原皮の保管方法と毛皮のクリーニングとの関係

劣化に関する最新記事をアップ致しました。是非見てください。https://www.passione.co.jp/blog/%e6%af%9b%e7%9a%ae%e3%81%ae%e6%ad%a3%e3%81%97%e3%81%84%e4%bf%9d%e7%ae%a1%e6%96%b9%e6%b3%95%e3%81%a8%e5%8a%a3%e5%8c%96%e3%81%ae%e6%84%8f%e5%91%b3/

今日は、原皮の保管方法と毛皮のクリーニングとの関係と言うテーマです。

一般の方には、あまり関係のない話ですが、原皮をある程度大量に抱えている会社にとっては大事なことです。

私のところでも、会社の規模も小さいですし大量に商品を生産して大量に販売するというわけではありませんが、そんな私のところでも在庫をエクセルで管理していますが、小さなアーミンのような原皮も含めると2,000枚は楽に超えます。

当然一年で使い切ることはありません。

そう考えると何が一番大事になるかと考えると、原皮の状態を徹底してベストの状態で管理することです。

チンチラのように元々、劣化がしやすい素材はクロム鞣しという処理を染色屋さんでしています。これは染色などのための前処理として耐熱効果を出すための処理ですが、劣化防止にも使えます。

今期、初めてですが、セーブルやミンクの一部にもクロム鞣しをして劣化防止をしようと試みました。しかし、クロム鞣しのために少しグレーっぽく色がついてしまいます。セーブルのように元色が、そこそこ濃いものは良いのですが、ホワイトミンクや薄い色のミンクにはクロムの色が少しついてしまい、ホワイトやパールミンク等の原色としては使えません。

敢えてグレーっぽくしたいなら良いのですが、ナチュラルの色としては、わずかにグレーっぽく、くすんだ色になり難しいのです。

それと皮が少しだけ硬くなります。通常の毛皮の鞣しは、ドレッシングと呼ばれていますが、要はドレスのように柔らかく鞣すということです。

クロムを入れて耐熱処理をした皮は少しだけですが硬さがでます。

そんなこともあって染色用のホワイトミンクはクロム鞣しする意味がありますが、ナチュラルの色のまま使うパールやサファイア、ブルーアイリス等のミンクにはクロム鞣しをかけることが出来ないことが分かりました。

劣化防止にはクロム鞣し以外にもう一つあります。これは、やったことがない人には、毛皮業界の人と言えども理解できませんが、以前書いたことがありますが、鞣し屋さんのひとと話すと意見が一致した方法があります。

その方法は鞣しの最後の工程で毛皮の脂をドライクリーニングの機械で抜きます。この抜く作業によって毛皮から余計な脂が抜けて、皮の表面もカラッとした状態になり、空気中の湿気を吸収しなくなります。

もちろん、一般のレベルのドライクリーニングでは、私の感覚としては、まだ全然不足していますので、鞣し屋さんに再鞣しをしてもらい最後のドライクリーニングのときに少し強めに脂を抜いてもらいます。

自分でやる場合は、オガに有機溶剤をたくさん混ぜて、毛皮用のドラムに原皮と一緒に入れて三日間くらい回します。ドラムを回し始めて三日目に入ったところくらいから突然柔らかくなりだします。そして、ドラムのなかで有機溶剤が自然に気化するのを回しながら待ちます。

その後、ドラムの蓋を網の蓋に替えてオガを落としながら徹底して乾燥させ、原皮の筒状の中に入ったオガも綺麗に落ちるまで回します。

こうして、通常の鞣し上がりのときの、皮に含まれた脂が多いかなと思った状態から、触ってもサラサラいうような気持ちのよい感触になり、湿気のある国内での原皮の長期保管に適した状態になります。

よく、長期保管したミンクの原皮の皮が硬くなり、ミンク本来の柔らかさや風合いが無くなり、ミンクの束も以前より重くなった感触のときがあります。

もともと仕上がった少し多めの脂が入った状態のミンクが長期間、動かすことなく同じ場所で保管されたことで湿気を吸ったまま皮がわずかに硬化してしまうことがあります。

鞣し上がったばかりの柔らかく軽やかな状態から変わることがあるのです。

これは湿気を吸収して、その湿気によって皮が硬くなるからです。私たちの毛皮加工の中で水を使って皮を伸ばしたり曲げたりして毛皮を加工することがありますが、この原理と同じです。濡らすほどではないので加工の時のように固くはなりませんが、同じことが原皮の保管の時にも起こります。

これを防ぐには水分を吸収し難い皮の状態にするしかありません。

そのためにドライクリーニングをしています。

このことは、自分のリスクで何年も仕入れた皮を保管し、自分で良いと思った方法が正しいのかどうかを何年もかけて見続けて確認する必要があります。

今、現在私がやっている方法が現時点での最良の方法と考えていて、この考えのもとにクリーニングもしています。

私の中ではクリーニングが一番の目的ではなく皮と毛の状態を管理することで皮に匂いがついたり劣化したりしないようにし、毛皮本来の魅力が持続することを目的とするためのクリーニングなのです。

毛皮の毛も確かに汚れます。しかし、毛は意外に洗って落とすことが可能です。私のインスタグラムのロシアのフォロワーもバイオクリーニング剤を使って毛の表面から洗っている動画をよくみかけます。

ただ、残念なのは毛皮大国のロシアでさえも皮に一番のリスクがあることを理解していないように見えます。もしかしたら気候の違いで皮が湿気で酸化したり匂いが発生したりしないのかもしれません。

皮の部分の管理は、毛皮にとってかなり重要であり大変です。

正直、私も、最初は表の毛を綺麗につくることばかり考えていました。

25年以上もですよ。しかし、10年くらい前だったかもしれませんが、あるとき、いくら綺麗に作っても毛皮本来の魅力を引き出すのには皮そのものの状態をベストにしないと毛皮本来の魅力が引き出せないことに気が付きました。

技術的なノウハウや道具がそろったのが、ようやくです。ほんと、ようやくここに来て、いろんな問題が人に頼らず自分で解決できるようになったところです。

このコロナになったことや、そのことで某百貨店毛皮サロンを辞めさせてもらえたことで、これまでよりも時間が出来、考える時間を貰えたことで時間のかかる試験をすることが出来て、なんとなく、あ~こんな感じかな、、と思えるようなところに辿り着きました。

誤解されるかもしれないので一言付け加えますが、今まで作ったものがダメだったということではありません。

ただ、毛皮は鞣す作業も手作業ですので、常に私が望む皮の状態とはいきません。どうしても、今回は皮が厚いな、、とか、今回は皮が脂っこく重いな、、とか都度変化します。

じゃあ、鞣しのせいにして、しょうがないと言って、自分が納得していない状態で作業を進めるのかという問題にぶつかります。

自分の場合は、そのまま先に進めないので皮が厚ければ薄く鋤こうと思い回転アイロンという機材を使って皮を鋤いたりするわけです。

脂も抜きたいと思えば自分で抜く方法を考えるだけなのです。

誰も拘らないところに拘り、執着して来ましたが、ようやく100%とはいきませんが、そこそこの平均値を出すことが出来るところに近づいたような気がします。

以前よりも時間も手間もかかりますが、前工程の誰かのせいにすることなく自分で解決策をみつけられたことは大きいです。

原皮の保管と毛皮のクリーニング、離れたテーマのようで、とても近い距離にあり毛皮の本当の魅力を引き出すための大事な部分なのです。

長澤祐一

オガの汚れ具合と吸収力 その2

毛皮のクリーニングで使うオガの保湿力と吸収力 という5月12日の投稿でクリーニング関係の投稿は最後にしようと思っていましたが、また新しいことがあったので書いてみます。

今日のタイトルは オガの汚れ具合と吸収力 その2 というタイトルです。

数回前の オガの汚れ具合と吸収力 という投稿でオガを洗ったときの水の真っ黒になった画像をお見せしましたが、今回の洗濯機の中の水は、黄色く濁っています。前回とは洗うものが違うことで汚れる水の色もはっきりと違います。

 

前回は、染色の内容が酸性染料なのか酸化染料なのかはわかりませんがブラックのコートのクリーニングをしたオガでした。そのため洗濯したときの色は真っ黒です。もちろん毛から色がほんの少しは落ちしますが、実際にたくさん落ちているのは皮からです。

今回は通常の染色していないナチュラル素材のミンクコートをクリーニングしたオガです。

そのため今回の汚れた水の色は黄色っぽく濁った色でした。鞣し屋さんが皮を鋤くときにグリスのような油を皮に染み込ませて皮を膨らませて皮を鋤くと聞きますが、そのグリスのわずかに残っている分が有機溶剤で溶かされてオガに吸収されたものなのかどうかはわかりません。オガに吸収された汚れかもしれませんが、明らかに黄色い色です。もしかしたらオガそのものの色もあるかもしれません。しかし、それにしては異常に黄色く濁っています。

下の二つの画像の上の画像が今回のもので下の画像が前回のものです。画像では差がわかりにくいですが実際には上の水の色は油を溶かしたようなはっきりとした黄色の色で、下の画像は実際は真っ黒でした。おそらく、上の画像の汚れた水にプラスして黒の毛皮の皮についた染料が落ちたものだと考えられます。追記しますが、毛皮の酸性染料は毛にはしっかりと吸着しますが、皮には染料が刺さるような状態で付いていますので、このようにオガに染みこみやすいのです。決して毛皮の毛についたものが落ちる訳ではありません。

 

洗剤は前回同様、一般の洗剤では香料が入っているので、無香料のバイオクリーニング剤を使いました。お湯に粉を入れると強く炭酸が出るように泡立ちます。重曹と似ていますが、詳しくはわかりません。

バイオクリーニング剤で通常の油汚れを落としてみると確かに油が分解して落ちてしまいます。ですから、オガが吸収した脂や油を溶かして取り除くことが期待できます。

オガは、このバイオクリーニング剤を使った洗い方で数回繰り返して洗ってから濯いでいます。徐々に水が透明になっていき最後は無色透明の水になります。

 

乾燥も今回は扇風機をあてて乾かしていますが、やはりかなり早く乾燥します。前回は二か月以上かかりましたから。

 

今日はもうひとつ大事なテーマがあります。

前回洗ったオガで、原皮を長期保存用に有機溶剤にて脂を抜いてみました。結果は驚くほど綺麗に脂も落とせ柔らかさと軽さも出ました。

洗ったばかりのオガの効果と数回使ったオガとの効力の違いがはっきりでたと感じます。

洗ったばかりのオガと、数回使用したオガの匂いも明らかに違いがあります。洗ったばかりのオガの匂いはヒノキの匂いだけで、それ以外の匂いは無く無臭ですが、使用済のオガの匂いには、ヒノキの匂い以外に別の匂いがします。

 

ここ何回か試していることですが、オガと有機溶剤でドライクリーニングをしますが、このドラムを回す時間にも脂が綺麗に抜くための方法がありました。

オガは有機溶剤によって最初は濡れた状態になり、その濡れた状態のオガが毛や皮に付着して有機溶剤が皮や毛に少しずつ染みこんでいくわけですが、最近分かったことなのですが、オガに染みこんだ有機溶剤が毛皮に移動して毛皮の毛や皮の脂を溶かし、オガがさらにその脂を吸収していくのですが、そこで止めると中途半場な状態で終わってしまうことに気づきました。オガドライの効果をパーフェクトに引き出すことが出来ないような気がしました。もちろん、これは肌感覚でしかないのですが。

わずかな違いですが大きな違いです。

 

途中で止めずに、毛皮の脂を吸収したオガがドラムの中で少しずつ気化していき、ドラムの中でほぼ乾いた状態になるまで丸三日くらい回すのです。こうやって時間をかけて少しずつ脂を吸収した有機溶剤が気化するまでドラムを回します。

私のところのドラムは、クリーニング屋さんのような完全密封ではありません。ドラムが木製でできていることで、ドラムの蓋のわずかな隙間や木のつなぎ目または木の材質そのものから自然に有機溶剤が飛んでいくのかもしれませんが、時間をかけて徐々に気化していきます。

ドラムの蓋を網に変えて、オガを落とすのはオガが完全に乾いてからです。こうすることで毛と皮からバランスよく汚れや脂が取れて柔らかくなります。

毛からも脂が取れることで今後の毛の黄ばみとかも軽減するはずです。

前回投稿でも書きましたが、こうすればこうなるというような空想のようなものですが、何年もかかって黄ばみが出るものを時間単位で見続けることは出来ませんので想像するしかないのです。それでも、やらないよりはやった方が効果があるといえるものはやるべきだと考えています。

毛皮の作りも奥が深いのですが、この毛皮のドライクリーニングという作業も作りに大きく影響し毛皮の商品化にも最も大事な部分と私は考えています。少し、変人的というくらい、このブログでもたくさんクリーニングについて書いていますが毛皮の状態が上手く調整できると作業の半分くらいが終わったように私は作るときに感じます。

一般の技術者でもアトリエにきて原皮を見れば、その大きな違いがわかります。もちろん、素人の方でも見れば、いい状態になった原皮がいかに綺麗かが理解できます。見たいと思う方はいつでも連絡ください。    長澤祐一

毛皮のクリーニングで使うオガの保湿力と吸収力

今日は、オガの保湿力と吸収力です。

前回のオガの汚れ具合と吸収力(2022年3月25日)の続きになります。

 

やっと、前回紹介したバイオクリーニング剤で洗ったオガが完全に乾燥しました。前回のときにすでに二週間経っていましたので、ほぼ二か月間、完全に乾燥するのにかかったことになります。

 

ヒノキの匂いは消えていません。一般的にプロの間で言われているオガの外側のチャカチャカした部分は取れてしまっているのかもしれません。顕微鏡で見ればわかるのかもしれませんが、顕微鏡がないのでわかりません。ただ、以前からオガのチャカチャカした毛羽立ちが汚れを取るともいわれていますが、その効果は明確にはわからないのです。

 

私がオガに求めているものは、一般的な毛皮のクリーニングで使うような、簡易的に効果も期待できないような安易な使い方ではなく、毛皮の毛と皮の両面を徹底的に洗うための、汚れや皮や毛に含まれる脂分を取り除くための用途としてのものです。

 

そのため、今回オガを水洗いしてみてわかった水分の吸収力や保湿力は十分な結果だと判断しています。

以前、洗った時には単純に水洗いをしました。その理由は、最近の洗剤のほとんどが香料が入っていてオガの洗浄には使えないからです。今回使ったバイオクリーニング剤は無香料なので安心して使えました。

それと、以前に洗ったときの乾燥方法は、セメントの上に布を敷いて、そこにオガを敷き詰めるようにして乾燥しましたが、その時の乾燥時間は早かったのですが、セメント側から雑菌が入ったせいか、乾燥中にカビが発生してしまいました。

そのため、今回は深さのある大きな容器に入れて乾燥してみました。表面から乾燥して白くなっていき、そのため毎日数回はオガを中から混ぜるようにして乾燥しています。今回は雑菌が入らずカビの発生はありませんでしたが、乾燥に三倍以上の時間がかかりました。

オガの価格からみても、この洗って再利用する意味はない気がしますが、オガの誰も知らない本当の能力・効果を見極めるには大事なことでした。

 

以前も書きましたが、私の毛皮クリーニングのなかでオガに求める役割は、汚れを吸収して毛皮の皮に戻さないための吸収力と保湿力でしたので、完璧とは言えませんが、私が想定していた役割は担ってくれているようです。

前回書き忘れましたが、前回クリーニングしたコートはブラック強化染めのコートでした。そのため、あれほどまでに水が真っ黒になったのかもしれません。しかし、逆に言うと、それくらい皮から染み出してオガに染料が吸収されたことが証明出来ています。

最近、毛皮の染色もやることにしましたが、毛についた染料は簡単には落ちませんが、皮面についた染料は皮面に染料が刺さっているような状態ですので落ちやすいとも言えます。その皮面についた染料が前回クリーニングでは落ちたことが証明されています。

 

毛についた染料は簡単には落ちません。落ちるとすれば60度前後のお湯のなかで、ペーハーを上げてアルカリ性に変えていくと色は落ちていきますが、普通の水につけたくらいでは落ちません。

 

上に書いた60度のお湯を使うとありますが、普通の状態の毛皮ではだめですから絶対にやらないでください。染色屋さんではクロム鞣しという前処理をしてからやります。クロム鞣しをしないでやるとお湯の中で縮んでカチカチに固まってしまいます。

 

話それました。クリーニングのために使うオガの役割としては、濯ぐときの水の役割ですので、一般的な毛皮のクリーニングで使う少量のオガでは汚れを有機溶剤で溶かして、その汚れや脂分を十分に吸収するという一番大事なことが出来ません。

写真の上が今回洗ったオガです。一回で最低でもこれくらい一着のコートを洗うのに必要になります。

下の写真は、上で書いたコンクリートの上で布を敷いて乾燥した時のものです。この乾燥でカビが発生してしまいました。

 

 

今流行りの言葉に持続可能というのがありますが、ただ、形を変えるだけのリフォームでは、持続可能とは言えません。毛皮を持続可能なものにするために必要なことがあります。

 

丁度、クリーニングや保管の時期になって来たところですが、時々は毛皮のことを思い出してケアーのことを考えてみるのも良いかもしれません。

 

長澤祐一

オガの汚れ具合と吸収力

今日は先日の、オガの一般的な効果と可能性というタイトルの続きです。

一般的に通常の鞣しで毛皮をドライクリーニングする場合にはオガが極端に汚れることはありません。

 

そして一般的な毛皮専用と言われているパウダークリーニングでも、多少の有機溶剤を使うと書いてあるところもありますが、極少量の有機溶剤とオガでコートの表側だけをクリーニングするだけなら、ほとんどオガが極端に汚れるということはありません。

私がやっているリフォーム時にせっかく裏地や付属を外したのであれば、皮裏面も含め徹底したクリーニングが出来ればと大量のオガと有機溶剤を使ったクリーニングは、これまでのクリーニングとはまったく違うものです。

写真を見ていただければわかります。

これは一度クリーニングしたオガを試しに洗ってみました。洗う方法は前回書いていますので省略いたしますが、洗濯機のなかの水は真っ黒になります。毛皮は水でジャブジャブ洗ったりすすぐことができませんので、皮や毛に染み込んでいる脂や汚れと匂いなどを有機溶剤で溶かしオガにしみ込ませ吸収するということをしますが、クリーニング後にオガを見ても、多少黒く変色しますが、実際のところどれくらい汚れが落ちているかはわからないのです。

そんなこともあってオガを洗ってみました。オガの価格からいえば、大きな袋で2,000円くらいなものですから洗う手間より買ったほうがはるかに安く上がりますが、オガが実際に汚れを吸収しているかどうかを知るには、このように洗ってみるしかないのです。

さらに、もうひとつ今回の実験で分かったことがあります。オガの水分の吸収力というか保湿力というか、とにかく乾燥しているのですが、すでに二週間以上経っていても、まだ半分くらいしか乾きません。やっとサラサラになってきましたが、まだまだ湿気を含んだままです。

洗ったらヒノキの香りは無くなるかと思いましたが、まだまだ十分にヒノキの香りがします。

リフォーム品によく見られがちな強い匂いも、このヒノキの消臭効果によって強いカビ臭さが取れているのかもしれません。

毛皮にも様々な技術が受け継がれてきていますが、その技術の意味も考えずに継承するということもよくあります。

オガについても以前から毛皮のムダ毛を取ったり汚れを取ったりすることに効果があると言われていました。ただ、それは以前から受け継がれてきた技術であり自分の努力から導き出したものではないのです。

そんな意味もあって、今回のように実際に自分で、その効果を検証してみるということは自分の技術への自信を深めるという意味でも大切なことです。

これまで毛皮のクリーニングにつきましては何度も、このブログで書いてきましたが、今日の投稿で、今後新しい発見がない限りは一旦終了といたします。毛皮という難しい素材のなかでもクリーニングは特に技術を極めるという意味では難しい作業です。この難しいテーマを継続して読んでいただきありがとうございました。

 

次回以降は、また新しいテーマを見つけてブログを書いてまいります。

最後にもうひとつだけ、、 毛皮にとって正しいクリーニングができるということは、とても大事なことです。最後にそのことだけお伝えいたします。

長澤祐一

 

 

 

オガの一般的な効果と誰も気付かない可能性

今日のタイトルは、オガの一般的な効果と可能性です。

私もオガの科学的な知識はありません。あくまで使ってみた経験から得た知識でしかありません。

何十年も前のことですが、大量のオガを使ってフォックスのエリを綿や裏地を付ける前にかけたことがあります。私が毛皮を初めて四年くらいの頃だと思います。当時新しい工場の立上げに関わり、大きなドラム(毛皮の毛を取ったりクリーニングするための機械)が導入され試験的にオガでフォックスのエリに加工されたものの毛取りをしたことがありました

 

そのときのオガで毛を取り除かれたフォックスのエリの綺麗さは、今でも私の記憶から無くなっていません。目的はフォックスをカットして製品内に残った無駄毛を取り除くということだけなのですが、現実にはそれ以上に製品そのものの魅力というか、毛皮の魅力が最大限に引き出された状態で、大きな感動とともにその効果のすごさにショックを受けたことを覚えています。

一般的にはドラムという機械を小さな加工屋さんでは持つこともなく製品化されていらっしゃるところも多かったり、ドラムがあっても、毛皮の仕上がり時にわずかに加工時にでた毛を取り除くためだけに、わずかな時間をかけるだけのところが多いのですが、本来は、加工時に水を使うことで皮が硬化したものを柔らかくしたり、加工時に汚れた毛を綺麗に戻すという大事な役割があり、ドラムとオガの組み合わせは想像以上のものが存在します。

 

もちろんすべてのひとがオガとドラムによって仕上がったものに感動するとは限りません。しかし、最低限、作る側の人間ならばその効果を感じられる必要があります。

 

オガについては一般的に専門家の間では、オガの周りについている細い繊維(チャカチャカと飛び出ていると言われています)が毛のほこりや汚れを引っかけて取るともいわれています。そして、そのチャカチャカが無くなってしまうと、オガの効果はなくなるとも言われています。

鞣し業者さんでもオガを繰り返し使い、オガの交換の時期をそのチャカチャカが無くなった頃と判断しているようです。ただ、これは実際には顕微鏡でオガを見るようなことをしているかどうかはわかりませんので、おそらくですが経験的に何回使ったら廃棄するということになっているのだろうと推測しています。

ここで次に私のところでの使い方を記載してみます。

一般的には鞣しやさんで使う場合には、新しい原皮を仕上げるためにオガをつかいます。しかし、私のところで使う目的は商品化したものに対して使う一般的な使い方と、もう一つには古い毛皮、例えばリフォーム品などの皮や毛が極度に汚れたものを洗う場合にも使います。

そのためにオガについているチャカチャカによって毛の表面についている汚れだけを落とすだけではなく、以前も書きましたが、有機溶剤を同時に使って毛に付着している脂汚れや皮についている匂い成分や実際の汚れも落とします。

ずっと悩んでいたことがあります。

本当に、自分が想像した通りに、有機溶剤で皮や毛から溶け出した汚れが落ちているのだろうか?? 通常の洗濯の中で使われる濯ぎの時の水の役割をオガがしているのだろうか?という疑問をどこかで解決しなければなりませんでした。

 

そのために以前一度やったことがあるのですが、そのときに写真を撮ることを忘れてしまったり、洗う量が多すぎて上手くいかなかったこともあり、再度、オガを洗ってみて実際にどの程度オガが汚れを吸収しているかを確認してみました。

結果は想像通り、水は真っ黒になりました。

最近の洗剤は香料がついていることもあり使用せず、さらに、有機溶剤で溶け出した脂をオガが吸収しているとすれば、汚れとともに脂も溶かす必要がありますので、脂を落とす方法として、最近流行りのバイオクリーニング剤を使いました。洗濯機のなかにお湯をため込みバイオクリーニング剤を入れて水となじませてから、シーチングといわれる綿の平織りの生地に入れたオガを洗濯機の浴槽に入れて回しました。

 

結果は次回、写真でお見せいたしますが水が真っ黒になりました。有機溶剤は一般的な油も落とせますが、毛皮で使われるアブラは油ではなく脂なので油よりもさらによく溶かすことができ、オガに吸収されます。

但しです、脂、いわゆる樹脂製のものなのですので水だけで充分落とせると思い、鞣し屋さんからも専用洗剤を譲ってもらい、洗いましたが私が望むような落ち方はしませんでした。やはり一般的なドライクリーニングで使う規制のかかった有機溶剤でなくとも最低限有機溶剤である必要があることは経験でわかりました。

 

今回使った家庭用のバイオクリーニング剤は、例えば台所のガス器具周りの油汚れも落とせることで、強い油の洗浄力があることが解っていましたので、オガに汚れとともにしみ込んだ脂くらいは溶かすことが可能であろうと推測して使用しました。

 

以前やったときには、単純に水だけでしたが、今回はバイオクリーニング洗剤を入れましたのでやはり水の汚れかたが違っています。

 

ここで一度、オガに有機溶剤で溶かされた汚れが吸収されることがわかりましたので、ここでこの話は終わります。

 

今回のタイトル、オガの一般的な効果と可能性の、可能性という部分の話をしてみます。

 

前回も苦労しましたが、洗った後のオガの乾燥が問題でした。今回もそうですが、完全に乾燥するまでにひと月以上かかります。乾燥する専用の機械でもあればいいのですが、普通に表面を広くして広げて乾かしてもなかなか乾きません。

逆に考えると、保湿効果が高いとも考えることができ、その強い保湿効果で、有機溶剤によって毛皮の毛や皮から溶け出した汚れをオガが強力に吸収してくれるということが推測できます。

一般的な洗濯のように水をどんどん入れ替えて濯ぎをすることができませんので、オガに汚れを吸収する能力が高いということは、今回のテストでわかりましたが、とても大事なことなのです。

 

最後に少しだけ書きますが、前回の投稿二日後に起こったロシアのウクライナ侵略戦争が始まって以来、インスタグラムで知り合ったウクライナの友人二人の安否を毎日インスタグラムでのオンラインで確認したりメッセージで数日はやり取りしていましたが、さすがにメッセージを確認してもらう時間もないだろうと、ただひたすら相手のオンライン状態で相手の生存を確認するという状態が続きあっというまに20日間経ってしまいました。

さらにはインスタグラムでブロックされてしまったロシアの友人も、アメリカに移住したいと言っていたりして、しかし、アメリカは毛皮産業にとっては厳しい地域だったりと、自分のことも含め今後のことを心配する日々が続いています。

今はひたすら、ウクライナの友人の無事とロシアの友人の今後の仕事の無事を祈ります。

 

次回、今回つけることができなかった画像を上げたいと思います。

昨年四月から、再度書き始めたブログです。やっと一年近く経ってグーグルなどの検索にも引っ掛かりやすぐなってきていますので、ここで止める訳にもいきませんので、また再開いたします。

今日のオガの可能性については、今後も他では絶対に得られない、誰かに聞いた話を書くということではなく、私が実際に確認したことを書いてまいります。またこのブログに来てもらえると嬉しいです。

 

長澤祐一

 

毛皮のドライクリーニング 毛皮の皮から脂を抜く難しさ

今日は、毛皮クリーニング 毛皮の皮から脂を抜く難しさ というタイトルです。

一般の方には、すごく解りずらい内容ですね。

 

私のブログでは何度も書いていますが、

簡単にいうと、毛皮は皮の脂を抜き過ぎると、干物のようにカチカチになります。ほんとのことです。するめイカのようになります。

毛皮を鞣すというプロセスがあります。業者さんは鞣しをそのままプロセスとも呼んでいます。

この鞣しのときに入る脂の量というか、脂の抜き方で毛皮が商品になったときの仕上がりとその後の保管による毛皮の皮の部分の硬化や劣化に対して大きな差が出ます。

この脂の入り加減に三つのパターンがあります。

 

一つ目は、脂を抜き過ぎると、するめイカのようにカチカチになります。そのままでは加工することも商品にすることも出来ません。抜き過ぎると本当にカチカチになります。

 

次に、脂が適度に入っている、、、言い方を変えると適度に抜くが正しいかもしれませんが、実際に適度に抜かれた皮は、湿気も吸収しにくく、柔らかく、さらにさらっとしていて、乾いた感じがします。

ただ、この状態はすごく幅がせまく、鞣しやさんがやるドライクリーニングでも、なかなかピッタリにはなりません。でも、この感覚を触って分かるようになるには、豊富な経験が必要です。何度も様々な条件の皮を加工して仕上げてみて初めて分かることです。単に何千本と毛皮の皮を触っても理解することはできません。

 

最後に一般的によくあるタイプで、脂が残り過ぎの状態です。ほとんどがこの状態です。この状態は、鞣し上がりの初期状態はとても柔らかくてよさそうに見えます。しかし、時間の経過とともに湿気を吸収して、徐々に硬さがでます。原皮屋さんが長期保管した毛皮のほとんどが硬く湿気を吸収して重く感じるのは、このことが原因です。しかし、鞣し上がりのときはすごくよく見えます。

 

このように原皮の段階でも、上に書いた三つの状態があります。

 

それではどうして、二番目の一番ベストの状態に、なかなかできないのか?ですが、鞣し屋さんで使っているドライクリーニングの機械は、大型で溶剤だけで毛皮を入れて回し、気化した溶剤を再度、液化する装置が付いていて、ドライの効果も強く、そして早く脂を抜くことができます。

ただ、この早く抜くことが出来るというところに、もしかしたら微妙なコントロールが効きにくいのかもしれません。私は実際にやってみていないので明確なことは言えませんが、抜き過ぎて問題になるより、抜きが少し足りないくらいが一番コントロールしやすいのかもしれません。

そういう意味では、私がやっている通常の毛皮用のドラムで、オガと有機溶剤を混ぜて、少しずつ長時間かけて脂を抜くほうがコントロールが効きやすいとも言えます。

実際に、市販の有機溶剤を使って、毛皮の皮をびちゃびちゃに濡らして絞り、そのまま乾燥すると、カチカチになります。

ドライクリーニングの機械ではジャブジャブ有機溶剤で洗い、ドラムの中で回転させながら乾かすのだと思いますが、回転させながら有機溶剤を気化させますので一旦は柔らかくなりますが、仮に抜き過ぎたとすれば、水に濡らすとカチカチになります。ただ、このへんの最終仕上げ方の詳細は私は分かりません。想像です。

ただ、私がやっていることは想像ではなく事実です。ベストの状態というのは、すごく範囲が狭く、脂が残り過ぎると湿気を吸って重くなったり硬化したりしますし、抜き過ぎると逆に硬くなります。本当にベストの状態は難しいのです。

ですから、効率は悪く、時間はかかってもゆっくり時間をかけて抜くしかないのです。そのためにリフォーム前にやるクリーニングはドラムに丸二日間入れて回しながら自然に有機溶剤が気化して自然に乾燥するまでドラムに入れるのです。

ただ、私がここに書いているようなことは、誰も気にしてはいません。

ここまでやっていることさえ、一般の業者さんには、このブログを読んでも理解もできず、信じることもないのかと思います。

皮をギリギリまで薄く鋤くことや、長期の柔らかさを維持するための皮に入った脂の量を調整したりすることは国内どころか海外でさえも、誰も気にしていないのが現実です。

もちろん、これだけでパショーネの商品が綺麗に見えるわけではありません。実際に作る感性と技術があっての現在の品質ですが、同じように私が作っても皮の状態の悪いものは、同じ仕上がりにはなりません。

それだけははっきり言えます。それくらいに皮の状態が仕上がりに影響します。

今日書いたことは、理解してもらうのには、かなり難しいテーマでしたが魅力的な毛皮にするという意味では、すごく大事な問題です。

 

長澤祐一

 

追伸  先日、鞣しの技術者さんと話をする機会があり、皮を鋤くためには鞣し用の油を入れるらしいです。脂ではなく油です。その油の目的は、皮を鋤くときに毛根を切らないようにするために皮を膨らませる目的だそうです。油を皮に塗って染み込んだ後にコーンスターチを溶かしたものを塗ってさらに皮が膨らむようにするようです。その時に使った油を抜くためにもドライクリーニングが必要だとも言っていらっしゃいました。頂いた電話で40分も話し込んでしまい、申し訳ありませんでした。そして互いに知識を深められたこと嬉しく思いました。いつかこのことは別に書きたいと思います。

 

毛皮のパウダークリーニングの疑問、そしてクリーニングが出来ることの本当の意味

こんにちは。投稿の間隔が少し短いですが、前回が結構空いてしまったので、今日もアップします。

これまでも何度も一般的な毛皮のクリーニングで使われている手法のパウダークリーニングを施されているコートのリフォームをしてきましたが、最近ようやく少し理解できたことがあります。

私のところでも、リフォームを依頼されることがあります。最近気づいたことですが、コートを解体して最後に作業台の上に、小さな粒が残ります。粉というよりもさらに大きな粒なのですが、クリーニングで使うおが屑とも違います。確定は出来ませんが、毛皮のクリーニングで一般的に言われるパウダークリーニングのパウダーと言われる粉だと思われます。それ以外に毛皮のコートの中に入るものはありませんから。

よくオガ屑も一緒にコートの中に入ることがありますが、今回はオガ屑ではなく小さな粒がたくさん、コートを解体した後に作業テーブルの上に残りました。以前もよくありましたが、このコートのお客様に聞いたところ、随分昔に二回ほど毛皮のクリーニングに出して、そのまま保管していらしゃったようです。

今日の一番のテーマは、毛皮のクリーニングをする業者さんが、クリーニング後の結果をほとんど知らないという事実です。しかし、それはしょうがないこととも言えます。クリーニング後に、その自分がクリーニングしたコートをじっくりと見ることがないからです。

一般的に使われている毛皮クリーニングの手法、パウダークリーニングを誰が最初に考えたのかは分かりませんが、今実際に作業している人たちは、きっと何も考えることもなく疑問も持たずに作業をしているのだと思います。もちろん責められることではありません。しかし経営者は今のパウダークリーニングが本当に効果があるのかは検証する必要があると私は思います。

私も、過去に毛皮クリーニングについて、かなりの量の記事を書いていますから、都度書いたものに責任を感じてはいます。

毛皮は本来クリーニングするものとしては、かなり特殊なものです。一般の布帛以上に都度取り扱いを分ける必要があります。

話を戻しますが、作業をする人がなんの疑問も持たずに作業をして良いと言えるほど本来は簡単な素材ではないのです。もちろん、作業しているひとがこの記事を読んだときに、肯定するか否定するかは分かりません。しかし、何割かの人は確かに、、、と思うはずです。一般的には作業効率が何よりも優先するのが当たり前ですから、敢えてパウダークリーニングを否定はしませんが、今現在、国内で主流になっているパウダークリーニングには問題も多く含まれていると私は感じます。

毛皮のクリーニングは基本的には裏地が付いた状態であれば、オガや有機溶剤、またはパウダーと呼ばれるものを使ったとしても、絶対に手洗いして、オガやパウダーを払い落すためにドラムにかけるというのが正解でしょう。考えれば当たり前のことです。

オガやパウダーと一緒にドラムにかけたら、絶対に裏地と毛皮のまつり口からオガやパウダーとよばれる粉がコートのなかに入ります。おそらくですが、いや絶対と言いましょう。業者はそのことを知っています。知っていて知らぬふりをしています。絶対です。こんな簡単なことが分からないはずはありません。それでも、それしか方法がない、、、 儲かる方法ですよ。儲かる。それしかないと考えてパウダークリーニングをしています。

私のインスタグラムのフォロワーのロシアの業者さんは、全て手洗いです。中にはバイオクリーニングをしているところもあります。ロシアのほうがクリーニングは遥かに高いレベルでやっています。しかも、日本のように毛皮が分からないクリーニング業者がやるのではなく、毛皮業者が自分でクリーニングをしています。

クリーニング屋だって、その気になってちょっと調べればすぐにわかります。しかし今やっていることを替えようとはしません。

現実に以前、ブランド品を専門に扱うクリーニング店の社長さんから問い合わせがあり毛皮のクリーニングをして欲しいと依頼を受けたことがあります。その方も今のパウダークリーニングに大きな疑問を持たれていたようです。もちろん私のところでクリーニングを大量に受けて仕事にすることなどありませんので、お断りをして毛皮専用のクリーニングドラムがなくても出来るクリーニング方法をアトリエに来ていただいて二度ほど少しだけ教えて差し上げたことがあります。ただひとつだけ言えば、毛皮の本来の状態を知らずにクリーニングの方法だけを学んでも無理はあります。またいらっしゃると良いのですが。

話もどします。パウダークリーニングは毛の表面、または毛の少し奥のところまでしか洗うことが出来ません。そのため、例えば匂いですが、表面に付いている匂いはパウダークリーニングで一度は取れる可能性があります。しかし、毛の奥から時間の経過とともに匂いが戻ります。極端なことを言えば、スチームなどを仕上げに使えば簡単に匂いが戻ってしまうのです。あとは時間の経過とともに湿気が出たり入ったりすることで匂いはさらに戻ります。

仮に毛の奥まで匂いをとっても、皮についている匂いを落とさなければ、またすぐに皮から毛の奥へ、毛の奥から表面へと嫌な臭いが戻ります。毛皮のクリーニングは本当に難しいのです。そのためには有機溶剤とオガで洗うしかないのですが、そのためには裏地や付属を全部外して洗う以外に方法がありません。

私のところでやる毛皮のクリーニングは、毛皮専用のクリーニングドラムを使いますが、時間で言えば48時間くらいかけます。オガと有機溶剤で洗いますが、丸一日程度では足りません。有機溶剤が皮に染み込み、皮の脂分が有機溶剤で溶かされ、オガに吸収され、さらに毛皮やオガから有機溶剤が完全に抜けるまでドラムを回し続けます。

以前は一日程度で終わっていましたが、研究を重ねた結果、48時間を目途にドラムをかけるようになりました。その理由は匂いもですが、柔らかさが一日では十分ではなく、有機溶剤が完全にゆっくりと飛びきったところで初めて完璧に柔らかくなります。理由は私にはわかりませんが結果が示しています。

でも、パウダークリーニングを専門にやっているところで丸二日もドラムにかけたら仕事になりません。コストも合いません。ですから仕方ないことなのです。

私のところでも、リフォームはコストがほとんど合いません。それでもとことんやる意味は技術向上と仕上がりのためです。お客様が誰とかも関係ありません。目の前の毛皮と向き合うだけです。もちろん既成の商品やオーダー品を作るときもそうです。

毛皮には見た目の美しさが十分にありますが、その美しい毛皮に嫌な臭いがあったり硬さがあったりすれば、毛皮本来の美しさは出ません。

作る職人さんは毛の仕上がりには拘るかもしれませんが柔らかさや軽さ、匂いにまでは気を使うことはあまりありません。

でも、その全てが上手くいかないと本来の毛皮の魅力が出ないのです。その意味でも毛皮のクリーニングは、古い毛皮の汚れや匂いを落とすということと同時に新たな商品を作るときにも絶対に必要な技術なのです。

美容室で髪をカットして、その後シャンプーをしてセットをしないことは少ないかと思いますが、それと同じです。新しい原皮だからすべてがパーフェクトとは限らないのです。皮が厚ければ皮を鋤いて薄くもします。匂いや硬さがあればクリーニングもします。

汚れたり匂いのついた毛皮を洗う技術は新しい商品を作る上でも、とても重要な技術なのです。

そしてパショーネがファーブランドとして生き抜くためにも毛皮のクリーニングは絶対に不可欠な技術なのです。

最後にやっと今日の大事なテーマ(クリーニングが出来ることの本当の意味)に戻れました💦

最後まで読んでいただいてありがとうございました。

長澤祐一

毛皮リフォームの本当の意味と価値

毛皮のリフォームで検索するとたくさんのリフォーム専門業者さんがトップページに出てきますね。私のところは以前は4ページ目くらいに出てきましたが、最近はリフォームの投稿もないため、何ページめくっても出てきません。

出てくるのは私が知っている業者さんが一ページ目に何件かでてきて、あとはほとんど知りません。それくらい様々な業者さんがリフォームをテーマにネットでアピールしています。

それはそれでいいんです。ただ残念なのは、ほとんどの業者さんが既成の商品をつくらずにリフォームしかやっていないことです。なんとなく、ただのお直し屋さんオンパレードになっていませんか?正規の商品を作ることをあきらめたその腕に大事なリフォームを託して良いのだろうかと悩みます。もちろん、リフォームは決して簡単な仕事ではありません。

 

今現在行われているリフォームとは一般的には、よく言われる表紙を変えて中身が変わらないというものがほとんどです。でもそれで良いんですか?だって皮も劣化進行中なのですよ。そのまま放置したら、どんどん劣化が進行するのです。もちろん、染色加工のしてあるクロム鞣しが施されているものは劣化しにくいですが、20年以上前の時代のものでコートで染色加工をしてあるものは少なく、ほとんどのものがドレッシングという毛皮を柔らかく仕上げるための鞣しがほとんどで、劣化しやすいものがほとんどです。黒でも鞣し屋さんで酸化染料で加工されたものは、やはり劣化は進みます。

 

それでも、知ってか知らずかは分かりませんがそんなことには、全く関知せずに形だけ変えるリフォームがほとんどなのです。一部には私のこのブログで気が付きリメイク前にクリーニングをと謳っているところもありますが、それでも、通常の業者がやるパウダークリーニングでしかやっていません。通常のパウダークリーニングで使う有機溶剤やオガの量では毛皮の皮から適切に劣化の原因になりやすい脂を抜くことはできません。

さらに自分でやったこともないのにパウダークリーニングが良いと何故言えるのかが解りません。毛皮のクリーニングは結果が目で見て解りにくく、様々な経験をしてやっとこれだと辿り着けるものです。クリーニングをホームページやブログに記載するならば、自身でそこまでやってから書くべきです。

以前からも、このブログで書いていますが、皮の劣化を止めるクリーニングをするタイミングがあるとすれば、リフォームをするこのタイミングしかないのです。

 

その一番大事なタイミングを知識経験がないことを良いことに、自分の都合で見た目のデザインだけを替えて、それをリフォームだと言い張るのは正直、どうなんだろうかと感じます。

本来、毛も、皮の状態も良くなったのであれば店頭の売り場に出してもおかしくないものが出来るはずです。

 

しかし、一般的には、これはリフォームだから、一般の既製品には劣りますという言い訳が、よく聞こえます。

パショーネのリフォーム品のレベルは、絶対ではありませんが、私が目指すものは、常に店頭で販売できるレベルにするということです。出来るかどうかは問題ではなく、そう思って努力や工夫をするところに意味があり、毛皮の状態が良いものは本当に店頭にだせるようなものになることがあります。

 

ただ、表表紙だけを替えてリメイクしましたという、よくある他社のリメイクとは違います。本気で店頭に並べ新品同様に扱ってもらえる仕上がりをリメイク後の状態と考えています。ここで書いてるだけではないですから。本気でそうなるよう、努力しています。良く考えれば当たり前のことです。低い技術で作られたコートをパショーネがクリーニングをしてリメイクするのです。最初より綺麗になるのは私にとっては当たり前のことです。また、かなり危ないことを書いてますが、本気で店頭に置ける品質のものを常に目指します。

例えばバッグやマフラー等の小物を作るときでも、必ずコートをばらしたときにクリーニングをします。古いコートにはダニや匂いが付いているものがほとんどです。小物だからと言って手を抜くことはありません。

 

本当に形だけのリフォームが多いことに残念な気持ちになることが多いのです。

 

最後に記載しますが、パショーネはリフォーム専門業者ではありません。メインの仕事は常に新作も作り、オーダーも受けています。そしてお客様のクリーニングも受けています。そのパショーネがリフォームをするというところに価値と意味があるのです。

 

長澤祐一

なぜクリーニングを通常の仕事としてやらないか?

当社は、おそらくですが、どこよりも毛皮と毛皮のクリーニングを知っていて、どこよりも綺麗な商品を作ることが出来ると自負しています。よく毛皮の知識と言っても、産地や種類をたくさん知っていらっしゃる専門家はたくさんいらっしゃいます。しかし、それと毛皮の商品としての高い品質がどうあるべきかを知るということとは別の問題になります。

今日はクリーニングの話なのに、いきなりおかしな書き出しですが、毛皮を作り販売し、クリーニング・保管をするということは、かなり広範囲でさらに素材についても深く知る必要があります。素材といっても、ラビットとかからどんなものでも深く知る必要があるという訳ではありません。販売されている商品のなかでも、素材価値の高いミンクやチンチラ、セーブル、ロシブロ、アーミン等の知識については、より深く知る必要があります。その理由は高額品を預かるというリスクが高くなるからです。

当社は仕事として商品を作り販売するだけではなく、販売した商品のクリーニングや保管も考えなければなりません。

やっと本題に入りますが、当社がクリーニングを本業にしない理由があります。もちろん、パショーネのメインの仕事が商品を作り販売することですが、販売した商品のアフターとしてクリーニングや場合によっては保管をしたりもいたします。それから未来のお客様のためのクリーニングもあります。

しかし、クリーニングは本業ではないのです。その理由のひとつとして、一般的に知られていませんが、古い毛皮コートや小物の多くは保管状態の悪さから、カビや香水の匂い、さらにはダニや毛皮に良く付く虫もいます。リフォーム時によく身体がかゆくなることがありますが、おそらくダニかなにかの虫がいると想像がつきます。

毛皮のリフォームを当社も時々受けますが、そのすべてを裏地・付属等を外した状態でオガを使いながらのドライクリーニングを一番最初にします。これによって匂いやカビ、ダニや虫の大半の駆除をして、自社商品やお預かり品への匂い移りやカビや虫が付くことを防ぎます。

しかし、ビジネスとして大量にクリーニングをやるとなると当然、当社の商品在庫や大切なお客様からのお預かり品にも、クリーニングでお預かりした古いコートなどから匂いやダニ、虫等がつくリスクが高くなるのです。そのため、大量にクリーニングを受けることはありません。今日のタイトルの理由がこれです。

 

そんなこともあり、クリーニングにつきましては、当社の技術の高さを知ってもらうためにやることがメインでクリーニングやお直しが専業ではありません。どんなにクリーニング技術が高くても、どんどんクリーニングを受けるということはないのです。

お問い合わせいただき、内容を聞いて、私のところでしか出来ないと思うものは極力やろうとしています。しかし、何でもかんでも受けるという訳ではありません。

当然ですが、私のところで販売したものは全てが毎年ではないにしてもクリーニングをいたしますので、常にクリーンな状態をキープしています。そのためクリーニングでお預かりしてもほとんど他のコートに強い匂いを移したりカビ臭さを移したりすることはありません。しかし、当社以外の商品を受け入れるのは、未知の部分が多く大量に受け入れることはリスクが大き過ぎて出来ないのです。逆に言うと、それくらい当社の商品とその購入後のお客様の商品のクリーニング時の取り扱いについては神経を使っているということです。

せっかく購入していただいたものが、カビ臭かったり、虫が付いたりしたら、どんなに価値があると信じて購入していただいても意味がないからです。

最後にひとつ付け加えますが、販売前の毛皮製品がどんな扱いで保管されているかというと、そんなに良い環境ではありません。そこそこ大きな部屋で大量にストックするわけですから、しかも一点ずつカバーをかけたりしないのが普通です。もう少し大事に扱えばいいのにと良く感じています。  長澤 祐一

 

 

毛皮のバイオクリーニング

こんにちは。最近では珍しく10日以上更新ができませんでした。ごめんなさい。

今日のテーマは文字通りバイオクリーニングです。国内のクリーニングでは、私が見ている限りでは依然としてパウダークリーニングオンリーですね。

私のこのブログはプロのかたも見てると思うので、バイオクリーニングの詳細は書きません。しかし、国内サイトではどこを調べても毛皮に関するバイオクリーニングのことは出ていません。

それは、何故だかわかりますか?

簡単です。一般的なクリーニング屋さんじゃ出来ないからです。

私は、この薬品を海外から仕入れましたが、国内にはありません。

それと、その方法ですが、やはり毛皮を知らないパウダークリーニング専門の業者さんには難しいと感じます。もともとの毛質が素材によってどう違うのか、良い状態、悪い状態さえしらない可能性の高い業者では難しいと思うのです。

海外ではプラス匂いをとったり、黄ばみを取ったり、黒く色をクリーニング作業の一環で染めることが出来たりと、さすがに海外の技術の進歩はすごいものがあります。

色を染めるなら色落ちが、、、と思いますが、多分、酸化染料を使うのかもしれません。さらに70%酢酸を使うこともあり、もしかしたら毛の組織を破壊することに使うのかもしれません。あくまで推測ですが。組織を破壊したところに染料をいれていくということなのかどうかはわかりませんが、きっと色が定着することで色落ちがしないのかもしれません。毛皮の歴史が長い分大量のリフォームやリメイクが求められ、新しい技術が作られてきたのだと思います。

私は、実際に海外から取り寄せてみたのです。実際に私のところにくるクリーニングは、そのほとんどが私の商品なので当然綺麗ですし、汚れたりしているものがなく、なかなかその効果を現実に明確に見ることができないのですが、理屈から言えば汚れは取れるはずです。詳細は言いませんが。

黄ばみを取ることも、これは取るというよりは、クリーニングをして汚れによる黒ずみを落とし、青味を少しずつ付けるという手法ですが、確かに画像で見る限りはきばみが取れています。綺麗なサファイアミンクの色になっています。

いずれ、私のところでもビジネスとして立ち上げるかもしれませんが、しばらくはテストを繰り返してみようと思います。何故なら、これはクリーニング屋というより私達、毛皮を作る人間の仕事だなと感じたからです。海外でも、私が確認したほとんどが毛皮を修理したり作ったりするところでした。

このバイオクリーニングは、国内業者さんがやっているパウダークリーニングとはまったく考え方が違います。最終的にドラムをかけてムダ毛等を取ったりはするかもしれませんが、訳の分からない、効果がどれほどなのかもわからないパウダーなどは一切使わずにやります。

基本的には、毛皮を良く知るひとたちだからこそ出来るクリーニングだなと感じます。ですから、クリーニングは受けるが、全て専門の業者に出しているような小売店さんや小売りサイトさんではクリーニングする現場がない訳ですから無理なのです。一般的な業者さんの薬品とオガをいれて機械に入れ、あとは危険なグレージングマシンにかけて、エアーガンでポケットに入ったオガを取り除くというような毛皮のクリーニングではありません。

バイオクリーニングの作業自体はリアルに毛そのもののクリーニングです。

最後にひとつ伝えますが、私がいつも書いている毛皮のクリーニングは、ことある度に書いていますが、リフォームをすることが前提で毛と皮そのものも含めたクリーニングですが、今回のバイオクリーニングは純粋に毛の部分のクリーニングです。

毛皮コートをお持ちで、このバイオクリーニングに、ご興味のあるかたは遠慮なくお問い合わせください。お待ちしております。

長澤祐一