リンクスキャットのベリーという嘘

最近、ファーのなかでも超高額品のリンクスキャットのベリーという記載でフリーマーケットのようなところに出品されています。

ベリーとは、例えばリンクスキャットのような素材でいえば、腹の白い部分のことを指しています。

しかし、白ければいいのかというわけではありません。私たちプロがベリーというには、いくつか条件が付きます。

リンクスキャットの腹の白い部分の斑点模様は規則性があります。本来はこの自然な状態が一番価値があり綺麗です。

ここで、フリーマーケットによく出品されている悪い例を書いてみます。

先に書きましたが、腹の薄い綺麗な腑の部分ではなく皮が少し厚く、ベリーと言われるコートを作ってわずかに残った部分を集めて小さなパーツを中国やギリシャ等で接ぎ合せたようなものを使ってベリーと称して売られている本来のベリーではないものがあります。もちろん、海外の本当のプロは解ります。

しかし、フリーマーケット等で買おうとしていらっしゃるお客様はほとんどが素人の方ですので、そんなことは解りません。現物もベリーはとても、軽いのですが、偽ベリーは実際は重かったりします。

ここに何度も書いていますが、元価格が3000万とかでその1/10なんて偽物か、なにかわけがあるかしかありえないのです。

よく、リンクスキャットの超ロングとかになると、着丈の長さを出すためにレットアウトという加工をします。技術者によって着丈を少しだけ伸ばすためならば、腑の模様が崩れないように腑を避けてカットしてずらすという手法もとる場合がありますが、超ロングコートとなるとそれも難しく、腑をカットしないわけにはいかず、カットして長さを出すしかないのですが、それでも、元々の腑が規則正しのをカットしますので、白い残皮の部分を細かく継ぎ足したものとはまったく別のものなのです。

自分は、その継ぎ足したベリーが悪いとは言っていません。悪いのは本来ベリーとは腹の薄い軽い部分で白いところをベリーと呼んでいるにも関わらず、小さな端切れを集めて作ったプレートから作った決して軽いとは言えないものをベリーと謳い、本当のことを偽って販売することには、それはおかしいだろう、と感じます。フリーマーケットで販売する側も素人ですから、それはしょうがないと思うかもしれませんが、何百万もするものを売るならば、フリーマーケットであっても、売る側がもっと勉強をする必要があると感じます。

リンクスキャットの腹の部分の模様を少しだけ説明しますね。

リンクスキャットの腹の部分は、首の部分は白い毛が広い範囲であり、その周りに茶色い腑がちりばめられています。

そのあごや首の下には、小さな茶色い腑が中心部分に点線を描くように続きます。

最大の特徴は、この中心の点線の横に左右対称に大き目のスポット(腑)が斜めに二個セットで存在し、それをお尻付近まで繰り返します。

最後はお尻というかおなかの最後の部分で白い部分が大きくひろがり、両端に小さな腑が出ます。

ここは腑が小さく皮も厚くなり、はぎ落されカットされた残皮としてよく使われます。

リンクスキャットの腹の部分は基本的にはほぼすべての原皮がこうなっています。

画像が完璧なものがあれば良いのですが天然素材のためないのですが、傾向としては上で解説したようにほとんどのリンクスキャットの腹の模様は出来ています。

上の画像は、リンクスキャットの裏面からみた画像です。

本来は、裏側も真っ白ですが、時々加工するために水に濡らすと、こんな風に腑が浮き出て見えることがあります。

この画像をよく見ると中心に小さめのスポットが真っすぐ並んでいるのが解りますね。

さらにその中心の両脇にほぼ規則正しく腑がならんでいます。

赤〇で囲んである部分です。左側は〇をつけてませんが、完璧な左右対称ではないですが、ほぼ同じように存在します。

そして、その両サイドにはっきりとしたスポットで二個ずつ斜めに出ています。

それ以外にも多少ぼやけた腑が見えますが、基本的には中心部分とその両サイドに斜めに二個ずつ並ぶのが定番の腑です。

下は私のインスタグラムに投稿した画像ですが、上で記載した規則性を意識してみてもらうと、その規則性が確認できます。もちろんすべて同じではないですが、逆にそのばらつきが自然の美として存在しています。

一見ランダムに出ているように見える腑ですが実際には規則的に並んでいます。これを知っていれば、ベリーと言われているその画像が本当かどうかが、おおよそ見当がつくのです。

実際のコートで見るとなかなか見分けるのが難しいですが、上の法則を知っていると多少は騙されにくいかもしれません。

もちろん騙されてもいいと思う人はそれでよいのです。このブログでは難しい毛皮素材のなかで騙されて実際の価格と本来の価値に違いがあり、それを知らずに買ってしまうようなことがないように書いています。

ですから、それっぽいものをそれなりの価格で購入したいというお客様もいらっしゃいますので、それはそれで良いのです。ただ、販売する側が無知なため、または知ってても隠して販売するというようなことで、本当の価値を知らずに買ってしまうようなことがないようにと書いています。 知らずに間違って買ってしまって許せる金額ではありませんから。 長澤

毛皮コートの肩の色焼け料金

こんにちは、今日は数回前に毛皮コートの色焼けのお直しについて料金の結果が出ましたので報告致します。結果が安定したことと、作業時間もほぼ読めるようになりましたので金額を出してみます。

三回ほど前のブログで、肩焼け等の色の修正は、お客様との仕上がりに対する感じ方の違いという不安があり、仕事として受けるにはとても難しいと記載していましたが、処方を何度も見直し、結果の精度が上がりましたので初めて記載します。

金額はもちろんすべて一律ではありませんが、以前はものによってお直し金額に大きな差がありましたが、技術が安定し料金も 18,000円 から25,000円税別くらいの範囲でできるようになりました。

肩焼けの度合いによって多少差がでますが、それは酷い色焼けのときはどうしても手間が増えてしまうのでどうしようもありません。ただ、これまでよりは技術が安定し料金も確定しやすくなったのです。

もし、肩の色焼けが気になるお客様がいらっしゃいましたら一度問い合わせをお願いいたします。

これまでよりも格段に技術が進歩し仕上がりの安定感が増し、ようやく価格設定ができるようになりました。  長澤祐一

現状を正直にお伝えする

以前20年在籍していた百貨店毛皮サロンでよくあったことです。

リフォームに持ち込まれた毛皮をみて「すごく綺麗な毛皮ですね~」「良い毛皮ですね~リフォームでする価値がありますね~」等、歯の浮くような言葉で受注に持ち込むということが当たり前のようにありました。もちろんうちではありません。

実際の毛皮は色焼けしたり皮も硬くなっていたりで、不安の残るものが多々あったかと思います。

その結果、仕上がりでクレームがたくさん発生します。当時私達が在籍していた某日本橋百貨店でのクレーム率は毛皮サロンのリフォームがトップでしたから。

決して自慢できるものではありません。しかし、そうなる理由があるのです。

受注を取りたいがために、状態の悪い毛皮コートを、わ~綺麗なコートですね~といって受注を取るのです。

当然、条件の悪い毛皮コートのリフォームを受けるわけですから良い仕上がりになんかなりません。

しかも、実際に作業する職人さんは、受注の現場事情など分かりませんから、状態の悪い毛皮コートは、元が悪いんだからしょうがないという発想で作業をします。当然ですが良い仕上がりになどなりません。誰も、この状態の悪いコートの責任などとる意識はないのです。

しかし、素人のお客様は、受注を受けるときに、わ~ 綺麗なコートですね、、、と言われてリフォームを依頼するわけですから、素人でもわかる仕上がりの悪さに怒りが頂点に達します。

仕事のなかでは良くある話なのですが、それで高いお金を取られるお客様はたまったものではありません。私達も同じスペースにいる同業者ですので、黙ってみているしかないのです。

毛皮を本当に知る人間がこの仕事場に何人いるのだろうか?と疑問に思うことがありますが、現状仕方のないことなのです。何かのきっかけで出会うことが出来れば良いのですが、なかなか出会うことができません。

顧客獲得という意味では,このブログを読んでもらうしかなく、あまりに非効率的であり、かといって今のパターンを変えていこうとも思ってないのです。しかし、困っているお客様と出会いたいとも思うのです。

なかなかうまく出会うことができませんが、出会ったときには精一杯のことをしたいと思います。

長澤

お客様のコートの香水の匂い

今日は、毛皮についた香水の匂い取りのことについて書いてみます。

私がここで書くのも失礼な話なのです。お客様の匂いを嫌だとはいえません。

私はどうでも良いのです。問題はその香水の匂いが他のお客様のコートに移ることが一番の問題なのです。

お客様によっては、まったく香水やオーデコロンを使わない方もいらっしゃいます。毛皮にとっては最高に良い状態を保てます。しかし、そんな方のほうが少ないのです。私の家内も毛皮を扱うようになってから、まったく香水等はつけなくなりました。

例えばですが、香水だけならまだ良いのです。これに毛皮についたカビも一緒に混ざるのです。

カビなんてと思うかもしれませんが、ご自宅で長期保管をされるケースでカビがつかないものは珍しいのです。以前、毛皮好きの知人と話したときに、私はかび臭いと判断しましたが、その方は、これがいつもの毛皮の匂いだと言いました。それくらい、自宅保管では簡単にカビが付きやすいのです

そこに香水の匂いと混ざるのです。決していい匂いであるはずがありません。私はカビの匂いはすぐにわかります。しかし、毛皮を良く知るひとでも、このカビの匂いが普通にあるために、これは特に変な匂いだと感じないのです。

以前、ロシアから臭気ブロックという薬品を購入しましたが、当初なんか嘘っぽく感じて信用していませんでした。それが、一度、匂いのきついコートに使ったら、すぐに効果は出ませんでしたが、数週間経つと、驚くほど匂いが取れていたのです。ロシアは戦争では大きな問題を起こしていますが、さすが毛皮大国ロシアでの薬品効果は凄かったのです。

匂いは、前回の肩の色焼けと同じで、比較しずらいのです。個人差が大きく影響します。

それでも、気になるという方は、一度お問い合わせしてみてください。

あくまで匂いは個人差がありますが、その個人差を超えて酷い匂いのときがあります。

何かしらお役に立てるかもしれません。  長澤祐一

毛皮の黄ばみ取りと肩の色焼けについて

久しぶりの投稿です。

もう何十年もこの毛皮の仕事をやってきて、なかなか解決できなかったことがあります。

今日のタイトルにある、白っぽい毛皮の黄ばみを直すことと、古いコートによく見られる肩やエリの変色です。

ここ三年くらい、染色を自分でやってきてようやく染色そのものの理屈がわかってきて、ここ二年くらい黄ばみ取りを勉強していました。

以前、インスタグラムでロシアのユーザーがサファイアミンクやシルバーフォックスの黄ばみ取りをしている投稿があり、お互いにフォローバックし合っていたこともあり、その薬品を教えてもらうことができたのです。さっそく、ロシアの業者に手配してウクライナ戦争が始まる前に手配して入手しました。

その薬品を仕入れてビデオを送ってもらっても、なかなか信用出来ずに使えなかったのです。

しかし、染色技術そのものを勉強したことで、以前送ってもらった動画の意味や薬品の使い方が理解できたのです。

今日の投稿では黄ばみ取りについて少しだけ解説してみます。

ロシアでやられていた黄ばみ取りは、実際には黄ばみを取るというよりも、青みを付けて黄ばみを消すという手法です。ですから、例えばサファイアミンクやブルーアイリスミンクのような青みのある素材には有効です。しかしホワイトミンクのような、真っ白のものが黄ばんだ場合は難しいのです。

ホワイトミンクについて少し解説しますが、もともとのホワイトミンクは完璧な白ではありません。特に現在の鞣し上がりのものは、ブリーチ処理をしてからホワイトニングと呼ばれる青みをつけるような処理がされています。詳しくはわかりませんが蛍光色のようなものかもしれません。

そのため現在のホワイトミンクは外でみるのと太陽光で見るのとではかなり発色の違いがあります。太陽光の下でみるほうが綺麗です。

ホワイトと言っても、このように加工処理された白ですので、黄ばんだものを直すのも難しさがあります。

ですから現時点でホワイトミンクやホワイトフォックスの黄ばみ取りは難しいのかもしれません。少しだけ青っぽくして黄ばみを消すという手法しかありませんが、真っ白ではないのです。

下に画像も載せますが、サファイアミンクやブルーアイリスミンクのもともと少し青みのある素材に青みを足すという手法は有効です。

以前、やはりロシアの業者さんなのですが、バイオクリーニングという手法でクリーニングして白さを取り戻すという動画や写真をみたことがありますが、それはまだ私には解明できていません。

例えば、国内でも販売されている5クリーンという洗剤のようは漂白剤のようなものが市販されていますが、バイオ?酵素?の力(よくわかっていません)で白さを取り戻すことを目的とした毛皮専用の薬剤があるのかもしれません。

そのバイオクリーニングをした状態で黄ばみを取ってから青みを付けると新品のような白さになるのかもしれません。

ただし、鞣し屋さんがやるブルーイングは蛍光剤のようなものらしく、ただ青味をつけるのとは違いがあるのかもしれません。

今日の本題の黄ばみ取りについて少しだけ解説しますが、毛皮の染色には酸性染料を使ったものと酸化染料を使ったものがありますが、今回私がやった黄ばみ取りは黄ばみを取るというより、サファイアミンクなどのもともとあった綺麗な青味を足して黄ばみを消すという手法です。

染料は酸性染料を使っています。酸性にすることにより染料が素材に着色しやすくするというものです。但し、ここで難しいのは通常の染色はお湯のなかで60度くらいで染めてますので原皮の状態で染色されています。

毛皮クリーニングもそうですが、今回の難しさはすでに商品化されたものの染色をするというところにあります。

通常は、染色浴のなかにギ酸を加え染料を入れて色を付けますが、その手法ができません。ですから、濃い色の染色は難しいのですが、うっすらと青味を加えるということに限っては出来るのです。

今現在は、なかなか毛皮を着用していただくことも少なくなりましたが、毛皮の状態もよく色だけ黄ばんだものならば黄ばみ取りが可能です。料金は、素材の状態によりますので一度現物の確認が必要になります。適当なことは言えませんので、一度お問い合わせください。素材の状態によっては無理なもの、費用をかけても本来の価値に戻せないものもあります。明確に回答できず申し訳ありません。

写真の右側がもとの黄ばんだ状態で、左側が黄ばみを取った状態です。

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次回は肩の色焼けについて書いてみます。

初期採寸と仮縫い

受注を受けて採寸をして 仮縫いまでに痩せられるお客様がよくいらっしゃいます。

もちろん痩せることは悪くないのです。ただ、初期採寸に従って一回目の仮縫いトワルのパターンは作られています。そのため、トワル仮縫い時に、おやっと思うことがあるのです。

お痩せになられましたか?と聞くと、そんなことはありませんとおっしゃいます。しかし、よく聞くとジムに通われたというようなことが少しずつわかります。

女性の微妙な気持ちが会話に現れます。体型は明らかに変わっていらっしゃるのです。

それでも、変わったとはなかなかおっしゃってくれません。

作る側としたらワンサイズ以上痩せた場合、特にお太りになられていらっしゃる場合には簡単にワンサイズ以上サイズが変化します。初回打ち合わせ時の採寸から場合によっては数か月経過した後に仮縫いになるケースもあり、大きく体型が変化されるケースがあるのです。

これをうっかり見逃して、お客様の言うとおりに信じてサイズダウンをせずに作業をすすめると大変なことになります。

この辺が、リフォームにしてもオーダーにしても難しいのです。

仮縫い時には、夏場であっても当然ですが、冬の装いで試着をしていただきます。

そうすると、なかなかお痩せになられたことに気付かずに作業が進んでしまう可能性もあります。

ここはやはり、しっかりと体型変化を観察し、何気なくお痩せになられたかを聞いたりしてみる必要があるのです。最初は痩せてないと言われても、何度か聞くと実はジムに通い始めたというようなことが分かります。

場合によっては、バスト・ウエスト・ヒップくらいは採寸しなおすケースもあります。

単純にお客様の言うことを信じてしまうと大変なことになるからです。

私のところではパターンから毛皮作成まで私がやりますので、気付くことが出来ますが、パタンナーと毛皮制作者が別の場合には、お客様の体型の変化に気付かずに仮縫いが終わってしまうことがあります。

しかし、それは特別なことではなく、分業は普通のことで、今回のようなケースが見逃されることもかなりの確率で発生するのです。

大量に作ろうとすれば、分業は仕方のないことで、拘ると量が作れないということになるのです。

長澤祐一

二人でいる意味 二人がいる価値

今日は分かりにくいテーマですね。

二人とは、私と当社デザイナー(家内)です。

先日もあったことですが、お客様とラインや電話でやり取りして、お客様から良い反応をもらいます。

ここで、よくあるのが、、私にとっては楽に進むことができるお客様からの提案でしたが、それでも家内からは、一般的にはこうだ、、または、こっちのほうがお客様には良い、、と考える場合があり、ほぼお客様からは良い感触の意見をもらっているのに、それでも、念のために伝えるべき情報として伝えます。

私にとっては作業しやすい方向に進んでいるので、私一人なら、さらに私が知りえない、女性ならではの意見であればそのままスルーしてしまうところです。

そして私のなかでは、ついこのまま楽にスムーズに作業が進むと思うと、なかなか新たな提案は、私であっても難しいものです。

しかし、デザイナーも一歩も引きませんので、結果、振出に戻ることもあるのです。しかし、それはお客様にとっては利益になることが多く、決して、お客様が良いといったからそれでよいというわけにはいきません。

他社さんがどうかは分かりませんが、私達技術職にとって目指す仕上がりの方向が楽だと判断した瞬間に余計なことは言わなくなるものです。誰しも楽な仕事を仕上がりよりも優先させてしまう場合があります。

もちろん二人が楽な方向を選択してしまうケースもありますが、当社での打ち合わせは、お客様がいないところでも戦うというか、話し合います。

それが、パショーネの高いレベルをキープする大きな要因となっています。

これは出来そうでなかなかできません。

もちろん、作りの部分で私が手を抜くことはありませんが、デザイン的なことで考えると楽に作業が進む場合と苦しむ場合があります。そのときに知らず知らずのうちに自分の楽な方向を期待してしまいますが、デザイナーがしっかりしていれば、作りの効率よりもデザイン効果が優先になるのです。

今日のテーマの、二人でいる意味、二人がいる価値、、とはそのことです。

つい、効率が優先されがちですが、どんなにファッションを知っていて、ご自分のことを知っていらっしゃるお客様でも、プロではありません。決定する場合に、一般的には、、とか、本来は、、こうです、、とかいうことが意外に大事だったりします。

それともうひとつ当社デザイナーがやることは、お客様を緊張させないということです。簡単そうですが難しいことです。わたしなど自分が緊張してしまって、お客様に緊張させないことなど忘れてしまいます。いつも思いますがさすがなのです。アトリエや三越本店で接客させていただいたことのあるお客様はきっとご理解いただけているかと思います。

川越まで、なかなか遠くてご来店いただけないですが、決して無駄な時間にはなりません。一度相談してみたいなと思っているお客様がいらっしゃったら是非、お声がけくださいませ。

長澤祐一

東レacs3Dは使える道具

3Dシミュレーションというと、きわめて現実に近いものを表現する、、、そんなイメージが強いですね。

最近使いながら思うのです。東レACSさんの3Dの地味な凄さをです。

これまで何回か書いてますが今日は書ききれていない分を補足します。

きっと興味のない人にはつまらないかもしれません。

しかしです。すごいです。

良くあることですが、出来上がったパターンを何度も修正しても、なんか上手く行かないことがあります。

そんな時に初めに戻ってエリとかを外して身頃だけ、しかもかなり原型に近いところまで戻ってチェックします。

そして少しずつ違和感のある部分を修正していきます。

その後、エリとかを付けて確認します。

そうすると、何故か全体のバランスがとても落ち着きます。

私のように洋服全般、ファッション全般を知らなくても、基本的なラインを3Dボディに着せ付けて、理屈はわかりませんが気持ちのよい雰囲気に仕上げます。

もちろん、ボディの肩からどのくらい離れると実際のフィッテングにマッチするかなど経験は要るかもしれません。

しかし、真剣に取り組めば必ず自分の向かう方向に導いてくれます。

そしてシンプルに原型に近いところまで戻って身頃を確認し、そのうえでディテールを付けていくと、綺麗にフィットするというか落ち着きます。

何度やっても上手く行かずに、一度原型に近い、もちろん原型ではありませんよ、あくまでディテールをなくしてという意味ですが、そこに戻って修正できると凄くたすかります。と簡単にいいますが、これを現実にやるとなると、相当の時間やトワルを組み立てる時間がかかります。それがないのです。凄くないですか?もちろん時間はかかりますがトワルを組む時間を考えたら微々たるものです。

これまでどれだけ、時間やトワルを無駄に使ってきたかと思うと、凄いことです。

例えばですが、気になった個所がトワルにあっても、どれだけやり直しが出来てましたか?

やり直せば確実に何時間もかかります。もしかして、なにも問題がなかったという結果も想像できます。そんなときに、もう一度修正をしてトワルを組み直そうという勇気が持てますか?

今回はいいや、時間がないから諦めよう、、、と思う局面が何度もありませんでしたか?

でも、このソフトでは諦めず再度点検してみようと思えるのです。

もちろん時間がゼロではありません。経験もひつようです。

それでも、以前よりも、どうしようか?やり直そうか、このまま先へ進むのか、と迷う時間、、、そんな無駄に迷う時間はなくなりました。

実際にトワルでやる再チェックは一回で終わらない可能性もあります。再チェックが駄目だと、ここまで使った時間とこれからやり直す時間を考えると呆然となります。

それがソフト上でほぼ解決できるのですからすごいです。

これまで私がやった仕事では、このソフトを使った成功率はかなり高いです。仕事に安定感が生まれました。

動画で芸術的に見せる、魅せる ソフトとは違います。

しかし、パタンナーがチェックしたい部分を的確に表現してくれます。

一旦チェックしたものの完成度、落ち着き感はすごいものがあります。

ただし、これまでの常識は捨てなければと考えます。

いろんな意味で、3Dに合った考え方を自分から変える必要があります。

生地だったらこうなるのに少しも同じにならない、、、などと言っているうちはいつまで経っても3Dを上手く使いこなせません。

これまでの経験を3Dに合わせていく必要があるのです。

そうすれば、きっと使いこなせます。

まずは、3Dで現れる違和感と現実のトワルで現れる違和感の表現の違いを細かくチェックしていくのです。

そうすれば、必ず3Dにでた違和感が理解でき、実際の生地にでる不具合を調整できます。

生地でドレーピングしたものと3Dとの現れ方の違いを学べばいいのかもしれません。

いずれ東レさんも、こんな場合は3Dではこんな感じに不具合が表現される、、というような指標または見本のようなものがでるのかもしれません。そうなれば素晴らしいですね。

今後の開発に期待しようと思います。  

実物のように正確に表現する3Dとパタンナーが求める3Dは似ているようでまるで違います。

パタンナーは3Dトワルをみて、実際の生地ならこんな感じになると頭の中で変換できるはずです。

ですから、超リアルじゃなくていいんです。リアルであることよりもバランスをチェックするための3Dソフトなはずです。

私は、迷ったとき、悩んだ時は 今回書いたように身頃の原型に近いところまで戻ってチェックします。すると、いままで何かおかしい、、と思ってたところが落ち着きます。パターンがプロではない私がここまで使うことができます。専門家ならもっともっと活かすことができるはずです。

そして、これからという人にも必ず役に立ちます。これからの人は、先に3Dから形を学び、その結果を実物で学ぶというように、私なんかとは逆になるのかもしれません。

私の仕事も、東レACSさんと出会って新しい局面が見えてきています。きっと地味な開発のはずです。煌びやかな3Dに注目が行きがちです。でもすごく大事なことを東レACSさんはやってくれてます。アパレルという土壌をもった組織だからこそ、この地味なソフト開発に力を傾けられるのだろうと感謝しています。

例えばですが、仮に今、この東レacsさんの3Dソフトがなかったら私の仕事の質は、かなり落ちるか時間がかかっていると思います。導入して4年くらい経ちますが、このソフトなしでは大変なことになります。仕事の精度やかける時間が大きくかわり、もう逆戻りなんかできません。一般的なパターンを作成するCADと同じです。また一から線を手引きすることなど考えられません。

最近、ある動画編集ソフト会社さんからレビューを書いてくれないかという依頼がありました。

書くのは仕事ではありませんから、本当に使ってみないと簡単には書けません。あたり前のことですが今日書いているのは自分なりに使ってみての東レACSさんの評価です。機会があったら是非、一度トライしてみてください。

いつもトワルを組んで、上手く行かずに、もう一度パターン修正をして組み直すのか、このまま先へ進むのかと毎回悩んでいる人には本当に使える道具です。サポートもすごくしっかりしてます。

長澤祐一

プロなのに、

ここのところ弁護士、税理士さんに会って相談ごとをする機会がありました。

今日はプロなのに、、という話です。

怒られるかもしれません。私が細かいのかもしれませんが、対応が今ひとつなのです。相談するために資料を先に送っても先に読むこともなく、無駄な時間を使うことや、確認事項を聞いてもネットで調べてすぐに出てくることがわからなかったり、頼んだ相手が悪かったのか、少しも解決しなかったり、わからないことが多く、後からネットで調べて、なんだ簡単に出てくるじゃないか、、、というようなことがほんとに多いのです。

これでプロなのかな?とほんとに思います。

以前、私達の技術職の仕事では出し惜しみができない職種であることを書きました。

各先生方が情報の出し惜しみをしているのかもしれません。しかし、出し惜しみには感じませんでした。明らかに不親切、または能力不足ということが多かったのです。

能力不足や不親切は、ときに害になることもあります。

私達が打ち合わせを大事にする理由は、提案力次第でお客様の望むもの、または望む以上のものが出来上がるからです。

どんなに私が綺麗に作っても、それがお客さまが本来欲しがっているもの、またはお客様の考え以上のものを提案できない限り意味がありません。

もちろん作りは大事なのです。しかし、提案力もそれと同等に価値があります。

私のところはデザイナーとお客様の三人で必ず打ち合わせします。私一人で対応することはありえません。たまたま休みだからなんてこともありません。それくらい三人での打ち合わせが大事だからです。

男性が対応するお店や工場もあるでしょう。でもはっきりいって疑問です。

女性の洋服に対する知識や着用場面、さらにはコーディネート等を考えれば、デザイナーに相当な知識が必要になります。

どんなに男性が勉強しても難しいと私は思います。仮に女性であっても、この提案やアドバイスができるのはほんの一握り、、、いやもっと少ないと思います。叱られるかもしれませんが、当社デザイナー以上は私は知りません。

いいんですよ。自分で判断されて好きなものを買うのは。しかし、ファーの場合、なかなかいろんな場面を想定したり、毛皮の素材感を考慮した提案をすることは簡単ではありません。

今日のテーマのプロなのに、、、最初にでてきた諸先生方のことを考えると、万が一でもこの諸先生方と私達が同じレベルであることなど許されません。

とにかくお客様のためにどうあるべきかを常に考えることが私達が私達である最大の目的です。

まだまだ、ほんとうに足りないと感じます。時間は以前よりもあるはずなのに、まだまだやりたいこと、、お客様にして差し上げたいことが完全ではないのです。

この記事をどんな方が読むのかはわかりません。しかし、何かしらの仕事をしているならプロとしてどうあるべきかを考えてみてください。

私達が生き残ってきたのは、私の絶え間ない技術開発もひとつですが、当社デザイナーのお客様に寄り添った考え方と提案力、これが全てです。仕事さえしてればプロであるという意見もあるでしょう。

しかし、そのプロではありません。プロらしくありたいのです。

本当にプロであり続けることは難しいです。  長澤

たった一回のこと

投稿間隔が短いですが、書けない時期が続いたので書けるときにはアップしておこうと思います。

昨年、ホームページをリニューアルしました。その時にどんなホームページにしようかととても迷ったのです。

自己紹介を載せることを家内が要望を出し、業者さんへ依頼したのです。

ところがです。業者さんがいうには、何か業界で賞をとったとかがあればと言われたのです。まっ、ここはすぐ誤解が解けたのですが、何か賞でもとらないと自己紹介も書けないものかと、その時には思ったのです。

そんなことはないはずです。自分なりの紹介コメントやページにすればよいはずです。特に自分を膨らませることもなにもなく当たり前のことを書けば良いはずです。

そう思いながらいろんなところを見てみました。以前から知っていたところも含めて再度確認をしたのです。

そんな中で良く目にしたのは内容は書きませんが、自分を大きく見せることばかりが羅列してあり、これでは逆効果では?と思うものが結構ありました。

自分をよく知ってもらうことは大事です。しかし、必要以上に大きく見せようとする記載がときどき見受けられました。

実は、私が昨年グーグルのリスティング広告を初めてやってみたのですが、その時にも、特に業者さんにクレームはつけませんでしたが、職人歴30年の技術者と謳われたのに冷や汗をかきました。

他のホームページでも職人歴45年だとか書いてあるところもたくさんあり、よくありがちなキャッチフレーズでした。

私達の仕事が業歴が長ければよい商品が作れるなら良いのですが、毛皮の業界にあっては業歴の長さと商品の良さとは比例しません。もちろん業歴で言えば40年くらいはやっているわけで、それでこんなものかと思うと、とても業歴の長さなど書けません。

以前、驚いたことがありますが、そこそこ有名なデザイナーさんが、某国内有名ブランドに在籍していたことを書いて、某国内有名ブランドさんから裁判を起こされ、結果は負けなかったようなのです。

しかし、負けなかったとは言え、事実を知れば結構恥ずかしい話です。某ブランドへ在籍していた期間は2~3ヵ月だったと聞きます。たかだか2ヵ月程度の在籍でそのことを自分の略歴として謳うのであれば、それじゃ訴えられても無理はないかな、、、とも思います。

ちなみにその某デザイナーさんが、私達と一緒に某有名百貨店の毛皮の展示会に出たことが一度ありました。そのたった一回出たことを会社業歴プロフィール欄に大きく書いてあるのです。

今日のタイトルの たった一回のこと というのは、このことです。

私のところなんか恥ずかしながら、某百貨店に20年在籍して辞めてから、やっとのことで業歴として記載させてもらったところです。これだって散々悩みました。

そんなことを知ると、そのデザイナーのホームページに記載してあるたくさんのことが、なんか薄っぺらく感じてしまいます。

ただ、知らないユーザーからみるとすごいな~ということになるのでしょうね。

しかし、そんなところに惹かれてしまうような方は、私達の顧客にはなりません。

よく、雑誌掲載記事もたくさん載せているところもありますね。

すべてがそうではないと信じたいですが、私もブログを始めたばかりの10年くらい前ですが、結構たくさんの取材の申し込みがありました。知っている人もいらっしゃると思いますが、その大半が取材といっても、お金を取って記事を掲載するというパターンが多く、そのなかにはそこそこの有名人がきて取材します。そのかわりお金がかかります、、、というのもあり、取材という名目の相手にとって都合のよいビジネスなのです。

私のところが他と同じようにやることは残念ながらありません。

そんなことをしたら、せっかくの商品力が薄っぺらくなってしまいます。必要なことは伝えますが、余計なことを伝えて商品の価値をわざわざ、落とそうとは思いません。

しかし、ぱっと見のインパクトというか、そんなものにもつい頼りたくなるというのも本音です。今現在はネット上でも、これまでにない本当の信頼関係を築けるようにと考え模索しています。

それにしても、ネットで商品や自分を表現するのは難しいと感じます。

長澤祐一