毛皮の軽さと柔らかさ

毛皮を軽くする方法はいくつかあります。一番、簡単にトライすることができるのが、付属を出来るだけ軽いものにすることです。ケスカも純正のケスカは金属で出来ているので、個数は増えると結構重みがあります。同じ形で金属以外の素材で出来ているものがありますので出来るだけ軽いものを使用します。

さらに以前は毛芯とかを使っていたのかもしれませんが、今は軽さを考え別の素材を使うことが多いかもしれません。

コートの中に以前はシルクオーガンジーのようなものを毛皮の裏全面にはって、毛皮の縫い目のあたり止めや型くずれ防止の為に使用していましたが、縫い目もあたりの出ないような薄い縫い目にしたり、型くずれのしない作り方をすればオーガンジーをはる必要はありません。

裏地の選択も以外に重要です。毛皮でよく使われているキュプラとアセテートの混紡のものがありますが、これは以外に重い感じがします。匁数にもよりますが、シルク系がやはり軽いです。

二つ目は、皮の厚さの問題です。なめし上がった毛皮の皮を再度、なめしに出します。そうすると一度では絶対に出来ない皮の薄さと柔らかさが得られます。

一回目に、しっかりと皮をすけばよいと経験のない方は考えてしまうかもすれませんが、何故か二回なめすということをしないと本当の柔らかさと薄さが得られません。もちろんこれは私の経験でのことです。何度も試した結果はやはり再なめしの効果は絶対的に大きいと感じています。

さらにその皮を私たちは独自の機械で、皮の表面を毛根が出るギリギリまですき、皮の表面の繊維の一部を壊すことで軽さと柔らかさをさらに引き出します。但し、全てが同じように薄く鋤ける訳ではありません、ミンクの場合はオス、メス、サイズの違い等でそれぞれに限界があります。

そして皮の最終的な状態も、毛流れが縦の場合は、縦横比6対4くらいで仕上げます。これによってコートの型くずれも起きずに毛の美しさもそごなわずに仕上げることが出来ます。

横流れの作りの場合は、また少し皮を張るバランスが変わります。

そして最後に脂を抜く方法があります。これは専門の機械で溶剤の中に毛皮をつけ脂を抜く方法があります。しかし、これだと、脂の抜き加減が難しく全てが抜けてしまいますので、私たちは手間はかかりますが少しずつ抜く独自の方法で行っております。

これによって、脂の量をしっかりと調整し、軽さと柔らかさ、さらに毛のさらさら感を出します。この方法を使うと毛皮をドラムのなかで動かしながら脂を抜き、乾燥させるために毛皮本来の柔らかさがでるのです。ただ、溶剤に浸けただけでは柔らかくはなりません。

20年くらい前に、仕上がったコートをドライ処理をしてカラカラの状態にして、軽さと柔らかさを出した時代がありました。

この手法では、コートの形も崩れ、さらに脂を抜き過ぎてしまい、万が一水に付けてしまうことがあれば、皮は乾くと同時にパリパリになってしまうというリスクがあり、最近はあまり見なくなりました。

柔らかさと軽さは毛皮の仕上がりの生命線で、その大きな原因は脂の量なのですが、この調整が、なかなか難しいのです。なめしも常に同じ状態ではないからです。そして、脂を抜き過ぎると皮の強度が極端に低下し粘りがなくなり切れやすくなります。

私自身が、このブログのなかで脂ということに特に拘りをもって書いているのは、脂は入りすぎると酸化や、劣化、さらに重さにつながり、少な過ぎると皮が切れやすくなったり、硬くなったりする等、様々な問題を引き起こすためです。

毛皮の柔らかさと軽さというテーマで、一番大きなウエイトを占めるのが以上の三つだと私は考えています。

写真のコートはメスのパールミンクのロングコートで、1.4キロの仕上がりです。レットアウトしたものは普通の作りのものに比べ2割くらいは重くなりますので1.4キロは、かなり軽いほうの仕上がりです。

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