毛皮の褪色の直し方と島精機SDS-ONEの使い方

今日は前回の記事の島精機SDS-ONEのPassioneの独自の使いかたも含めて退色した毛皮の色を補色して、限りなくもとに近い状態に戻すときの色の構成を探す方法を少しだけ書いてみようと思います。以前書いた記事ではレスポールスタンダードというギターの退色と毛皮の退色が似ていることを書きましたが、今回は、その退職した毛皮の色を元に戻す方法を簡単に説明してみます。

以前は退色した赤を薄く補色することで元の色に戻そうとしていました。濃い色なら、それで近い色に戻っていましたが、薄い色になると、赤を単純に薄く補色しただけでは元にもどらないことに気付き、SDS-ONEのグラフィック機能のなかにモニターキャリブレーションがあり、そのカラーセンサー機能を使って色の構成と構成量のバランスを調べることにしました。

その後、その構成色に対して赤を強めにした色をモニターで確認し、 (さらに…)

島精機SDS-ONEの問題点

弊社アトリエでは島精機のSDS-ONEというCADとCGの専用機(コンピュータ)を入れていますが、今日はこの島精機のSDS-ONEの問題点について書いてみます。

島精機が作ってきたグラフィックコンピュータは10年前であれば、誰もが羨むような超ハイスペックな専用機でした。私も、もう25年以上も前にこの機械が欲しくて、ずっと展示会ごとに見続けてきていました。

おそらく、11年くらい、この機械を入れてから経つでしょうが、最近の一般のコンピュータの進歩はすばらしく、10年前くらいに登場したときには誰もが羨むような、グラフィック専用メモリーを装備して登場した、この機械ももう、すでにコンピュータとは言い難いような古いものになってきてしまいました。

私は、島精機の社長が30年くらい前から (さらに…)

脂以外の劣化について

これまで、毛皮の皮の部分の劣化について、常に脂と湿気が大きく関わっていると書いてきましたが、今日はそれ以外の劣化について書いてみましょう。

以外に知られていないのが、毛皮の毛の量が少なく地肌が見えてしまう部分に使う染料が劣化に関わっているということです。理由はわかりませんが、これまでの私の経験でいうと染料でが入った部分が劣化しているケースが意外に多いのです。

染料はいろんなタイプがあり、水で溶くものやアルコールで溶くもの、さらにはすでに液体になっている等があります。

私は、ほとんどの場合浸透性の良いアルコールを使います。アルコールもメタノール、エタノールとありますが、メチルは身体に害があるので使いません。

基本的にはエタノールを使いますが、 (さらに…)

モデリストI氏の言葉

以前、当ブログで「モデリストの技術(テクニック)」という記事を書きましたが、当時、I氏はこんなことも言ってました。

紳士服において、袖付がとても重要な部分で、I氏が当時何と言ったかは明確に覚えていませんが、ある袖の形に対して、多分イタリアの工場のことを言っていましたが、日本の工場では、とても雰囲気をだすのが難しいある袖のかたちが、その工場で常に均一に仕上がってくると。

そして、重要なのは、そこに優秀な職人さん(技術者)ばかりがいるのではなく、あくまで一般の工場に勤める人達で縫われているんだと。

当時、I氏は、”すごいよな~~あの袖が、普通のラインで出来上がってくる。特別優秀な技術者ばっかりで縫っているわけでない。それがすごいことなんだよ。日本じゃできないな、あれは。あれが、技術だよな”

と、彼が目指している技術というものがそこに、まさにあると言わんばかりに思いにふけるように、それを言ったきり、ふ~~~っとため息をつき、黙ってしまったのを覚えています。

その当時は (さらに…)

当たり前のことをこなせない技術者

敬愛するとても優秀で高い感性をお持ちの職人のSさんとゆう方がいらっしゃいます。先日、そのSさんから電話を頂きました。

「長澤さん。あの毛皮屋さん知ってる??聞いてよ、お客様がコートもってきてさ~、そこで技術は日本一と言われたその毛皮屋さんでリフォームしたらしいんだけどね、袖にベッタリと芯を貼ってるんだけど、糊で豚皮貼ってるんだよ。やっと剥がしたよ。それにしてもあり得ないよね~、豚皮なんて、、ガチガチでさ~~ロボットの袖みたいだよ。。。」

なんて会話をしました。

私もつい先日、お直しをしたお客様のコートを開くと大きく接着芯が貼ってあり、何故こんな必要もないところにと思って、恐る恐る剥がしてみました。 (さらに…)

毛皮の皮の劣化(方程式)

先日、お客様のコートの袖が切れてしまって直してほしいという依頼がありました。開いてみると、確かに皮全体が少し硬くなってきていて、避けている部分は特に劣化が進んでいました。毛皮の皮の劣化は、簡単にいうとこんな方程式になります。

皮の劣化は皮の状態 X 保管状態 X 時間=劣化

劣化はほとんどの場合、少しずつ進みます。上に記載した方程式でもわかるように、着用の度合いはあまり関係ありません。着用によって痛むのは皮ではなく、毛そのものが傷みます。皮が劣化したことで切れてしまったものの修理はとても難しいのです。

一般的には荒目の縫い目で縫ってしまい、表から芯をベタッと貼ってしまうのが職人さんの考えがちなところです。しかし、それでは柔らかさという毛皮本来の風合いはなくなり、厚紙のような手触りになってしまいます。

弊社のアトリエでは、こんな場合はどうするかというと、 (さらに…)

毛皮クリーニングの問題点

やっと、昨年のものが終わり、ようやく新しいシーズンがスタートします。せっかく立ち上げたブログも二か月手つかずになっていました。

昨年始めたブログを読んで、お問い合わせいただいた、大切なお客様の大半がシーズンに間に合わず今シーズンまでお待ちいただいてしまいました。そのお客様にお詫びのメールをだし、やっと、今日から、また、始めることができます。

今日は、クリーニングについて書いてみます。毛皮は基本的には水洗いができません。理由はなめしの方法にあります。レザー製品のようにクロムなめしという手法ではなく、ドレッシングという手法でなめされています。

毛皮の場合柔らかさを出すために、この手法が用いられているのですが、 (さらに…)

庄三郎(硬刃26cm)

庄三郎_硬刃 _26cm

先日、以前から使っていたタイプの新しいはさみを二本買いました。庄三郎というメーカーの硬刃26cmのはさみです。

私が、30代始めのころ、渋谷に立体裁断で有名なパターンの学校があり、そこに通い始めた来頃、そこで聞いた付属屋さんにいき、当時いくつか講習で使う道具を買いました。そこの親父さんにはさみはどれが良いか聞いたところ、これが絶対にいい!! これが最高、これ以上ないよ、、とまで言われ、それほど言うならと、素直にそれを買いました。

それが庄三郎の硬刃26cmです。これは本当によく切れ良くもちました。もう27年くらい使ってますが、先日初めて磨ぎに出しましたが、 (さらに…)

検索結果

今日はGoogleの「毛皮 リフォーム」検索で何故か?当ブログ「Fur-PASSIONE」がトップに掲載されていました。「毛皮」や「オーダーメイド」での検索結果はこれまで上位になってはいましたが「リフォーム」では初めてのことで吃驚しています。

当ブログを2012年5月から開始しましたが、当初はアクセスもほとんどなく、書く内容もどのくらいの内容を書けば良いのか、読んでもらえるのか迷っていて、そんなときに「にほんブログ村ランキング」のヘルプの中に注目記事ランキングに関わる記載で・・・

ブロガーであるメンバー様には、ご自身のスタイルを守り、ご自身が書きたいことを、書きたいときに、書きたいように、書きたいだけ書くという大前提の中で、とにかく他の読者(閲覧者)の方が興味や関心を持つ記事、共感を感じる記事を投稿していただくことや・・・

とあり、旧友の助けもあり、悩まず吹っ切って書いていこうと、このブログを続けてまいりました。

ブログ開始時期は、何ページめくってもパショーネ(弊社)の名前が出てくることはなく、 (さらに…)

毛皮の毛先

今日は毛皮の毛先について書いてみます。先日のブログで回転アイロンを使ってシェアードやプラクトミンクがとても綺麗になることを書きましたが、アトリエではミンクやセーブルのような繊細な刺し毛をもつ毛皮は回転アイロンをかけません。その理由は、回転アイロンによって、わずかですが刺し毛の先が切れてしまうからです。

ビーバーやヌートリア、またはその他、刺し毛が硬く太いものは、そう気にすることはありませんが、ミンクやセーブルの刺し毛は繊細ですのでローリングアイロンはかけることは一切いたしません。以前にローリングアイロンを買ったばかりのときに何度かかけて毛先を切ったことがあるので、その後はかけておりません。

弊社アトリエで使っている回転アイロンの刃先はすでに仕上用として丸く削り磨いてありますが、 (さらに…)