ラインを太くする方法

ラインを太くする方法として、メスの3サイズくらいのものを二枚で一つのラインにする方法があります。ですから、販売の現場で、少し毛皮の方法を知っているひとは大きいサイズを使わなくても出来ると言うかもしれません。しかし、それは原皮を足すと言うことが、どれほど難しいかを知らないからなのです。

セーブルはよく、頭から前足のクロスという部分まで落として、もう一枚の原皮のお尻部分の下に足すという方法があります。ミンクも毛の長いものや色の濃いものはやることがあります。 (さらに…)

ブルーアイリスミンクのオーダーメイド(作りの部分)

今回は作りの部分にも少し触れていきましょう。今回の問題点は、メスといえども、オスと同じくらいになると、毛質はメスの柔らかさを持っていても、皮はさすがに2~3サイズと比べると厚くなり、そのまま仕上げたのではオスの0サイズを使ったような重い仕上がりになってしまいます。

当然、私が通常やる再なめしということも考えたのですが、再なめしによって、ブルーアイリスにわずかにかけたブルーイングという青味をつけた色がなめしによって必ず落ちてしまい、しかも、均一に落ちれば再度ブルーインをすればいいのですが、落ち方が均一じゃない場合は、せっかくマッチングして選びこんだ材料の色がバラバラになりかねません。そのために再なめしは諦めることにしました。

しかし、このままでは必ず重い仕上がりになってしまいます。 (さらに…)

チンチラはそんなに軽くない

今日はチンチラが、そんなに軽くない事について書いてみます。チンチラは一般的に毛皮のなかでも繊細な毛皮の最たるものとして扱われていて、イメージとしても、とても軽そうに思われているかもしれません。しかし、実は決して軽い素材ではないのです。軽いイメージはおそらく、毛の繊細さや、皮が何年もしないうちに破れたりして、皮が薄く弱いというイメージからくるものなのでしょう。

チンチラの皮は決して薄くはないのです。腹の部分は確かに薄いのですが、腹を過ぎて背中心に向かうほど皮は厚くなってきて重さに影響を与えています。以前もチンチラの皮の劣化について書いていますが、チンチラの皮は他のミンクのような皮に比べ何倍も切れやすいのです。

もちろん個体差があり、さらにはなめしの最終の仕上がり状態にも大きく影響を受けます。というよりも、最後のなめし上がりの仕上げ方と保管の状態で皮の劣化や強度が決まると言っても過言ではありません。

さらに重さという意味では、繊細といってもチンチラは毛のボリュームがあるため皮の厚さだけではなく毛自体も重さの要因になっているのだろうと思われます。

以前、当ブログで「毛皮クリーニングの問題点」を書いたかと思いますが、クリーニングするためのドラムにかけただけで切れる可能性があるのです。その理由は、一見、皮が薄く弱いからと誤解されがちですが、実際には弱くても軽ければ、そう簡単にドラムのなかで切れることはありません。重いコートがドラムのなかで回転することで遠心力も加わり、下にたたきつけられるというなかで切れるという現象が発生します。

よく着用せずにハンガーに吊るしたままで、肩が切れてしまったというようなことが起きるのも皮の弱さだけではなく重さも大きな原因の一つです。

最後にひとつ付け加えますが、すべてのチンチラが弱いわけではありません。前にも書いたようになめしの状態がよく、湿気を吸収しない状態にあり、さらに、できるだけドライな環境で保管をする、そして、加工段階でも切れそうな部分にはしっかりと補強をするという、この三つの条件が満たされていれば、簡単に切れることはありません。

よく、全体に芯を抱かしてあるものが見受けられますが、あれはあまり意味がないのです。重さがかかる部分にコートが硬くならないように注意をしながら補強をしていくというのがベストな考え方でしょう。

長澤

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当たり前のことをこなせない技術者

敬愛するとても優秀で高い感性をお持ちの職人のSさんとゆう方がいらっしゃいます。先日、そのSさんから電話を頂きました。

「長澤さん。あの毛皮屋さん知ってる??聞いてよ、お客様がコートもってきてさ~、そこで技術は日本一と言われたその毛皮屋さんでリフォームしたらしいんだけどね、袖にベッタリと芯を貼ってるんだけど、糊で豚皮貼ってるんだよ。やっと剥がしたよ。それにしてもあり得ないよね~、豚皮なんて、、ガチガチでさ~~ロボットの袖みたいだよ。。。」

なんて会話をしました。

私もつい先日、お直しをしたお客様のコートを開くと大きく接着芯が貼ってあり、何故こんな必要もないところにと思って、恐る恐る剥がしてみました。 (さらに…)

プラクトミンクについて

プラクトミンク回転アイロン

今日は、プラクトミンクについて書いてみます。プラクトとは刺し毛を抜いたもののことをいいます。一般的に多いのはビーバーやヌートリアです。ミンクがプラクトされるようになったのは、刺し毛付きのミンクが売れにくくなってからでしょう。刈毛とともに毛皮らしさを抑えることを目的として出てきた加工方法です。当時のアンチファー運動も影響していたのかもしれません。

刈毛はプラクトしたものを刈っていると思われがちですが、そうではありません。ヌートリアの刈毛はプラクトしたものを刈ってます。その理由はヌートリアやビーバーは刺し毛付きのままでは、刺し毛が硬くて商品にならず、最初のなめしの段階でプラクトにします。

しかし、 (さらに…)

既成の工法の見直し

この時期になると作り出して納めるまでの期間がどんどん短くなります。ものによっては数日で作り上げることもあります。こう書くと手を抜いているように思われがちですが、それを承知で書いてみます。

私たちは常日頃から仕上がりと効率を両立させることを考えています。このことは多分どの技術者も同じだとおもいます。しかし、私たち技術者の考えのなかには以外に既成概念が強くあり、こうしないといけない、こうすべきだ、こうあるべきだと思うことがたくさんあります。

そして常日頃から、 (さらに…)

毛皮の毛の癖をとる

今日は毛皮の毛の癖をとりたい、、、という検索で当ブログ入っていらっしゃる方が以前いらっしゃったので、これについて書いてみます。毛皮の毛は髪の毛とほぼ同じ性質を持っていると思われ、高温の熱をかけて引っ張ればほぼ真っすぐに(ラム系は完璧にはなりません)なりますし、水分を与えれば縮みます。

違いがあるとすれば、毛皮の皮は温度を感じることがなく、人は熱い蒸気がかかれば熱いと感じ、皮膚からスチームを離すことです。よくあるのがアイロンの蒸気をかけて毛皮の皮をニカワのように硬くなって縮んでしまうことがあり、直して欲しいという依頼があります。専門業者のクリーニング屋さんでも、よくスチームをかけ過ぎてしまい縮ませてしまい、直して欲しいということもあります。

縮んだ皮は、蒸気のかけかたの度合いで元に戻るものと戻らないものがあり、 (さらに…)

毛皮用スチーマー

今日は毛皮用のスチームという言葉で、よく検索されて、このブログに入っていらっしゃるケースが多いので、この「毛皮用スチーマー」というタイトルで書いてみます。

アトリエでも、以前はナオモト工業(株)さんが毛皮全盛期に作っていた小型ヒーターの付いたスチームを使っていました。これはガンタイプになっていて、美容室で使うドライヤーのような形をしていて、ガンの先にバネがついていて毛皮に先のノズルが直接触れないようにできています。

しかし、これは小物くらいのものを仕上げるのであればいいのですが、コートクラスになるとパワーが足りなすぎるのとガンタイプなので、要は一つのポイントしかスチームをあてられず、とても時間がかかってしまったり、ノズルの跡が出来てしまったりとコートをメインで作る私たちにとっては欠点が多過ぎました。

その後、ガンタイプから (さらに…)

ホワイトミンクマフラー

今日はストレートのホワイトミンクマフラーについて書いてみます。素材はアメリカンミンク/メスの4サイズです。以前はメスのミンクは3サイズが主流でしたが、今はその上の2サイズが全体のなかで大きな割合を占めています。中にはメスで1サイズや0サイズもあります。

今日のミンクは今では珍しいメス4サイズです。このミンクはサイズは小さいのですがアメリカミンクらしく毛のボリュームは素晴らしい逸品です。そして、サイズが小さいぶん、毛質もとても柔らかく刺し毛も短く、素晴らしい肌触りです。人間の肌も、男性より女性、大人の女性より赤ちゃんの肌が柔らかい、、、というようにミンクもオスよりメス、大きいサイズより小さいサイズのほう、、、というように毛質は繊細になります。 (さらに…)

リフォームにおける刈毛加工(シェアード加工)の問題点

先日、コメントにリフォームの問い合わせがありました。お問い合わせありがとうございます。メールにて返信いたしましたが、メールが拒否されており受け取っていただけない状態にあります。お問い合わせにつきましては出来る限りメールにて、弊社の解る範囲で回答をしております。そのためどうかメール受け取れる状態にて、再度、お問い合わせいただきますようお願い申し上げます。

今回はメールが受け取っていただけないので、当ブログにて掲載できる内容のみを出来るだけ詳細にお答えしてみます。

さて、今回のお問い合わせ内容は

「毛皮マントコート 着丈83センチ 裾一周270 シェアード加工して頂いたら、おいくらですか?」

でした。この問い合わせ内容で、今出来るだけの回答をしてみます。お問い合わせ内容に素材名が書いてありませんので、とりあえず素材はミンクであろうということを前提に回答いたします。

結論から申し上げますと、あまり、お勧めは出来ません。

理由:

刈毛加工をするために一度、裏地、全ての付属を外し、さらにコートもパーツごとにばらし、身頃、袖、エリ等全てのパーツ状態にし、さらにダーツ等もほどき全てのパーツを平らな状態にしないと刈毛加工ができません。

さらに刈毛加工段階でそれぞれのパーツの細い角の部分などはちぎれてしまい毛が短くカットされてしまうことが多いために、角の部分のすべでをレザー等を縫い付けて角の状態をなくさなくてはなりません。そのため、デザイン替えの刈毛加工よりも手間がかかり、その分加工賃も割り増しになります。現状維持のデザインのままでは元に100%戻すのは、以外に難しいのです。

それと、加工賃も一度全て、バラバラにしたものをもう一度形にしていくので手間は最初から作るのとほぼ同じ手間がかかり、一般的には高額になりがちです。金額はここはブログ記事ですので触れませんが、見た目の変化よりも高くつくケースが多いと思います。結果的に刈毛加工しかしていないにも関わらず、高額になるため仕上がりと価格のバランスがとれず、あまり現実にビジネスにはなっていないように思います。

ですから、一般的には料金は上がりますが、デザインを新しくするか、もしくは表生地の中にライナーとして刈毛した毛皮を使うというリメイク的な受注になることが多く見受けられます。そのため、最近はリフォームの業者さんも刈毛加工は料金表からも消えているケースが多く、刈毛して、そのままのデザインに戻すことはほとんどないように思います。

そして、刈毛加工そのものに、問題が多く含まれることもあり、おそらくクレームやトラブルが多過ぎて、メニューから除外されてしまったのだと思います。

仕上がりについて少しコメントします。

一般的には刺し毛のついたミンクを刈ることによって、中の綿毛の色がハッキリしてきますので、最初に作る技術者がよほど、綺麗に色を合わせていない限り、なかなか色が綺麗に仕上がりません。刈り上がった状態を見ると8割はそのままでは使うことができません。毛皮をほどき並べ替えたりしないと綺麗にならず、そのままのデザインに戻すことは不可能に近い状態になります。

当社は、リフォームが専門ではなく、お客様やお取り組み先様へのサービスの一環としてリフォーム、リメイクをしておりますので点数は多くはありませんが、私の経験上では刈毛して、そのままの使えるほど綺麗なものは、これまででも、3点くらいなものです。もちろん、どのレベルを基準にするかということもありますが、私の基準では数点でした。もちろん、値段が高いものが良いかというとそういう訳ではありません。あくまでそのときに使われたバンドル(毛皮の束)の色が揃っていたとか、作られた職人さんの技術が高かったとかいうことが仕上がりに一番影響を与えます。

余談になりますが先日も、毛皮業界では有名なビスカルディというブランドがあり、そのミンクコートのリメイクをしましたが、もとの価格が高額なこともあり毛質は素晴らしいものでしたが、色は刈ったら駄目だろうなというようなレベルでした。幸い、刈るリメイクではなく、素材はそのまま生かすというリメイクでしたので大きな問題もなく綺麗に仕上がりました。要は買った値段が高かった、イコール、刈毛してもOKにはなりません。

そんなこともあり、一般的には表の毛皮としては使うことが出来ずに仕方なく中のライナーとして使うことが多かったのだと思います。

さらに、一般的な刈毛の加工したコートは毛流れが逆毛で作られていて、そのために黒であれば、漆黒の黒というように深みのある黒になります。毛の向きが見る方向や光の方向に対して向いているので光を反射せず色に深みをもたせます。しかし、お客様のケープが万が一、普通の並毛(上から下に流れる)で作られているものならば、一般の商品とは毛の流れが逆になりますので、毛の反射があり、黒でも白っぽくみえるようになります。ですから、写真でみている刈毛のコートと同じようにはみえないのが現実です。

マントの加工方法がレットアウトという細かくカットして縫い合わせているものであれば、縫い目のラインが刈毛することによってはっきり見えてきます。これも、マイナス要因の一つです。

さらにリフォームの場合はカットの毛の長さですが通常は7~8mmくらいで刈ります。理由はすでに縫い目があるのであまり短くすると縫い目がしっかり縫えていない場合、粗が見えてしまいます。商品は一般的には最近は短くなる傾向で当社では6mmくらいです。ただし、リフォームの場合は、メスのミンク等、毛のもともと短いものは頭の毛の短い部分につきましては刺し毛が刈り切れず少し残ってしまいますので、これも問題の一つです。

以上が、すでに商品化されたコートを刈毛するということでの一般的は問題点です。今回のお問い合わせにあたり、他社のサイトもいくつか見ましたが、刈毛のみをしてデザインはそのままに戻すという加工方法での料金表は見当たりませんでした。

上記のいくつかの理由で、仕上がりの割にはお値段が高くつきますので、今回の加工は私どもではお勧めはいたしません。万が一やるというところがあるかもしれませんが、私が書いたいくつかの問題点を業者さんにぶつけてみてください。まともに回答できないところでしたら、その業者さんはお勧めはできません。

お勧めできるとしたら、プラクト(抜き毛加工)でしょう。今のデザインが気に入っていらっしゃるのであれば、形はそのままで刺し毛だけ抜くことができます。価格もおそらく刈毛するよりは安く済むはずです。その理由はプラクトは全て手作業でコートそのままの状態でできるからです。裏地を外したり毛皮をばらしたりすることなくできます。ただし、上の文でご説明させていただきましたが、色については加工前によくチェックしてもらう必要があります。刈毛よりはチェックは甘くしても少しは大丈夫です。これにつきましては説明が長くなりますので省きます。

ひとつ、注意しなければならないのは、マントのミンクのタイプがヨーロッパのものかアメリカタイプのショートナップ(刺し毛と綿毛の長さの差が少ない)のものとではプラクトの手間が大きく違いますので価格も違います。さらに付け加えるならば、アメリカンタイプの綺麗なみんくであればカットしたりプラクトしたりすることはお勧めしません。理由は刺し毛のついたミンクそのものに大きな価値があるからです。

一応、今回のお問い合わせで回答出来るのはここが限界でございます。これで、解らないところがございましたら、再度ご質問頂ければ助かります。何度でも、お答えいたします。次回は写真等がありましたら、もう少し具体的な提案もできるのかもしれませんので是非写真も添付して頂ければと思います。

長澤

追伸:写真は一般的なレットアウト加工したミンクコートを刈毛加工(シェアード加工)をしたものです。これは見てもらうと解りますが、刈ってもとても色がそろっていて綺麗な仕上がりです。このクラスはなかなかありません。これはレットアウトの縫いもしっかりしていて、色合わせも綺麗です。これだけ見ても作った人の技量がわかるコートです。このクラスになると、刈毛以外のどんな加工をしても綺麗に仕上がります。(長澤)

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