の短めの素材であれば必ずでます。特にミシンワークが未熟であればなおさらです。

毛があるからわかりにくいということで、どんなお直しでも、何回でもできるというのは間違っています。

厳しい意見ですが、どんなに価格がリーズナブルといっても、価値のない商品やサービスの提供は意味がありません。

以前、価格の価値という投稿をしましたが、価値に見合わない仕事こそが一番高額な価格なのです。

最後に話を戻しますが、仮縫いや本仮縫いの本当の意味は形式的にお客様を納得させるための儀式ではないのです。でも、そんなところが多いのも現実です。

仮縫いで何をチェックするのかさえ知らない素人がチェックするのです。不安ならその場で聞いてみてください。仮縫い時のチェックは何をするのかを。あれこれ理屈をつけたとしても、まともに答えられるところは少ないと思います。

本来の仮縫いの意味は、仕上がり後の無駄な修正を100%無くすためにあります。

仮縫いをやって、お客様を形式的に納得させるというような業者都合の儀式ではありません。

仮縫いをやれば、お客様に文句を言わせないというような自分都合のものではなく、全ては完璧な仕上がりのためのものです。

ただし、そのためにはプロになるための努力が必要です。

今すでに仕事をしている、、、ということがプロということではありません。

意識と技量がプロであるかが一番重要なところです。

生意気ですが、そう思って私も日々の仕事をしています。

 

長澤