毛皮のご自宅での簡易的な保管

今日、毛皮コートの肩焼け直しとクリーニングでご来店を頂きました。お客様、ありがとうございました。

このブログをたくさん読んでいただいているようでとても嬉しかったです。

数年前から、試みていることがあります。毛皮の保管についてです。

今日のお客様の問題の肩焼けやクリーニングも本来、適切な最低限の保管方法でされていれば必要のない処置なのかもしれません。

よくこのブログでクリーニングのことでお悩みのお客様がいらっしゃいます。

しかしです。そもそもの保管がダメなんだろうなと思うケースがほとんどです。

毛皮は水洗いは出来ません。ドライクリーニングも基本ダメです。

ドライ = 有機溶剤 ですが、プロが使う有機溶剤は毛皮には強すぎます。私は有機溶剤を使ってクリーニングもしますが、オガ屑に混ぜて使いますので強さは軽減されます。

ドライクリーニングだと毛皮の皮に含む脂分がすべて抜けてしまいます。

普通のプロの間では、毛皮には適度な脂分が必要ですとよく言われますが、巷にあるクリーニング屋さんのホームページ等にある記載されている適度な?は私の意見では脂分が強すぎるのです。綺麗!と思わず言わせることもできない業者のいうことなど充てになりません。ごめんなさい。

皮に脂分が強すぎると空気中の湿気をスポンジのように吸収し、その水が皮のなかで酸化します。そうすると、当然ですが皮も酸化して少しずつ匂いも発生します。

 ご家庭での保管方法をお勧めすることで業者さんの仕事を奪うわけではないですが、業者さんのクリーニング・保管などで、これはいいな!ここはちゃんと毛皮を知っているな!と思う記載をしているところ、ほぼありません。

毛皮の本来の魅力を引き出すことを知らないと、結局、どんな薬品を使ってもどんな機械を使ってもクリーニングは出来ないのです。

話それました。ご自宅での保管の話に戻ります。ここ数年試しているものがあります。以前、脱酸素剤を使ったパックがありました。最近は掃除機等で空気を抜く衣類の保管パックがありますが、このパックを使って原皮や商品を夏場の湿度の高い時期に保管をしています。

結果はかなり良いです。パックの中に毛皮を入れて、その中に湿度・温度計を入れて保管してみました。

温度は室内の温度に影響を受けますが、湿度は一度パックをして掃除機で空気を抜くと、湿度変化はまったく起こらないのです。

それはどういうことを意味するかというと、空気が出入りしないことで、割りに安定した状態をキープできるのだということが証明できます。どこかで書きましたが、空気が何度も出入りすることで、その都度新しい湿気が入り、その都度酸化が進むと想像ができます。

しかし、保管パックに入れて一度空気を抜くと、その湿気の出入りは一旦遮断され、そこで極端な酸化の進行は止まるという仮説が出来るのです。

ひとつ問題があるとすれば、空気を抜くとコートがぺしゃんこになり毛や皮に癖がつきます。

ただし、これは着用前やシーズン直前にパックから出して新しい空気に触れると自然に風合いは戻ります。

私の経験だと、パックから空気を抜かなくとも、一度パックに入ると湿度はまったく変化しないことがテストしてわかりましたので、空気を抜かなくても、ご自宅保管ということを考えればかなり有効だと感じるのです。

もちろん、私が保証をすることはできませんが、特にこれといって、ご自分での保管方法が見当たらない方は一度試しても良いと思います。

ご自宅保管で一番悪いのは、極悪環境で長期にわたって何年も保管することです。

今はご自宅に空気清浄機やエアコンのついた大き目なクローゼットをお持ちの方もいらっしゃいますが、一度でも着用したコートやジャケット等と一緒に保管したら必ず匂い等がつき、さらに、どうしても奥に行きがちな毛皮コートは湿気がたまりやすく、どんなに豪華なクローゼットでも私なら安心できません。

クローゼットの端から端まで同じ温度・湿度なら問題はありませんが、それはどんなに豪華なクローゼットでも無理です。そのため出来れば、毛皮と他の衣類との間隔を十分に開ける工夫が必要です。 それが無理なら掃除機で空気を抜き取るタイプのパックを使い、空気を入れたままの保管をお勧めします。毛皮に癖がつかない程度に空気を抜き、その状態で保管が一番望ましいと考えます。

20年在籍していた百貨店時代にもいろんな劣化等の問題を抱えましたが、例えば大き目の保管倉庫で保管していても、エアコンの吹き出し口が例えば天井にあった場合などだと、二段掛けしてある上のコートの肩に吹き出し口から出る湿気を含んだ空気が肩にあたり、他の部分より早く劣化したりと、一見万全のような保管倉庫でも、まったく安心できないという経験がありました。

そういう意味では、単独の保管パックで密封状態での保管は、私は有効だと感じます。

但し、保管パックの使いまわしはやめてください。毎年新しいものに替える必要はないとおもいますが、使いまわしすると、匂はカビが移る可能性がゼロではありません。一つの毛皮コートに対してひとつの毛皮をいれてください。

今日は、なんかダラダラと書きたいように書きましたが、業者の意味不明なクリーニングや保管に依頼するよりも効果的な保管ができるかと思います。

業者さんを否定して悪いですが、毛皮の匂いでひとつ大きなものはカビの匂いです。香水やショウノウのようなものも多いですが、以外に気が付かないのがカビの匂いです。

カビは通常のクリーニングでは絶対に落ちませんから。落ちた気がしてるだけです。カビは皮自体に生えます。通常のクリーニングは毛の表面しか洗えません。そして、仕上がったと言われる毛皮コートを何百着も一カ所で保管します。当然ですが、カビ、匂い等が移るリスクは高いのです。

そう考えると、ご自宅保管も決して悪くないと最近考えています。もちろん、理にかなった状態でですが。

それと、最後にもう一つですが、空気を抜けるタイプの密封タイプの袋に入れるときにハンガーにかけたコートの上に黒やその他の光を多少でも遮断できる薄い生地、例えば大き目のスカーフ等を掛けてもらうと、当然ですが色焼けしにくいです。ただし、未使用またはクリーニングしてあるものに限ります。一度使ったスカーフなどは香水がつきます。これだけは厳禁です。この状態で保管するとかなりレベルの高い保管ができます。一度試してみてください。

長澤祐一