正しい仕事(鞣し)をしても、川下の勉強不足で、正しい仕事が出来ない辛さ

今日のタイトルは長いですね。そして業界関係者には怒られるかもしれません。

私はよく鞣し屋さんと毛皮の皮の仕上がり具合について意見交換したり、実際に鞣しを依頼するときに、こんな風にしてほしいとお願いすることがあります。その理由は製品の仕上がりに大きく影響するからです。

鞣しで大事なことは毛根を切らずにより薄く鋤いてもらうことです。しかし、業者さんにとってはそのこと以上に大事なことがあります。原皮価格がサイズで決定しますので、より長さが出るように鞣して欲しいのです。もちろんすべての業者さんがそうではないかもしれません。

しかし、そのことと鞣しの最高条件とは異なるのです。私は鞣し上がった毛皮の皮を回転アイロンという大きな機械のアイロン部分に紙やすりのようなものをつけて仕上がった皮を毛根を切らないようにしながら鋤きます。もちろん失敗も散々しました。原皮をダメにすることなどしょっちゅうだったのです。

その時に感じたのは原皮を縦に引いて鋤くと、皮の繊維は縦に集中して繊維が固くなり鋤ずらいのです。

原皮価格を上げようとして縦に引いて鞣しをするとサイズはアップしますが、皮は薄くなりにくいのです。ならないとはいいませんがなりにくいのは事実です。

じゃあ、最大限薄く鋤いてから縦にひけば良いだろうとも考えられますが、作業工程は微妙で手順が少し変わるだけで手間が大きく変わります。ですから、口で言うほど簡単じゃないはずです。

私が頼んでいるところはホントに優秀な技術者さんです。私の話もしっかりと理解してくれます。そして再鞣しでは私の思うような鋤き方と脂の量にドライクリーニングで調整してくれます。技術者でも何度言っても理解できない人もいるのです。

ところがです。私が良いと思う方法や仕上がり方法で他の依頼者のものを仕上げるとクレームが来るというのです。脂の量を減らし軽く柔らかく仕上げても、その後の職人による作業中の水加減で硬くなったりします。

この話を聴いたときにはさすがに国内加工のレベルが低いなとがっかりしました。生意気いいますが、仕上がった私の商品とその職人さんの仕上げた商品を比べてみればわかるはずです。

ここに今日の一番言いたい、仕事を受ける立場からすると、どんなにそれはおかしいだろうと思っても、お金をもらう人のいうことを聞かざる得ないのです。どういう立場のひとがそれにあたるかは支障があるのでいいませんが、せっかく鞣し屋さんに技術があっても、その技術を最大限に活かせないという、川下のレベルが低いことで川上にある技術が生かしきれずに、結果、国内毛皮製品のレベルが上がらないという結果になり、世界中の、例えば中国にさえも圧倒的に負けてしまうという結果になってしまうのです。

しかし、何十年も同じ発想と方法で仕事をしている川下関連の業者さんの大半は変わることは難しいと感じます。自分が新しい、よりベストなものを求めない限り進化・進歩などありません。他人が教えてなどくれませんから。

もちろん、川下だけじゃありません。川上にいても技術を最終的な仕上がりに合わせて磨かなければ意味がなく、そのために仕上がった商品を見る必要があるのです。

毛皮の場合には、クロム鞣しでないかぎり10年単位では必ず皮の劣化と向き合わないといけないのです。湿気を吸収しやすい皮質としにくい皮質があるのです。

しかし、中間の加工屋さんにはそんなことは、まったく関係なく、商品として形になればよいのです。

そこがいつも難しいと感じます。 

最後はテーマから少しずれましたが、毛皮加工で向き合わないといけないことは作ることだけではないのです。綺麗に作るためにどうするのか?劣化しないためにどうするのか?を常に考えなければならないことがたくさんあります。

それが出来ていないと、業者であれば、自分の在庫が年々劣化していき、顧客に対してどこかで嘘をつくことになってしまうのです。何もしないことが嘘をつくということになりかねないのが、この毛皮という素材なのです。いつも悩みます。

煌びやかな世界と、その裏側にある難しい管理の問題でずっと悩みます。

長澤祐一

毛皮の劣化の意味と保管 最終稿

私がブログを開始して13年間、ずっと書き続けてきた毛皮の保管と毛皮の劣化について、やっと最終的な(現段階でですが)記載ができるようになりました。

私が保管で湿気を徹底して嫌う理由を下記に記載します。

興味のある方は読んてみてください。ただし、私は化学がまったくわかりませんので化学式のようなものはわかりません。間違いがあったらすみません。ただ、大まかな劣化の流れは間違っていないはずです。

簡単に説明すると 毛皮は通常、ミョウバン鞣しという手法で鞣されます。海外では同じことを指すかは不明ですがドレッシングと言います。衣服のように柔らかく仕上げるという意味らしいのです。

まず簡単に劣化の流れを書いてみます。

ミョウバン鞣しで使うカリウムミョウバンのなかにSO4硫酸イオン(硫酸根)というのかあるといわれます。

このカリウムミョウバンの段階では硫酸の性質はないと言われています。ところが、毛皮の皮が湿気を吸ったり濡れたりするとアルミニュウムカリウム(硫酸カリウムアルミニウム(ミョウバン))が一部解けてイオン化します(イオン化の詳細は省きます)。

このように湿ったり濡れたりしてイオン化したときにSO42マイナスというイオンがでます。このイオンだけでは硫酸として機能しません。

しかし、吸い込んだ水から、ほんの一部が微量な量の 水素イオン「H+」とOH-(水酸化物イオン)に分かれるのがごく一部あり、それがイオン化します。水素イオン「H+」と、このSO42マイナス硫酸イオンが両方存在するとh2SO4、ようするに硫酸になります。

この量はほんとに微量なのですが、毛皮の長期に保管状態の悪さが重なることで、少しずつ増えて、さらにそれが乾燥することで濃縮されて、濃い硫酸になり、それが皮の組織を痛める原因となります。

もともと鞣しとは、詳しくは書けませんが、アミノ酸とアミノ酸の間にアルミが入って組織をつないでいるらしいのです。その過剰結合にって生皮でないという、いわゆる鞣されたという状態になり、生皮が安定した状態になります。

今回のテーマの毛皮の皮の劣化とは、その過剰結合を硫酸によって切られてしまった状態のことを言います。

そのことで本来であれば皮を指で引っ張ったりすると伸びる皮本来の伸びる性質をなくし、紙またはボール紙のようになってしまうという状態になるのです。

劣化が進む条件としては、温度が高い、湿度が高い、例えば梅雨の時期などは最も危険です。諸外国で言えば、砂漠のような地域では劣化はしないと言えます。

私が、これまで散々湿気が湿気が、、と毛皮の保管のことで書いてきた意味がここにあります。

湿気が直接劣化を促進させる訳ではないのですが、湿気が入り、それが乾いて、また湿気が入るというように湿気が出入りを繰り返すことで、硫酸が蓄積していき皮の繊維結合を切ることになり劣化という症状がでます。

そのために、湿気を呼び込みやすい鞣し時に入る脂を極力鞣し屋さんに依頼して取り除いたり、自分でも使用制限のない弱めの有機溶剤とオガを混ぜてドラムに長時間かけてゆっくり脂を抜く作業をしたりとこだわってきたのです。

皮から不必要な脂を抜くことで湿気を吸収しにくい皮の性質にして、保管時に空気中の湿気が入らないようにしたりするのです。

しかし、着用する以上空気に触れないようにすることは出来ません。極力、長期間空気の出入りと出入りの回数を制限するしかないのです。乾燥している冬場は問題ないと考えていますが、梅雨から夏にかけては毛皮にとっては危険な時期になりますので、その時だけでも適切な保管方法があればと考えてきました。

最終的にどうしようと考えた結果、市販の圧縮袋で、空気を抜かずに保管するという方法です。意地悪な意見があるとすれば、袋に入ってる空気を抜かなければと反論がでそうですが、実際に袋に入る空気の中に入っている湿気の量は、おそらく微量で、その空気の量で毛皮が突然劣化するとは考えにくく、袋に入っている湿気は真夏時でも、一度毛皮コートを入れたら湿度は変わらないことは実験済です。ですから、できるだけ湿度の少ない時期にパックに入れる方がパックの中の湿度は低くなるということです。

今は、これが一番ベターな方法だと考えています。パックから空気を抜いてしまうと、毛皮コートがぺしゃんこになり、着用時に毛や皮が戻るまでに時間がかかり、毛の癖をとったりする必要がでます。このブログにもたくさんの方が、毛皮の毛癖直しで検索で入って来られます。それくらいお客様にとっては、シーズン直前の毛癖取は重要な問題なのです。

ですから、私はパックの空気を抜く必要はないと考えています。仮にこの方法で劣化が起きたとしたら、すでにお持ちの毛皮の劣化が進んでしまっていたということです。

是非一度上に書いた方法を試してみてください。すでに劣化しているものは劣化の症状が出るかもしれませんが、私が提案した方法で劣化がさらに進むことはないはずです。

不安な方は、いつでもお問い合わせくださいませ。

長澤祐一

最後に一番劣化しないようにするには、クロム鞣しをしてしまうことです。クロム鞣しをするということは、アルミで結合したドレッシングのように簡単に結合を切られてしまうことがないのです。但しドレッシングよりも少しだけ硬さがでたり、毛にクロム汚染によってグレーっぽい青味がつきます。真っ白のような原皮は少し目立つのと、クロムによる硬さやコストが高くつくなどの問題がでますので、すべての素材に適応するわけでもないのです。

但し、本来のドレッシングが一般のミンクなどと比べ脂が多めのため劣化しやすいチンチラには有効だったりします。もちろんコスト高にはなりますが、お客様のことを考えればするべきだろうと考えています。

ですから、当社では湿気を吸いやすい鞣しのチンチラなどはクロム鞣しをしているのです。

毛皮の劣化を防ぐ 食塩水(3%)を使う その効果とは、

劣化に関する最新記事をアップ致しました。是非見てください。https://www.passione.co.jp/blog/%e6%af%9b%e7%9a%ae%e3%81%ae%e6%ad%a3%e3%81%97%e3%81%84%e4%bf%9d%e7%ae%a1%e6%96%b9%e6%b3%95%e3%81%a8%e5%8a%a3%e5%8c%96%e3%81%ae%e6%84%8f%e5%91%b3/

今日は、劣化を防ぐ方法の一つとしてプロの間で使われている食塩水について書いてみます。

鞣し加工時に食塩水が使われているのはプロの間では当たり前のこととして言われています。

私も何度か劣化を防ぐための処置として加工段階で食塩水を使ったことがありますが、結果はあまりよくありませんでした。やはり、鞣し加工の初期の段階で使うのはよしとして、それ以外の段階で食塩水を使うのはダメだろうなと感じています。

その理由は、加工段階で食塩水を使うと理由はわかりませんが、塩分を含んだ皮が空気中の水分を吸収しやすくなるのです。

そのため皮がわずかですが重くなったような気もして湿気のせいで皮の柔らかさも少しなくなるように感じるのです。

毛皮の皮にとっても水分は、ある意味大敵なのです。水分が含まれると皮がなぜか硬化し、あくまで私の感覚ですが酸化が進むような気がします。これが劣化につながると想像しています。もちろん根拠などありませんが、長い間、毛皮の皮を見てきて出てきた私独自の結論です。

よく、毛皮を洗剤入りで水につけて洗うというような記事がありますね。ウォータークリーニングとかいう解説でYouTube等でときどき見かけますが、辛うじて悲惨にならない理由は、たまたまフォックス等の襟巻で毛皮の皮まで水が浸み込まないで済んだか、たまたま毛皮マフラーが染色してありクロム鞣しという水が浸み込んでも良い状態であったからという理由でウォータークリーニングができると間違った解説がしてあるものが多いので気を付けてください。はっきりいってYouTubeでの毛皮の記載は、ビュー数を稼ごうとするためのインパクトを狙ったものが多すぎるのです。

毛皮にはもともと水を跳ね返す力があり、簡単には水が浸透しません。そのため例えば毛糸を染色するときに浸透剤を使って水を浸み込ませますが毛皮も同じで簡単に水が浸み込みません。

ごめんなさい。最後は劣化とは関係のないところに行きましたが、まとめると湿気は劣化に大きく影響し、鞣し時に良いとされる塩分も最終的な加工時点、または仕上がり時点では入らないほうが良いと感じます。

長澤 祐一

チンチラ 劣化 その2

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このブログでも劣化についてはたくさん書いてきていますが、一般的な毛皮素材のなかで一番多いのがチンチラだと思います。

ヌートリアも劣化しやすいですがチンチラほど素材として一般的ではありませんのでチンチラについて、再度違う視点で書いてみます。

昨年、ナンタケットバスケットのトリミングを作ろうと思って、友人の知り合いの方からナンタケットバスケットと別売されているファートリミングをお借りしました。

販売したメーカーは有名なところで、フローラル・・・・ というところです。

チンチラは毛が3cほどあるので分かりにくいのですが、接ぎ目で5個所以上破れていました。ということは半分の接ぎ目が切れていたということです。

以前、ブログのどこかで記載していますが、チンチラでもクロム鞣しや薄い芯を貼れば簡単に切れることはありません。

今回のチンチラトリムははっきり言って論外というほど酷い作りでした。

元々チンチラは弱い素材ですが、それにしてもそうそう切れるものではありません。しかし、今回のものは半分の接ぎ目が切れてしまっていました。チンチラの皮が劣化してしまっていることと、補強の芯がまったく形だけで効いてないことが原因です。

さらに、正しい作り方などないのですが、それでも、ドラムという機械(乾燥機のようなもの)にかけて柔らかくしてから綿や裏地をつけるという作業をしていれば、多少の使用で切れることはありません。

お買いになられて、想像ですが仮に6年くらい経っていたとしても、こんなに簡単に縫い目のところで切れることはないのです。

あるとすれば、古い材料を使ったために加工する前から原皮が劣化していて、それを感じて知っていながら作成してしまったというような場合でしょう。このチンチラトリミングを修理するときに中を開きましたが、既に部分劣化ではなく皮全体が劣化していて接着芯はほとんど剥がれてしまっていました。

こうなるとどんなに慎重に作業をしても紙を縫い針で縫うようなもので、針穴からさらに切れてしまいます。

本来、作り手が気が付くはずですが、経験が不足していたり、高額なチンチラ素材を無駄にしたくないということで、無理に仕上げてしまうというようなことが起こりがちなのです。

そんなことでチンチラは弱い、というイメージがついてしまいます。

しかし、正しい扱い方をすればそれほど弱いという素材ではありません。もちろん、強い力には弱いですが劣化したチンチラとはまったく違います。

少し補足しますが、チンチラがもともと切れやすい弱い素材というイメージからか一般的なチンチラの鞣しは脂分が多く含まれているのです。一見、その方が柔らかく感じます。

しかし、この脂分が空気中の水分を吸収してしまい、皮に含まれてしまった水分が酸化して劣化するように感じます。

しかし、唯一デンマーク産のチンチラだけは皮の表面がカサカサして乾いていて、私の見解では逆に劣化しにくいと感じます。デンマーク産以外のものは時々ですが、仕入れたバンドルの状態で劣化しているチンチラがあります。

それくらい、チンチラは毛も繊細ですが、皮も繊細なのです。

お客様のためにできることというと、クロム鞣しをして劣化を少しでも止めることですが、それでもパーフェクトではありません。しかし、やらないよりは圧倒的に良いのです。

しかし、染色ではクロム鞣しは必然的にやりますが、ナチュラルな色ではコストをかけてやることはなく、そのクロム鞣しの重要性を知ってやっているところは、国内ではわたしのところと、ふぉく、、、ー  さんだけです。

ひとつ解説しますが、染色したものは染色のために耐熱処理のクロム鞣しが施されているという意味ですが、毛皮の染色は60度くらいのお湯につけて染色をしますので、通常の皮だと、縮んでしまい固くなって使い物にならなくなります。そのために耐熱処理をクロム鞣しという加工でしています。

これが、劣化防止の効果も生んでいるのです。

今日はチンチラの劣化に特化して記載しましたが、次回は、劣化そのものについて記載してみます。

長澤祐一

どれだけ、書いていることとやっていることが一致しているか?

どれだけ、書いていることとやっていることが一致しているか?

今日のテーマも難しいですね。

 

しかし、これはこれまでのお客様に判断していただくしかありません。

と、普通は書きますね。

確かに、これまでやってきたことでしか判断はしてもらえないのです。しかし、それは事実と違う場合があります。

それは毛皮という素材をお客様が理解できないということがあります。私は、お預かりしたものはどんなことがあっても最高の状態にしようと未知の劣化の酷いものでも、何とかしようとします。

お客様に判断して頂ければと言えるのは、簡単なことです。とても綺麗な言い方で誰でも言いそうな文言です。現実はそんな簡単ではありません。

以前書いたかどうか記憶にありませんが、本当にどうにもならずに、お客様に極限までやれることをやり、どうにもならずに、ご理解いただいたことが一回だけあります。

blogを始めて二三年のときだったかとおもいます。劣化等について書き始めた頃に、駆け込み寺のように、たくさんの問い合わせがありました。その中でどうしても、思うようにならないコートがあり、その時は、頭を下げ、お客様には許していただきました。都度途中経過も説明しながらです。

最後は、長澤さん、もう良いですよ。もう十分やっていただきました、、、と言ってもらいながら、これ以上は無理だと自分で判断しあきらめたことがあります。

 

劣化のあるものは読み切れるものと、先が全く読めないものがあります。そんなこともあり普通は絶対やりません。一般的な業者のほとんどは、劣化や硬化に対して知識がないということもありますが、そのために少しでもリスクのあるものは受けません。それは仕方ないことなのです。責任が持てないということが一番の理由です。まして高額な毛皮という素材ですから。

私の場合は自分なら出来るかもしれないという気持ちと、なんとかして上げることが出来ないだろうかという気持ちが半々で、お引き受けすることがほとんどです。

もちろん、利益なんか度外視です。利益やリスクを考えるから他の業者さんは絶対に手を出しません。それはよく解るのです。でも、だから何時までたっても、技術力が進歩しないともいえます。

 

確かに、リスクのある状態のコートのリフォームは利益なんかまったく出ません。しかし、ノウハウという大きなメリットは自分に残せます。そのノウハウは次に必ず役に立ちます。

もちろんすぐではありませんが、複数の結果は必ず回答を導きだしてくれることがあります。

 

ただ、正直言うと、複数の失敗したデータから導きだされた結果が、一番最初に解っていれば、あの時のあのコートももっとよく出来たのではないかと思うこともあり、申し訳ないと思うことも多々あります。というかその連続です。科学技術も含め、それはあたり前のことと思いながらも、あの時に今ある技術があれば、もっと良い処理が出来たのではと思うことが多いのも事実です。

ちなみに劣化について少し説明しますが、完全に繊維のチェーンが外れてしまい、段ボールの紙のようになってしまうと、水に濡らしただけで簡単に切れます。こうなるともう100%どうにもなりません。

じゃあ何故こんなに格闘するかというと、ほとんどの場合は劣化しかかっている状態であったり、硬化してしまって元に戻すことができないと判断されてしまったりして一般的な業者からは、これは元には戻りません、または出来ませんと言われてしまうのです。

一見、丈夫そうに見えるヌートリアが簡単に切れることを以前書きましたが見た目ではなかなか判断が出来ないのです。

 

今日もタイトルと一致したかどうかわかりませんが、いつも頭のなかでぐるぐると考え悩んでいることです。

どれだけ、書いていることとやっていることが一致しているか?難しいテーマです。

ただ、お一人でも、このブログを読んで、もしかしたら、、と思いお問い合わせくださる方には、これからも、全力でフォローを致します。

前回のファーブランドとして生きるという記事でも書きましたが、毛皮が好き、、毛皮で助けて欲しいという方がいらっしゃいましたら私にできることは、時間はいただきますが全力で致します。

 

長澤祐一

 

 

毛皮の皮の劣化とクリーニング その6  その他

劣化に関する最新記事をアップ致しました。是非見てください。https://www.passione.co.jp/blog/%e6%af%9b%e7%9a%ae%e3%81%ae%e6%ad%a3%e3%81%97%e3%81%84%e4%bf%9d%e7%ae%a1%e6%96%b9%e6%b3%95%e3%81%a8%e5%8a%a3%e5%8c%96%e3%81%ae%e6%84%8f%e5%91%b3/

今日は、数回に分けて書いてきたなかで、さらに書き切れなく、一つのテーマとして書くほど長くもないという単発的なことをいくつか書いてみます。

毛皮の劣化やクリーニングについて、私が書いてきたことが正しいかどうかは、私自身も100%の確証はありません。
その理由は、毛皮の性質からいうと、毛と皮の両面から考える必要があり、学術的に正しいといってもそれが絶対とも言えないのが現実です。その理由は、毛皮自体に個体差があり、鞣し作業でも個体ごとに作業の差があったり、さらにはその後の保管状況によっても差が出たりと、あらゆる局面で差があることが、劣化やクリーニングに対してのそれぞれに考え方が違う要素になっています。
さらには、今現在の一般的な毛皮のクリーニングに使われているパウダークリーニングという手法も、もう何十年も前に、当時の専門家が考えた手法であり、その当時と今では、一年を通じての気温も違い、当時は毛皮の歴史も浅く今のように劣化した毛皮がたくさん出たということもないという、そんな時代と現在とでは、本来であれば考え方が変わってもいいはずですが、業界が小さいということもあり新しい考え方が出てくるほどでもないのかもしれません。

今回私が書いたことの証明が出来るとすれば、私自身が作った商品で見てもらうほかなく、劣化で言えば、私が納品したものが年数を経ても硬化したり劣化したりしないという、そのことでしか証明が出来ないという気の長い話になるのですが、そこは、これまで記載してきた記事を読んでいただき託してもらうしかないと考えています。

脂を抜く作業をたまにですが上手くいかず、抜き過ぎる場合もあります。そんな時には柔軟剤を皮に多めに入れてから再度有機溶剤とオガで脂を抜きなおすこともあります。その時に、柔軟剤を入れて皮を縦横に伸ばして皮の繊維に十分に柔軟剤が行きわたるようにします。繊維が縦に伸びている状態だと十分に細部まで柔軟剤がしみ込まないことがあります。このように手もみをして、この状態で再度ドライをします。これで、また柔らかさが戻ることがあります。絶対ではないのですが、もうダメかと思いながらもやり直してみる価値はあります。

オガに水分を含ませてドラム(回転式洗浄機)を長時間回すとドラムの中の温度が上がります。化学的なことはわかりませんが、オガが発酵のような状態になるのかもしれません。しかし、少量の水をオガに染み込ませることで毛に効果があるように感じます。例えば静電気防止剤や艶出しは水溶性液体で、これを水で薄めて使うのですが、水だけでやっても毛に少量の湿気が加わり、しっとりとして綺麗になります。ただし、水分が抜けていくときに一番繊細な毛の先がカールすることがあります。特にセーブルのような繊細な刺し毛を持っている素材の場合には起こりやすいのです。ですから、今は艶出しも静電気防止剤も使っていません。人間の髪の毛は少しオイリーなほうが良いと言われますが、毛皮は人間の髪の毛よりも何倍も細くて繊細です。ですから今は余計な薬品は使わずに仕上げています。
よく、ヌートリアのような抜き毛になったものをクリーニングに出すと毛がパサパサになって戻ってきてがっかりされるお客様がいらっしゃいますが、元々の状態に戻ったということなのです。クリーニング段階で何をすればそうなるのかわかりませんが、仮にあるとすればパウダークリーニングで有機溶剤系以外の水溶性の洗剤または艶出し等が使われると人間の髪の毛と同じで毛が僅かにウェーブがかかります。というか戻ります。元々ヌートリアのような抜き毛素材は、高温の回転アイロンで人間の髪の毛で言うストレートパーマをかけたような状態にして毛艶をだしていますので、水分が少しでも入ると毛は元に戻ります。パーマではなくドライヤーで髪を伸ばした状態なので水分を含むと縮れる性質なのです。そのためにヌートリアのような抜き毛素材はクリーニングに出して戻ってくると白っぽく艶のない状態になり、がっがりされることがあります。私もアトリエに回転アイロンがあり高温にしてヌートリアの毛を伸ばしますが、製品になったものは出来ません。理由は、毛を伸ばすためにアイロン部分を200度くらいか、それ以上に上げないと綺麗に毛が伸びません。しかも伸ばすために薬品を使うこともあります。クリーニングにくるものは商品になり裏地などが付いたカフスだったりコートに取り付けられたものがほとんどのため、裏地や他の生地を傷めるリスクが高過ぎて本格的に毛を伸ばす仕上げが出来ないのです。

毛皮につく匂いのほとんどが人間からつくものと、湿気から発生するカビ、そして香水です。女性の方は信じたくはないでしょうが匂いの発生元の多くは人間からなのです。クローゼットのなかは、ご自分では絶対に大丈夫だと思っていると思いますが、一回でも着たものをクローゼットに入れれば匂いは移ります。そしてそのなかで匂いが蓄積します。空調があるからといって安心もできません。洋服や毛皮を密着させた状態では部分的に湿気はたまって、カビの発生原因となるからです。
香水は、ご自分のものですから仕方ないとしてもカビは気になりますね。
ご本人は気付かれてないかもしれませんが、大半の毛皮コートにカビが生えています。ですから、よく保管中に不織布のカバーがかかった状態で倉庫に保管されているケースがあるかと思いますが、あれはかなり危険です。私のアトリエでも顧客のコートをクリーニングと保管を承ることがありますが、一番気を使うのが汚れではなく匂いです。コートを密着させれば不織布カバーでは絶対に匂いとカビは移ります。私のところは販売する商品もありますから、ものすごく神経を使います。
クリーニングにオガを使う理由は消臭効果もあります。有機溶剤で消臭効果が期待できるかどうかは分かりません。脂分が発生する匂いもあるので効果がないとは言えませんが、一番の効果はオガだと思います。私が使っているのはヒノキですが、詳しくはわかりませんがヒバとも言うようです。このヒノキのオガが消臭に効果があると感じます。最近使っている、家電のLGスタイラーというのがありますが、これも消臭効果が実際にあります。これはいつか別の記事で書きますが確かに消臭効果があります。強力な香水の匂いは難しいですが、軽い匂い程度であれば取れます。これは薬品やオガを使う訳ではないのですが、おそらく高温の蒸気が匂いを取るのだと推測しています

業者さんのやるパウダークリーニングとは何か変じゃないですか?パウダーという言葉の意味は、よく書かれているのはトウモロコシの芯を粉末にしてとか、皮に必要な油分を補充するとか? ありますね。それでは皮の脂分がどれほど不足しているんですか?裏地もとらず、皮を触りもせずにどうやって必要な油分を割り出すのですか?毛の栄養分?よくわかりませんよね。皮の必要な油分も毛の栄養剤も全て一回のパウダークリーニングという処理でやるのですか?汚れを取り除くのと栄養と油分を加えるのと一緒にするというのはかなり強引です。皮の油分を調整して足すなんてことも書かなきゃいいんです。だって裏地をとらずに毛の側からどうやって奥の皮まで必要な油分を補充するんですか?毛にも必要な栄養分をというなら先に汚れを落としてからでしょう。私はそう思います。人間用でリンスインシャンプーなんてありますが、毛皮は基本的に水洗いなんかできません。あれもこれも効果のありそうなことを書いてはありますが、全て一回のドラム処理では難しいと私は思います。毛皮の機械でグレージングマシンと言われている回転アイロンがあります。私も持っていますがセーブルやミンクの刺し毛の一番先の顕微鏡で見ないとわからないような細い毛先は、グレージングマシンを少し強くあてると毛先がわずかに切れてしまいます。毛皮が毛皮らしさを出している一番の部分です。毛先がバチっと切れてしまえば、フェイクファーと同じになってしまいます。特に危険なのは、クリーニング仕上げでコートになった状態でかけるのは、肩やエリというように凹凸があり、回転するアイロン部分が部分的に強くあたってしまい、毛切れの危険性があります。チンチラのように柔らかい毛は危険かというと柔らかすぎて切れないという結果が私のなかでは出ていますが、どちらにしてもグレージングマシンは危険があります。ただ作業をしている分には気が付きませんが、毛皮の本来の輝きを知っていれば、作業の結果からでる様々な違いに気が付くはずです。お客様受けしそうな文言を精一杯並べても、これは矛盾ががあるだろう、、、と私は感じています。私自身もネットという、この場所で競い合う場を作って書いているわけですが、日本製だとか、選りすぐりの職人が作るとか、、、書きたい放題書かれていますが、いつも自分も同じにならないようにと感じています。日本製だからいいのか?選りすぐりの職人とは誰が決めたんだ、、、といつも思います。クリーニングについては全てわかるわけではありません。しかし、少なくとも毛皮のことであれば分かります。ネットに出ている画像を見れば、どの程度の職人が作っているかなんて分かります。その度に、私も同じように見られないようにと記載する”言葉”にはいつも気を使います。

最後に一つ大事なことを書きます。私がオガを使ってドライ処理をするのは、リフォームや例えば裏地を交換するタイミングでやることです。裏地替えのときは普通は芯や付属は変えずに、ただ裏地だけを交換しますが、せっかく裏地を外すのであれば、出来れば費用は掛かりますが芯や付属を全て外して毛皮を毛と皮の両面から洗うことをお勧めします。もちろん、購入金額等とのバランスもありますが、セーブルや品質のよいミンクなどであれば価値はあると思います。

じゃあ、裏地がついたままのクリーニングはお前はどうするんだと質問が出るかもしれません。もちろん、シークレットですが、それにしても裏地を付けたまま、オガドラムなんて絶対にかけません。オガが裏地のなかに必ず入って取れませんから。正直、個体ごとにやることを考えないといけないのです。ドラムでたくさん回せば、カギホックや毛皮専用の留め具などをしっかりカバーしないとドラム回転中に裏地に傷がついたり、カギホックそのものの先が傷がついたりと難しいのです。私もネットに入れますが、それでも傷がつきます。よく、長い毛のもので留め具周辺の毛が切れていることがありますが、お客様が着用しただけでは、あそこまで切れないのです。ドラムにかけ、ドラムのなかの棚のような部分や蓋にあたって切れています。書き出すときりがないくらい諸々問題がでます。それをパーフェクトにクリアするのは一律の作業ではかなり難しいのです。もちろん、だからといってマニュアル化は否定しません。やるべきだと思います。やればどこかで出口が見つかるのかとも思います。私自身の作業もマニュアル化はしています。ただ、最初の段階では失敗の連続です。私自身もまだまだ全てが解決できていません。

今日は補足の寄せ集めみたいになりましたが、内容はそれぞれに大切だと感じることを記載しています。予定は2000字くらいでしたが4600字になってしまいました。申し訳ありません。
このブログが何百万人に一人でも、面白いと思って読んでもらい、ひとつでもお役に立てることがあれば嬉しいです。      長澤祐一

毛皮の皮の劣化とクリーニング その5  パショーネ編

劣化に関する最新記事をアップ致しました。是非見てください。https://www.passione.co.jp/blog/%e6%af%9b%e7%9a%ae%e3%81%ae%e6%ad%a3%e3%81%97%e3%81%84%e4%bf%9d%e7%ae%a1%e6%96%b9%e6%b3%95%e3%81%a8%e5%8a%a3%e5%8c%96%e3%81%ae%e6%84%8f%e5%91%b3/

今日は前回に続いてパショーネでやっているクリーニングと皮の劣化を防ぐ方法について追加で書いて見ます。

大きな設備(専門業者)でドライクリーニングをやる場合、想像ですが、例えば裏地を剥がした毛皮コートをドライクリーニングする場合に溶剤の量は多少関係すると感じています。例えば、溶剤の量が少ないと皮から溶け出した脂分が当然のことですが、溶剤が少なければ溶剤のなかの脂分の濃度は上がります(この濃度があがるということは、本来であれば有機溶剤に脂は溶けて脂分としての成分がなくなってしまう訳なので学術的にはあり得ない理屈なのですが、実際には私の想定していることが起こっていないと、毛のべた付きは起こらないと考えます)
。その結果何が起こるかというと毛皮の皮から溶け出した脂分が毛につきます。私がドライ加工依頼をして仕上がってきたものの3割は、私の基準では毛に脂分が付着した状態で乾燥仕上げが行われていました。当然のことですが、毛を触った感触はサラサラという感じではなく、少しベタっとして、私達の汚れた髪の毛のような感触になります。溶剤を節約した結果か、時間が短すぎるために、こうなるのかどうかはわかりません。でも、おそらくはそうであろうと思います。

コート一着をドライにかける時間は私にはわかりません。しかし、聞くところによると、そう長くはないらしいです。もちろんそのために脱脂効果の強いパークロロエチレンを使うわけですから当然と言えば当然なのです。

ただひとつ言えるのは短い時間になればなるほど調整は難しくなると感じます。もちろん大量の原皮をドライするなら量が増えることで効果の均一化は図れるのかもしれません。しかし、コート一点となると、どのくらいの時間と溶剤の量が必要なのかは逆に難しくなるとも言えます。

それでは、私がやっている方法はというと、脂分が強いものは直接、刷毛やブラシのようなもので溶剤を直接、皮裏面に染み込ませます。脂分が弱いものの場合には、オガ屑に溶剤を混ぜて、毛や皮面に間接的に溶剤を染み込ませます。

直接、皮に溶剤を染み込ませた方が当然ですが強い効果が得られます。コートを溶剤で濡らし、オガと一緒にドラムに入れます。この時のオガは、水洗い洗濯で言えいば水の役割になります。溶剤で溶け出した脂分をオガが吸収してくれるわけです。毛に付着した脂分も取ってくれます。ですから、オガの量イコール水の量になりますから、オガの量が節約して少なければ、どんなに有機溶剤で脂を溶かしても、脂分を取ることの効力は落ちることになります。一般的に加工業者さんが使うオガの量は鞣し業者さんに比べれば、かなり少ないのですが、それは加工段階でカットされたムダ毛を取り除くことが主たる目的だからです。しかし、クリーニングとなると目的が変わり、オガの量も当然変わります。オガの量イコール、水洗い洗濯で言えば水の量になるという意味はそういうことです。当然、水をケチってしまえば、濯ぎが足りないという状況になり、オガで言えば、せっかく有機溶剤で溶かした脂分を取り切れなくなるということになります。

それと、もうひとつ書くとすれば、オガと有機溶剤で取られた脂分も、この方法だと完璧ではありません。皮に厚みがあり、脂分を吸収するのが皮裏面からオガが付着して吸収するために、皮裏面の表面が、より強く脱脂されます。その結果何が起こるかというと、ドライした直後は皮の表面はカサカサして脂分が完全に抜けたようになりますが、時間の経過とともに、皮の奥(毛のある方)から少しずつ脂分が染み出て、皮裏の表面に移動し、結果として皮の脂分の状態が均一化します。

もちろん、これではもう少し脂分を抜きたいと思う状態のときもあり、その時は二回目のドライをすることになるのです。

確かに大変なのですが、この方法だと手間はかかりますが確実に脂分の量をコントロールできるのです。
クリーニング屋さんでやるドライクリーニングの意味は洗剤を同時に入れるとも聞いたことがありますが、主たる目的は汚れ落としです。毛皮の場合のドライクリーニングは鞣し工程で使った脂分を落とすことが目的です。その違いは言葉は同じでも大きな違いがあります。

ほとんど知られてはいませんが、脂分の量のコントロールは仕上がりの軽さや柔らかさに大きく影響し、さらには劣化という一番のリスクに対しても影響があるのです。どんなにデザインや綺麗な形を作ることに気を使っても、毛皮の持つ本来の魅力を引き出せない仕上がりでは、毛皮を生かしたとは言えません。

脂分の量が適切にコントロール出来れば、https://www.instagram.com/p/B18aNR2nj84/ この動画のように何年経っても、まったく硬さも劣化もなく綺麗な仕上がりを維持できるのです。もちろん、100年持つとは言えません。しかし、何もしない鞣しあがったままの脂分のコントロールされていないものから比べれば明らかに耐久性は出ると考えます。

もちろん、染色され、その途中工程でクロム鞣しという処理をしているものであれば、劣化のリスクはかなり軽減されていますが、染色屋さんが、リフォーム等の作業で染色された毛皮を再染色するときに再度、クロム鞣しをすることを考えればクロム鞣しの効果も永遠ではないということを証明しています。それとクロム鞣しがしてあっても脂分が多いことで湿気を吸いやすかったり、柔らかさが不足したりします。クロム鞣しが劣化に対しては有効であっても、軽さや毛のべたつきや柔らかさには効果を持たないということです。従って、毛皮の脂分のコントロールは品質面から考えても必要であると言えます。

単に、鞣し上がってきた原皮を何も考えずに使うのであれば、工賃は少なくて済むのです。
しかし、毛皮には必ず個体差や鞣し工程のなかで起こる不均一さというものがあります。
それを極力、皮を鋤いたり脂分をコントロールしたりして均一化することがガーメントには特に影響します。
わずかそれだけのことですが、手間は倍以上違うのです。ものづくり日本と日本製ということを一番に謳うなら、最低これくらいは考えてもの作りをする必要があると思います。

今日はこの辺で終わりにします。ごめんなさい、いつも過激になる一歩手前で書くことをやめてます💦

あと一回書くことがあるか考え、またアップします。     長澤祐一

毛皮の皮の劣化とクリーニング その4  パショーネ編

劣化に関する最新記事をアップ致しました。是非見てください。https://www.passione.co.jp/blog/%e6%af%9b%e7%9a%ae%e3%81%ae%e6%ad%a3%e3%81%97%e3%81%84%e4%bf%9d%e7%ae%a1%e6%96%b9%e6%b3%95%e3%81%a8%e5%8a%a3%e5%8c%96%e3%81%ae%e6%84%8f%e5%91%b3/

こんにちは。前回と少し間隔が短いですが、書き溜めてあったのでアップします。

今日は、私のところではどうやって劣化の間接的な原因となりやすい皮の脂分を抜いているのかを少しだけ説明します。

もう、30年以上前にアントレプレナーカレッジというところに半年通ったことがあって、そこにはいろんな仕事や起業をしようと思っている人たちがいて、たまたま同期にクリーニング屋さんが実家だったような友人がいました。丁度独立したばかりのころでしたが、その友人にドライクリーニングで使うターペンという石油系の溶剤を譲ってもらったことがあり、その溶剤をおが屑に混ぜてドラムという機械にコートをかけました。当時は何もしらずに使いましたが、多分規制がかかった溶剤なのかもしれません。ターペンはすごく石油の匂いがきつく、この石油の匂いが取れるのかと心配になるくらいきつい匂いでした。

ドラムとは毛皮の毛取をしたり柔らかくしたり、おが屑を入れてクリーニングに使ったりする機械ですが、私のドラムは八角形のドラムで網の蓋と密閉にするための蓋が四枚ずつついていて、密閉をしておが屑にターペンを混ぜて一日洗いました。
一日かけて、その後、網の蓋にかえて、おが屑を落とし、コートを綺麗な状態にします。

仕上ったときの感動は今も忘れません。それほど綺麗だったのです。柔らかさ、毛の本来の輝き、匂いも取れたりで、びっくりしました。

それから、30年かけていろいろ試して今の溶剤にたどり着きました。聞きたい人がいたらメールをください。ここには書きませんが教えます。以前も、何度か教えろとコメントを頂きましたが、名前もどこの誰かも名乗らずに、情報だけを教えろというひとがいましたが、それは無理ですから。

私達は専門業者ではないですし、パークロロエチレンを回収するような高額な設備もありませんから市販で買える規制のかからないものを使っています。

業者が何故人体にも影響のあるパークロロエチレンを使うがというと、脱脂の強さと乾燥のスピードです。仕事でやる以上、大事なことです。しかし、私達が自分で使う分には特にスピードは求めません。逆にいうと、その脱脂効果の弱さが少しずつ脂を抜けるということで私にとっては逆にコントロールしやすくメリットになっています。

パークロエチレンよりも脱脂効果が弱いということは、自分で抜きたい脂分の加減を調節しやすいということになるのです。
ただ、弱いと言っても、溶剤を手に付けるてティッシュ等でふき取ると手はカサカサになりますから、決して弱いというほどではありません。

前回か前々回にも書きましたが、パークロロエチレンでやると、脱脂効果が強いこともあり、私がやる何時間もかけて脂を抜くのではなく、一瞬のようなのです。逆に言うと望むレベルに脂が抜けたのか、または抜け過ぎたのかの判断はかなり難しいとも言えます。結果的に仕上がってみてから毛をチェックしてみて、皮の脂が溶剤に溶けて、その脂分が毛に逆についてしまうことが発生し、べたつきが出たりしますので仕上がりを見るしかないのです。これは、コートでも原皮でも同じでした。複数の鞣し屋さんや染色屋さんに出しても同じ悪い方の結果が出ることがあり、当時はその意味が解らず黙って受け入れることもありましたが今は、手間がかかっても自分でやることが出来るので納得いくまでやることができます。

ひとつ参考までに何故ドライクリーニングがいいのか?ということですが、もちろん汚れが落ちることや乾燥が早いことなどいくつかのメリットがあります。しかし、一番のメリットは多分ですが、形が崩れにくいことです。
ティッシュペーパーを有機溶剤と水の両方に付けてみると、その差は歴然とします。ティッシュペーパーを水につけるとすぐに組織が崩れてしまいます。形の維持が難しいのです。一方で有機溶剤に付けたティッシュペーパーは形が崩れません。

この原理を利用して毛皮でもパークロロエチレンを使うことによって、仕上がった完成品のようなものでも、大きく形を崩すことなくクリーニングができるのです。

今日のテーマはわたしのところでやるクリーニングでしたが、少しテーマから外れました。ごめんなさい。次回もう少し続きを書きます。

長澤祐一

毛皮の皮の劣化とクリーニング その3  専門業者は安心か?

劣化に関する最新記事をアップ致しました。是非見てください。https://www.passione.co.jp/blog/%e6%af%9b%e7%9a%ae%e3%81%ae%e6%ad%a3%e3%81%97%e3%81%84%e4%bf%9d%e7%ae%a1%e6%96%b9%e6%b3%95%e3%81%a8%e5%8a%a3%e5%8c%96%e3%81%ae%e6%84%8f%e5%91%b3/

今回のテーマは専門業者さんからクレームが来そうですが、とりあえず、分かることを書いてみます。

前回はドライ液で丸洗いすることを書いてみました。

私は、専門業者さんの工場に入ったことも、直接聞いたこともありません。しかし、大体の想像は付きます。
ただ、少し違っていたら、ごめんなさい。

毛皮コートは一般的には裏地がついて仕上がってしまうと、ドライの丸洗いは出来ません。というかしません。
少し余談ですが中国では日本国内で規制されている溶剤も、もしかしたら違反して使っているのかもしれませんが、おそらくですが、裏地がついて仕上がってから強いドライをかけてコートをクタクタに柔らかくしています。もちろん全てではありません。リスクが多少あるのと前回書いたようにドライクリーニングする機械が高額なので小さな工場ではドライができませんから、余程設備がしっかりしている工場だと想像がつきます。
ただし、この方法は効果はありますが、かなり乱暴です。ドライ溶剤でコートを作るとき伸び止めテープ等を使えば、そのテープの糊は溶けてしまい、中のテープは剥がれてしまいます。見えないだけで、コートのなかのテープは、あっちこっちはがれてしまっている状態です。でも、外側からは見えないからそれでも良しとする、いかにも中国らしい方法です。

話がそれましたが、毛皮の一般的なクリーニングでは専用のおが屑とパウダーとよばれるトウモロコシの実なのか芯の部分かはわかりませんが、粉にしたものと場合によっては有機溶剤を少し混ぜるようです。100%正確ではないかもしれません。ただし大きな違いはないはずです。

おが屑といってもヒノキ等の専用のもので、大きさも都度指定したものを使います。私はすごく細かいものと普通のものを混ぜて使っています。

この方法のメリットとデメリットを書いてみます。メリットは少量のドライ液がおが屑にしみ込み毛の表面や奥の方まで入り込み有機溶剤(ドライ液)がしみ込んだおが屑で脂分を溶かし、おが屑にしみ込ませます。さらにおが屑の表面にあるチャカチャカした部分で汚れをひっかけるようにして取り除くとも専門家のあいだでは言われています。この作業自体は毛にはとても効果はあると思います。ただ、一つだけダメだしをするとすれば、細かいおが屑が、裏地のまつりめからコートの中に入ってしまい、そのおが屑がコートの裾や袖口にたまってしまうのです。業者さんはエアーガンや掃除機で取り除くとは言っていますが、リフォーム時に裏地を剥がすと裾の見返し部分にたくさんのおが屑がたまっています。その量はコートごとに違いますが、ひどいものになると裾にかたまりになるほど入っているものもあり、これで仕事として成立するのかと思うほどです。

クリーニング業者さんが自分がクリーニングしたすべてのコートの裏地や付属を外して確認する訳ではないので、末端で作業するひとたちは指示に従うしかないことを考えると仕方ないのかなとも思います。

当然ですが、皮裏面まで有機溶剤が入ることはないので皮の劣化を止めることや皮面に染み込んだ匂いも取れることはないのです。
古い毛皮コートのかび臭い匂いは、毛についているだけではなく、その多くが皮に染み込んだ状態でついています。ですから毛の表面だけを洗っても匂いは全く取れません。

さらには業者さんのホームページでは、これもどこかで書いた記憶がありますが、最初のページではあれもできます。これも出来ますと書いてありますが、ページ最後のほうをみると、逆に、少しリスクがありそうなものは、あれも出来ません。これも出来ませんと記載があります。それくらい、毛皮のコートはリスクがあり深く入り込んだ作業はリスクが大きすぎてやれないということです。

次回は、私のところでやる方法を少しだけ書いてみます。      長澤祐一

毛皮の皮の劣化とクリーニング その2 脂を抜く方法

劣化に関する最新記事をアップ致しました。是非見てください。https://www.passione.co.jp/blog/%e6%af%9b%e7%9a%ae%e3%81%ae%e6%ad%a3%e3%81%97%e3%81%84%e4%bf%9d%e7%ae%a1%e6%96%b9%e6%b3%95%e3%81%a8%e5%8a%a3%e5%8c%96%e3%81%ae%e6%84%8f%e5%91%b3/

こんにちは。今日は前回の続きです。

まず、業者さんがやる方法を私が知る範囲で簡単に説明します。

以前はフロン系のものを使っていたと記憶します。しかし環境問題があり当然使用不可になりました。
現在はパーク(パークロロエチレン)というものを使用していると聞いています。一般的なドライクリーニングと同じだとも聞きます。ドライクリーニングでは様々な(石油系やフッ素系)ものが使われているらしいですが、ドライの溶剤が気化したものを再度液体に戻す装置が付いている、一台何千万もする装置がいるらしいです。さらに、クリーニング屋さんもそうかもしれませんが、届け出が必要であったりと簡単には使えません。

染色してあるものはクロム鞣しという処理がしてあり、水に漬け込んでも劣化しないということが解っているので、自分で洗濯機で専用の脱脂材を鞣し屋さんからいただき洗ったことがありますが、やはり、ドライ系溶剤のようには脂が落ちません。というか、ほとんど落ちないと言った方がいいくらいに変化はありません。

パークロロエチレンで専用の機械でドライクリーニングをした場合、私は何度も自分の作った裏地が付く前のコートや原皮を洗ってもらったことがありますが、時々、毛に脂が回ってべた付くような仕上がりになることもありました。皮から染み出た脂がパークに溶け出し、その僅かな脂が毛についてしまうことが原因だと想像できますが、さすがに業者さんは気が付きません。時間が短すぎるのか、溶剤が少ないせいかは分かりませんが、実際に何度もありました。気になるものは再度やり直しをしてもらったりと、当時は業者さんに、ずいぶんとわがままを言った記憶があります。私達の髪の毛でも皮脂が付いていないサラサラの状態と少しべた付いたときがあるように毛皮も同じです。それを感じ取れるかどうかは、普段から毛の良い状態を知っているかどうかにもよりますが、微妙な違いでもあり大きな違いでもあるのです。

以前、鞣し屋さんとも話したことがありますが、ドライをすることでほとんど劣化しないということで私達の意見は一致しました。

次回は私のところでやる毛皮クリーニングについて書いてみます。  長澤祐一