バランスの良い、デンマーク産チンチラ

デンマーク産のチンチラ

今日は良いチンチラの原皮を仕入れました。写真のチンチラがその原皮(デンマーク産の40サイズのチンチラ)です。

チンチラについては以前も書きましたが、今回はまた少し違う視点で書いてみようと思います。

チンチラには黒い背筋があることは、チンチラを知っているならほとんどの人が承知のことと思います。そして、この黒い背筋によって価値が変わることも一般的によく知られていることです。

ただし、黒いだけでは最高のランクとは言えません。今回は、その一般的な常識の黒いだけでは最高の物とは言えない理由を書いてみます。

チンチラの背筋は当然、薄いよりは濃い方が良いのです。私が思う本当に良いチンチラとは、そのキャラクター(背筋)の濃さ・その横のグレーの部分・腹の白い部分のバランスがよくとれています。

背筋の色以外にも、これはあまり知られていない事ですが…黒い背筋の部分の毛がうねるように毛が曲がっているものがあります。その割合は(私の経験上では)これまで見た原皮の半分以上は、このうねりのあるタイプでした。

また、反対に全くうねりがなく毛が真っすぐに生えているものがあります。もちろん、後者のほうが圧倒的に綺麗です。 何故かというと、並毛で見ると黒い毛がうねっているとギラギラと乱反射して見えます。真っすぐなものは乱反射せずに深く沈み込むように黒く見えます。この違いはとても大きいでしょう。

この、毛にうねりのないタイプで…更に三つの色のバランスが良いものが私は最高のチンチラだと認識しています。おそらく、一般の職人さんは、このことは気にしていないでしょう。気にしてると限りのある原皮の枚数では商品が作れませんから。

これは、毛にうねりがなく・三つの色のバランスが良い原皮をそろえることが出来て、よい技術で作れば素晴らしく綺麗なものが出来上がるということです。

付け加えますと、チンチラの毛がうねっているのは背筋の黒い部分のみです。黒い分だけ毛が弱いのかどうかは…解りませんが間違いなく、うねるのは背筋だけです。

ミンク等はスチームをあてればうねった癖がとれますが、このチンチラの背中のうねりは、どんなにスチームをかけてもとれません。生まれつきの個体それぞの性質のようです。

今回の原皮の写真は癖が全く無く・背中心がしっかり濃く・グレーの部分もバランス良く・腹も真っ白・・・と、いわゆる三拍子がそろったタイプです。このタイプの原皮を探すことは意外にも難しいのです。例えるならば、50枚のバンドルの中に1割程度と…少しくらいなものです。

それ程に、どこからどう見ても綺麗な原皮というのは少ないのです。コートを作るほどの数はなかなか揃いませんので、私はいつも小物で最高のものを作る時に使います。

6月25日のチンチラのショールは、珍しく納得のいく原皮で作ったものです。このランクで、これだけの枚数をそろえようとすると、バンドルをたくさん買うかバンドルをばらしてもらって選ぶかしかありません。(原皮屋さんにはきっと、嫌がられることでしょう。それでも、こんな原皮が欲しいのですが・・・)

そして、今回のデンマーク産と他の産地との違いを説明するのは非常に難しい事ですが、確実に何かが違います。デンマーク産のチンチラは、高いですが、やはり買う価値があるものです。

長澤

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一番良いチンチラはブラックベルベット??

 

今日はチンチラのブラックベルベットと普通のタイプの違いについて書いてみます。

チンチラは毛質の等級とキャラクターの濃さの等級でランクわけされています。

キャラクターの濃さはXD(エキストラダーク)・2XD・3XDまであり、ブラックベルベットを3XDの中に入れるか単独で扱うかは生産者によって違いがあるようです。

まず等級わけについてですが、なんといっても毛皮は自然のものなので、計測したようにぴったりに分けるわけにはいかず、あくまで人間が見たり触ったりして判断して分け、バンドルにされています。写真にある半裁のチンチラマフラーは2XD(ツーエキストラダーク)くらいランクのもので作られています。

この2XDよりも更にキャラクターが濃いものに3XDやブラックベルベットと呼ばれているタイプがあります。これはキャラクターが真っ黒になっており、価格もそれなりに高くなります。

そして、この3XDやブラックベルベットのようなキャラクターの濃いタイプの原皮には、一般的には知られていませんが、毛質の違う二種類のタイプがあります。一つは2XDをそのまま濃くしたタイプ。もう一つはキャラクターの毛質や全体の毛質がさらっとしていて毛が弱いタイプのものがあります。

一般的には2XDや3XDのキャラクターの毛の色は毛先が真っ黒で、先から3mmくらい奥でいったん白くなります。その奥は根元までグレーになりますが、ブラックベルベットの毛の弱いタイプは毛先が黒から始まって、そのまま白にならずに自然にグレーに変化していきます。さらに一般のチンチラとの違いはこのタイプのブラックベルベットとは頭まで真っ黒です。

後者のこのタイプの原皮は多くが毛質が弱く、ボリュームが少な目のものが多いように思われます。ブラックベルベットといっても、それほど綺麗とは言えないものもあります。

もっとわかりやすく言うと普通のタイプのチンチラとブラックベルベットのチンチラのタイプは元々の品種が違うと思った方が良いでしょう。

そして、全てのブラックベルベットが良いのではなくブラックベルベットのタイプにも、それぞれ品質に差があるということでしょう。

ですから、このブラックベルベットタイプの原皮にもボリュームが多いタイプもあり、それはキャラクターが濃い上にボリュームがあるので素晴らしく綺麗です。

ひとつの商品のなかに、この毛質の弱いタイプのブラックベルベットが混ざって作られていることがよくありますが、本来は通常のタイプと一緒に使うべきではないでしょう。

6月26日のチンチラの劣化の原因に載せた写真のチンチラはこのタイプのブラックベルベットではないですが、キャラクターの毛の先が黒から白に一度変化するタイプの3XDの原皮です。この原皮はとてもボリューム感があり、色のグラデーションも見事でした。

このことからも、一般的にチンチラのランク分けの中ではブラックベルベットが良いものだと言われがちですが、そのブラックベルベットの原皮の中にも良し悪しがあると言えると思います。

そして、チンチラの綺麗さを理解するうえで、もう一つ大事なことがあります。これまでキャラクターの色が濃いことが良いと書いてきましたが、それ以外にも特にキャラクターがしっかり通っていながら、キャラクター横のグレーの部分がしっかりあり、さらに腹の毛が白くて綺麗であること。この3色のバランスが良いものが一番綺麗に見えます。

ブラックベルベットの中には真っ黒なキャラクターを持っていても、太過ぎて中間のグレー部分が少なくなってしまい、ただ黒いだけで、黒・グレー・白のコントラストがなく、あまり綺麗にみえないものもあります。

上の写真のチンチラマフラーは2XDですが、この3つのバランスが綺麗にとれていて3XDではなくてもとても綺麗に見えます。このようにバランスの悪いブラックベルベットよりもバランスの良い2XDの方が綺麗に見えることもあり、一概にキャラクターの濃いチンチラが、全てにおいて良いとは言えないと私は思っています。逆に黒過ぎて汚く見えるものもあるくらいです。

下の写真はキャラクター部分の毛の色の変化です。違いがハッキリとわかると思います。次回お店でチンチラを見るときには、是非こんな部分にも目を向けてみてはいかがでしょうか。

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毛のボリューム感

今日は毛のボリュームについて書いてみます。通常、毛のボリュームというのはその種類によって違いがあることは一般的に知られていることでしょう。今日、お伝えするのは、同じ種類の、例えばミンクに限って言えば、、、というようなテーマで書いてみようと思います。

毛皮の毛も、基本的には人間の毛髪と同じ性質を持ってます。ミンクやセーブル、フォックス、チンチラ等、ほとんどの毛皮でボリューム感を表現するのに毛量、いわゆる毛の本数がもっとも優先される項目であることは間違いがないことです。

そして、毛の一本ごとの太さも、もちろん関係しています。しかし、以外に知られていないのが、毛の根元にあるスパイラル状になったうねりがボリューム感に以外に大きく関わっているということです。

全てではないですが、ミンク、セーブルのように、より繊細な毛質になればなるほど、この根元のうねりがボリューム感をだすのに重要な役割を担っています。人でいうとアフロヘアーとストレートパーマがかかったような違いになります。

毛皮でもカラクルラムのようにすでに全体がクルクルしてボリューム感を出しているものもありますが、今回はこのタイプは除外してミンクやセーブルのような繊細な毛質のボリューム感について説明します。

同じミンクの毛でも、根元からストレートになっているものと、少しうねりのあるものがあります。同じ毛の本数が生えているとすれば、少しうねりのあるタイプの方がボリューム感が感じられます。しかし、このうねりがあり過ぎると、手で触ったときのサラサラしたシルキー感がなくなりますのでバランスが大事になります。

そしてここからが大事なことです。毛のボリューム感は毛皮の元々もっているものではありますが、3割くらいは処理の方法で調整出来ます。

先に、人間の毛髪と似ていると書きましたが、人の髪の毛が湿気の多い日には、もともとパーマっ化のある人の髪は少しずつクルクルになったりぼそぼそになったりしますが、毛皮の毛も同じで水分を吸収すると、特に蒸気(スチーム)などによって、毛の根元や毛先もうねりがでたりちぢれたりします。

この性質を利用して、毛のボリューム感を調整することができます。
もっとも良いと思われるのが、毛の本数がたくさんあり、根元が少しだけうねりがでて、毛先は真っすぐになっているものが一番、触り心地がいい毛質と言えます。

ヌートリアやビーバー等のプラクト(抜き毛加工した)した毛皮は、必ず原皮の仕上げの段階で高温の回転アイロンで毛を伸ばします。そして加工時にはそのストレートパーマがかかったような毛質を維持しながら商品にします。

しかし、元々、ぼそぼそしたタイプの毛質を無理に真っすぐにしているため、空気中の水分で徐々に表面は白っぽく、毛はぼそぼそした状態になってしまいます。ですから、時間の経ったヌートリアやビーバーなどは当初とは見る影もないほど毛質が悪くなり綺麗とは言いがたい状態になってしまいます。

このように毛質を整えるのにはスチームや回転アイロンを使用して、根元のうねりを適度にだして、毛先は真っすぐに整えるようにします。よくケーキとかで中がもちっとしていて外側がフワフワ等、そんな表現をよく耳にしますが、あんな感じです。

大事なことは、毛皮の毛も人の頭髪と同じで綺麗に仕上げることで本来の美しさが保たれるということです。そして、毛皮の魅力を熟知して、毛皮の持っている力を最大限引き出すのが作り手の大事な仕事のひとつなのです。

写真は、5月22日に掲載したデミバフミンクの毛の奥の部分が見えるように撮った写真です。毛の根元から2/3くらいが軽くうねっているのがわかります。これがボリューム感に大事な要素のひとつです。

長澤

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ロシアンセーブルファームのシルバリー

ロシアンセーブルの種類のなかに養殖のファームと呼ばれるものがあります。養殖もののために原皮のサイズもワイルドに比べると大きめなものが多く傷もワイルドに比べ少なめです。

今日、写真でご紹介するのは、そのファームセーブルの中でも、ほんとに数少ないシルバリーの原皮です。通常、ワイルドの原皮には、シルバリーと呼ばれないものでも白い刺し毛が少しだけ混ざっているものがよくみられます。

しかし、ファームはワイルドに比べると白い刺し毛が混じるのは、ほんの僅かです。そのファームにも、ほんとにまれに白い刺し毛がワイルドのシルバリーのように綺麗に入るものがあります。

一般的によくみかけられるのは頭の一部分に不自然に入っているものが多くありますが、これは白い刺し毛が入っていたとしても、逆に価値がさがるくらいで、あくまで写真のようにバランスよく入っていることが重要です。

ワイルドのシルバリーもそうですが、なかなか同じタイプのシルバリーを揃えようと思っても、相当な枚数を仕入れてシルバリーのタイプやカラー、サイズ等を揃えるか、毎年でてくる同じタイプ(色、シルバリーの量等)シルバリーを根気よくストックしていくかしか、コートのバンドルにすることが出来ません。

この写真のファームのシルバリーも、何年もかかって集めているものです。まだコートを作れるほどはありませんが、ボレロからジャケットくらいなら作れるかもしれませんが、全て同じシルバリーのタイプとはいきませんので、もう少し枚数が増えるのを待っているところです。

このようにセーブルのシルバリーでガーメントを作ろうとすると、ワイルド、ファームどちらにしても原皮を調達するだけで、とても大きな労力が必要とされます。

資産を何年も寝かすという意味ではワインや他の熟成タイプのお酒に少し似たような部分もあるかもしれません。それだけ、一般のセーブルの商品と比べるとシルバリーのセーブルで作ったコートは価格や価値そのものが上がるのは必然なのかもしれません。

長澤

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アーミンのブリーチとホワイトニングの違い

前回のオーダーメイドの記事でアーミンのブリーチについて少しだけ書きましたが、今日は少し、このブリーチについてお話をしてみます。

このブリーチに似たような処理で、結果は大きく違うホワイトニングという処理があります。この二つの処方について私の経験で感じたことを書いてみます。

ホワイトニングは、あくまで白いところを青白くするという用途に使います。ですから、白とは言えないような色を純白にすることは出来ません。

ブリーチは白くないもの白っぽくする(結果ベージュっぽくなる)、または少し白っぽいが真っ白ではないという原皮をほぼ白に近づけるという用途に使います。

ではこのブリーチとホワイトニングの違いはなにかというと、ホワイトニングは白をさらに青みのある白にして純白に見せるということが出来、ブリーチはそれと比べると、白っぽいものをブリーチしても青白くはならず、どちらかというと薄いピンクっぽくなるか、薄いベージュのような、または生成りのような白になります。

ですから、あきらかな黄ばみのある原皮をホワイトニング処理しても青白くはなりません。なんとなく出来そうな気がしますが、出来ませんでした。

もう一つ付け加えるなら、サファイアミンクのような青味のある原皮をブリーチしても、青が薄くなって白に近づくのではなく、薄い茶系の色に変わります。私たちの髪の毛をブリーチしても黒髪がゴールドのような色になりますが、毛皮も同じで、全てどんな色をブリーチしても茶系になって色が抜けていきます。

簡単にまとめると、ブリーチは色をマイナスしていき、ホワイトニングは色をプラスしていきます。そう考えるのが解りやすいでしょう。

そして、ブリーチした毛の特徴として、強いブリーチをしたものは、人間の髪の毛と同じように痛みます。良い毛皮特有のボリュームがあってサラサラした毛さばきから少しガサガサした手触りになります。ホワイトニングでは毛が痛むことはありませんでした。

結果として言えるのは、アーミンの高いランクの、全体がほとんど白に近い原皮でも、わずかに腹やお尻は黄ばみがあります。それをホワイトニングで白くすることは出来ません。出来る部分は白または薄い生成りの白を青味をつけて純白にできるということでした。

これで解るように、どんなにランクの高い原皮を買っても、お尻と頭でジョイントすると、必ず白さに差がでますので白として使うにはたくさんのお尻と腹を落とさなければなりません。何故かアーミンは頭は真っ白のものが多いからです。

そしてその無駄がでる分、一着にかかる原皮の枚数も増えます。だからアーミンの白のコートのお値段は他の染色ものに比べて、かなり高くなります。

次回は、再度このアーミンの全体を真っ白にする方法が頭にありますので、それを試して見ようと思っています。もちろん、生成りやピンクっぽい白ではありません。純白にする方法をです。

 

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毛皮のオーダーメイド(原皮の調達) 

当社の仕事の大きな柱の一つにオーダーメイドというくくりがあります。いつか、このことについて書かなければと思っていました。

同業者のサイトをみても、どこにでも、リフォームとともにオーダーメイドの言葉が見つかります。要はどこでもやってることなのです。しかし、そのサイトの多くが、サイト構築のためのオーダーメイドであって、ほんとうにやっているようには見えてきません。

一般的には、貴方だけの一着を・・・世界で一着しかない・・・などと言うどこにでもあるようなキャッチコピーがあって、後は、いくつかの行程が記載されているというのが多く見受けられます。

本当にどの程度のオーダーメイドをやっているのかが伝わってこないのです。オーダーメイドを現実にやろうとすると、いくつかの大きな問題にぶつかります。

ひとつは、原皮をどう調達するのか?です。

オーダーが決まってから原皮を調達するのでしょうか?サンプルの原皮を一二枚見せて、あとは仮縫いの時まで探すのでしょうか?私も仮縫いまでに探すことはよくありますが、なかなか自分の目にかなった原皮が仮縫いまでに手にはいることは珍しいのです。

受注の時期が1月くらいであれば、来期までにということで信頼出来る取引先に調達を依頼することは出来ます。しかし、あくまで来シーズン用にお作りするということが前提です。

今期の受注ということになりますと、原皮屋さんに原皮が一番豊富にあるのは、毛皮の販売のピークになるシーズンとは大きくズレます。

私たちの大きな悩みはここにあります。オーダーという注文の受け方になると、確かにシーズンオフの時期にも受注は出ます。しかし、やはり一番お客様の気持ちが動くのは、シーズン直前の11月くらいからです。

この時期になると原皮屋さんの在庫はピークからは、ほど遠い状態になり、問い合わせしてもないものが多くなります。

そんなこともあり、ロシアンセーブル、ロシアンブロードテール、アーミン、チンチラ、ミンク各種などを広範囲にストックしなければなりません。

セーブルに限ってみても、ワイルド、ファーム、ゴールデン、ワイルドシルバリーというように種類があり、これをオーダーと謳う以上、小物程度を作る数量で済むはずもなく、相当枚数をストックしなければなりません。しかも、オーダーである以上はランクの高い品質のものをストックします。

ミンクのオスは大体は原皮屋さんで手に入るにしても、メスのコート用バンドルなどはどの原皮屋さんを探しても、簡単に手に入れることが出来ません。

あっても、色が変わった売れ残りのようなものしかないことが多く、結局、気に入った原皮は早めに抱えておかなければならないということになります。しかもコートバンドルです。少なくても40~50枚です。

それをミンクの色ごとに揃えるといったら、一体どれほどのストックをしなければならないのかと、本当に毎年どの色をストックするか悩みます。そして、今年の自分のお勧めとして自分が惚れ込んだ原皮を常時5~6種類ストックします。

それでもメスのミンクのオーダーが毎年、ストックしてたものがちょうどよく受注があるとは限りません。

ロシブロやアーミンに至っては欲しいときに手に入るものではなく、気に入った出物があるときにストックしておかないと手に入りません。

オーダーが決まってから調達では、なかなか良い原皮が手に入らないのが現実です。そして、お客様のために原皮の目利きも高いレベルが要求されます。

さらにバンドルで買って使った残りも必ず発生し、それを小物にしたり、ベストやショールにしたりと、残った原皮の用途も常に考えて使っていかなければなりません。

必要な枚数ぴったりに仕入れられれば無駄は出ませんが、ちゃんとしたものを作ろうとすれば、必ず余分に仕入れることになります。

このように、原皮の調達ひとつをとっても、会社の機能として、またはサイト上に、オーダーメイドと謳えば、これだけの問題と常に向き合わなければなりません。

写真はアーミンの原皮です。 シッポの先が少しブラウンになっていますが、これは軽くブリーチしたためです。ナチュラルのシッポの先は本来は真っ黒です。次回はパターン、その他の問題についてお話いたします。

長澤

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ロシアンセーブル・ヘビーシルバリー

今日は毛皮の王様と言われる、ロシアンセーブルをご紹介いたします。写真はロシアンセーブルのワイルド、カラー3番色、ヘビーシルバリーです。ワイルドのロシアンセーブルはカラー3から7まであり、3番色がいわゆるクロテンと言われるものです。

ファームセーブルほど真っ黒ではないですが、綿毛が程よい濃さで、その真ん中に黒いキャラクター(背筋)が通っています。良いものは青味があって特に綺麗です。今回のものはサイズ、色、毛質、どれをとっても最高のものです。サイズが大きくなると、どちらかというと毛は荒くなりがちですが、これはボリュームがあり、そしてシルキーです。

シルバリーには、スライトシルバリー、シルバリー、フルシルバリー、ヘビーシルバリーというように白い刺し毛の量によって段階が別れ呼び方が変わります。もちろん、価格も白い刺し毛の量が増えると、どんどん上がります。

一番多いのが、このどしゃ降りの雨のように沢山白い刺し毛がはいっているヘビーシルバリーになりますただし、白い刺し毛の量が一杯入っているものでも、色の薄いものは価値が落ちます。色の薄いヘビーシルバリーと、色の濃いフルシルバリーとでは色の濃いフルシルバリーのほうが断然価値があります。

最近は、こんな究極の原皮で作られた商品は一般の売り場では見ることができません。

売り場では、これよりも毛が弱く色も薄く、小さいサイズの原皮が製品になったものをよく目にしますが、おそらく産地が違うと思われます。産地については具体的には触れませんが、私も、そのタイプも持っていて、同じシルバリーでも雲泥の差があります。

写真でも、その凄さが伝わればいいのですが、現物は目がくらむほどのインパクトがあります。

長澤

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ロシブロの特徴

先日、ロシアン・ブロードテールのメンズコートの仮縫いの事を書きましたが、今回はロシブロ(ロシアン・ブロードテールの略称)の特徴を写真で説明しようと思います。

ロシブロの最大の特徴は、見る方向によって見え方(表情)が変わるという部分でしょう。そして、それは柄が大きければ大きいほど見る角度によって、まったく別のものに変わります。

色も、もともと天然のものを黒に染めたり、グレーの場合は皮の地肌を青く染めて白い地肌を隠すように仕上げています。そのためかどうかわかりませんが、黒もグレーも見る角度によって腑が変わるだけじゃなく色も微妙に変化します。

黒はは常に赤味や青味の染料の量によって微妙に光の反射の加減で変化します。そしてグレーも見る角度によっては青味が反映され紫っぽくに見えたりします。私はその魅力にはまってしまいました。そして買うときには、見る角度によって変わるその魅力(魔力)を求めて原皮を探します。

ロシブロの持ち味は毛が生えきらない段階での腑の面白さですが、一枚一枚全て個性があり、それを自然なかたちにつなげあわせることが私たち技術者の最大の仕事です。

自然な柄は、気持ちを込めて合わせようとすれば、不思議なほど一体感をもち大きな魅力を見る人に放ちます。思わず、わ~~っと言葉がでるような作品。それは、デザイン、毛皮の仕上がり、着心地、変身感などすべてを満たすこと・・・ それは常に私が目指す着地点です。

上の写真は一枚の原皮を左右別々の角度から撮ったものです。写真では魅力の全てをお伝えすることは出来ませんが、少しでもその美しさが感じてもらえれば嬉しいです。

長澤

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マーブルミンク

今日はとても珍しいミンクをご紹介いたします。

マーブルミンクでメスの3サイズです。ちょっと小ぶりですが、とてもショートナップ(刺毛と綿毛の差がない)で綿毛も短く、障り心地が抜群です。

通常、ミンクはホワイトミンクのようなもの以外は背筋が濃くなっていますが、これは背筋が逆に白くなっていて、周りが大理石のように茶色い模様が入っています。それが名前(マーブル/大理石)の由来です。

このミンクはアメリカの一つの飼育業者しか生産していませんので、国内でもあまり見ることはできません。価格は小さい割に3割くらい高いです。

現物は写真よりもさらに可愛い感じで私は見た瞬間に気に入ってしまい、思わず、買ってしまいました。何をつくるかまだ思案中です。

こうゆう柄の入ったようなミンクなので加工過程でのカットもデザインを充分に考えたうえで行わないといけません。優れた素材感を生かすことを考えるのが、とても難しいミンクです。

長澤

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ロシアン・ブロードテール

仮縫いのため久しぶりに都内へ出ました。メンズ・ロングコートのオーダーのお客様の仮縫いです。素材はグレーのロシアン・ブロードテールです。

既にお手持ちのお気に入りのコートと同じ形をご希望でしたので、1回目の仮縫いはお客様のコートを型抜きしたパターンで行いました。

お客様のコートを着用していただいた時に裾がおがんだ状態だった為、パターンが悪いのか、それとも生地の柔らかさ・重さが原因なのか判断するために、そのまま型抜きしたパターンで仮縫いを行いました。着用していただくと、やはり裾がおがみました。原因はパターンにあったようです。

今回はその修正を確認するための仮縫いでした。結果はうまくいきました。男性の方は肩の筋肉がたくさんついていることが多く、実際にはなで肩ではないが、結果としてなで肩のようになってしまう場合があります。

今回もそのパターンでした。首から肩にかけて筋肉がついていると、前後の中心が持ち上げられてしまいます。その結果、前は重なり・後中心は角が出るか、アームホール部分にハの字のしわが出ます。

修正後は、前後のアームホール部分も綺麗になり、前のおがみによって起きていた正面からみた裾すぼまりな状態も解消され、綺麗なフレアーになりました。

素材はグレーのロシブロですが、皮も柔らかく、腑はうねるような豪快な柄で仕上がりが楽しみです。

長澤

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