毛皮コートの肩の色焼け料金

こんにちは、今日は数回前に毛皮コートの色焼けのお直しについて料金の結果が出ましたので報告致します。結果が安定したことと、作業時間もほぼ読めるようになりましたので金額を出してみます。

三回ほど前のブログで、肩焼け等の色の修正は、お客様との仕上がりに対する感じ方の違いという不安があり、仕事として受けるにはとても難しいと記載していましたが、処方を何度も見直し、結果の精度が上がりましたので初めて記載します。

金額はもちろんすべて一律ではありませんが、以前はものによってお直し金額に大きな差がありましたが、技術が安定し料金も 18,000円 から25,000円税別くらいの範囲でできるようになりました。

肩焼けの度合いによって多少差がでますが、それは酷い色焼けのときはどうしても手間が増えてしまうのでどうしようもありません。ただ、これまでよりは技術が安定し料金も確定しやすくなったのです。

もし、肩の色焼けが気になるお客様がいらっしゃいましたら一度問い合わせをお願いいたします。

これまでよりも格段に技術が進歩し仕上がりの安定感が増し、ようやく価格設定ができるようになりました。  長澤祐一

現状を正直にお伝えする

以前20年在籍していた百貨店毛皮サロンでよくあったことです。

リフォームに持ち込まれた毛皮をみて「すごく綺麗な毛皮ですね~」「良い毛皮ですね~リフォームでする価値がありますね~」等、歯の浮くような言葉で受注に持ち込むということが当たり前のようにありました。もちろんうちではありません。

実際の毛皮は色焼けしたり皮も硬くなっていたりで、不安の残るものが多々あったかと思います。

その結果、仕上がりでクレームがたくさん発生します。当時私達が在籍していた某日本橋百貨店でのクレーム率は毛皮サロンのリフォームがトップでしたから。

決して自慢できるものではありません。しかし、そうなる理由があるのです。

受注を取りたいがために、状態の悪い毛皮コートを、わ~綺麗なコートですね~といって受注を取るのです。

当然、条件の悪い毛皮コートのリフォームを受けるわけですから良い仕上がりになんかなりません。

しかも、実際に作業する職人さんは、受注の現場事情など分かりませんから、状態の悪い毛皮コートは、元が悪いんだからしょうがないという発想で作業をします。当然ですが良い仕上がりになどなりません。誰も、この状態の悪いコートの責任などとる意識はないのです。

しかし、素人のお客様は、受注を受けるときに、わ~ 綺麗なコートですね、、、と言われてリフォームを依頼するわけですから、素人でもわかる仕上がりの悪さに怒りが頂点に達します。

仕事のなかでは良くある話なのですが、それで高いお金を取られるお客様はたまったものではありません。私達も同じスペースにいる同業者ですので、黙ってみているしかないのです。

毛皮を本当に知る人間がこの仕事場に何人いるのだろうか?と疑問に思うことがありますが、現状仕方のないことなのです。何かのきっかけで出会うことが出来れば良いのですが、なかなか出会うことができません。

顧客獲得という意味では,このブログを読んでもらうしかなく、あまりに非効率的であり、かといって今のパターンを変えていこうとも思ってないのです。しかし、困っているお客様と出会いたいとも思うのです。

なかなかうまく出会うことができませんが、出会ったときには精一杯のことをしたいと思います。

長澤

毛皮の黄ばみ取りと肩の色焼けについて

久しぶりの投稿です。

もう何十年もこの毛皮の仕事をやってきて、なかなか解決できなかったことがあります。

今日のタイトルにある、白っぽい毛皮の黄ばみを直すことと、古いコートによく見られる肩やエリの変色です。

ここ三年くらい、染色を自分でやってきてようやく染色そのものの理屈がわかってきて、ここ二年くらい黄ばみ取りを勉強していました。

以前、インスタグラムでロシアのユーザーがサファイアミンクやシルバーフォックスの黄ばみ取りをしている投稿があり、お互いにフォローバックし合っていたこともあり、その薬品を教えてもらうことができたのです。さっそく、ロシアの業者に手配してウクライナ戦争が始まる前に手配して入手しました。

その薬品を仕入れてビデオを送ってもらっても、なかなか信用出来ずに使えなかったのです。

しかし、染色技術そのものを勉強したことで、以前送ってもらった動画の意味や薬品の使い方が理解できたのです。

今日の投稿では黄ばみ取りについて少しだけ解説してみます。

ロシアでやられていた黄ばみ取りは、実際には黄ばみを取るというよりも、青みを付けて黄ばみを消すという手法です。ですから、例えばサファイアミンクやブルーアイリスミンクのような青みのある素材には有効です。しかしホワイトミンクのような、真っ白のものが黄ばんだ場合は難しいのです。

ホワイトミンクについて少し解説しますが、もともとのホワイトミンクは完璧な白ではありません。特に現在の鞣し上がりのものは、ブリーチ処理をしてからホワイトニングと呼ばれる青みをつけるような処理がされています。詳しくはわかりませんが蛍光色のようなものかもしれません。

そのため現在のホワイトミンクは外でみるのと太陽光で見るのとではかなり発色の違いがあります。太陽光の下でみるほうが綺麗です。

ホワイトと言っても、このように加工処理された白ですので、黄ばんだものを直すのも難しさがあります。

ですから現時点でホワイトミンクやホワイトフォックスの黄ばみ取りは難しいのかもしれません。少しだけ青っぽくして黄ばみを消すという手法しかありませんが、真っ白ではないのです。

下に画像も載せますが、サファイアミンクやブルーアイリスミンクのもともと少し青みのある素材に青みを足すという手法は有効です。

以前、やはりロシアの業者さんなのですが、バイオクリーニングという手法でクリーニングして白さを取り戻すという動画や写真をみたことがありますが、それはまだ私には解明できていません。

例えば、国内でも販売されている5クリーンという洗剤のようは漂白剤のようなものが市販されていますが、バイオ?酵素?の力(よくわかっていません)で白さを取り戻すことを目的とした毛皮専用の薬剤があるのかもしれません。

そのバイオクリーニングをした状態で黄ばみを取ってから青みを付けると新品のような白さになるのかもしれません。

ただし、鞣し屋さんがやるブルーイングは蛍光剤のようなものらしく、ただ青味をつけるのとは違いがあるのかもしれません。

今日の本題の黄ばみ取りについて少しだけ解説しますが、毛皮の染色には酸性染料を使ったものと酸化染料を使ったものがありますが、今回私がやった黄ばみ取りは黄ばみを取るというより、サファイアミンクなどのもともとあった綺麗な青味を足して黄ばみを消すという手法です。

染料は酸性染料を使っています。酸性にすることにより染料が素材に着色しやすくするというものです。但し、ここで難しいのは通常の染色はお湯のなかで60度くらいで染めてますので原皮の状態で染色されています。

毛皮クリーニングもそうですが、今回の難しさはすでに商品化されたものの染色をするというところにあります。

通常は、染色浴のなかにギ酸を加え染料を入れて色を付けますが、その手法ができません。ですから、濃い色の染色は難しいのですが、うっすらと青味を加えるということに限っては出来るのです。

今現在は、なかなか毛皮を着用していただくことも少なくなりましたが、毛皮の状態もよく色だけ黄ばんだものならば黄ばみ取りが可能です。料金は、素材の状態によりますので一度現物の確認が必要になります。適当なことは言えませんので、一度お問い合わせください。素材の状態によっては無理なもの、費用をかけても本来の価値に戻せないものもあります。明確に回答できず申し訳ありません。

写真の右側がもとの黄ばんだ状態で、左側が黄ばみを取った状態です。

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次回は肩の色焼けについて書いてみます。

初期採寸と仮縫い

受注を受けて採寸をして 仮縫いまでに痩せられるお客様がよくいらっしゃいます。

もちろん痩せることは悪くないのです。ただ、初期採寸に従って一回目の仮縫いトワルのパターンは作られています。そのため、トワル仮縫い時に、おやっと思うことがあるのです。

お痩せになられましたか?と聞くと、そんなことはありませんとおっしゃいます。しかし、よく聞くとジムに通われたというようなことが少しずつわかります。

女性の微妙な気持ちが会話に現れます。体型は明らかに変わっていらっしゃるのです。

それでも、変わったとはなかなかおっしゃってくれません。

作る側としたらワンサイズ以上痩せた場合、特にお太りになられていらっしゃる場合には簡単にワンサイズ以上サイズが変化します。初回打ち合わせ時の採寸から場合によっては数か月経過した後に仮縫いになるケースもあり、大きく体型が変化されるケースがあるのです。

これをうっかり見逃して、お客様の言うとおりに信じてサイズダウンをせずに作業をすすめると大変なことになります。

この辺が、リフォームにしてもオーダーにしても難しいのです。

仮縫い時には、夏場であっても当然ですが、冬の装いで試着をしていただきます。

そうすると、なかなかお痩せになられたことに気付かずに作業が進んでしまう可能性もあります。

ここはやはり、しっかりと体型変化を観察し、何気なくお痩せになられたかを聞いたりしてみる必要があるのです。最初は痩せてないと言われても、何度か聞くと実はジムに通い始めたというようなことが分かります。

場合によっては、バスト・ウエスト・ヒップくらいは採寸しなおすケースもあります。

単純にお客様の言うことを信じてしまうと大変なことになるからです。

私のところではパターンから毛皮作成まで私がやりますので、気付くことが出来ますが、パタンナーと毛皮制作者が別の場合には、お客様の体型の変化に気付かずに仮縫いが終わってしまうことがあります。

しかし、それは特別なことではなく、分業は普通のことで、今回のようなケースが見逃されることもかなりの確率で発生するのです。

大量に作ろうとすれば、分業は仕方のないことで、拘ると量が作れないということになるのです。

長澤祐一

価格の価値とは

今日は ”価格の価値とは” というタイトルです。

見た目の価格が高い安いということも大事かもしれません。

しかし、一番大事なのは、その提示された価格に商品やサービスが勝っているのか、それとも価格よりも低い価値なのか?が一番大事なはずです。

 

毛皮という商材は一般のお客様や、販売に携わっている人たちでさえ正しく理解出来ていない、または、本当に良い商品やサービスを知らないという部分があります。

プロの現場でさえそうなのですから、一般のお客様が知る訳がありません。

そんな状態のなかで、例えば、この商品は価格に対して価値があるかないかなど、ほとんどの人が解らないと感じます。

 

今日も、あるお得意様のコートをリフォームの前にドライクリーニングするのに、裏地や芯を全て外しました。このコートも元のコートは他社での一般的な仕上がりでした。しかし、一度サイズを詰めるためにお直し又はリフォームをしたとも聞いていました。

今回、このコートの裏地を取って毛皮だけにしてみて驚きましたが、サイズを詰めるのに、毛皮をカットして毛皮用のミシンで縫っているのではなく、平ミシンで縫っているのです。そして、その縫い代をアイロンが効かないので接着糊で止めていました。

元々、こんな加工屋に出す販売店の方がおかしいとも言えますが、それにしても毛皮用のミシンも持たずに、何故仕事を受けるのかと思います。

お客様から仕事を依頼されて、仕事を職人さんに出す元受けの知識のなさも呆れますが、道具も持たずに仕事を出来ると受ける方にも問題があります。仕事がないんで、あればなんでも受けるというところが垣間見えます。

しかし、こんなこと珍しくないのです。私から見れば大半がそう見えます。

毛皮は素材が洋服と違い厚みがありますので、外からは売り場の販売員や素人の方では問題に気付かないことが多いのです。スーツなら簡単に歪がでるようないい加減な仕事でも毛皮の場合は気が付きにくいのです。

分からなきゃいいじゃないか?ということもあるかもしれませんが、実際は着てる本人が気が付かないだけで、解る人が見ればわかります。

最初のテーマに戻りますが、価格が高いか、価格に対して見合った、またはそれ以上の価値があるかどうかは、作られた商品、リフォームされた商品の内容によって決まるのです。

よく、いろんなサイトをみて価格を最初に見るのかもしれません。しかし、一番大事なのはどれくらいの価値のあるものなのか、どれくらい質の高いお直しやリフォームをしているのかが一番大事であり、そのことと価格がどう連動しているかが本来は一番大事なはずです。

今日見たような、リフォームなど、一円の価値もないのです。それでも、軽く見積もって10万以上は取っているでしょう。うわ~~と思うかもしれませんが、大半がこんなものばっかりですよ。はっきり言いますが、ネットで有名なところがたくさんありますが、お~~この写真を平気で出すか?と思うなものばかりです。写真を掲載するということは、その商品の悪さに気付かないということですから。

一般のお客様ならしょうがない気もしますが、一応プロとして小売をしているのであれば、もう少しまともな画像をだすべきかと私は思います。

話がそれました。

価格を店頭やオンラインショップに出せば、その内容に見合った商品を出す必要がありますし、またその内容も伝えなければなりません。

しかし、オンラインショップではなかなかすべてを伝えることが出来ず苦しみます。

このブログはその足りない部分を少しでも埋めるめに書いています。作りをいちいちすべて画像や動画で伝えても、すべてが伝わる訳でもなく自己満足になりがちです。そのため、パショーネがどういう気持ちで毛皮そのものや、ひとつひとつの商品、作業に向き合っているかをここで書くしかないのです。

そして、それがどこまで信頼や安心感につながるかは読むひと次第です。

それでも、どうせ分からないと思って、伝えることを諦めたら、そこで終わりです。

毛皮という、今は誤解も受けやすい素材を扱うものとして正しく素材の魅力を伝える以外にありません。

そして、そのことが付いている価格を正しく評価・判断する、、、出来ることにつながればと思います。

 

長澤 祐一

 

 

 

毛皮のクリーニングで使うオガの保湿力と吸収力

今日は、オガの保湿力と吸収力です。

前回のオガの汚れ具合と吸収力(2022年3月25日)の続きになります。

 

やっと、前回紹介したバイオクリーニング剤で洗ったオガが完全に乾燥しました。前回のときにすでに二週間経っていましたので、ほぼ二か月間、完全に乾燥するのにかかったことになります。

 

ヒノキの匂いは消えていません。一般的にプロの間で言われているオガの外側のチャカチャカした部分は取れてしまっているのかもしれません。顕微鏡で見ればわかるのかもしれませんが、顕微鏡がないのでわかりません。ただ、以前からオガのチャカチャカした毛羽立ちが汚れを取るともいわれていますが、その効果は明確にはわからないのです。

 

私がオガに求めているものは、一般的な毛皮のクリーニングで使うような、簡易的に効果も期待できないような安易な使い方ではなく、毛皮の毛と皮の両面を徹底的に洗うための、汚れや皮や毛に含まれる脂分を取り除くための用途としてのものです。

 

そのため、今回オガを水洗いしてみてわかった水分の吸収力や保湿力は十分な結果だと判断しています。

以前、洗った時には単純に水洗いをしました。その理由は、最近の洗剤のほとんどが香料が入っていてオガの洗浄には使えないからです。今回使ったバイオクリーニング剤は無香料なので安心して使えました。

それと、以前に洗ったときの乾燥方法は、セメントの上に布を敷いて、そこにオガを敷き詰めるようにして乾燥しましたが、その時の乾燥時間は早かったのですが、セメント側から雑菌が入ったせいか、乾燥中にカビが発生してしまいました。

そのため、今回は深さのある大きな容器に入れて乾燥してみました。表面から乾燥して白くなっていき、そのため毎日数回はオガを中から混ぜるようにして乾燥しています。今回は雑菌が入らずカビの発生はありませんでしたが、乾燥に三倍以上の時間がかかりました。

オガの価格からみても、この洗って再利用する意味はない気がしますが、オガの誰も知らない本当の能力・効果を見極めるには大事なことでした。

 

以前も書きましたが、私の毛皮クリーニングのなかでオガに求める役割は、汚れを吸収して毛皮の皮に戻さないための吸収力と保湿力でしたので、完璧とは言えませんが、私が想定していた役割は担ってくれているようです。

前回書き忘れましたが、前回クリーニングしたコートはブラック強化染めのコートでした。そのため、あれほどまでに水が真っ黒になったのかもしれません。しかし、逆に言うと、それくらい皮から染み出してオガに染料が吸収されたことが証明出来ています。

最近、毛皮の染色もやることにしましたが、毛についた染料は簡単には落ちませんが、皮面についた染料は皮面に染料が刺さっているような状態ですので落ちやすいとも言えます。その皮面についた染料が前回クリーニングでは落ちたことが証明されています。

 

毛についた染料は簡単には落ちません。落ちるとすれば60度前後のお湯のなかで、ペーハーを上げてアルカリ性に変えていくと色は落ちていきますが、普通の水につけたくらいでは落ちません。

 

上に書いた60度のお湯を使うとありますが、普通の状態の毛皮ではだめですから絶対にやらないでください。染色屋さんではクロム鞣しという前処理をしてからやります。クロム鞣しをしないでやるとお湯の中で縮んでカチカチに固まってしまいます。

 

話それました。クリーニングのために使うオガの役割としては、濯ぐときの水の役割ですので、一般的な毛皮のクリーニングで使う少量のオガでは汚れを有機溶剤で溶かして、その汚れや脂分を十分に吸収するという一番大事なことが出来ません。

写真の上が今回洗ったオガです。一回で最低でもこれくらい一着のコートを洗うのに必要になります。

下の写真は、上で書いたコンクリートの上で布を敷いて乾燥した時のものです。この乾燥でカビが発生してしまいました。

 

 

今流行りの言葉に持続可能というのがありますが、ただ、形を変えるだけのリフォームでは、持続可能とは言えません。毛皮を持続可能なものにするために必要なことがあります。

 

丁度、クリーニングや保管の時期になって来たところですが、時々は毛皮のことを思い出してケアーのことを考えてみるのも良いかもしれません。

 

長澤祐一

オガの汚れ具合と吸収力

今日は先日の、オガの一般的な効果と可能性というタイトルの続きです。

一般的に通常の鞣しで毛皮をドライクリーニングする場合にはオガが極端に汚れることはありません。

 

そして一般的な毛皮専用と言われているパウダークリーニングでも、多少の有機溶剤を使うと書いてあるところもありますが、極少量の有機溶剤とオガでコートの表側だけをクリーニングするだけなら、ほとんどオガが極端に汚れるということはありません。

私がやっているリフォーム時にせっかく裏地や付属を外したのであれば、皮裏面も含め徹底したクリーニングが出来ればと大量のオガと有機溶剤を使ったクリーニングは、これまでのクリーニングとはまったく違うものです。

写真を見ていただければわかります。

これは一度クリーニングしたオガを試しに洗ってみました。洗う方法は前回書いていますので省略いたしますが、洗濯機のなかの水は真っ黒になります。毛皮は水でジャブジャブ洗ったりすすぐことができませんので、皮や毛に染み込んでいる脂や汚れと匂いなどを有機溶剤で溶かしオガにしみ込ませ吸収するということをしますが、クリーニング後にオガを見ても、多少黒く変色しますが、実際のところどれくらい汚れが落ちているかはわからないのです。

そんなこともあってオガを洗ってみました。オガの価格からいえば、大きな袋で2,000円くらいなものですから洗う手間より買ったほうがはるかに安く上がりますが、オガが実際に汚れを吸収しているかどうかを知るには、このように洗ってみるしかないのです。

さらに、もうひとつ今回の実験で分かったことがあります。オガの水分の吸収力というか保湿力というか、とにかく乾燥しているのですが、すでに二週間以上経っていても、まだ半分くらいしか乾きません。やっとサラサラになってきましたが、まだまだ湿気を含んだままです。

洗ったらヒノキの香りは無くなるかと思いましたが、まだまだ十分にヒノキの香りがします。

リフォーム品によく見られがちな強い匂いも、このヒノキの消臭効果によって強いカビ臭さが取れているのかもしれません。

毛皮にも様々な技術が受け継がれてきていますが、その技術の意味も考えずに継承するということもよくあります。

オガについても以前から毛皮のムダ毛を取ったり汚れを取ったりすることに効果があると言われていました。ただ、それは以前から受け継がれてきた技術であり自分の努力から導き出したものではないのです。

そんな意味もあって、今回のように実際に自分で、その効果を検証してみるということは自分の技術への自信を深めるという意味でも大切なことです。

これまで毛皮のクリーニングにつきましては何度も、このブログで書いてきましたが、今日の投稿で、今後新しい発見がない限りは一旦終了といたします。毛皮という難しい素材のなかでもクリーニングは特に技術を極めるという意味では難しい作業です。この難しいテーマを継続して読んでいただきありがとうございました。

 

次回以降は、また新しいテーマを見つけてブログを書いてまいります。

最後にもうひとつだけ、、 毛皮にとって正しいクリーニングができるということは、とても大事なことです。最後にそのことだけお伝えいたします。

長澤祐一

 

 

 

リフォームが専門ではないということの価値

今年初めての投稿です。本来ならばショップの商品のアップが最優先なはずなのです。それでも、このブログのアップが優先するべきだと考えます。

 

ショップも大事なのです。しかし、私達の基本はこのブログにあります。すべてをこのブログに賭けています。Instagram、オンラインショップとありますが、その中心にあるのが、このブログです。

 

タイトルの内容に入ります。

 

リフォームが専門ではないということの価値というタイトルですね。

 

リフォーム専門業者さん、もしくは、もうすでにオーダーをとる力のないメーカー、販売店、その他 たくさんいらっしゃいますね。オーダーも出来ます、、、とサイトに記載していても、どれほどのオーダーを受けていますか?

サイトにオーダー出来ますと、いくら書いてあってもやっているという実態はサイトにはみえませんよね。見えたとしても、こんなものオーダーと言って提供するべきものじゃないだろう???というものがほとんどです。業者さんには叱られるかもしれませんが、事実です。

 

前にも書きましたがオーダーは難しいです。そしてリメイクという呼び方が少しだけかっこよく綺麗に聞こえますがリフォームもリメイクも同じです。

 

そして、オーダーもリフォームも、やることはまったく同じなのです。

使う素材が、一から新しい素材を使うのか、お客様のコートを素材として使うのかだけの違いです。ですから、リフォームとオーダーの違いなどありません。素材として若干の制限があるというだけのことです。

 

それを所詮リフォームですから、、、、というようなお馬鹿な業者がいるかもしれませんね。言葉に出さなくても心のなかでそう思っている業者さん、、いませんか?

 

だからリフォーム屋で終わってしまうのです。

 

定番の形を決めて効率よく仕事を進めることも大事です。しかし、それで本当に満足するもの、、自分もですよ、お客様だけではありません。自分もお作り、納品して納得の行くものが提供できていますか?

 

リフォームという言葉に何か甘えていませんか?

 

でもやることはオーダーと何も変わりません。難しいのです。お客様の好みを聞き、ジャストなものを提案し、さらにジャストなサイズ、デザインを提供することの難しさは、簡単にオーダーが出来ますなどという業者さんが多いですが、そのなかのどれだけの業者がパーフェクトに仕事としてリフォームが出来ているかは難しいところです。

 

今日はすこし攻撃的な内容ですが、リフォームが出来ます、オーダーもできますという、仕事になればなんでもやれますという、その姿勢にほんとうに自信を持っているのかと思う局面が多々あります。

 

言うのは簡単なのです。言っていること、書いていることと出来るということとは大きな隔たりがあるのを業者さん自身が知っていますか?

 

今日はここでやめておきます。ネットにやれそうなように書くこと、実際に話してみて、やれそうなことをいうのと、実際に全てが出来ること、、とは違います。

 

タイトルの通りの内容になったかは分かりません。ごめんなさい。しかし、この思いが少しでも通じればと思います。 今日は今年最初の投稿ですが、書きたいことを思いっきり書きました。  内容チェックはしません。

 

 

長澤祐一

 

 

 

リフォームについて

ここ最近、リフォームに関連する以前の投稿は削除し書き換えをしようとおもいます。

昨年四月に、某百貨店毛皮サロンを辞め、川越の自社アトリエに新たに商品の展示や接客スペースを作り、今年4月に新たに立ち上げたオンラインショップも含めて新しいパショーネをスタートしました。そんなこともあり古い記事を読み返し現状にそぐわないものは削除し書き直そうと思います。

上にも書きましたが当社は昨年4月まで某百貨店の毛皮サロンで20年以上、オーダーの担当をしておりました。オーダーといってもオーダーサンプルの商品を多数展開しており現物販売も含めてオーダーでの商品提供もしておりました。当然、その百貨店は毛皮では日本一といわれた毛皮サロンでしたのでリフォーム専門の業者さんもいて、私達も私達のお客様につきましてはオーダーもリフォームもやるというようは仕事の内容でした。

当社がリフォーム専門のメーカーではないこともあり、このブログでも大きくリフォームをPRすることはありませんでしたが、それでも、このくどいというか細かいブログ記事を見て頂き問い合わせを頂いたお客様だけには百貨店という窓口を通さずに直接、リフォームやオーダーをお受けしてまいりました。そんなこともありリフォーム専門の他社さんのように決してたくさんのご依頼を受けてきたわけではありません。

百貨店とのお付き合いがあるころは毎年の新作の作成と受注品をこなすという、今では考えられない忙しさでしたから、ブログからご依頼を頂いても何年もお待たせしたりと、大変申し訳ない事態になったこともありブログもほとんど更新せずにおりました。

昨年より1年かけて新たな業態を模索し、ようやく始まったリニューアルしたアトリエと新規に立ち上げたオンラインショップをメインにした商品の販売、そして、このブログを読んでいただきオーダーまたはリフォームをご検討中のお客様のためにも、もう少し解りやすい仕組みを今後は作ってまいります。内容につきましては、よくある汚い見本画像の羅列(ごめんなさい)や、ただ安ければよいというような価格ありきの内容ではありません。内容につきましては今後検討しアップしてまいります。今しばらくお待ちくださいますようお願いいたします。       長澤祐一

 

毛皮のリフォーム | クリーニングの必要性

今日は毛皮のリフォーム時に、いかにクリーニングや皮の脂を抜くことが必要かを書いてみます。

とにかくしつこく書きますが、一般的には誰も気にしていないどころか、そこそこ脂は必要だと言い張る専門家が多いのが現状です。いちいちそんなたくさんの専門家のみなさんに喧嘩を売るような気はさらさらありません。

しかし、このたくさんの専門家の多くのひとが、実際にどれくらい毛皮の作りを真剣にされたかは私にはわかりません。通り一遍の知識というのは、業界にいれば大体、知識として持つことになります。

しかし、皮に含まれる脂の量が毛皮の作りや仕上がりに大きな影響を与えるということを知るひとはほとんどいないでしょう。ゼロではないでしょうが、大半のひとは考えていないと思います。

特に国内の業界人の中ではです。これは少し皮肉的な言い方ですが。その点、中国はやはり世界の工場と言われるだけあって、ピンキリありますが、上のレベルでは、ちゃんと脱脂をして、柔らかさを表現しています。

日本国内ではCO2の問題もあり規制がかかって使えない薬品等も、もしかしたら中国ではまだ、使えるのかもしれませんが、後先考えずに徹底して脱脂された商品もあり、素人目には”くたくた”になった柔らかい皮が毛皮の良さを表現しています。

一般的な国内の技術では、あそこまでできませんし、作る現場の目が、あの柔らかさを体感していない、さらに、売り場での、その柔らかさの評価を知らないという事実がある以上、国内の技術者が上のレベルに行くことは難しいのです。

ただし、上記で、後先考えずに、、、 と書きましたが、パーフェクトの脱脂は、やはり、危険が伴います。中国製品の一部にある、あの強力な脱脂は、ドライクリーニングをして脱脂をするわけですが、おそらく裏付け前にガーメントの形になった状態でするわけですから、すべての補強テープの粘着糊は溶けてしまいます。

形も確実に縮みますし、最後にドラムに入れながら乾かすので、あれだけ柔らかくなりますが、間違って皮に水が染み込んだりしたら、確実に思いっきり硬化します。

さらに、切れやすくもなります。毛皮業界の過去にも、完全な脱脂をして柔らかさを出した過去があったことを覚えているひとも、ご年配の方にいらっしゃるかもしれませんが、当時のひとのほうが優秀な方がいらっしゃったようで、そのパーフェクトな脱脂を当時は危険だと判断し、やめているのです。

例えば、一般的な毛皮クリーニングでは、ドライはせずと、良く記載やyoutube等の動画で見ることができますが、それも、過去の経験からの知識で脱脂はよくないという意識が今現在もあるのかもしれません。

ここから私の意見を書きますが、パーフェクトな脱脂はやはり絶対に良いとは言えません。ただ、一般的に考えられている原皮屋さんや鞣し業者さんの基準はやはり、商品仕上がり時にどうあるべきかというところからみると少し違いがあると私は思います。

よく、原皮屋さんが仕上がってきた時は軽い感じで良いけど、時間が経つと、ズシッと重くなると言いますが、それは、原皮が湿気を吸収してさらに、湿気が入ることで、そのままラックにかかったままだと硬化も進みますから結局、湿気と硬化で、鞣し上がり時よりも確実に重く感じるようになるのです。

イタリア鞣しが、そうならないと聞くこともありますが、私が仕入れたイタリア鞣しのミンクもやはり、国内の鞣しと、ほぼ同じ状態になりました。

私は、鞣しについては詳しくはありませんが、一度、脂を入れるようです。そして仕上げのときにドライクリーニングをして脂を抜くわけですが、ここがやはり、手でキッカー(間違っていたらすみません)という道具を使って脂を入れ、それをひとの感覚(時間)でまたドライクリーニングをするという、極めて計測しにくい作業があります。

結局、そのロットごとの残留脂の量に差があったり、手で入れる脂を加える作業にも差があったりと、とても難しい作業のなかで仕上げられるわけで、さらには原皮の個体差などもあるかもしれないことを考えると、とても難しい作業に感じます。

結果、やはり、作るところで最終的な脂の量をコントロールするしかなく、私のところでは、原皮の段階でドライをする場合や、仕掛り途中でもっと抜きたいと思えばドライする、、、というような感じで都度、皮を触って感触で決定するしかありません。ひとつ、中国のドライと違いがあるとすれば、ジャブジャブドライ液に漬け込むようなドライはしていないということです。当初何度も、このジャブジャブ液に漬け込む洗い方を試しましたが、専門の何千万円もする機械がないので、回収しなくても良いレベルの有機溶剤を使いますが、やはり、気化させるのにも時間もかかり、この方法は使えないなと判断しました。以前、カビが蔓延してしまったコートは、この漬け込む方法で二度洗ってカビを落としましたが、やはり手間がかかりすぎて、現実的ではありませんでした。

私が今やっている方法は具体的には書きませんが、皮の表面からドライ液が染み込み、皮の表面から脂を抜いていくという方法を取っていますので、皮の奥に少しだけ脂分が残るという状態になり、こうすることで万が一水に濡れても、思いっきり硬化することがなく、軽さもでて、さらに、空気中からの水分も吸収しにくくなり、重さや劣化防止にも効果があるという、理想的な状態になるように処理しています。

私のところでは、鞣し上がった皮を再度、皮を軽く薄くするために機械や手で鋤いていますが、脂が抜けている皮のほうが鋤くのが楽なのです。脂がたくさん入った皮はベタベタして繊維がなかなか切れず、タンパク質が剥がれてくれません。ですから、皮が厚い場合にはドライをかけて、皮の表面を一度削り安い状態で削って、さらにドライをかけて、また削るという場合もあります。それくらい、皮の状態をいい状態に保つということに注意を払います。

リフォームのときにも当然、ドライをして古くなって劣化が進行しそうな状態を一度そこで止めてしまわないとリフォームする意味などありませんから必ずやります。やらなくてもいい状態のコートなど、年に1点あるかないかです。たまに、奇跡的に脂の入り具合が抜群によいものがありますが、それは本当に希です。

脂の分量が適正になれば、コートにしたときの皮の繊維の状態もよくなり、皮が伸びたら伸びっぱなしというのではなく伸びても、また元に戻る柔らかさというのがでて、型崩れせず、柔らかさも出るという状態になり、毛皮本来の良さがでます。

一般のひとは毛に魅力があるのだと思いがちですが、皮が柔らかいことで、表の毛が本来の輝きを発揮できるのです。皮が硬い状態のミンクなんて、まったく魅力がないのです。

それくらいに皮が大事だということを覚えておいてください。そして、それをコントロールする大きな要素として脂の量を適切に調節するということが大事なこのなのです。

今日も、結局難しい話になりましたが、作る側にとっても、買う側にとっても、とても大事な話だということです。デザインがどんなに良くても、毛皮の本来の魅力が表現されていない商品をいいと錯覚してしまうのは、売る側の勉強不足や、正確で正しい情報を持っていないということに他なりません。

毛皮の魅力が分からないからデザインだけで選ぶしかなくなるとも言えます。一人でも、毛皮の魅力を理解できるひとが増えること期待してこのブログを書いています。

上の写真は、レイヤード(細くカットした毛皮を生地に間隔を開けて縫い付ける技術の総称)のために5mmにカットされたミンクをバラバラにならないように、ボール紙に挟んでおいたら、皮の裏面が密着していたボール紙に今日のテーマの脂が染み移ってしまったものです。これくらい、毛皮の皮の脂は多いという証です。

リフォームをするならば、この無駄な脂を必ず落としてもらってリメイクしてもらうのが本来のリフォームの姿でしょう。手で拭き取るクリーニングや毛皮専門のクリーニングなど意味がありませんから。

長澤祐一

 

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PS.ついでに、ミンクレイヤードのボレロの写真も載せておきます。