デミバフミンクの逸品

昨日、原皮屋のM社長からオファーがあり、M社長曰く世界一のデミバフミンク(アメリカ産)だということで見せていただきました。M社長は毛皮業界の中で私が尊敬・信頼できる方が4人いるうちのお1人です。

あくまで個人的な好みですが、M社長が素晴らしいというものと私の好みが違うことがありません。世界一と言い切る限り、箱を開ける前から良品だということは想像はできていましたが、実物をみてほんとに圧巻の一言でした。

詳しいことは、まだ話を聞けてないのでわかりませんが、おそらくM社長が世界一と認めるファーム(養殖業者)の中でさらに、最高の品質のものなのでしょう。

私自身も30年以上この毛皮業界にいますが、正直これだけのものは見たことがありません。原皮に逸品という言葉があてはまるかどうかわかりませんが、まさに逸品と呼ぶにふさわしいデミバフミンクです。

原皮のサイズは1サイズ。とても大きいです。メスでこの大きさは珍しいのですが、まれに0サイズもあるようです。毛質は、雄のボリューム感を持ちながら、メスの柔らかさがあり、力強さと繊細さが同居しています。

アメリカ産特有の青味のある綿毛の色も素晴らしく、キャラクター(背筋)も太くしっかり通っていて、まさに毛皮と言うのにふさわしいくらい毛皮らしさを表現しています。キャラクターがしっかり通っているということは毛皮が毛皮らしさを表現するという意味では大事な部分だと私は思っています。原皮全体に占めるキャラクターの太さのバランスがデミバフというミンクの命であるでしょう。

毛の長さもショートナップ(刺し毛と綿毛の差が少ないもの)ですが、綿毛の長さは長めです。そのぶんしっかりとしたボリューム感があります。まさに触り心地は満点で、写真でしかお見せ出来ないのが本当に残念です。

これから、この原皮でなにを作るかを考えるのが今からワクワク、心が躍動しています。

長澤

毛皮とギター | 褪色(たいしょく)

 

昨年から本気モードでギターを弾きはじめているのですが、全く似たところの無いように思える毛皮とギターの共通点に気づいたのです。

それは褪色(たいしょく)です。

染色された毛皮はよく肩などが強い光によって褪色します。しかし、色全体が均一に落ちていくのではなく、赤・青・黄 それぞれ、バラバラに落ちていきその中で一番早く褪色するのが赤になります。

光と染料の関係なのかどうかは解りませんが、間違いなく赤がどんどん抜けていき、結果、イエローやグリーン、ブラウンに変化していきます。

それは、元の色の赤・黄・青のバランスによって決まりますが。極論を言えば赤がほとんど入らない色、イエローやグリーンのように赤の混ざらない色ろは薄くはなることはあっても、ほとんど変色することはありません。

逆にパープルやグレー等、赤の割合が強いものは赤の褪色のスピードが早く、どんどん黄色やグリーン系の色に変色していきます。

全体に褪色が進めば良いのですが、基本的には光が強くあたった部分のみが変色していくので、ひどいものは着用が難しくなることもあります。ドレープのように陰が出来る部分は特にラインが入ったように褪色しますので、かなり気になります。

レスポールスタンダードという有名なエレキギターがあります。古いものは、数千万というとても高額な値段がついています。このギターの1959年前後に生産されたものでサンバーストという、赤みのある周りの部分から中央に向かって透明にぼかして染められているものがあります。

このギターも光に強くあたったものは年とともに赤が強く褪色(たいしょく)し、薄いブラウンや、褪色のもっとも強いものはレモン・ドロップという名前さえつくような黄色いものもあります。

毛皮とギター、素材は違っても褪色は同じように進むように思います。しかし褪色は同じでも、結果として得られるものには大きな差があります。毛皮は大きく価値を落とす結果になるのに対して、レスポールというギターは褪色が進むことによって、より芸術的な深みがでて、大きな価値を生むというところでしょう。

毛皮のコートがレモン・ドロップになったといって喜ぶ人はどこにもいないでしょうから、ここが大きな違いです。

この褪色の理屈がおおかた正しいかどうか調べていたところ同じように、このことに興味をもって完璧に書いている方がいらっしゃいましたので⬇にリンクを貼せて頂きます。興味のある方は是非ごらんください。

オリジナル・サンバースト・レスポールの構造
http://lespaulfreak.com/

長澤