シルバーFOXマフラー(Silver Fox)

こんにちは♪スタッフ服部です。夏が来た!と思ったらあっという間に立秋が過ぎてしまいました・・・

毛皮の季節も一瞬のように来てしまいそうですね(;´д`)さて・・・今日はオーダー小物のご紹介・シルバーFOXのロングマフラーです。両面が毛皮がご希望のオーダーでした。

FOXを原料としたマフラーで両面が毛皮の物はボリュームの関係でしょうか、なかなか無いようです。

今回は両面毛皮・ロングマフラーということで、特に毛皮の柔らかさ・しなやかさ・軽さがポイントになっております。ロングマフラーですから、軽くクルっと巻けなければいけませんし、重さで苦しくならないようにしなければなりません。

今回は原皮の間に何本ものレザーを挟んでしなやかさを出しております。このレザーを挟んで縫う作業・・・これが横で見ていてもちょっと引いてしまうような大変な作業でした。。。

しかし大変な大変な(笑)作業の後に仕上がったものは、とても上品で良い逸品となりました。

服部

シルバーFOXマフラー(Silver Fox) | PASSIONE

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一番良いチンチラはブラックベルベット??

 

今日はチンチラのブラックベルベットと普通のタイプの違いについて書いてみます。

チンチラは毛質の等級とキャラクターの濃さの等級でランクわけされています。

キャラクターの濃さはXD(エキストラダーク)・2XD・3XDまであり、ブラックベルベットを3XDの中に入れるか単独で扱うかは生産者によって違いがあるようです。

まず等級わけについてですが、なんといっても毛皮は自然のものなので、計測したようにぴったりに分けるわけにはいかず、あくまで人間が見たり触ったりして判断して分け、バンドルにされています。写真にある半裁のチンチラマフラーは2XD(ツーエキストラダーク)くらいランクのもので作られています。

この2XDよりも更にキャラクターが濃いものに3XDやブラックベルベットと呼ばれているタイプがあります。これはキャラクターが真っ黒になっており、価格もそれなりに高くなります。

そして、この3XDやブラックベルベットのようなキャラクターの濃いタイプの原皮には、一般的には知られていませんが、毛質の違う二種類のタイプがあります。一つは2XDをそのまま濃くしたタイプ。もう一つはキャラクターの毛質や全体の毛質がさらっとしていて毛が弱いタイプのものがあります。

一般的には2XDや3XDのキャラクターの毛の色は毛先が真っ黒で、先から3mmくらい奥でいったん白くなります。その奥は根元までグレーになりますが、ブラックベルベットの毛の弱いタイプは毛先が黒から始まって、そのまま白にならずに自然にグレーに変化していきます。さらに一般のチンチラとの違いはこのタイプのブラックベルベットとは頭まで真っ黒です。

後者のこのタイプの原皮は多くが毛質が弱く、ボリュームが少な目のものが多いように思われます。ブラックベルベットといっても、それほど綺麗とは言えないものもあります。

もっとわかりやすく言うと普通のタイプのチンチラとブラックベルベットのチンチラのタイプは元々の品種が違うと思った方が良いでしょう。

そして、全てのブラックベルベットが良いのではなくブラックベルベットのタイプにも、それぞれ品質に差があるということでしょう。

ですから、このブラックベルベットタイプの原皮にもボリュームが多いタイプもあり、それはキャラクターが濃い上にボリュームがあるので素晴らしく綺麗です。

ひとつの商品のなかに、この毛質の弱いタイプのブラックベルベットが混ざって作られていることがよくありますが、本来は通常のタイプと一緒に使うべきではないでしょう。

6月26日のチンチラの劣化の原因に載せた写真のチンチラはこのタイプのブラックベルベットではないですが、キャラクターの毛の先が黒から白に一度変化するタイプの3XDの原皮です。この原皮はとてもボリューム感があり、色のグラデーションも見事でした。

このことからも、一般的にチンチラのランク分けの中ではブラックベルベットが良いものだと言われがちですが、そのブラックベルベットの原皮の中にも良し悪しがあると言えると思います。

そして、チンチラの綺麗さを理解するうえで、もう一つ大事なことがあります。これまでキャラクターの色が濃いことが良いと書いてきましたが、それ以外にも特にキャラクターがしっかり通っていながら、キャラクター横のグレーの部分がしっかりあり、さらに腹の毛が白くて綺麗であること。この3色のバランスが良いものが一番綺麗に見えます。

ブラックベルベットの中には真っ黒なキャラクターを持っていても、太過ぎて中間のグレー部分が少なくなってしまい、ただ黒いだけで、黒・グレー・白のコントラストがなく、あまり綺麗にみえないものもあります。

上の写真のチンチラマフラーは2XDですが、この3つのバランスが綺麗にとれていて3XDではなくてもとても綺麗に見えます。このようにバランスの悪いブラックベルベットよりもバランスの良い2XDの方が綺麗に見えることもあり、一概にキャラクターの濃いチンチラが、全てにおいて良いとは言えないと私は思っています。逆に黒過ぎて汚く見えるものもあるくらいです。

下の写真はキャラクター部分の毛の色の変化です。違いがハッキリとわかると思います。次回お店でチンチラを見るときには、是非こんな部分にも目を向けてみてはいかがでしょうか。

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毛のボリューム感

今日は毛のボリュームについて書いてみます。通常、毛のボリュームというのはその種類によって違いがあることは一般的に知られていることでしょう。今日、お伝えするのは、同じ種類の、例えばミンクに限って言えば、、、というようなテーマで書いてみようと思います。

毛皮の毛も、基本的には人間の毛髪と同じ性質を持ってます。ミンクやセーブル、フォックス、チンチラ等、ほとんどの毛皮でボリューム感を表現するのに毛量、いわゆる毛の本数がもっとも優先される項目であることは間違いがないことです。

そして、毛の一本ごとの太さも、もちろん関係しています。しかし、以外に知られていないのが、毛の根元にあるスパイラル状になったうねりがボリューム感に以外に大きく関わっているということです。

全てではないですが、ミンク、セーブルのように、より繊細な毛質になればなるほど、この根元のうねりがボリューム感をだすのに重要な役割を担っています。人でいうとアフロヘアーとストレートパーマがかかったような違いになります。

毛皮でもカラクルラムのようにすでに全体がクルクルしてボリューム感を出しているものもありますが、今回はこのタイプは除外してミンクやセーブルのような繊細な毛質のボリューム感について説明します。

同じミンクの毛でも、根元からストレートになっているものと、少しうねりのあるものがあります。同じ毛の本数が生えているとすれば、少しうねりのあるタイプの方がボリューム感が感じられます。しかし、このうねりがあり過ぎると、手で触ったときのサラサラしたシルキー感がなくなりますのでバランスが大事になります。

そしてここからが大事なことです。毛のボリューム感は毛皮の元々もっているものではありますが、3割くらいは処理の方法で調整出来ます。

先に、人間の毛髪と似ていると書きましたが、人の髪の毛が湿気の多い日には、もともとパーマっ化のある人の髪は少しずつクルクルになったりぼそぼそになったりしますが、毛皮の毛も同じで水分を吸収すると、特に蒸気(スチーム)などによって、毛の根元や毛先もうねりがでたりちぢれたりします。

この性質を利用して、毛のボリューム感を調整することができます。
もっとも良いと思われるのが、毛の本数がたくさんあり、根元が少しだけうねりがでて、毛先は真っすぐになっているものが一番、触り心地がいい毛質と言えます。

ヌートリアやビーバー等のプラクト(抜き毛加工した)した毛皮は、必ず原皮の仕上げの段階で高温の回転アイロンで毛を伸ばします。そして加工時にはそのストレートパーマがかかったような毛質を維持しながら商品にします。

しかし、元々、ぼそぼそしたタイプの毛質を無理に真っすぐにしているため、空気中の水分で徐々に表面は白っぽく、毛はぼそぼそした状態になってしまいます。ですから、時間の経ったヌートリアやビーバーなどは当初とは見る影もないほど毛質が悪くなり綺麗とは言いがたい状態になってしまいます。

このように毛質を整えるのにはスチームや回転アイロンを使用して、根元のうねりを適度にだして、毛先は真っすぐに整えるようにします。よくケーキとかで中がもちっとしていて外側がフワフワ等、そんな表現をよく耳にしますが、あんな感じです。

大事なことは、毛皮の毛も人の頭髪と同じで綺麗に仕上げることで本来の美しさが保たれるということです。そして、毛皮の魅力を熟知して、毛皮の持っている力を最大限引き出すのが作り手の大事な仕事のひとつなのです。

写真は、5月22日に掲載したデミバフミンクの毛の奥の部分が見えるように撮った写真です。毛の根元から2/3くらいが軽くうねっているのがわかります。これがボリューム感に大事な要素のひとつです。

長澤

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あたりまえのことをあたりまえにこなす

ロシアンセーブルヘビーシルバリーで作った4用ショールをご紹介いたします。以前に原皮の説明をさせていただきました。実際にあの原皮を使用して仕上がったものをご紹介させていただきます。

左右のバランス、キャラクター(背筋)の濃さ・太さ、そして原皮そのもののボリューム感、原皮のつなぎ目の自然さ(特に頭同士の綺麗なつながり)シルバリーの量とバランス、悪い部分を全て落とし不自然な毛流れが一切見当たらない等。。。このような仕上がりのものはアトリエで作ったきた中でも、なかなか見当たりません。

アトリエの理念にある「あたりまえのことをあたりまえにこなす」という、その言葉をそのまま表したようなショールです。このシンプルな形にセーブルのショールとして必要な要素が全て詰まっています。

長澤

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毛皮の軽さと柔らかさ

毛皮を軽くする方法はいくつかあります。一番、簡単にトライすることができるのが、付属を出来るだけ軽いものにすることです。ケスカも純正のケスカは金属で出来ているので、個数は増えると結構重みがあります。同じ形で金属以外の素材で出来ているものがありますので出来るだけ軽いものを使用します。

さらに以前は毛芯とかを使っていたのかもしれませんが、今は軽さを考え別の素材を使うことが多いかもしれません。

コートの中に以前はシルクオーガンジーのようなものを毛皮の裏全面にはって、毛皮の縫い目のあたり止めや型くずれ防止の為に使用していましたが、縫い目もあたりの出ないような薄い縫い目にしたり、型くずれのしない作り方をすればオーガンジーをはる必要はありません。

裏地の選択も以外に重要です。毛皮でよく使われているキュプラとアセテートの混紡のものがありますが、これは以外に重い感じがします。匁数にもよりますが、シルク系がやはり軽いです。

二つ目は、皮の厚さの問題です。なめし上がった毛皮の皮を再度、なめしに出します。そうすると一度では絶対に出来ない皮の薄さと柔らかさが得られます。

一回目に、しっかりと皮をすけばよいと経験のない方は考えてしまうかもすれませんが、何故か二回なめすということをしないと本当の柔らかさと薄さが得られません。もちろんこれは私の経験でのことです。何度も試した結果はやはり再なめしの効果は絶対的に大きいと感じています。

さらにその皮を私たちは独自の機械で、皮の表面を毛根が出るギリギリまですき、皮の表面の繊維の一部を壊すことで軽さと柔らかさをさらに引き出します。但し、全てが同じように薄く鋤ける訳ではありません、ミンクの場合はオス、メス、サイズの違い等でそれぞれに限界があります。

そして皮の最終的な状態も、毛流れが縦の場合は、縦横比6対4くらいで仕上げます。これによってコートの型くずれも起きずに毛の美しさもそごなわずに仕上げることが出来ます。

横流れの作りの場合は、また少し皮を張るバランスが変わります。

そして最後に脂を抜く方法があります。これは専門の機械で溶剤の中に毛皮をつけ脂を抜く方法があります。しかし、これだと、脂の抜き加減が難しく全てが抜けてしまいますので、私たちは手間はかかりますが少しずつ抜く独自の方法で行っております。

これによって、脂の量をしっかりと調整し、軽さと柔らかさ、さらに毛のさらさら感を出します。この方法を使うと毛皮をドラムのなかで動かしながら脂を抜き、乾燥させるために毛皮本来の柔らかさがでるのです。ただ、溶剤に浸けただけでは柔らかくはなりません。

20年くらい前に、仕上がったコートをドライ処理をしてカラカラの状態にして、軽さと柔らかさを出した時代がありました。

この手法では、コートの形も崩れ、さらに脂を抜き過ぎてしまい、万が一水に付けてしまうことがあれば、皮は乾くと同時にパリパリになってしまうというリスクがあり、最近はあまり見なくなりました。

柔らかさと軽さは毛皮の仕上がりの生命線で、その大きな原因は脂の量なのですが、この調整が、なかなか難しいのです。なめしも常に同じ状態ではないからです。そして、脂を抜き過ぎると皮の強度が極端に低下し粘りがなくなり切れやすくなります。

私自身が、このブログのなかで脂ということに特に拘りをもって書いているのは、脂は入りすぎると酸化や、劣化、さらに重さにつながり、少な過ぎると皮が切れやすくなったり、硬くなったりする等、様々な問題を引き起こすためです。

毛皮の柔らかさと軽さというテーマで、一番大きなウエイトを占めるのが以上の三つだと私は考えています。

写真のコートはメスのパールミンクのロングコートで、1.4キロの仕上がりです。レットアウトしたものは普通の作りのものに比べ2割くらいは重くなりますので1.4キロは、かなり軽いほうの仕上がりです。

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アーミンのブリーチとホワイトニングの違い

前回のオーダーメイドの記事でアーミンのブリーチについて少しだけ書きましたが、今日は少し、このブリーチについてお話をしてみます。

このブリーチに似たような処理で、結果は大きく違うホワイトニングという処理があります。この二つの処方について私の経験で感じたことを書いてみます。

ホワイトニングは、あくまで白いところを青白くするという用途に使います。ですから、白とは言えないような色を純白にすることは出来ません。

ブリーチは白くないもの白っぽくする(結果ベージュっぽくなる)、または少し白っぽいが真っ白ではないという原皮をほぼ白に近づけるという用途に使います。

ではこのブリーチとホワイトニングの違いはなにかというと、ホワイトニングは白をさらに青みのある白にして純白に見せるということが出来、ブリーチはそれと比べると、白っぽいものをブリーチしても青白くはならず、どちらかというと薄いピンクっぽくなるか、薄いベージュのような、または生成りのような白になります。

ですから、あきらかな黄ばみのある原皮をホワイトニング処理しても青白くはなりません。なんとなく出来そうな気がしますが、出来ませんでした。

もう一つ付け加えるなら、サファイアミンクのような青味のある原皮をブリーチしても、青が薄くなって白に近づくのではなく、薄い茶系の色に変わります。私たちの髪の毛をブリーチしても黒髪がゴールドのような色になりますが、毛皮も同じで、全てどんな色をブリーチしても茶系になって色が抜けていきます。

簡単にまとめると、ブリーチは色をマイナスしていき、ホワイトニングは色をプラスしていきます。そう考えるのが解りやすいでしょう。

そして、ブリーチした毛の特徴として、強いブリーチをしたものは、人間の髪の毛と同じように痛みます。良い毛皮特有のボリュームがあってサラサラした毛さばきから少しガサガサした手触りになります。ホワイトニングでは毛が痛むことはありませんでした。

結果として言えるのは、アーミンの高いランクの、全体がほとんど白に近い原皮でも、わずかに腹やお尻は黄ばみがあります。それをホワイトニングで白くすることは出来ません。出来る部分は白または薄い生成りの白を青味をつけて純白にできるということでした。

これで解るように、どんなにランクの高い原皮を買っても、お尻と頭でジョイントすると、必ず白さに差がでますので白として使うにはたくさんのお尻と腹を落とさなければなりません。何故かアーミンは頭は真っ白のものが多いからです。

そしてその無駄がでる分、一着にかかる原皮の枚数も増えます。だからアーミンの白のコートのお値段は他の染色ものに比べて、かなり高くなります。

次回は、再度このアーミンの全体を真っ白にする方法が頭にありますので、それを試して見ようと思っています。もちろん、生成りやピンクっぽい白ではありません。純白にする方法をです。

 

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毛皮のコートの重さの原因

毛皮のコートの重く感じる原因は大きく分けて四つあります。

一つは中に入れる副資材の問題があります。以前は毛皮であれば何でも売れた時代があり、どんなに重くても売れた時代でした。

その頃のコートには毛芯から始まり、分厚いドミット芯、そしてオーガンジー等を中に使い、裏地は裾に刺繍の入ったものやルーシングが全体についたもの等、付属全体で400gくらいになってしまうようなこともありました。これがまず、第一の原因でしょう。

次に、皮そのものの問題があります。

なめし上がった毛皮の皮には、柔らかくするために脂を入れます。その脂が水溶性であるために湿度の高い日本ではたくさんの水分を吸収してしまいます。皮に入っている脂自体の重さも重なり、かなりの重さになります。

さらに、皮の厚さを決定する”すき”の問題もあります。最終的に毛根ギリギリまで、すけるかどうかで皮の厚さが決まりますが、最近のものに比べると以前のものは厚かったように思われます。

皮を薄くすくということは、場合によっては大事な毛皮を破いてしまう可能性もあり、なめし工場さんにとっては大きなリスクがありますので、なかなか全てをギリギリまで均一に薄くすくということは難しいのです。

しかし、なめしの技術もどんどん進化しており、脂の分量やすき加減の度合いも最近は少しずつ良くなる傾向にあります。しかし、それは、最終的にドレッシング(なめし)をする工場の技量によって決まると私は思っています。国内でも良い工場はあります。

もうひとつ、加工方法によっても重さが変わることを説明致します。

毛皮の皮はドレッシングという方法でなめされており、通常のレザー等と比べると良いなめしをされたミンクの皮等はとても柔らかく、よく伸びます。そのため、コートを作るなかで歩留まりを考えると、皮を強く張り大きく引き伸して使うことがコスト面から考えても有効な手法と考えられています。あくまで一般的にですが。

基本的には、しっかり皮を張って使うか、張り過ぎないように風合いを大事にして加工するかは、コストを優先するのか、仕上がりを優先するのかによって選択されます。ただし、誤解のないよう言っておきますが、皮を強く張ることの全てが悪い訳ではありません。良い仕上がりに向けて、強く張らなければならない場合もあります。あくまでどう仕上げるかで、その強さが決まります。

ここにひとつ、参考になる加工方法をご紹介します。

毛皮の加工方法のなかにレットアウトという技法があり、その技術の中にもいくつか考え方があります。中国製のように歩留まりを最優先にした作りと、以前のニューヨークで作られたコートのように皮の繊維を縦に引き、毛のボリュームをだし、ラインを綺麗に揃えて綺麗に見せるという方法があります。

後者の作りはミンクのメスの軽い皮を使っても、毛皮を縦に引き綺麗に見せようとするために枚数をたくさん使用するという結果になり、コート重量もとても重くなります。これは、加工方法や作り手の考え方次第で軽さや柔らかさが大きく変化するという、ひとつの良い例でしょう。

以前は、ニューヨーク仕立ての綺麗なミンクにとても大きな価値がついていましたが、最近の傾向では、デザインと同じくらいの割合で軽さや柔らかさが購入の大きな要因のひとつになってきています。綺麗だけど重い、、、では売れない時代になってきています。

一般的にロングコートの重量はどんなに重くても2キロが限界だと思います。しかし、重いものの中には2.4キロくらいのロングコートも以前はよくありました。私たちが作るレットアウトのロングコートの基準は1.5キロくらいと考えています。

次回は私たちの作るコートの軽さについて書こうと思います。楽しみにお待ちください。

写真はスカングローミンクをレットアウト加工したものです。

長澤

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短毛の毛皮の頭接ぎのテクニック

今日は珍しく毛皮の技術編の解説です。通常、毛皮は頭からお尻にかけて毛が流れています。

そして、左右対象につくるもの、例えばヘチマカラーやコートの一般的なえり、スタンドカラー、ショールカラー等では腹同士を接ぐ横段などのもの以外では、バックセンターで頭同士かお尻同士のどちらかで接ぎ合わせをしなければなりません。

頭の場合は毛は逃げ合い、お尻同士の場合は毛がぶつかり合います。難しさは高い品質を保つという意味では、どちらも同じくらい難しいテクニックを使います。お尻同士のつなぎ合わせでは、毛がぶつかり合うために、毛の長さ・毛のボリューム感・色、さらに細かく言うと刺し毛の長さ、綿毛の長さまで合わせる必要があります。

それは技術者のレベルによって仕上がりに大きな差がでます。左右の毛皮の全ての条件が合っても、ミシンで縫うときに毛がぶつかり合い、これを綺麗に縫うのも、たかだか15cm程度の長さですが、非常に難しいのです。短毛のものは少しでも縫い込むと接ぎ目が溝になり、商品のクウォリティーが落ちます。

頭同士の接ぎも、お尻の接ぎ同様とても技術がいります。一般的には毛がぶつからない分、接ぎは簡単に見えますが、実は技術者にとっては以外に、この頭接ぎのほうが手こずります。理由は、毛が逃げ合う分、接ぎ目の毛が割れやすく、皮の地肌が見えたり、毛割れをしてしまったりします。

さらにミンククラスであれば綿毛のボリュームもあり、ギリギリで上手く行くのですが、前回登場したウィーゼルのように短毛で、綿毛がそれほど多くないものは、頭同士の接ぎは、とても難しい作業になります。

方法につきましては、それぞれ技術者によって違いがありますが、最終的に目指さなければならないのは、接ぎ目の毛割れがしないこと、皮の地肌がみえないこと、そして最後に縫い目が柔らかいことです。最後の縫い目が柔らかいこと、、、これが以外に難しいのです。

その理由は毛が割れないようにミシンで厚く縫おうとします。これが縫い目の堅さにつながります。ほとんどの場合、頭接ぎをする部分は肩であったり、衿のバックセンターであったりと、とてもシルエットに関係する大事な部分です。ですから縫い目の堅さは極力避けなければなりません。

さらに、一般的には、その縫い目の皮の部分に毛と同じか少し濃いめの染料を塗り地肌の皮の白さを隠す方法もあります。しかし、染料は皮の劣化につながり危険な方法のひとつでもあります。

このように頭同士を接ぐということだけでも、いろんな問題があり、それぞれの技術者が独自の技術をもって工夫をこらしている部分でもあります。

商品を見る場合に、デザインも大事ですが、今回のような肩や衿の接ぎ目などをチェックしながら、お気に入りの商品を探すのもひとつの方法ではないでしょうか。

長澤

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