毛皮のリフォーム前のクリーニング「オガドラムの効果」について書いてみました。毛皮のリフォーム前に、弊社アトリエでは、徹底したクリーニングをしていますが、そのなかで一番大事な脂を抜く作業があります。
脂を抜くことの意味については、何度も書いているので他の記事を読んでもらえればよいのですが、今日はその脂を抜く作業のなかで、ひとつ大きな問題があることを書いてみます。
溶剤を使って皮の脂分を抜く工程は皮、毛、ともに溶剤に漬け込みます。そこで、溶剤に脂を溶け出させるのですが、あまり長時間つけすぎると脂が落ちすぎてしまい皮にとっては危険な状態になります。
しかし、中途半場に溶剤からだしてしまうと、液に溶けだした脂が毛全体についてしまいます。これは専門の業者さんにやっていただいたとしても、起こり得ることです。溶剤から取り出すタイミングや溶剤の量などに、微妙な感覚が必要だということが解ります。
これで乾燥をさせると、経験がないとわかりませんが、毛に脂がついたままの状態になり、皮の脂分は約6割抜けて軽く柔らかくなったとしても、毛はベタッとした状態になってしまいます。
言われないと気が付かないレベルですが、ほらっ、べたついてない!! っと言われれば、なるほどという感じになり、毛を触ったあとの感触は、ろう(パラフィン)を触ったあとの感触のようにべたつきます。
ろうが解りにくければ、例えば、洗濯ソフターの原液をテーブルの上にたらし、それが乾いてから、そのテーブルの上を触るというような感じとでもいえばいいでしょうか。なんとなくぬるっとしているのです。
一見、わかりにくいのですが、完璧に脂分が取れた、サラサラの毛を触って比べると、もう、これはとんでもない、大きな違いだということが解ります。毛皮本来の魅力を引き出すということはこういうことです。だから、なんとしても、このわずかなべたつきを取らなければなりません。
私たちの髪の毛でも洗ったばかりの毛と、夕方の髪の毛とでは、もうすでに、違いがあるはずです。二日、三日経った髪の毛のような状態で、綺麗になりましたなどとは言えません。
この場合には、やはりオガドラムを使うしかないのです。オガドラムに何を併用するかは企業秘密なので書けませんが、オガドラムの効果は抜群です。私の尊敬する業界人のなかで、なめしをお仕事とされていらっしゃる会社の社長様がいらつしゃいます。
社長様に伺ったところ、オガには顕微鏡でみると小さなチャカチャカとした毛羽立ちがあり、それがほこりや汚れをとっていき、オガに、そのチャカチャカと飛び出した毛羽立ちがなくなると、もうそのオガは使えなくなるそうです。
オガのちからは本当に馬鹿にできません。もう、お~~!!っと、思わず声がでるほど綺麗になります。もちろん使い方に研究は必要です。オガにも種類があり、さらにオガだけでは駄目です。かと言って、毛皮クリーニング専門店で使うようなパウダーなど使いません。
私はいつも思います。毛皮の綺麗さを感じ取るのに男女は関係ありません。一般のおじさんでも、解るひとはわかります。思わず、お~~~っと声を発して、その綺麗さに驚きます。それが、毛皮本来の魅力であり、魔力でもあると私は確信ています。オガドラム効果、本当に恐るべしなのです。
下の動画の最初のセーブルはレットアウトしてあり、皮もかなり硬い状態で、毛も長年の汚れでべたついていましたが、綺麗にとれてサラサラの状態になっているのが解ります。
動画の後半に出てくるダークミンクは先日当ブログで書いた「毛皮のリフォーム前のクリーニング」記事のコートです。汚れも落ちて、脂分も適度に抜けて、とても良い状態になっていますね。