リンクスキャット(Lynx Cat)の特徴

今日はリンクスキャット(Lynx Cat)の主な特徴について書いてみます。

2021/08/25少し追加します。

この記事は意外に人気があり気に入る方がいらっしゃると何度も繰り返し読んでいただいています。書いた当時から人気があり、私しか書けない技術的なことがあるためかもしれませんが、良く読んでいただいております。この当時はオンラインショップも初めておりませんでしたし、インスタグラムも初めていませんでしたので画像があまりありませんでした。良かったら、インスタグラムやショップを見てもらうと私が作るものがいかに綺麗か、海外の業者さんからも評価を受けているかがわかっていただけます。下記にリンクを貼りますので是非見てください。価格も良くある馬鹿げた価格ではありません。下のリンクのショールとコートの価格はお問い合わせください。2021/8/26以降に小物も4点オンラインショップにアップいたします。

オンラインショップ

リンクスキャットショール

リンクスキャットコート

二点、三点目は 売れています。

海外からも問い合わせが良くありますが、ただ海外販売の方法が分からず販売したことがないのです。💦

リンクスキャットは芸術性の高い素材です。値段とかブランドとかの余計な色眼鏡をかけずに見れば、その素晴らしさは必ず分かります。良かったらリンクを見てください。

ここからまた以前の記事です。

リンクスキャットと他の毛皮の違いは、通常の毛皮は腹をメインに使いません。しかし、このリンクスキャットは腹の白い部分に大きな価値があります。このことはすでに知られていることですね。腹だけで作られたものをベリーと呼び、価格も1000万を軽く超えるものも多く、今ある毛皮のなかでも、もっとも高額な種類に属します。

リンクスキャットの特徴として真っ先に思い浮かぶものは、綺麗な斑点模様です。だいたいこのへんまでのことはネットで検索をすればすぐに出てきます。今回は、一般的なことは省き、ネットで調べても出てこないことを書いてみます。

リンクスキャットの皮質

リンクスキャットの特徴のひとつに、皮質があります。鞣し方にもよりますが、一般的には腹の白い部分以外は、意外に皮は厚いのです。ですから、ベリーは別にして、一般的にリンクスキャットのコートは結構重さがあります。背中の厚みのある部分を使うからです。

そして、もう一つ皮質の特徴があります。それは、皮の密度が高く、とても粘りもあり、ナイフの刃がすぐに刃こぼれしてしまうほどです。これは、何を意味するかというと、毛根をしっかりと絞め付けているせいかどうかは正確ではありませんが、一見弱そうに見える細い毛でも、抜けづらい特徴があります。おそらく皮質の繊維が細かく、粘りがあるせいかもしれません。あくまで想像ですが。チンチラのように皮が弱いものはやっぱり、毛根も弱く、少し強く引っ張るとすぐに、束で抜けてしまうチンチラとはまったく違います。

リンクスキャットの皮を鋤く

私のところでは、チンチラなど特殊なもの以外は、ほとんど独自の技術で皮を鋤きますが、リンクスキャットもやはり鋤いています。

一般的には、ほとんどが皮の厚いままで使われていますが、私のところの基準では厚すぎます。リンクスキャットの皮の厚い部分は2mm近くあるところもあり、最低でも半分以上は鋤かないと、思ったような軽さにはなりませんので、相当鋤きます。もちろん手なんかではやりません。

機械を使います。まず、最初に鋤き始めると、皮の表面が毛羽立つようになり、これを縦横と繰り返し鋤いていくと、ようやく、毛羽立ちがとれて、普通の皮の表面になってきます。そこからも繰り返し鋤き、ようやく思うような軽さになります。皮質のせいかどうかわわかりませんが、リンクスキャットの皮には鞣しで使う脂分が、とても少ないのです。そのため、皮を薄くすると、とても柔らかさが出て、フワフワの状態になります。

ただし、ここで気を付けなければ脂がほんとに少ないので、このまま使うならばフワフワのままなのですが、加工途中で一度水につけると、カチカチに硬くなります。私は、アルコールを水で少しだけ薄めて使い、出来るだけ硬くならないようにしますが、皮の奥まで水分が染みてしまうと、相当硬くなります。ドラムで柔らかくもなりますが、一度、しっかり水が染みてしまうと、元の状態にはなかなか戻りません。

ひとつ失敗談を言いますと、鋤きすぎて皮を切ってしまうことも数回ありましたが、ミンク等では、少し鋤いただけでも、毛根が飛び出し、すぐに刺し毛が抜けてしまう状態になりますが、リンクスキャットは皮が破れる寸前まで、毛が抜けませんでした。厚い頭の部分でやりましたが、ほんとにペラペラの状態になるまで毛が抜けませんでした。

裂けて始めて毛が抜けるという感じです。このことは、毛根が浅いということと、皮の繊維密度が高く、皮の粘りが強くあり、それによって毛が抜けるのを防いでいるのだろうという私が立てた仮説を立証するものでした。

リンクスキャットの腹の模様

次にリンクスキャットの模様、または斑とも言われますが、あの綺麗な斑点について書いてみます。

動物を飼われていらっしゃる方などは、たとえばアメリカンショートヘアーなどは背中の模様はほぼ左右対象だということは知っているかと思いますが、実はリンクスキャットの腹の斑点模様も、ほぼ左右対象に並んでいます。

コートになるとそれを意識して職人さんが作っていないものがほとんどなので斑はランダムなものだと、、それが天然というものだと、、、思われがちですが、実は、綺麗にほぼ、左右対象に並んでいます。多少左右の斑の大きさや形が違ったりしますが、基本的には左右対象になっていて、さらに中心もしっかりとあります。もちろん、左右対象じゃない、左だけにあったりするものもあります。100%左右対象ではありません。
リンクスキャットの背中の模様

上の写真を見てもらうとわかりますが、顎から下の部分で接ぎ合わせていますが、腹の中心を綺麗に合わせて作るとこうなります。意外に綺麗に左右そろっていますね。毛は斑の並びがわかりやすいように左から右へブラシをかけてあります。赤のラインの延長線上が接ぎ目になります。ここでいい加減な中心出しをして接いでしまうと、綺麗に中心のラインは通りません。

リンクスキャットの背中の模様2

もうひとつ上の写真をみてもらうとわかりますが、腹の中心に綺麗に直線に斑が並んでいるのがわかります。このようにコートでみるとランダムに並んでいるように見える斑点模様も実は7割は規則正しく並んでいるのです。腹の下のほうにいくと、どんどん斑が大きくなりわかりずらくなりますが、ランダムではありません。

もうひとつ写真を載せます。下の写真は最近作ったコートです。私はどちらかというと、真っ白のベリーよりは、少し黄色い部分が入ったもののほうが好きなのです。
リンクスキャット(Lynx Cat)

真っ白も確かに技術的にも簡単ではありませんが、原料次第という部分もあり、黄色の部分が入ったほうが斑やボリューム感、毛の長さ等を綺麗に合わせないと綺麗に出来ませんし、自然の色同士が、うまくマッチングしたときの色の立体感からいっても、やはりベリーよりは、こちらのほうが好きなのです。

このコートの写真の赤いラインの延長線上の前中心にも腹の中心が通っていますね。

ちなみに、このコートを作るのに使った枚数は24枚です。ベリー以外で、よく見られる一般的なリンクスキャットのコートの使用枚数は、8枚~12枚くらいです。しかも、小さな原皮でパサパサの毛質で、私のなかで綺麗だとおもうものは、ほとんどありません。同じリンクスキャットでも、白い腹の毛のボリューム感や毛の長さ等を比べてみてもピンからキリまであるのです。

リンクスキャットだからすごくイイもの?、、、というわけではありません。イイものを選ぶ目はプロだから持っているわけでもないのです。理解できていないプロもたくさんいます。ほんとにイイものは素人の方でも、うぁ~ 、、 という感動が心の奥から湧き出てきます。それが毛皮の本当の魅力であり魔力です。

背中心の大切さ

前々回のブログで書きましたが、背中心を正確に出すことの大切さが、今回の写真でもお分かりになるかと思います。

今回は背中ではなく腹ですが、それでもちゃんと中心があり、中心を合わせることで、左右に中心のラインが通り、一見ランダムに見える斑も生き生きとしてきます。

つくりを考えれば、リンクスキャットはいくらでもごまかせます。

適当に斑と毛の長さ、色を合わせれば、素人が作っても、なんとかなります。毛皮のミシンさえ、適当に縫えれば素人でも、部分的には簡単にできそうなのです。しかし、左右対象に黄色い部分をいれて自然にみせたり、しっかりと中心を出し、それを綺麗に活かすということを考えると突然、難易度の高い技術を求められます。

最寄りの、毛皮サロンに行くことがありましたら、そんなことを考えながら、商品を見てみるのも良いかもしれませんね。本当に良い商品は少ないのがよくわかります。

長澤祐一

 

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最上級で綺麗なデンマーク産「チンチラ原皮」

今日は久しぶりにチンチラの原皮の話です。写真が小さいので残念ですが、とにかく見て頂ければ最上級の美しさがお分かりになると思います。

本当に狂ったように綺麗なデンマーク産の原皮です。ブラックベルベットではありません。そして、値段もしっかりしています。そう簡単に手に入るレベルではありません。 (さらに…)

日本産メスミンクの特徴

今日は、稀少な日本産のメスミンクについて書いてみます。私がこの国産のメスミンクを使って感じたことがひとつあります。今では、国産ミンクに価値があるとは、この業界でも言われることはありませんね。それくらい生産量も品質も海外のものとは比べ物にはなりません。

日本産メスミンクの特徴

そのかわり、ひとつだけメスミンクに良い特徴があります。今はアメリカのショートナップや、それに続けとばかりにデンマーク産のミンクもショートナップになりつつあります。 (さらに…)

毛皮の仕上げ(ボリューム感を出すもうひとつの方法)

毛皮の仕上げの工程で、ミンクを例にとるとボリューム感を出すのに、いくつかの方法があります。

ひとつは、2012年8月6日付けの当ブログで書いたもっとも簡単にできる、スチームをかけて綿毛の根元のほうを縮れさせ方法です。

毛のボリューム感 http://wp.me/p2t2t1-7f

もうひとつは、あまり一般的ではありませんが、コラーゲンを使った方法です。毛をしっかりさせボリューム感をだすことに効果があるかもしれないと聞き、とにかく試してみようと思い、材料(コラーゲン)を仕入れて使ってみました。 (さらに…)

毛皮のプロの落とし穴(ミンクの毛の長さ)

Fur_passione_8_29_2014

上の写真はパールミンクです。一般的にミンクはアメリカもののショートナップが良い、または高級・・とされています。最近ではデンマークのものもショートナップタイプが増えてきました。私たちもずっとそう思いながらミンクを扱ってきていました。

しかし、それは毛皮のプロとして仕事をしてきている私の大きな間違いだと気づかされつつあります。

薄い色のミンクでは、ヨーロッパ系の刺し毛が長いタイプのミンクも横段などに使うと、とてもボリューム感がでたり、毛先が長い分、毛皮らしさや優しさが、よく表現されることに気づかされます。 (さらに…)

ブラックグラマミンクのショートナップ

ミンクでもっとも価値があると言われているアメリカンミンクのなかで最高峰と言えば一般名称でブラックグラマミンクがあります。

これはダークミンクのなかで、さらに選びこまれたもので、その特徴は、ボリュームがあること、毛が柔らかく弾力があること、ダークのなかでも、さらに濃いこと、ショートナップであること、等が思い浮かびます。

一般的に誤解されがちなのが、ショートナップという意味です。文字本来の意味からいくと短い毛というのが正しいのでしょうが、本来の意味は違います。

アメリカンミンクの特徴といえるショートナップの本来の意味は、綿毛と刺し毛の差が少ないということです。 (さらに…)

毛皮のオーダーメイド(原皮の調達、そのニ)

以前、毛皮のオーダーメイド(毛皮の調達)という記事を書きましたが、今日は、実際にあったことを具体的に書いてみようと思います。

今回のオーダーメイドはブルーアイリスミンクのロングコートです。

一般の方には解らないかもしれませんが、メスのブルーアイリスをコートバンドルで持っているような原皮屋さんは、国内には、まずありません。しかも、メスの1~0サイズでアメリカ産で最高の原皮などと制限を付ければ国内では、まったく手配ができない状態になるのです。持っているところもないことはありませんが、当然、何年も前の、黄色く焼けたようなブルーアイリスがいいところでしょう。それほど、良い原皮を手配するというのは大変なことなのです。 (さらに…)

チンチラのブラックベルベットの意味

チンチラ ブラックベルベット

今日はチンチラのブラックベルベットという品種について書いてみようと思います。以前、ブラックベルベットと2XDや3XD(色の濃さを表した名称:数字が大きいほうが濃い)を比べ、作り方によっては価値の低い2XDのほうが綺麗に見えると書きました。

今回写真で見せるチンチラはあきらかに2XDや3XDよりも綺麗で、私が見る中でも本当のブラックベルベットと呼ばれるものです。安いブラックベルベットと違い、毛が弱くなりやすいにも関わらず、しっかりとした毛のボリュームがあり、まさにブラックベルベットと呼ぶにふさわしいチンチラです。

しかし、よく見てもらうとわかりますが、 (さらに…)

チンチラはそんなに軽くない

今日はチンチラが、そんなに軽くない事について書いてみます。チンチラは一般的に毛皮のなかでも繊細な毛皮の最たるものとして扱われていて、イメージとしても、とても軽そうに思われているかもしれません。しかし、実は決して軽い素材ではないのです。軽いイメージはおそらく、毛の繊細さや、皮が何年もしないうちに破れたりして、皮が薄く弱いというイメージからくるものなのでしょう。

チンチラの皮は決して薄くはないのです。腹の部分は確かに薄いのですが、腹を過ぎて背中心に向かうほど皮は厚くなってきて重さに影響を与えています。以前もチンチラの皮の劣化について書いていますが、チンチラの皮は他のミンクのような皮に比べ何倍も切れやすいのです。

もちろん個体差があり、さらにはなめしの最終の仕上がり状態にも大きく影響を受けます。というよりも、最後のなめし上がりの仕上げ方と保管の状態で皮の劣化や強度が決まると言っても過言ではありません。

さらに重さという意味では、繊細といってもチンチラは毛のボリュームがあるため皮の厚さだけではなく毛自体も重さの要因になっているのだろうと思われます。

以前、当ブログで「毛皮クリーニングの問題点」を書いたかと思いますが、クリーニングするためのドラムにかけただけで切れる可能性があるのです。その理由は、一見、皮が薄く弱いからと誤解されがちですが、実際には弱くても軽ければ、そう簡単にドラムのなかで切れることはありません。重いコートがドラムのなかで回転することで遠心力も加わり、下にたたきつけられるというなかで切れるという現象が発生します。

よく着用せずにハンガーに吊るしたままで、肩が切れてしまったというようなことが起きるのも皮の弱さだけではなく重さも大きな原因の一つです。

最後にひとつ付け加えますが、すべてのチンチラが弱いわけではありません。前にも書いたようになめしの状態がよく、湿気を吸収しない状態にあり、さらに、できるだけドライな環境で保管をする、そして、加工段階でも切れそうな部分にはしっかりと補強をするという、この三つの条件が満たされていれば、簡単に切れることはありません。

よく、全体に芯を抱かしてあるものが見受けられますが、あれはあまり意味がないのです。重さがかかる部分にコートが硬くならないように注意をしながら補強をしていくというのがベストな考え方でしょう。

長澤

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毛皮の毛先

今日は毛皮の毛先について書いてみます。先日のブログで回転アイロンを使ってシェアードやプラクトミンクがとても綺麗になることを書きましたが、アトリエではミンクやセーブルのような繊細な刺し毛をもつ毛皮は回転アイロンをかけません。その理由は、回転アイロンによって、わずかですが刺し毛の先が切れてしまうからです。

ビーバーやヌートリア、またはその他、刺し毛が硬く太いものは、そう気にすることはありませんが、ミンクやセーブルの刺し毛は繊細ですのでローリングアイロンはかけることは一切いたしません。以前にローリングアイロンを買ったばかりのときに何度かかけて毛先を切ったことがあるので、その後はかけておりません。

弊社アトリエで使っている回転アイロンの刃先はすでに仕上用として丸く削り磨いてありますが、 (さらに…)