毛皮の水張りで使う道具

今日は一般の方には、まったく面白くない道具のお話です。

毛皮は生地のようにアイロンをかけたりして表面を平にすることもありますが、基本的には少量の水を使い、皮の表面に湿らせ、皮を伸ばしながら求める形に皮を張って平らな状態にして線を引いたりカットしたりして作業をします。

職人さんによって、その仕事の呼び名は様々なようです。水で湿らすことを味をする、、、ともいいますね。私は、職人さんに教わった経験がないので、あまり、通常、職人さんが使う言葉を知りませんので、ここではその呼び名は控えます。

今日のテーマは毛皮を張るための道具です。写真を見てもらえばすぐわかりますね。右端のオレンジ色のものは、よく建築で壁にボードを張るような作業がありますが、あれに使うタッカーと、機能は、ほぼ同じです。エアーの力で針が飛び出します。結構危険なものなので使用には気をつけてください。

私たちは針をステープルと読んでいます。

写真の中央に二本あり、右側は、少し長いタイプです。左側が一般的はサイズで左端の箱に書いてあるのがメーカー名ですね。

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一般的に使われているのは、もう少し太いタイプで、10mm 13mmという種類があり、丸徳繊商さんに売っています。

今回紹介するものは、ちょっとだけ特殊なのです。昔は、皮を張る作業をネイリングと読んでいたらしいですね。ネイル=釘 ということで、タッカーを使う以前は釘で皮を引っ張りながら原皮を張ったり、形にしたりしたらしいです。実際、釘では、時間と手間がかかり過ぎ、現在は、エアータッカーを使うようになったようです。

しかし一般的に使われているエアータッカーのステープルでは、繊細な皮には、例えばチンチラ、セーブル、アーミンのように薄い皮のときには少し針穴が大きく感じるときがあります。そんなときに、一般的には左側のACEと書いてあるステープルで写真中央上のシルバーのハンドタッカー(ACE社製)を使いステープルを打ち込みます。手でノブを叩きつけるようにして針を毛皮に打ち込むのです。これも、丸徳繊商さんで売っています。

毛皮を自分でリフォームするならば
一般の方(素人)が、ご自分でリフォームなど、毛皮の加工を簡易的にするならば、エアーコンプレッサーもタッカーもいりませんので、このACEタッカーが最適だと思います。ただし、板に打ち付けると、針を抜くのが大変なので、固めのダンボールなどを利用するのがいいでしょう。

今日の本題、特注ステープルです。

中央の二本のステープルの右側のものは、見ると少し針が長いのが解ります。これは、私が特注で作らせたもので、一般市場には販売されていません。私のところで扱う素材はセーブル、ミンク、チンチラ、アーミン、ロシブロ、等、繊細な素材がほとんどで、一般的な太めの針のステープルは、最初の原皮を張るときにしか使わず、その後は、ほとんど、この長めの細いステープルを使い、皮に開く穴が大きくならないようにしています。

ただ、この長さだと、ハンドタッカーでは針が入らず使用出来ないのです。そのため、特注のエアータッカーで打っています。もちろん、ハンドよりも使い勝手もよく、スピードも速くなり仕事は楽になり助かっています。

この細い針を使う作業の時に、張り板は圧縮ダンボールのようなものを使いますので、まれに一般的な短い針では抜けてしまうことがあり、それで、これを使っています。今では、この細い針を使えるタッカーは売っておらず、壊れたら、修理をして使うしかないようです。
毛皮産業がバブル時代には、道具もどんどん新しいものが出ましたが、今では売れない、儲からない、、、で、作られなくなってしまいました。

よく、毛皮が衰退産業のように言われますが、ものがあり過ぎるこの時代です。毛皮だけが衰退産業のようにみられるのは、毛皮屋としては不満の残るところですね。欲しい道具は自分で作る!そんな時代になりました。

長澤祐一

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