一番良いチンチラはブラックベルベット??

 

今日はチンチラのブラックベルベットと普通のタイプの違いについて書いてみます。

チンチラは毛質の等級とキャラクターの濃さの等級でランクわけされています。

キャラクターの濃さはXD(エキストラダーク)・2XD・3XDまであり、ブラックベルベットを3XDの中に入れるか単独で扱うかは生産者によって違いがあるようです。

まず等級わけについてですが、なんといっても毛皮は自然のものなので、計測したようにぴったりに分けるわけにはいかず、あくまで人間が見たり触ったりして判断して分け、バンドルにされています。写真にある半裁のチンチラマフラーは2XD(ツーエキストラダーク)くらいランクのもので作られています。

この2XDよりも更にキャラクターが濃いものに3XDやブラックベルベットと呼ばれているタイプがあります。これはキャラクターが真っ黒になっており、価格もそれなりに高くなります。

そして、この3XDやブラックベルベットのようなキャラクターの濃いタイプの原皮には、一般的には知られていませんが、毛質の違う二種類のタイプがあります。一つは2XDをそのまま濃くしたタイプ。もう一つはキャラクターの毛質や全体の毛質がさらっとしていて毛が弱いタイプのものがあります。

一般的には2XDや3XDのキャラクターの毛の色は毛先が真っ黒で、先から3mmくらい奥でいったん白くなります。その奥は根元までグレーになりますが、ブラックベルベットの毛の弱いタイプは毛先が黒から始まって、そのまま白にならずに自然にグレーに変化していきます。さらに一般のチンチラとの違いはこのタイプのブラックベルベットとは頭まで真っ黒です。

後者のこのタイプの原皮は多くが毛質が弱く、ボリュームが少な目のものが多いように思われます。ブラックベルベットといっても、それほど綺麗とは言えないものもあります。

もっとわかりやすく言うと普通のタイプのチンチラとブラックベルベットのチンチラのタイプは元々の品種が違うと思った方が良いでしょう。

そして、全てのブラックベルベットが良いのではなくブラックベルベットのタイプにも、それぞれ品質に差があるということでしょう。

ですから、このブラックベルベットタイプの原皮にもボリュームが多いタイプもあり、それはキャラクターが濃い上にボリュームがあるので素晴らしく綺麗です。

ひとつの商品のなかに、この毛質の弱いタイプのブラックベルベットが混ざって作られていることがよくありますが、本来は通常のタイプと一緒に使うべきではないでしょう。

6月26日のチンチラの劣化の原因に載せた写真のチンチラはこのタイプのブラックベルベットではないですが、キャラクターの毛の先が黒から白に一度変化するタイプの3XDの原皮です。この原皮はとてもボリューム感があり、色のグラデーションも見事でした。

このことからも、一般的にチンチラのランク分けの中ではブラックベルベットが良いものだと言われがちですが、そのブラックベルベットの原皮の中にも良し悪しがあると言えると思います。

そして、チンチラの綺麗さを理解するうえで、もう一つ大事なことがあります。これまでキャラクターの色が濃いことが良いと書いてきましたが、それ以外にも特にキャラクターがしっかり通っていながら、キャラクター横のグレーの部分がしっかりあり、さらに腹の毛が白くて綺麗であること。この3色のバランスが良いものが一番綺麗に見えます。

ブラックベルベットの中には真っ黒なキャラクターを持っていても、太過ぎて中間のグレー部分が少なくなってしまい、ただ黒いだけで、黒・グレー・白のコントラストがなく、あまり綺麗にみえないものもあります。

上の写真のチンチラマフラーは2XDですが、この3つのバランスが綺麗にとれていて3XDではなくてもとても綺麗に見えます。このようにバランスの悪いブラックベルベットよりもバランスの良い2XDの方が綺麗に見えることもあり、一概にキャラクターの濃いチンチラが、全てにおいて良いとは言えないと私は思っています。逆に黒過ぎて汚く見えるものもあるくらいです。

下の写真はキャラクター部分の毛の色の変化です。違いがハッキリとわかると思います。次回お店でチンチラを見るときには、是非こんな部分にも目を向けてみてはいかがでしょうか。

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パショーネの真骨頂 | フルオーダーのコート

こんにちは☆スタッフ服部です。今日はパショーネの真骨頂でもある、フルオーダーのコートのご紹介です。 素材はメスのアメリカ産ブラックグラマミンク(ナチュラル)です。

ブラックグラマミンクにはナチュラルからブラック強化の間にブラックの濃度において、いくつかのタイプがあります。ナチュラルは名前の通りに、自然そのままの色味です。色としては黒ですが、茶色っぽい雰囲気があり柔らかい印象を持った色です。

ブラック強化はナチュラルの原皮の黒味をさらに強化する加工が施されており、漆黒。と言えるようなハッキリした黒色をしているものもあります。このナチュラルと強化したものは単品で見ればそれぞれが黒に見え、並べてみると違いが見えてくる・・・というくらいの違いです。

今回はお客様のお好みと、優しい雰囲気が良いということでナチュラルの原皮に決定しました。(パショーネではお客様のお好みや、肌に毛皮の色味を合わせて見た時にお顔映りの良い方を選べるようにブラックグラマミンクは常時2種類をご用意しております)

この原皮を使いデザインはウエストを少し絞ってスッキリした形に、衿はスタンドウィングカラーにほんの少しの味付け程度にタックを入れました。身頃は程良いゆとりを入れつつも袖は細身となっており、ジャケットとコートの間の子として着られるようなイメージです。 (さらに…)

毛のボリューム感

今日は毛のボリュームについて書いてみます。通常、毛のボリュームというのはその種類によって違いがあることは一般的に知られていることでしょう。今日、お伝えするのは、同じ種類の、例えばミンクに限って言えば、、、というようなテーマで書いてみようと思います。

毛皮の毛も、基本的には人間の毛髪と同じ性質を持ってます。ミンクやセーブル、フォックス、チンチラ等、ほとんどの毛皮でボリューム感を表現するのに毛量、いわゆる毛の本数がもっとも優先される項目であることは間違いがないことです。

そして、毛の一本ごとの太さも、もちろん関係しています。しかし、以外に知られていないのが、毛の根元にあるスパイラル状になったうねりがボリューム感に以外に大きく関わっているということです。

全てではないですが、ミンク、セーブルのように、より繊細な毛質になればなるほど、この根元のうねりがボリューム感をだすのに重要な役割を担っています。人でいうとアフロヘアーとストレートパーマがかかったような違いになります。

毛皮でもカラクルラムのようにすでに全体がクルクルしてボリューム感を出しているものもありますが、今回はこのタイプは除外してミンクやセーブルのような繊細な毛質のボリューム感について説明します。

同じミンクの毛でも、根元からストレートになっているものと、少しうねりのあるものがあります。同じ毛の本数が生えているとすれば、少しうねりのあるタイプの方がボリューム感が感じられます。しかし、このうねりがあり過ぎると、手で触ったときのサラサラしたシルキー感がなくなりますのでバランスが大事になります。

そしてここからが大事なことです。毛のボリューム感は毛皮の元々もっているものではありますが、3割くらいは処理の方法で調整出来ます。

先に、人間の毛髪と似ていると書きましたが、人の髪の毛が湿気の多い日には、もともとパーマっ化のある人の髪は少しずつクルクルになったりぼそぼそになったりしますが、毛皮の毛も同じで水分を吸収すると、特に蒸気(スチーム)などによって、毛の根元や毛先もうねりがでたりちぢれたりします。

この性質を利用して、毛のボリューム感を調整することができます。
もっとも良いと思われるのが、毛の本数がたくさんあり、根元が少しだけうねりがでて、毛先は真っすぐになっているものが一番、触り心地がいい毛質と言えます。

ヌートリアやビーバー等のプラクト(抜き毛加工した)した毛皮は、必ず原皮の仕上げの段階で高温の回転アイロンで毛を伸ばします。そして加工時にはそのストレートパーマがかかったような毛質を維持しながら商品にします。

しかし、元々、ぼそぼそしたタイプの毛質を無理に真っすぐにしているため、空気中の水分で徐々に表面は白っぽく、毛はぼそぼそした状態になってしまいます。ですから、時間の経ったヌートリアやビーバーなどは当初とは見る影もないほど毛質が悪くなり綺麗とは言いがたい状態になってしまいます。

このように毛質を整えるのにはスチームや回転アイロンを使用して、根元のうねりを適度にだして、毛先は真っすぐに整えるようにします。よくケーキとかで中がもちっとしていて外側がフワフワ等、そんな表現をよく耳にしますが、あんな感じです。

大事なことは、毛皮の毛も人の頭髪と同じで綺麗に仕上げることで本来の美しさが保たれるということです。そして、毛皮の魅力を熟知して、毛皮の持っている力を最大限引き出すのが作り手の大事な仕事のひとつなのです。

写真は、5月22日に掲載したデミバフミンクの毛の奥の部分が見えるように撮った写真です。毛の根元から2/3くらいが軽くうねっているのがわかります。これがボリューム感に大事な要素のひとつです。

長澤

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あたりまえのことをあたりまえにこなす

ロシアンセーブルヘビーシルバリーで作った4用ショールをご紹介いたします。以前に原皮の説明をさせていただきました。実際にあの原皮を使用して仕上がったものをご紹介させていただきます。

左右のバランス、キャラクター(背筋)の濃さ・太さ、そして原皮そのもののボリューム感、原皮のつなぎ目の自然さ(特に頭同士の綺麗なつながり)シルバリーの量とバランス、悪い部分を全て落とし不自然な毛流れが一切見当たらない等。。。このような仕上がりのものはアトリエで作ったきた中でも、なかなか見当たりません。

アトリエの理念にある「あたりまえのことをあたりまえにこなす」という、その言葉をそのまま表したようなショールです。このシンプルな形にセーブルのショールとして必要な要素が全て詰まっています。

長澤

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特殊ミシン | ハンドステッチミシン

ハンドステッチミシンの新しい投稿 ハンドステッチミシンをお譲りいたします を2023/2/11日にしました。良かったら見てください。

今日は特殊ミシンをひとつ紹介します。ハンドステッチミシンです。このミシンは通常平ミシンのように上糸と下糸があるタイプではなく、一本の糸で手縫いと同じように縫うミシンで、ハンドステッチは紳士服や、婦人服のジャケットやコート、またはカジュアルなシャツ等、最近では様々なアイテムに使われるようになりました。

ミシンのタイプでいうと二種類あり、代表的なものはAMF社のもので、それをまるコピーしたOEM機をJUKIが販売しているものもあります。さらにイタリア製のコンプレット社が作っているタイプがあり、それをコピーした中国製のものがあります。さらにもうひとつ、このタイプの中国製のミシンに重要な部分を日本製の精度の高いパーツに組み替えてあるものがあります。

今回買ったのは最後に書いた一部のパーツを精度の高い日本製に替えたタイプのミシンでした。当社では一年のなかで表生地のついたリバーシブルやライナーのコートは、たくさんは作りません。AMFタイプのJUKIが販売しているハンドステッチミシンは新品で600万くらいするらしく、費用対効果として考えるとまったくあわず、コンプレットタイプで探していました。

ネットで検索していたら、福島県郡山市のミシンショップおかだというところで、最新型のコンピュータ制御タイプのミシンがみつかり、価格もJUKIのタイプよりは遥かに安く、性能については使ったことがないので不安もありましたが、ミシン屋さんの情熱と具体的な説明に負けて買うことにしました。

AMFタイプは針を上下で受け渡しをするように作られています。コンプレット社タイプのものは針穴が鍵状になっていて、上下する度に針穴が開いたり閉じたりしてステッチを縫います。AMF、コンプレット、それぞれ長所短所があります。AMFは針の太さを替えるのに、とても手間がかかるそうです。しかし、針穴が鍵式になっていないため生地を引っ掛けるようなことはないとも言われています。

AMFを持っているところは、価格の安いコンプレット社タイプのものをあれは、駄目だとかいう記事をネットで見たり実際に人から聞いたりもしました。使ってみた私の感想を言います。糸の太さによる針の太さを変更するパーツの取り替えも、そう難しくもなく、ステッチの一回で縫える長さも60cm(AMFは90cmくらい)くらいといわれていましたが、縫い方を工夫すれば90cmは普通に縫うこともできました。

そして、心配していた糸裂けや糸切れ、目飛びもゼロではありませんが、工夫次第では極力減らすこともできます。さらに、一番心配していた鍵穴のため起こりやすい生地を針の上下運動で傷つけてしまう現象などは、まったく発生しませんでした。私たちが使う表生地のシルクはウールやカシミヤ等に比べ、とても繊細で糸引きが出やすい素材です。しかし、まったく問題はありませんでした。

以前、ハンドステッチをやっていただいていた工場では糸のテンションが強過ぎて縫い縮みがあり、もっと糸のテンションを緩くすることはできませんか?と要望を出したことがありますが、あっさり、これが限界ですと言われ、こんなものなのかとがっかりしたことがあり、今回のミシンでも糸の強さがどうなるのか心配をしておりました。

しかし、結果は、アイロンが必要ないほどの仕上がりになり驚いています。要は、ミシンを使いこなす知識とやる気があれば、大半の問題は解決できるのだと納得した次第です。

このミシンはミシンショップおかだの岡田社長と輸入元の小山ミシン商会・渡辺さんに設置から操作説明までしっかりとやっていただきました。お二人のミシンに対する情熱と知識は素晴らしく半日かけて丁重に説明をして頂きました。そのため買う前の不安は、今はなにもありません。このお二人に感謝申し上げます。

長澤

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ロシアンセーブルファームのシルバリー

ロシアンセーブルの種類のなかに養殖のファームと呼ばれるものがあります。養殖もののために原皮のサイズもワイルドに比べると大きめなものが多く傷もワイルドに比べ少なめです。

今日、写真でご紹介するのは、そのファームセーブルの中でも、ほんとに数少ないシルバリーの原皮です。通常、ワイルドの原皮には、シルバリーと呼ばれないものでも白い刺し毛が少しだけ混ざっているものがよくみられます。

しかし、ファームはワイルドに比べると白い刺し毛が混じるのは、ほんの僅かです。そのファームにも、ほんとにまれに白い刺し毛がワイルドのシルバリーのように綺麗に入るものがあります。

一般的によくみかけられるのは頭の一部分に不自然に入っているものが多くありますが、これは白い刺し毛が入っていたとしても、逆に価値がさがるくらいで、あくまで写真のようにバランスよく入っていることが重要です。

ワイルドのシルバリーもそうですが、なかなか同じタイプのシルバリーを揃えようと思っても、相当な枚数を仕入れてシルバリーのタイプやカラー、サイズ等を揃えるか、毎年でてくる同じタイプ(色、シルバリーの量等)シルバリーを根気よくストックしていくかしか、コートのバンドルにすることが出来ません。

この写真のファームのシルバリーも、何年もかかって集めているものです。まだコートを作れるほどはありませんが、ボレロからジャケットくらいなら作れるかもしれませんが、全て同じシルバリーのタイプとはいきませんので、もう少し枚数が増えるのを待っているところです。

このようにセーブルのシルバリーでガーメントを作ろうとすると、ワイルド、ファームどちらにしても原皮を調達するだけで、とても大きな労力が必要とされます。

資産を何年も寝かすという意味ではワインや他の熟成タイプのお酒に少し似たような部分もあるかもしれません。それだけ、一般のセーブルの商品と比べるとシルバリーのセーブルで作ったコートは価格や価値そのものが上がるのは必然なのかもしれません。

長澤

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シェアードミンク・ハーフコート(ダークブルーグリーン)

こんにちは、スタッフ服部です。北陸地方までの梅雨明けが発表されましたね。一気に気温も30℃を超えて・・・夏本番!という感じでしょうか。毛皮にも、アトリエにもツライ季節がやってきますね(アトリエ内はアイロン等の設備の為に気温上昇中…(´Д`;))熱中症の報道が増えておりますし、皆様も体調管理にはお気をつけくださいませ。

さて、そんな今日も新作コートのご紹介です。先日のバイカラーのコートに続き、こちらも新色☆ダークブルーグリーンのシェアードミンクコートです。名は体を表すという感じの色ですが(笑)深みがありながらも暗くなく、青と緑が絶妙な加減で共存しています。

英国王室のオフィシャルカラーのロイヤルブルーという濃い青色が有名かと思いますが、ロイヤルグリーンとか・・・・・・例えても良さそうな、そんな気品ある色になりました。

デザインとしては、上につまった感じの甘めのテーラーカラーと前端&ポケット部分に付いている装飾パーツが特徴でしょうか。衿の丸みやフラップポケットの存在が可愛らしくありますが、色と装飾パーツが甘みを抑えており<ちょっと甘口or辛口な要素を取り入れたい>という方にオススメなコートに仕上がったと思います。

着丈も75cmと一番着やすい丈になっておりますので、ワンピースやスカートと合わせたり、シャツ&パンツスタイル等のカッチリ感を出したコーディネートにも幅広く使えるデザインになっております。

一般的なテーラーカラーよりも、衿つけの位置が上になっていますので、それが少しは防寒の役割も果たしてくれるかと思います(*´∀`)v

寒い季節のアウター等は無難に白・黒・茶・グレーなどを選びがちですが、このような色から色味と華やかさを取り入れてみてはいかがでしょうか。

服部


シェアードミンク・ハーフコート(ダークブルーグリーン) sheared mink half coat (dark blue green)

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毛皮の軽さと柔らかさ

毛皮を軽くする方法はいくつかあります。一番、簡単にトライすることができるのが、付属を出来るだけ軽いものにすることです。ケスカも純正のケスカは金属で出来ているので、個数は増えると結構重みがあります。同じ形で金属以外の素材で出来ているものがありますので出来るだけ軽いものを使用します。

さらに以前は毛芯とかを使っていたのかもしれませんが、今は軽さを考え別の素材を使うことが多いかもしれません。

コートの中に以前はシルクオーガンジーのようなものを毛皮の裏全面にはって、毛皮の縫い目のあたり止めや型くずれ防止の為に使用していましたが、縫い目もあたりの出ないような薄い縫い目にしたり、型くずれのしない作り方をすればオーガンジーをはる必要はありません。

裏地の選択も以外に重要です。毛皮でよく使われているキュプラとアセテートの混紡のものがありますが、これは以外に重い感じがします。匁数にもよりますが、シルク系がやはり軽いです。

二つ目は、皮の厚さの問題です。なめし上がった毛皮の皮を再度、なめしに出します。そうすると一度では絶対に出来ない皮の薄さと柔らかさが得られます。

一回目に、しっかりと皮をすけばよいと経験のない方は考えてしまうかもすれませんが、何故か二回なめすということをしないと本当の柔らかさと薄さが得られません。もちろんこれは私の経験でのことです。何度も試した結果はやはり再なめしの効果は絶対的に大きいと感じています。

さらにその皮を私たちは独自の機械で、皮の表面を毛根が出るギリギリまですき、皮の表面の繊維の一部を壊すことで軽さと柔らかさをさらに引き出します。但し、全てが同じように薄く鋤ける訳ではありません、ミンクの場合はオス、メス、サイズの違い等でそれぞれに限界があります。

そして皮の最終的な状態も、毛流れが縦の場合は、縦横比6対4くらいで仕上げます。これによってコートの型くずれも起きずに毛の美しさもそごなわずに仕上げることが出来ます。

横流れの作りの場合は、また少し皮を張るバランスが変わります。

そして最後に脂を抜く方法があります。これは専門の機械で溶剤の中に毛皮をつけ脂を抜く方法があります。しかし、これだと、脂の抜き加減が難しく全てが抜けてしまいますので、私たちは手間はかかりますが少しずつ抜く独自の方法で行っております。

これによって、脂の量をしっかりと調整し、軽さと柔らかさ、さらに毛のさらさら感を出します。この方法を使うと毛皮をドラムのなかで動かしながら脂を抜き、乾燥させるために毛皮本来の柔らかさがでるのです。ただ、溶剤に浸けただけでは柔らかくはなりません。

20年くらい前に、仕上がったコートをドライ処理をしてカラカラの状態にして、軽さと柔らかさを出した時代がありました。

この手法では、コートの形も崩れ、さらに脂を抜き過ぎてしまい、万が一水に付けてしまうことがあれば、皮は乾くと同時にパリパリになってしまうというリスクがあり、最近はあまり見なくなりました。

柔らかさと軽さは毛皮の仕上がりの生命線で、その大きな原因は脂の量なのですが、この調整が、なかなか難しいのです。なめしも常に同じ状態ではないからです。そして、脂を抜き過ぎると皮の強度が極端に低下し粘りがなくなり切れやすくなります。

私自身が、このブログのなかで脂ということに特に拘りをもって書いているのは、脂は入りすぎると酸化や、劣化、さらに重さにつながり、少な過ぎると皮が切れやすくなったり、硬くなったりする等、様々な問題を引き起こすためです。

毛皮の柔らかさと軽さというテーマで、一番大きなウエイトを占めるのが以上の三つだと私は考えています。

写真のコートはメスのパールミンクのロングコートで、1.4キロの仕上がりです。レットアウトしたものは普通の作りのものに比べ2割くらいは重くなりますので1.4キロは、かなり軽いほうの仕上がりです。

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アーミンのブリーチとホワイトニングの違い

前回のオーダーメイドの記事でアーミンのブリーチについて少しだけ書きましたが、今日は少し、このブリーチについてお話をしてみます。

このブリーチに似たような処理で、結果は大きく違うホワイトニングという処理があります。この二つの処方について私の経験で感じたことを書いてみます。

ホワイトニングは、あくまで白いところを青白くするという用途に使います。ですから、白とは言えないような色を純白にすることは出来ません。

ブリーチは白くないもの白っぽくする(結果ベージュっぽくなる)、または少し白っぽいが真っ白ではないという原皮をほぼ白に近づけるという用途に使います。

ではこのブリーチとホワイトニングの違いはなにかというと、ホワイトニングは白をさらに青みのある白にして純白に見せるということが出来、ブリーチはそれと比べると、白っぽいものをブリーチしても青白くはならず、どちらかというと薄いピンクっぽくなるか、薄いベージュのような、または生成りのような白になります。

ですから、あきらかな黄ばみのある原皮をホワイトニング処理しても青白くはなりません。なんとなく出来そうな気がしますが、出来ませんでした。

もう一つ付け加えるなら、サファイアミンクのような青味のある原皮をブリーチしても、青が薄くなって白に近づくのではなく、薄い茶系の色に変わります。私たちの髪の毛をブリーチしても黒髪がゴールドのような色になりますが、毛皮も同じで、全てどんな色をブリーチしても茶系になって色が抜けていきます。

簡単にまとめると、ブリーチは色をマイナスしていき、ホワイトニングは色をプラスしていきます。そう考えるのが解りやすいでしょう。

そして、ブリーチした毛の特徴として、強いブリーチをしたものは、人間の髪の毛と同じように痛みます。良い毛皮特有のボリュームがあってサラサラした毛さばきから少しガサガサした手触りになります。ホワイトニングでは毛が痛むことはありませんでした。

結果として言えるのは、アーミンの高いランクの、全体がほとんど白に近い原皮でも、わずかに腹やお尻は黄ばみがあります。それをホワイトニングで白くすることは出来ません。出来る部分は白または薄い生成りの白を青味をつけて純白にできるということでした。

これで解るように、どんなにランクの高い原皮を買っても、お尻と頭でジョイントすると、必ず白さに差がでますので白として使うにはたくさんのお尻と腹を落とさなければなりません。何故かアーミンは頭は真っ白のものが多いからです。

そしてその無駄がでる分、一着にかかる原皮の枚数も増えます。だからアーミンの白のコートのお値段は他の染色ものに比べて、かなり高くなります。

次回は、再度このアーミンの全体を真っ白にする方法が頭にありますので、それを試して見ようと思っています。もちろん、生成りやピンクっぽい白ではありません。純白にする方法をです。

 

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シェアードミンクコート | Sheared Mink Coat

スタッフ服部です。今日は新作コートのご紹介です☆パショーネが得意とする素材のひとつ、シェアードミンク(シャドーグリーン&アンバーゴールド) のコートです!!

シェアードミンクとはミンクの毛を短く刈ったものです。毛を刈る事によって通常のミンクよりも軽くなり、一見は毛皮のように見えませんので、とても洋服に近い感覚で着ることが出来る素材です。

今回はシェアードミンクの染色を身頃と衿で色の違うバイカラーの配色にして、幅広のブロードをあしらいました。身頃はシャドーグリーン(ごく薄いグリーン)衿はアンバーゴールド(柔らかなオレンジ)に染色しております。

毛皮ではなかなか見ないお色ですが、着ると自然と肌に馴染むような色に仕上がっていると思います。ドロップショルダー(肩線の下がった低い袖付けの袖)の形になっていますので、肩幅を気にすることなく着ることができ、腕や肩まわりも動かしやすいです。

袖口は軽くコクーンシルエットにしてあり、さり気ない可愛らしさを表現しています。裾のブロードも衿に近い色のものを使用して全体の雰囲気をまとめつつ、細かな刺繍柄がアクセントになっております。

このブロードを取り付ける作業がとても大変でしたが、付けるのと付けないのでは仕上がりの表情が全く違い、とても良いエッセンスになっていると思います☆

また、パショーネの作るシェアードミンクはとても柔らかく・軽く・しなやかなので(従来の毛皮をお持ちの方はこの軽さと柔らかさに驚かれます)外出のお供にはもってこいです。このコートに帽子と手袋を合わせて上品なコーディネートで街歩きしたら最高に画になりそうですね…(*´∇`)ステキ♪

染色もホワイトミンクの刈毛を使用しての染色加工にすることで、様々な色の染色に対応できるようにしています。どうしても黒や茶などのダーク系か白系などが多くなりがちな毛皮のコートですが、シェアードミンクのコートであれば洋服感覚で自然にお好きな色を取り入れていただけると思います。

服部


Sheared Mink Coat (Shadow Green & Amber Gold)

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