毛皮用スチーマー

今日は毛皮用のスチームという言葉で、よく検索されて、このブログに入っていらっしゃるケースが多いので、この「毛皮用スチーマー」というタイトルで書いてみます。

アトリエでも、以前はナオモト工業(株)さんが毛皮全盛期に作っていた小型ヒーターの付いたスチームを使っていました。これはガンタイプになっていて、美容室で使うドライヤーのような形をしていて、ガンの先にバネがついていて毛皮に先のノズルが直接触れないようにできています。

しかし、これは小物くらいのものを仕上げるのであればいいのですが、コートクラスになるとパワーが足りなすぎるのとガンタイプなので、要は一つのポイントしかスチームをあてられず、とても時間がかかってしまったり、ノズルの跡が出来てしまったりとコートをメインで作る私たちにとっては欠点が多過ぎました。

その後、ガンタイプから穴が横向きに複数開いているタイプのハンディーアイロンで蒸気をさらに高温にする装置を付けて使いました。しかし、これも今ひとつ効率があがりません。よく、毛皮専用のスチーマーは、高温で粒子が細かいと言われていますが、それは当時一般的な毛皮工場に本格的なボイラーがないため、職業用レベルのアイロンかまたは家庭用アイロンしかなかったために、それと比べたらというのが本来の意味だったような気がします。

一般的なアパレルの縫製工場などで使われている、大型や中型の本蒸気ボイラーを使えば水分が多過ぎるなどという問題は、すぐに解消してしまいました。そしてアパレルで使う、軽量アイロンで毛皮の上からスチームを充てれば均一に広い面積で蒸気をかけることができます。

ただし、毛皮の皮の縮みが怖いので、アパレルの縫製工場でよくつかわれる本格的なバキューム台を使います。皮面を冷やしながらスチーマーをかけるということです。さらに、吹き上げタイプのバキュームでは、毛皮の袖等をなかから空気で押し出し、蒸気をあてても皮に吸い込まないようにしてかけるというようなこともやります。プレス屋さんで使うようなバキューム台ですが、これは毛皮でもいろんな用途に使えます。

このように毛皮をスチームで仕上げるといっても様々な方法があり、これに、ドラムや回転アイロン、溶剤などを使って毛を綺麗にしていきます。

毛皮専用スチーマーの特徴として、粒子が細かい、水分が少ないと言われていますが、過去のこのブログで書いていますが、水分が毛のボリューム感をだすのに必要な場合もあり、一概に少ない方が良いともいえません。中のボリューム感をだして表面をアイロンで仕上げるというようなケースもあり、毛をどうしたいかから、その方法は選択されます。

写真①は当時、毛皮専用と言われたスチーマーです。写真②は以前使った横にたくさんの穴の空いたアイロンです。写真③は最新型の最軽量のナオモトさんのアイロンです。今はこれ以上のものはないように思います。一番下の写真は古い写真ですが、ロシアンセーブルのコートを作る有名なアトリエでボイラーから出る本蒸気を使ってアイロンで上から蒸気をあてているものです。加工段階でついてしまった毛の癖などをとっているか、毛全体の膨らみをだしている作業でしょう。日本の加工工場ではあまりみられない作業風景ですが、古くから彼らも今の私たちと同じようにしていたのがわかります。私たちもここまで辿り着くまでに長い時間がかかりました。

追記 通常の小型アイロンの蒸気は沸騰点100度くらいだと思いますが、ボイラーの蒸気は蒸気をためて気圧を上げているぶん1気圧で10度くらい上がるらしく、4気圧で約135度くらいになるそうです。ですから通常のアイロンよりははるかに水分も少なくなり粒子も細かくなります。それが毛皮専用スチーマー以上の能力になる理由です。

長澤

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