チンチラの毛捌きとボリューム感

前回のブログ更新から10ヶ月も経ってしまいました。一年以上もグーグルの検索では一位だった毛皮のオーダーメイドも、二位、三位、四位、五位と順位が下がってきました。

さすがに更新しないとダメかと思い、何を書こうか迷っていて、毛皮で一番やっかいなチンチラをさらに突詰めて書いてみることにしました。

チンチラの良さや欠点をこれまでも、いろいろな角度から書いてきましたが、今日はチンチラの毛捌きというテーマで書いてみます。チンチラのいい商品として自分が上げるならば、フィンランドのリンナネンというメーカーのチンチラは私がみても綺麗だとおもえます。

以前も書きましたが、チンチラは皮の脂分が一般的にはとても多く、その脂分が下手な加工技術だと、というか、ちゃんとした設備と技術がないとうまくいきにくいのです。 (さらに…)

インペリアルセーブル (New York City) の技術力

今月は四日続けて、毛皮のオーダーメイド(原皮の調達、その二)に関する記事を書きました。話題が都度、飛んでしまい読みづらいかもしれませんが、今後も、大事だとおもうことをあっちこっち飛びながら書いていきたいと思います。よろしくお願いします。

ラインを太くする方法 (09/11/2013)
オーダーメイドの難しさ (09/10/2013)
ブルーアイリスミンクのオーダーメイド(作りの部分)
(09/09/2013)
毛皮のオーダーメイド(原皮の調達、そのニ)(09/08/2013)

今日は毛皮の技術者がはまりやすいところに焦点をあててみます。

一般的に、技量のある職人さんほど、カットしてカーブに縫ったり、複雑なジョイント方法を使ったりといろいろな、ごまかすテクニックを使いますが、本来のベストは、ぴったり毛の長さ、色、ボリュームを合わせ、余計なごまかしはしないという作りです。

そうすることで毛皮をいじめず、本来の良さを維持しながら毛皮を生かすことが出来ます。いつか書きますが、インペリアルセーブルというニューヨークのお店があり、そこにマーティン・パスウォール?という人がいて、セーブルやリンクス等を販売しているお店ですが、その彼が作るセーブルはまさに、そういう作りです。 (さらに…)

ラインを太くする方法

ラインを太くする方法として、メスの3サイズくらいのものを二枚で一つのラインにする方法があります。ですから、販売の現場で、少し毛皮の方法を知っているひとは大きいサイズを使わなくても出来ると言うかもしれません。しかし、それは原皮を足すと言うことが、どれほど難しいかを知らないからなのです。

セーブルはよく、頭から前足のクロスという部分まで落として、もう一枚の原皮のお尻部分の下に足すという方法があります。ミンクも毛の長いものや色の濃いものはやることがあります。 (さらに…)

毛皮のオーダーメイドの難しさ

私たちのアトリエでは仕上がりに効果があるとわかれば、どんなに時間やコストがかかっても、そしてリスクがあっても、ほとんどの場合トライしていきます。それが、誰も見たことのないような仕上がりを生むと信じているからです。

ひとつ余談ですが、今回のブルーアイリスは色が濃いことが特徴です。しかし、濃いといっても、綿毛まで真っ黒なわけではなく刺し毛が濃いということで、その濃い目の刺し毛に隠れた綿毛が、その隙間から青白く光るように漏れてくるその光景は、このブルーアイリスでなくては表現できない、素晴らしい表情であり色香です。写真を見てもアメリカタイプのボリュームと刺し毛の短さがよく解ると思います。 (さらに…)

ブルーアイリスミンクのオーダーメイド(作りの部分)

今回は作りの部分にも少し触れていきましょう。今回の問題点は、メスといえども、オスと同じくらいになると、毛質はメスの柔らかさを持っていても、皮はさすがに2~3サイズと比べると厚くなり、そのまま仕上げたのではオスの0サイズを使ったような重い仕上がりになってしまいます。

当然、私が通常やる再なめしということも考えたのですが、再なめしによって、ブルーアイリスにわずかにかけたブルーイングという青味をつけた色がなめしによって必ず落ちてしまい、しかも、均一に落ちれば再度ブルーインをすればいいのですが、落ち方が均一じゃない場合は、せっかくマッチングして選びこんだ材料の色がバラバラになりかねません。そのために再なめしは諦めることにしました。

しかし、このままでは必ず重い仕上がりになってしまいます。 (さらに…)

毛皮のオーダーメイド(原皮の調達、そのニ)

以前、毛皮のオーダーメイド(毛皮の調達)という記事を書きましたが、今日は、実際にあったことを具体的に書いてみようと思います。

今回のオーダーメイドはブルーアイリスミンクのロングコートです。

一般の方には解らないかもしれませんが、メスのブルーアイリスをコートバンドルで持っているような原皮屋さんは、国内には、まずありません。しかも、メスの1~0サイズでアメリカ産で最高の原皮などと制限を付ければ国内では、まったく手配ができない状態になるのです。持っているところもないことはありませんが、当然、何年も前の、黄色く焼けたようなブルーアイリスがいいところでしょう。それほど、良い原皮を手配するというのは大変なことなのです。 (さらに…)

チンチラのブラックベルベットの意味

チンチラ ブラックベルベット

今日はチンチラのブラックベルベットという品種について書いてみようと思います。以前、ブラックベルベットと2XDや3XD(色の濃さを表した名称:数字が大きいほうが濃い)を比べ、作り方によっては価値の低い2XDのほうが綺麗に見えると書きました。

今回写真で見せるチンチラはあきらかに2XDや3XDよりも綺麗で、私が見る中でも本当のブラックベルベットと呼ばれるものです。安いブラックベルベットと違い、毛が弱くなりやすいにも関わらず、しっかりとした毛のボリュームがあり、まさにブラックベルベットと呼ぶにふさわしいチンチラです。

しかし、よく見てもらうとわかりますが、 (さらに…)

チンチラはそんなに軽くない

今日はチンチラが、そんなに軽くない事について書いてみます。チンチラは一般的に毛皮のなかでも繊細な毛皮の最たるものとして扱われていて、イメージとしても、とても軽そうに思われているかもしれません。しかし、実は決して軽い素材ではないのです。軽いイメージはおそらく、毛の繊細さや、皮が何年もしないうちに破れたりして、皮が薄く弱いというイメージからくるものなのでしょう。

チンチラの皮は決して薄くはないのです。腹の部分は確かに薄いのですが、腹を過ぎて背中心に向かうほど皮は厚くなってきて重さに影響を与えています。以前もチンチラの皮の劣化について書いていますが、チンチラの皮は他のミンクのような皮に比べ何倍も切れやすいのです。

もちろん個体差があり、さらにはなめしの最終の仕上がり状態にも大きく影響を受けます。というよりも、最後のなめし上がりの仕上げ方と保管の状態で皮の劣化や強度が決まると言っても過言ではありません。

さらに重さという意味では、繊細といってもチンチラは毛のボリュームがあるため皮の厚さだけではなく毛自体も重さの要因になっているのだろうと思われます。

以前、当ブログで「毛皮クリーニングの問題点」を書いたかと思いますが、クリーニングするためのドラムにかけただけで切れる可能性があるのです。その理由は、一見、皮が薄く弱いからと誤解されがちですが、実際には弱くても軽ければ、そう簡単にドラムのなかで切れることはありません。重いコートがドラムのなかで回転することで遠心力も加わり、下にたたきつけられるというなかで切れるという現象が発生します。

よく着用せずにハンガーに吊るしたままで、肩が切れてしまったというようなことが起きるのも皮の弱さだけではなく重さも大きな原因の一つです。

最後にひとつ付け加えますが、すべてのチンチラが弱いわけではありません。前にも書いたようになめしの状態がよく、湿気を吸収しない状態にあり、さらに、できるだけドライな環境で保管をする、そして、加工段階でも切れそうな部分にはしっかりと補強をするという、この三つの条件が満たされていれば、簡単に切れることはありません。

よく、全体に芯を抱かしてあるものが見受けられますが、あれはあまり意味がないのです。重さがかかる部分にコートが硬くならないように注意をしながら補強をしていくというのがベストな考え方でしょう。

長澤

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毛皮の褪色の直し方と島精機SDS-ONEの使い方

今日は前回の記事の島精機SDS-ONEのPassioneの独自の使いかたも含めて退色した毛皮の色を補色して、限りなくもとに近い状態に戻すときの色の構成を探す方法を少しだけ書いてみようと思います。以前書いた記事ではレスポールスタンダードというギターの退色と毛皮の退色が似ていることを書きましたが、今回は、その退職した毛皮の色を元に戻す方法を簡単に説明してみます。

以前は退色した赤を薄く補色することで元の色に戻そうとしていました。濃い色なら、それで近い色に戻っていましたが、薄い色になると、赤を単純に薄く補色しただけでは元にもどらないことに気付き、SDS-ONEのグラフィック機能のなかにモニターキャリブレーションがあり、そのカラーセンサー機能を使って色の構成と構成量のバランスを調べることにしました。

その後、その構成色に対して赤を強めにした色をモニターで確認し、 (さらに…)

島精機SDS-ONEの問題点

弊社アトリエでは島精機のSDS-ONEというCADとCGの専用機(コンピュータ)を入れていますが、今日はこの島精機のSDS-ONEの問題点について書いてみます。

島精機が作ってきたグラフィックコンピュータは10年前であれば、誰もが羨むような超ハイスペックな専用機でした。私も、もう25年以上も前にこの機械が欲しくて、ずっと展示会ごとに見続けてきていました。

おそらく、11年くらい、この機械を入れてから経つでしょうが、最近の一般のコンピュータの進歩はすばらしく、10年前くらいに登場したときには誰もが羨むような、グラフィック専用メモリーを装備して登場した、この機械ももう、すでにコンピュータとは言い難いような古いものになってきてしまいました。

私は、島精機の社長が30年くらい前から (さらに…)