初期採寸と仮縫い

受注を受けて採寸をして 仮縫いまでに痩せられるお客様がよくいらっしゃいます。

もちろん痩せることは悪くないのです。ただ、初期採寸に従って一回目の仮縫いトワルのパターンは作られています。そのため、トワル仮縫い時に、おやっと思うことがあるのです。

お痩せになられましたか?と聞くと、そんなことはありませんとおっしゃいます。しかし、よく聞くとジムに通われたというようなことが少しずつわかります。

女性の微妙な気持ちが会話に現れます。体型は明らかに変わっていらっしゃるのです。

それでも、変わったとはなかなかおっしゃってくれません。

作る側としたらワンサイズ以上痩せた場合、特にお太りになられていらっしゃる場合には簡単にワンサイズ以上サイズが変化します。初回打ち合わせ時の採寸から場合によっては数か月経過した後に仮縫いになるケースもあり、大きく体型が変化されるケースがあるのです。

これをうっかり見逃して、お客様の言うとおりに信じてサイズダウンをせずに作業をすすめると大変なことになります。

この辺が、リフォームにしてもオーダーにしても難しいのです。

仮縫い時には、夏場であっても当然ですが、冬の装いで試着をしていただきます。

そうすると、なかなかお痩せになられたことに気付かずに作業が進んでしまう可能性もあります。

ここはやはり、しっかりと体型変化を観察し、何気なくお痩せになられたかを聞いたりしてみる必要があるのです。最初は痩せてないと言われても、何度か聞くと実はジムに通い始めたというようなことが分かります。

場合によっては、バスト・ウエスト・ヒップくらいは採寸しなおすケースもあります。

単純にお客様の言うことを信じてしまうと大変なことになるからです。

私のところではパターンから毛皮作成まで私がやりますので、気付くことが出来ますが、パタンナーと毛皮制作者が別の場合には、お客様の体型の変化に気付かずに仮縫いが終わってしまうことがあります。

しかし、それは特別なことではなく、分業は普通のことで、今回のようなケースが見逃されることもかなりの確率で発生するのです。

大量に作ろうとすれば、分業は仕方のないことで、拘ると量が作れないということになるのです。

長澤祐一

ネットでみかける最高級、最上級という言葉の陳腐さ

ここのところ投稿をさぼっていたので二日連続で投稿します。

高級、最高級、最上級、超レア等、ネットショップではよく見かける言葉です。見る度にまたかと思います。例にもれず毛皮のサイトも似たような言葉が出てきます。ネットの毛皮全部が高級品なら、普通のものはないことになり、逆に最高級品が全部なら最高級品と言われる特別な商品はないと書いているようなもので困ったものだと、いつも思ってしまいます。

もちろん、ちゃんとしたものもたまに見かけますが、これでオーダーなんかできるのかというような仮縫いトワルの写真や、仕上がったコートの画像をよく見かけます。話少しそれますが、仮縫いトワルを写真に撮るにしても使うボディが、これを使ってトワルの検品をするのか?というくらい酷いボディを使っていたり、ボディへトワルを正しく着せ付けるのは結構難しいのですが、こんな着せ付けで、裾が拝んでも逃げていても、どうでもいいのか?というような酷い写真を平気で載せる、これで仮縫いトワルの検品や最終で仕上がったコートの検品が出来るのだろうか?といつも思います。

何十年やってもオーダーは今でも私は難しいと感じます。しかし、お客様の側ではそれ以上に素人だからわからないという事態が生じます。業者を信用して、疑うことなくきっと綺麗に仕上ったのだろうと思い込み納得するという、微妙な空気がその場にいなくてもなんとなくわかります。それくらいいい加減なオーダーが多く見られます。

トワルもまともにボディに着せ付けることが出来ない、まともにアイロンもかけられない。検品するために必要なボディも持たない、そんな人達が仕上がってきたパターンやトワルをどうやって検品するのですか?

または仕上がってきた毛皮のコートをどうやって検品するのですか?確かにオーダーをやっていますとは言えますが、言えるのと出来るのは違います。パターンを何処かに依頼して、作る職人を探して、原皮を用意して、それで出来るというなら誰でもが業者としてオーダーが出来るということになります。でも、そんなに簡単ではないですよ。オーダーを極めるとなると。

あげくの果てに、こんな仕上がりの写真なら何故サイトやインスタグラムに出すのだろうというようなものが本当に多いです。私のところで仮に、そんなひどい仕上がりになって上ってきたら、絶対に画像なんか恥ずかしくてネットに出せません。出せるということは、その酷さが解ってないということの証ですから。

オーダーを完璧に仕上げるのは、そんなに甘くはありません。

こうやって書くと、一見、他人を批難しているように見えますが、実際には自分自身のオーダーやすべての仕事への厳しさ、難しさを自覚しているところです。

ごめんなさい。話が大きくそれました。

話を戻します。超何とか、最高級、超レア、もっとありますよね。パショーネオンラインショップの商品説明やニュースという記事がありますが、全部チェックしていませんが、多分、超とか最高級とかの言葉は使っていないはずです。

そんな言葉が要らないような商品と説明をしています。

だいたい、超レアとか書いてあるものでも、たいしてレアじゃないものがあったり、セーブルであればなんでも最高級とありますが、実際は食品と同じでピンキリがあったりする訳で、ものすごく幅が広いのが現実です。

超最高級なんて書いたら、自分のサイトがいかに陳腐かをわざわざPRしているようなものになります。楽天なんかのショップじゃよくありますが、例えばビッグブランドのホームページで、最高級なんて多分ですが、見ないですよね。超、、、なんてきっとありません。使えば使うほど安っぽくなりますから。

Googleの検索ロボットがこの陳腐な言葉をどう理解して、検索で拾われやすくなるのか、またはならないのかは私にはわかりませんが、仮に検索で引っ掛かりやすくなるとしても、超何とかとか、最高級なんて私は意地でも使いません。

丁度都合良く、それが差別化になると良いなくらいに思っています。  長澤祐一

 

 

アメリカン・マホガニーミンクの帽子の作り

4~5年前に大切なお客様からのご依頼で作ったオーダーメイドの帽子です。帽子はアトリエでは、めったに作ることがありませんが、作るときはかなり気合をいれて作ります。下の写真はテレビドラマの一風景ですが、このような感じに作りたいというご要望で作りが始ましました。 (さらに…)

毛皮のオーダーメイドの難しさ

私たちのアトリエでは仕上がりに効果があるとわかれば、どんなに時間やコストがかかっても、そしてリスクがあっても、ほとんどの場合トライしていきます。それが、誰も見たことのないような仕上がりを生むと信じているからです。

ひとつ余談ですが、今回のブルーアイリスは色が濃いことが特徴です。しかし、濃いといっても、綿毛まで真っ黒なわけではなく刺し毛が濃いということで、その濃い目の刺し毛に隠れた綿毛が、その隙間から青白く光るように漏れてくるその光景は、このブルーアイリスでなくては表現できない、素晴らしい表情であり色香です。写真を見てもアメリカタイプのボリュームと刺し毛の短さがよく解ると思います。 (さらに…)

ブルーアイリスミンクのオーダーメイド(作りの部分)

今回は作りの部分にも少し触れていきましょう。今回の問題点は、メスといえども、オスと同じくらいになると、毛質はメスの柔らかさを持っていても、皮はさすがに2~3サイズと比べると厚くなり、そのまま仕上げたのではオスの0サイズを使ったような重い仕上がりになってしまいます。

当然、私が通常やる再なめしということも考えたのですが、再なめしによって、ブルーアイリスにわずかにかけたブルーイングという青味をつけた色がなめしによって必ず落ちてしまい、しかも、均一に落ちれば再度ブルーインをすればいいのですが、落ち方が均一じゃない場合は、せっかくマッチングして選びこんだ材料の色がバラバラになりかねません。そのために再なめしは諦めることにしました。

しかし、このままでは必ず重い仕上がりになってしまいます。 (さらに…)

毛皮のオーダーメイド(原皮の調達、そのニ)

以前、毛皮のオーダーメイド(毛皮の調達)という記事を書きましたが、今日は、実際にあったことを具体的に書いてみようと思います。

今回のオーダーメイドはブルーアイリスミンクのロングコートです。

一般の方には解らないかもしれませんが、メスのブルーアイリスをコートバンドルで持っているような原皮屋さんは、国内には、まずありません。しかも、メスの1~0サイズでアメリカ産で最高の原皮などと制限を付ければ国内では、まったく手配ができない状態になるのです。持っているところもないことはありませんが、当然、何年も前の、黄色く焼けたようなブルーアイリスがいいところでしょう。それほど、良い原皮を手配するというのは大変なことなのです。 (さらに…)

毛皮のオーダーメイド(原皮の調達) 

当社の仕事の大きな柱の一つにオーダーメイドというくくりがあります。いつか、このことについて書かなければと思っていました。

同業者のサイトをみても、どこにでも、リフォームとともにオーダーメイドの言葉が見つかります。要はどこでもやってることなのです。しかし、そのサイトの多くが、サイト構築のためのオーダーメイドであって、ほんとうにやっているようには見えてきません。

一般的には、貴方だけの一着を・・・世界で一着しかない・・・などと言うどこにでもあるようなキャッチコピーがあって、後は、いくつかの行程が記載されているというのが多く見受けられます。

本当にどの程度のオーダーメイドをやっているのかが伝わってこないのです。オーダーメイドを現実にやろうとすると、いくつかの大きな問題にぶつかります。

ひとつは、原皮をどう調達するのか?です。

オーダーが決まってから原皮を調達するのでしょうか?サンプルの原皮を一二枚見せて、あとは仮縫いの時まで探すのでしょうか?私も仮縫いまでに探すことはよくありますが、なかなか自分の目にかなった原皮が仮縫いまでに手にはいることは珍しいのです。

受注の時期が1月くらいであれば、来期までにということで信頼出来る取引先に調達を依頼することは出来ます。しかし、あくまで来シーズン用にお作りするということが前提です。

今期の受注ということになりますと、原皮屋さんに原皮が一番豊富にあるのは、毛皮の販売のピークになるシーズンとは大きくズレます。

私たちの大きな悩みはここにあります。オーダーという注文の受け方になると、確かにシーズンオフの時期にも受注は出ます。しかし、やはり一番お客様の気持ちが動くのは、シーズン直前の11月くらいからです。

この時期になると原皮屋さんの在庫はピークからは、ほど遠い状態になり、問い合わせしてもないものが多くなります。

そんなこともあり、ロシアンセーブル、ロシアンブロードテール、アーミン、チンチラ、ミンク各種などを広範囲にストックしなければなりません。

セーブルに限ってみても、ワイルド、ファーム、ゴールデン、ワイルドシルバリーというように種類があり、これをオーダーと謳う以上、小物程度を作る数量で済むはずもなく、相当枚数をストックしなければなりません。しかも、オーダーである以上はランクの高い品質のものをストックします。

ミンクのオスは大体は原皮屋さんで手に入るにしても、メスのコート用バンドルなどはどの原皮屋さんを探しても、簡単に手に入れることが出来ません。

あっても、色が変わった売れ残りのようなものしかないことが多く、結局、気に入った原皮は早めに抱えておかなければならないということになります。しかもコートバンドルです。少なくても40~50枚です。

それをミンクの色ごとに揃えるといったら、一体どれほどのストックをしなければならないのかと、本当に毎年どの色をストックするか悩みます。そして、今年の自分のお勧めとして自分が惚れ込んだ原皮を常時5~6種類ストックします。

それでもメスのミンクのオーダーが毎年、ストックしてたものがちょうどよく受注があるとは限りません。

ロシブロやアーミンに至っては欲しいときに手に入るものではなく、気に入った出物があるときにストックしておかないと手に入りません。

オーダーが決まってから調達では、なかなか良い原皮が手に入らないのが現実です。そして、お客様のために原皮の目利きも高いレベルが要求されます。

さらにバンドルで買って使った残りも必ず発生し、それを小物にしたり、ベストやショールにしたりと、残った原皮の用途も常に考えて使っていかなければなりません。

必要な枚数ぴったりに仕入れられれば無駄は出ませんが、ちゃんとしたものを作ろうとすれば、必ず余分に仕入れることになります。

このように、原皮の調達ひとつをとっても、会社の機能として、またはサイト上に、オーダーメイドと謳えば、これだけの問題と常に向き合わなければなりません。

写真はアーミンの原皮です。 シッポの先が少しブラウンになっていますが、これは軽くブリーチしたためです。ナチュラルのシッポの先は本来は真っ黒です。次回はパターン、その他の問題についてお話いたします。

長澤

にほんブログ村 ファッションブログ オーダーメードへ
ファッションブログランキング