毛皮の染色 2 補助剤

今日は前回の続きで染色の補助剤について書いてみます。

プロがどんなものを使っているかは、ほとんどわかりません。少しだけ経験者の方に聞いてそれ以外は自分で調べたものです。

毛皮を染めるのにプロが使っているかどうかは分かりませんが、染料店で聞きかじりながら購入して使ってみて、これは良いと感じたものは湿潤剤というものです。

湿潤剤とは、毛皮の毛や皮の部分にしっかりと水が染み込んでいくようにするための助剤です。

プロは大きな桶に入れて何時間も漬け込むのかもしれませんが、私のようにテスト染めや染めても数本という場合には、何時間も水に漬け込み毛に水が均等に染み込むまで待つことができません。そのため最初は水を染み込ませて手で揉むようにして毛の一本一本にまで水を染み渡らせることをしていました。時にはブラシをかけたりして毛をほぐすようにしてやりました。

しかし、毛皮の毛は理論は分かりませんが、水を弾きやすくなかなか均等に毛の一本一本の奥まで染み込んでくれません。水や雪の中で生き抜くことを考えれば当たり前のことですが、きれいに水が染み込まないのです。

それを湿潤剤というものを使うと、ほぼ一瞬にして毛が水の中でフワーと馴染んでくれるのです。

なぜそれが必要かというと、綿毛が小さな束になったまま染料を入れてしまうと、小さな束の中まで染料が入りきらずに、結果として仕上がってから、その束がほぐれたときに染まってない部分がでてきて色むらになったりします。

一見たいしたことには感じませんが、染色前工程としてはすごく大事なことだったのです。

それともう一つ、均染剤というタイプの助剤があります。

均一に染めるための薬品ともいえますが、使い方は難しいのです。

均染剤は読んで字のごとしで、均一に染めるという意味の助剤です。しかし、使い方を間違えると逆に色が染まらなくなってしまいます。

理屈は分かりません。アルカリ性に傾くのかどうかは分かりませんが、大量に使うと吸着した染料が落ちてしまいます。酸性染料ということもあり、酸性に傾くと染料が入りやすくなるという性質を使って、ギ酸などを使い染料水を酸性にして染料を吸着させるというものですので、アルカリ性に傾くとせっかく吸着した染料が落ちてしまうのです。

よく、素人のかた(すみません自分も素人ですが💦)に私のようなものが染色をして色落ちしないか?と聞かれます。染色に対して理解がないと色が落ちてしまうと考えがちですが、酸性にして吸着した毛からの色落ちはしません。

落ちるとすれば、完全に吸着せずに付着状態になっている場合には色落ちします。私が経験した限りでは酸性によってキューティクルが開き着色したものは色落ちはしないと実感しています。

この均染剤は色むらを防ぐと言われていますが、例えばこういうことです。

仮に、染料の入れ方を間違えて、いきなり一部分に染料を入れてしまったときに、当然ですが、一部分に色がついてしまいます。しかし、均染剤が入ることによって一度毛についてしまった染料が水に溶けだして染料にバランスよく混ざって再度、酸をいれることで毛皮全体に吸着していくということができます。

均染剤を使わないと、一度、間違って毛皮についてしまった染料は落ちることなく、その部分は色むらになります。ということは染料を入れるタイミングや入れる方法はとても難しくなるということです。

それを少しでも安心して染料を入れられるように均染剤があります。

ただ、この均染剤の濃度や入れるタイミングもとても微妙で経験が必要でした。私もかなりの時間とテストを重ね今の方法をみつけたのです。

この均染剤の濃度を上げて使うと、染色した毛皮の染料を落とすことにも使うことができます。ただし、あまり強すぎてアルカリ性になりすぎると毛よりも皮に悪い影響があるようなのです。

化粧品でもよく弱酸性、、やアルカリ性という言葉が出てきますが、肌にも影響があるのと同じく、毛皮の皮の部分にも大きな影響があると聞きました。

最後に染料を吸着させるための酸について書いてみます。

私は最初は酢酸を買って使いました。ただ、一般のアマゾンとかでは酸度の強いものが売っていなく、染料店で蟻酸を購入して使っています。気を付けて欲しいのは、鼻を近づけて匂いを嗅ぐようなことはしないでください。一般の酢と違い強力な匂いがします。もちろん手に付けることもしないことです。慎重に扱ってください。劇薬とまではいきませんがとても危険です。

使い方は、染料を毛皮と馴染ませてから使いました。あくまで私のやり方ですが。

染料のなかにいきなり原液を入れるよりも、一度、染料をカップに取り出して、そこに蟻酸を入れて濃度を薄めてから、染色浴のなかに壁づたいに少しずつ入れていきます。

この辺は大量に染めるプロの方とは違うかもしれません。

インスタグラムで私のフォロワーのなかに海外の染色業者さんがいます。その動画では専用のドラムの端に染料を入れる容器があり、そこから少しずつ入れているものがあったり、いきなり染料を溶かすこともなく桶のなかに入れたりと、丁寧だったり乱暴だったりといろいろなやり方でやっています。

こんなものを見ると、やはり毛皮の染色の色の正確さはなかなか難しいだろうなと感じます。

というか、毛皮の染色とはその程度のものなのです。100万分の1の色なんて求められていないのと、求められても、そんなの無理!!と簡単に言えてしまうのです。

それが、毛皮染色の標準の考え方です。

逆に言うとそうしなければ仕事として受けられないからです。

しかし、今回は毛皮の染色とはそういうものなので多少の違い(多少ではない)は勘弁してくださいと言えるような色ではなく、すごく難しい色でしたので、素人の私が半年かけて挑戦してきたのです。

そしてようやく辿り着いたところで、この投稿を書くことにしました。

いつも書いていますが、もうこうなるとコストとか時間とかとは別の次元になります。

出来るまでやるのです。出来るまで諦めずにやるしか方法がないのです。

次回は、染料の色を作る計算式等について書いてみます。

長澤祐一

レスポールゴールドトップ68年・クラウンインレイ入り

昨日、45年近く所有していたレスポールゴールドトップをイケベ楽器さんの渋谷店で買い取っていただきました。

今後、もうギターを弾くこともなく、私はコレクターではないので、どなたかに引き継いでもらうことを選択しました。

直接、ヤフーやメルカリなどでの販売先をさがすことはしませんでした。変な投機目的で買われたりすることを嫌ったからです。

確かにレアーなギターであることには間違いありませんが、コレクションするのではなく、しっかりと楽器として弾いてもらうことを考え、広くたくさんのギタリストにみてもらうことを考えてイケベ楽器さんを選択しました。

他の店にも持って行って相見積りなども取りません。ちょっとでも高いところへ、なんて考えもありませんでした。

このレスポールゴールドトップはコレクトアイテムという価値もありますが、それ以上に音が素晴らしいのです。

出来るだけ、ライブで弾いたり録音で使ったりしてもらいたいという思いでイケベ楽器さんにもちこんだのです。渋谷のイケベ楽器さんの5階ビンテージ館です。

いつか、店頭に出る日がくるかもしれません。良かったら見に行ってみてください。そして音も出してみてください。

ナチュラルなきれいな音も、歪ませた音もどれも音というより声のような音色です。

もうひとつですが、イケベ楽器店の鈴木さんもビンテージ館の小松崎さんも対応が素晴らしく、短い時間でギターの確認をしっかりしていただき、あれこれ値引きの対象になるようなことをいっさい語らず、すごく気持ちの良い査定をしてくれたことにも感謝いたします。

楽器のことはまったく素人の家内も、とっても気持ちのいい買取をしてもらえたねと喜んでいました。

音の確認も、わずか15秒くらいで、それまで笑顔を見せなかった小松崎さんですが、音が出た瞬間に微笑んで、いい音ですね、、、と音の良さを一瞬で理解してくれたことにも感謝です。

もう私の所有しているギターではありませんので、このブログに記載してあるレスポールゴールドトップの投稿はすべて削除いたします。長い間このブログを見に来ていただいてありがとうございました。

きっと次のオーナーが決まれば、記事をご自分で書かれるかもしれませんね。

今後もこのギターが新しいオーナーのもとで活躍することを期待します。

本当に私の元で約45年間、活躍してくれてありがとう。お疲れさまでした。

そしてイケベ楽器さん、ありがとうございます。

長澤祐一

毛皮の染色 1 染料について

ここ9ヵ月間、ある事情で毛皮の染色をやってみています。

ようやく、9ヵ月が経ち、コート分の染色をすることができました。

一回のブログでは書ききれないので分けて書こうと思います。

今日は染料について書いてみます。

毛皮の染料は酸性染料という種類で、普通の染料屋さんでも売っています。

毛糸や生地を染めるのに使われています。

最初はもっと簡単に手に入ると思っていました。しかし、実際に初めて見るとなかなかうまく手にはいりません。

毛皮用に使われる酸性染料は分子がとても小さいと言われています。もちろん私は化学的なことはわかりません。聞いた話です。

知人からメーカーを聞き、メーカーから直接買うことができないので、問屋さんを紹介してもらって業者向けのものを1キロづつ売ってもらって染色がスタートしました。

ただ、赤の毛皮用の染料が手に入らず、赤だけを毛皮の染色工場から1キロ分けて売って頂き、やっとスタートしたのです。

実際、市販の一般的な酸性染料の赤を買って使ってみましたが、やはり毛皮の毛には入っていかず染色を何度試みても上手く着色しませんでした。染料販売店のひとに聞きましたが、そんなことはないはずだと電話で言われましたが、事実、着色しませんでした。

毛皮の染色は、毛皮の皮が熱に耐えられるようにクロム鞣しという処理をします。そして実際に染めるときには60度くらいのお湯のなかで染色します。生地などは沸騰させるまでやったりと、毛皮と生地の耐熱温度の違いもあり、染料販売店のひとの情報だと染まるはずだ、、なのですが、やはり染まりません。うっすら着色され赤味は付きますが、本来の染料吸着とは大きく違い、色落ちもしてしまいます。

最終的には、毛皮染色工場から訳を話して赤だけ譲ってもらうことになり、ようやく赤の毛皮用染料が手に入ったのです。

ところが、あとで気付くことになるのですが、私が染料卸屋さんから買った染料の青と黄色と、工場から分けて頂いた赤の染料の濃度が違うことが散々やったところで気付くことになります。

自分で買った青と黄色は当然同じメーカーのものなので濃さが一緒でした。しかし、別に買った赤だけは、同じ量の染料を使うと倍の濃度があり、どうやっても予想した色にならないのです。

散々テストをやって、例えば赤・青・黄色を 等分に入れれば予定ではグレー又は濃くすれば黒になるはずなのですが、何度やっても赤っぽいグレーになってしまい、もしかしてメーカーが違うということは、1gあたりの濃さが違うのかもと、青と黄色に 赤を少しずつ足していってグレーになるポイントを探っていくと、一対一の青と黄色に対して赤は半分の量で綺麗なグレーになることが解り、そこからは思うような色に作ることが出来るようになったのです。

今日は色の配合の方法についてまで書いてみます。

私のアトリエには島精機という会社のかなり高額なCADやペイントソフトが入ったコンピュータがあります。そのペイントソフトに測色計が付属していて、例えば、欲しい色を毛皮でも紙の印刷物でも測色計で測ることができます。

それによって、色の配合値が解ります。それに基づいて、染料を計測して混ぜることによって、ほぼ、求める色が出せるようになりました。

ただし、濃度は色の配合だけでは解決せず、毛皮の重さに対して、総量で何グラム又は溶かした染料を何cc入れるのかを実際の染色結果から求めるしかありませんでした。

一番難しかったのは染料を使いやすくするために、あらかじめ例えば200ccの水に染料を0.2g溶かした染料水を作ることでした。

問題は染料がなかなか均一に溶けてくれず、温度を上げて完全に溶かしたと思った染料が、温度が冷えて時間が経つと、また何割かは粉のような状態に戻って水の中に沈んでしまうことでした。

溶け切らない染料が容器の底に沈むことで、容器内の染料の濃度が若干変わってしまい苦労しています。

もともと毛皮の染色は見本に対してかなり曖昧な仕上がりでも仕事として通ってしまうということがあり、毎回同じ仕上がりというよりも、こんな感じということが多かったのです。微妙な色がピッタリということではなかったのです。

しかし、それは当たり前のことでした。コンピュータで表現できる色は1677万色です。人間の識別力を超えてます。ですからこんな感じがまかり通るのです。

私が今回染色を始めたのは、その業界にあるこの程度なら合格、、というレベルでは通らないような難しい色だったのです。薄いグレージュのような色でしたので、本来ならプロにお願いするのが当たり前のことなのですが、おそらく思ったような仕上がりは期待できないと考え自分でやる決心をしたのです。

よく考えればとても不思議な話です。プロに任せたら不安だから自分がやる、、 普通じゃあり得ないはなしですが、今回の求められている精度はプロでも難しいと判断しました。だって、通常仕上がってきた色に、もう少し赤くとか青くなんて言えません。まして今回のグレージュの超薄い色にわずかに赤味が入った色なんて、どうにでも解釈できてしまいます。

そんな意味でもせめて毛皮の色見本だけでも自分で作ろうと思ったところが始まりでしたが、結局全て自分でやってしまうということになったのです。

ここに至るまでは書くとこんなに短いことなのですが、掛けた時間は何か月もかかったのです。

次回は、実際に染める作業について書いてみます。 長澤祐一

有機溶剤で脂分が気化するということ

新年明けましておめでとうございます。投稿が二か月半くらい空きました。

今年の受注は難しいものが多く、なかなかブログを書く気分になりませんでした。

ブログのタイトルはいろいろと書き溜めていたのですが、また毛皮のクリーニングのことになってしまいます。

毛皮の皮と毛を洗うのに有機溶剤を使うことは、このブログで散々書いてきました。毛皮の汚れや脂を有機溶剤で溶かしてオガに吸収させて汚れや脂を取り除くこともたくさん書いています。

おが屑に汚れを染みこませて汚れを取るという理屈は確かによくわかるのですが、それでも本当にそれだけか?とずっとすっきりしませんでした。

もともと自動車のブレーキ部分等も有機溶剤で洗い流すのですが、というか、パーツクリーナーとかいう一般に売られている缶スプレーのものにはそう書いてありますが、ほんとうのところはわかりません。

以前、家庭用洗濯のソフターの水分を抜くとどうなるかを試したことがあります。ブログでもどこかで書いたかもです。

ソフターを脂っこいタイプとサラッとしたタイプをビニ版の上に少量たらして水分が抜けるまで待つとべたべたしたタイプと石鹸のようにサラッとしたタイプがあります。毛皮用の柔軟剤にもシリコン系のサラッとしたものと、乾いてもべたつくタイプがあり、効果がそれぞれに違います。

よく、クリーニング屋さんまたは、和服のクリーニング屋さんが毛皮をアイロン蒸気で縮ませてしまって、修復依頼をうけますが、その時には少し強めの後者の柔軟剤をつかいますが、都度リスクがあり簡単ではありません。

話を元に戻しますが、有機溶剤で溶け出した汚れや脂の全てがオガに吸収されるのだろうか?といつも疑問に思っていました。

もしかしたら汚れはオガに吸収されたにしても、脂はもしかしたら有機溶剤で溶かされて半分くらいは気化してしまうのかと、ずっと考えていたのです。

完全にその理屈は立証できてなく、それを証明するような化学的な知識もないのですが、ひとつだけ実証できるものがあります。

毛皮に使われている脂に脂というのか油というのかはわかりませんが、毛皮の繊維に吸収されるということを考えれば脂ということなのかと想像し、現実に使われている毛皮用の柔軟剤も水溶性であることから、あぶらとは脂なのだろうと考え、その脂を抜くにはどうするのか?と考えると有機溶剤が思いつくわけで、ただ、身体の脂も実際は油のようにも感じたりと私には難しすぎる課題でした。

ただ、最近少しだけ解決したことがあります。

例えば、肌の汗汚れが付いた部分に有機溶剤を付けるとどうなるのか?を考えてみてください。

何か布やティッシュペーパーで拭き取れば、カサカサに白っぽくなります。完全に皮脂が飛んでしまった証拠です。

じゃあ、拭き取らなかったら皮脂は有機溶剤で溶けただけで、肌に残るのか?と仮説を立てて試しました。

結果は何かで拭き取ったほど、白くカサカサに肌がなりません。しかし、半分くらいの油分は無くなってサラサラした状態になります。カサカサではないですが、そこそこサラサラになります。べたつきは大分取れます。

こうして考えると毛皮に染みこんだ有機溶剤が脂を溶かし、その半分くらいは気化するのか?という考えも、まんざら私が勝手に作った嘘ではなさそうなのです。

実際に手に柔軟剤を少量ですが、付着させて有機溶剤を付けると、何もしなくても乾くと、最初よりは柔軟剤はなくなっています。

例えば、毛皮の皮面に有機溶剤を大量にしみ込ませると、大きな輪染みになり輪染みの真ん中は脂が抜け、輪染みの端は柔軟剤が溶けて端によったために黄色くなります。

輪染みの真ん中は真っ白になりカサカサに皮も硬くなります。柔軟剤がぬけたことを意味します。

こんないくつかの検証をするなかで、もしかしたら汚れは溶けてオガに吸収され、脂分の何割かはオガに吸収され、さらにその何割かは気化したと考えられそうなのです。

そのことを裏付けることになるかどうかはわかりませんが、オガと有機溶剤でクリーニングした際に、途中、例えば一日くらいで出してしまう結果よりも三日間ドラムで回し続けたほうが良い結果が出るということでも少しですが証明できそうな気がします。

有機溶剤が毛皮の脂を溶かし少しずつ気化させる時間を与えているともいえるからです。

毛皮は本当に難しい素材です。毛の美しさも皮の状態に大きく左右されるからです。

でも、そんなこと考えて作る職人はいません。世界中どこを探してもです。

 長澤祐一

円安のせい?

先日、海外のお客様、Googleアナリティクスだとロンドン?かもしれませんが、

オンラインショップのボレロが販売されました。もちろん、当社のオンラインショップでは海外への販売はできません。

国内の買い付け代行業者さんが、オンラインショップから購入し、それを海外のお客様へ発送したようです。商品発送で様々な付属品の説明をメールで購入者様に説明をしたところ、海外のお客様が購入されてそれを代行業者さんが海外へ発送することがわかりました。

商品とともに送ったものの説明の本人へ翻訳をして送るということでした。

海外だと本来は消費税等はかからず、関税での税金がかかるのかもしれませんが、それでもこの円安だと何の影響もなく買えてしまうのですね。

インスタグラムのDMにもこれまでたくさんの海外からの問い合わせがありましたが、海外販売はしていないと断ってきました。

今のところは、すぐに海外販売をする予定はないですが、代行業者さんを使っても買うという海外のお客様がいらっしゃるのは驚きました。

何よりも嬉しかったのは海外のお客様がわざわざ手数料を代行業者さんに支払ってでも欲しいと思っていただけたことでした。直接のやりとりができないことが残念ですが、無料クリーニングに戻ってくることはないと考え保管用品三年分やチャームその他出来るだけのことをして発送いたしました。

丁寧に代行していただいた業者さん、そしてパショーネの商品をお買い求めいただいた海外のお客様、ありがとうございました。

長澤

アパレル3DCADの二つの似ているようで全く違う要素

今日もアパレル3DCADのことです。当初、私もアパレル3DCADの用途に対して、整理出来ていませんでした。ソフトを無償で使わせて頂いたりするなかで、こんなことをしたいんじゃないんだよな~と思うことが多かったのです。15年くらい前のことでした。

しかし、ソフト開発は、どちらかというと私の欲しいと思う方には進みませんでした。

すべてを知る訳ではないですが、デザイナーが欲しがる3DCADとパタンナーが欲しがるものの二つがあるように見えます。

企画等で使われる、モデルが着たような、よりリアルなものと、私たちが普段使うアミコさんの人体のようなものに、様々なタイプのシーチングを着せ付けて寸法やバランスを普段使っている人体に仮想で着せてみて確認をすることをメインの機能として作られているものとがあるように感じます。

一般的には、先に書いたデザイナーさんや企画会議に使うような、よりリアルなものが、いわゆるアパレル3Dと言われているように感じます。

私がソフトの試用をさせて頂いたりしたものは、そういうものが多かったのです。そんなこともあり、なかなかしっくりと来ませんでした。

もちろん、今、世にあるトップクラスのアパレル3Dソフトはすごいですね。毛皮素材も表現できるようなものもあります。

ただ、自分が欲しいものではありませんでした。理由は、毛皮素材に置き換える3Dソフトのようなものは私の頭の中にありますから。

私の欲しかったタイプの3Dソフトは、私の弱点を補い、生産効率を上げるためのソフトでした。トワルチェックに特化した3Dソフトだったのです。

そのことの違いをはっきり自分のなかで自覚したのは東レACSさんの3Dソフトとの出会いからでした。

よりリアルな3Dに一般的には目が行きがちです。しかし、簡単に個人レベルで導入できるものではありません。その点東レACSさんのものは、私のような個人レベルが大昔に大きな投資をした島さんのようなものではなく、とても導入しやすいソフトです。

今のCADや3DCGが以前の半分以下になったといっても、個人レベルで導入するには高額です。そう考えると、東レさんのものは私にとっては一度使ってみようと思って導入する決断が簡単にできる仕組みでした。

一般的には華やかで、よりリアルな3Dに目が行きがちです。デザイナーや企画側にとっては大事なツールです。

ただ、なかなかパタンナーが単純にトワルチェックがしたい、それが出来れば十分なんだけどな~と思うソフトはありませんでした。4年前まで出会うことがなかったのです。

私も、一時はリアルで綺麗な3Dに惹かれました。ただ、現実的にこれを今現在、導入して、3Dを本格的に勉強して自分にそこまでメリットがあるだろうか?そう考えるとなかなか他社さんのものには興味はあっても本当に欲しいものとは大きく違っていたのです。

ここ三回続けて東レACSさんの3Dソフトについて書いてきました。様々な私の知識不足からの誤解もあるかもしれません。あくまで私の目線から出たものであり、私の個人的な意見です。

パターンという仕事にかけている人から見れば、自身のパターン技術を磨かずに楽をしようとしているように見えますが、仮に同じ結果か、または、自身の力を上回る結果が短時間で得られるのであれば、このソフトを使おうと思った次第です。

このホームページのモデリストページにある、当社の哲学の一部を下記に記載しますが、この部分も東レACSさんの考え方とも一致していました。大昔に考えた言葉ですが、ここにも同じような考えかたをされているところがあったんだと驚いています。

大半が手仕事の毛皮製品作りは

作業そのものに時間をとられがちです

デジタル化・機械化することにより

正確さとスピードが得られ

私たちの感性を生かす

大切な時間が生まれました

一般的には効率は儲けに直結すると考えるところですが、私は、効率があがって生まれた、その大切な時間をさらに品質を上げるために他の作業時間に充てようと考え、今は廃棄しましたがパフ3560という大型機械や一般的な毛皮加工にはない機械設備、さらにはCAD・CGソフト、そして東レACSさんの3Dソフトも含め導入してきました。

いろんな考え方がありますが、この3Dソフトは当社の哲学を表現する意味でも必要なツールです。

どこかでトワルチェックに時間をとられ苦労しているひとがいるかもしれません。そんなひとに少しでも参考になればと思います。   長澤

東レacsさん CAD 3d の凄さ

今日はCADとアパレルCADと関連した3Dソフトということについて書いてみます。

もともと今使っている島精機のCADとCGを導入したのは多分20年前くらいです。

数年後に機種本体をアップグレードしてWindows2000からWindowsXPにして本体もスペックアップしてパントーンも入り多分100~150万くらいしたと思います。その後は、そのまま使っています。さすがに現在は、他の用途では使えるレベルのパソコンではなく、モニターはナナオに変えましたが、ウィルスソフトは対応していなくなってしまい、ネットワークに繋がずに単体で使用している状態です。

その当時でデジとプロッターも含めて、多分900万前後したような記憶です。もう少し安かったかもしれません。ただ、これ以前のCADとCGの業務用コンピューターは多分2000万以上していた記憶です。丁度私が買ったときに新機種としてSDSONEが出たばかりで思わず購入を決めました。

その当時から3DCADにも興味を持っていて、いくつかのソフト会社さんからも無料で試用させてもらったりしていました。

しかし、その頃の3Dは、やはり使えるというようなレベルではありませんでした。

現在も、その傾向が強いメーカーが多いですが、当時の3Dは、ボディに三角メッシュで出来た生地を単純に着せ付けて、柄を乗せてみたりして、あくまで仕上がりイメージをシミュレーションするものが多く、パターンメイカー(パタンナー)がトワルチェックに使用できるレベルではありませんでした。

4年くらい前に、久しぶりに大きなアパレル機材の見本市にメーカーさんに誘われて行ったのです。

島さんやユカさんをメインに見学しました。

ユカさんもかなり気になっていたのです。

島さんもユカさんも何度も見に行き、今ひとつと考えていたときに東レさんと出会いました。

島さんもユカさんも3Dといってもトワルチェックが出来るような仕組みとは思えませんでしたので、がっかりして展示会場をうろうろしていたのです。

もともと、各社3Dといっても、着せ替え人形のようなものを作っていたのです。私にはそう見えました。どんなにリアルな3Dでもパタンナーが求めるものとは違います。

パタンナーが必要としているトワルチェックが出来るような3Dではありませんでした。

どことは言いませんが、まともにトワルも組めず、アイロンで本来の形も表現出来ずに、どう見てもパタンナーではあり得ないような、酷いトワルを画像にして、これで、3Dでシミュレーションした画像とどうやって比較するの?と思うような酷い内容でしたので、あ~ここは一生続けてもパタンナーが望む3Dは出来ないなと当時は感じたのです。

もう一社も、高額で有名な3Dのソフトを入れて、毎年のソフト更新代が30万、、とかいう話で、なんじゃそりゃ??と思いました。ここも、パタンナーが一般的に使っているボディさえも、その時は3Dボディのデータがないとも言われ、これでは、ただの着せ替えのための3Dで、トワルチェックが出来ないだろうと感じました。

それぞれに大手メーカーでありパソコンもかなり画像処理能力の高いスペックが必要であったりと、価格もそれなりでした。今はコロナがあって、その後大きな見本市があったかどうかは確認できていません。そのため、その後どのくらい進歩したかは不明です。今回は少し否定的な言い方です。ごめんなさい。現在は変わっていればと期待します。

しかし、前回の内容や実際のトワルの画像を見る限りでは、このレベルのトワルと3Dのトワルを見て比較する意味があるのだろうか、しかもそれぞれに優秀な方たちが企画作成に参加したなかでの、この結果は、そもそも元の考え方から違っているようで仕方がありませんでした。

そんながっかりさせられた中で、これまで気に留めることがなかった東レacsさんのブースに何気なく立ち寄り、ひとりの男性の営業さんの話を聞いてみました。

これが素晴らしかったのです。パソコンの能力もグラフィックボードの能力も他のメーカーと比べると、一般的なパソコンの能力で充分に3Dシミュレーションができ、一番すごいと感じたのは、パタンナーが一番どこに時間を取られ、一番早く結果を見たいとおもう、その部分に焦点をあててソフトが開発されていたことです。

他のメーカーにありがちな、パソコンの能力を最大限に使い、いかにリアルな3Dシミュレーションをするかという部分を売りにしたものが多いなか、普通のパソコンで、パタンナーが一番欲しい情報をすぐに得ることが出来るという、パターン作成に特化した3Dソフトになっていて、顧客ボディも作りやすく、やる気さえあれば、こうしたいという本人の求めるものが明確になっていれば、おそらく、多くの時間をかけることなく習得できそうな、そんな画期的なソフトです。

天竺は縦糸と横糸でできていますが、3Dトワルが同じような構造なのか、三角メッシュなのかは解りませんが、着用させるのも無重力を交互に使ったり、軸固定を使ったりすることで、着せ付けも楽になりました。

このブログでもよく書いていますが、他社のホームページやインスタグラムでの商品やトワルの着せ付けた写真が、あまりにも酷いことを書いてきましたが、トワルのボディーへの着せ付けは意外に難しく、パターンそのものが悪く拝むのか、ボディへの着せ付けが悪く拝むのかが意外に素人には解らないものです。

こんなことが、3Dソフトを作っている大手メーカーさんのところでも起こっています。こんなぐちゃぐちゃのアイロンもまともにかかっていない、さらに着せ付けもまともに出来ていないトワルをどうやって3Dトワルと比較するのかと、4年くらい前の見本市でレベルの低さを見せられて愕然としたのを思い出します。

きっと東レacsさんも、まだまだ当分、自分たちに追いつけないと感じていたと思います。

逆に一般的なパソコンの能力が上がってきたことで、これまで若干弱みに映っていた部分(パソコン本体の能力)も今後は追従し、追い越すことも考えていらっしゃるのかと感じています。それくらい今のパソコンの能力が高いと言えます。しかも中級レベルでも充分に動きます。

まさに、パタンナーのためのCADであり3Dソフトと感じます。

今回は私のブログでは珍しくべた褒めですが、本当に優秀なソフトです。

コロナの影響もありサポートも個別対応していただけるようで、以前会社に都度電話をして聞いていたことを考えると、すごく聞きやすくなりました。

さらに価格もとてもリーズナブルです。個々のパタンナーが使うことが出来る価格です。

20年前には、CADを懐疑的に見ていたプロのパタンナーや講師もいらっしゃいました。

手で線を引き、生地でトワルを組んで、、、と それが当たり前の時代で、縫い代付けを何年も修行と称してやったり、それが習得と言われ、寿司屋の職人さんのような感じがしていました。

しかし、極論かもしれませんが、先生方には怒られるかもしれませんが、手で線を引いたり、トワルを裁断したりしない世代が当たり前になる時代も来るのかもしれません。

実物大で線を描き、生地を裁断しないと理解できないという理屈も分かるのです。

しかし、デジタルツールを使うことで何時間もかかって体験する作業が、あっという間に体験できるとすれば、これまで何年もかかって体験してきたことが、より短期間で出来るのです。いずれ使う側はデジタルツールの中の体験を仮想なのか現実のことなのかの区別がつかなくなるのでしょう。それくらいに普段の道具になるはずです。

もともと私が作る毛皮には地の目がなく、場合によっては、どの方向へも伸びもたりします。そんな私の仕事だからかもしれませんが、私自身がほとんど紙ベースでパターン作成をしたことがありません。パターンを勉強し始めたころパターンの学校に行ったときに紙ベースで作業をしたくらいで、その後CADを使い始めてからは、ほとんど紙ベースで作業はしてません。

パソコンの3DやCAD上で、豊富な体験をした新しい世代が生まれるのだろうなと想像しています。

もしかしたら、私が知らないだけで、すでにそうなのかもしれません。

今後のことになりますが、古い入出力機材がシリアル→USB変換で使えるのかが解れば嬉しいです。

以前、パソコンを使いだしたころのことを書いた記事もありますが、その道のプロだったりする人がデジタルなツールに意外に懐疑的であったりしました。実際多かったのです。

おそらく、自分達が築いてきた実績や技術が否定されてしまうような感情があったのかもしれません。しかし、大昔に宇宙のアニメがあり、そのなかでやっていることが、今は現実に出来るような時代です。

デジタルという四文字に込められた意味は幅広く、、そして奥深く感じます。

毛皮という、素朴な素材でも何かしらデジタルツールと関わっていく必要があるはずです。

そんな中で、費用も個人レベルで充分に使えるという東レACSさんのアパレルCADは感心されられます。こんな素晴らしいツールを提供してくれてありがとうという気持ちでいっぱいです。

実際にこの3dCADで作成しだしてからのパターンの安定感は素晴らしいものがあります。

以前は、裾の床上がり(地面からトワルの裾までの距離)は、仮縫い時の着方や姿勢に問題があって発生していることが多いと考えていましたが、3Ⅾで確認して以降は、ほとんど前後や脇の差が無くなりました。

勝手に自分のパターンのせいではなく着方で数値が変化しているのだと決めつけていたのです。

それが目からウロコでした。3Ⅾで確認修正したパターンでは、ほぼ毎回数値が大きく狂うことはありません。仮縫い後の、都度の修正が本当に減りました。

私の仕事のなかでは久しぶりの大ヒットツールです。

今回は以前から書きたかった東レacsさんのことでしたが、支離滅裂な部分もあったかもです。特に読み直しも書き直しもせずにアップ致します。夏が終わったばっかりですが、毛皮のシーズンを目の前にして作業に追われています。おかしな部分があったらごめんなさい。

長澤祐一

適正な価格とは?

今日は、適正な価格とは?というタイトルです。

毎回難しいテーマになりますが、どうしても気になることなので書いてみます。

先日ある動画に適正な価格と謳うものがあり、少し気になりました。

適正な価格とは何でしょうね。その動画では価格が安くなったことを適正と表現していました。

私達も以前、百貨店に在籍していたのですが、百貨店以外にも小売店等に卸している場合には、中間マージンというのが正しいかどうかは別にして、当然ですが販売する側の利益が存在します。

中間マージンをカットするといいますが、そういう言い訳をする側のほとんどが、小売り側がする、おもてなしも含めた多種多様なサービスや保証もかなりの部分でカットしています。

確かに毛皮という素材の商品が、過去も現在も多少、馬鹿げた価格が付いている場合もあります。

しかし、その部分は別にして、適正とは何だろうか?と考えてしまいます。

以前、数回前に価格について書いたことがあります。今回もほぼ同じなのですが、適正とは何だろう?すごく信頼を築けそうな言葉です。

問題はその中身なはずですが、そこには誰も触れません。

百貨店に20年在籍していて分かったことは、百貨店は一般的なネット通販とは大きく違うという点です。

もちろん、ポップアップのようなスポットで平場に出るような業者さんにはわからないことが多いのですが、毛皮サロンに20年もいれば、お客様との関係を繋げるなかでたくさんのことを学びます。

一般的に適正価格という言葉を使う場合に、比較するものがあるはずですが、いつも感じるのが、提供する内容が違うのに単純に価格の比較だけをして自分達は適正だと主張する場合が多くみられます。

例えば毛皮商品の提供であれば、素材は?作りは?購入後のアフターは?とこれ以上に比較すべきたくさんの項目があります。

どんなに安くても、素材や作り、またはデザインが酷ければ適正なんて言えないはずです。そんな言葉がネット上では普通に使われ信用されてしまいます。

それを見抜けないと、信用して粗悪品を買うことになってしまいます。

私は、自分の商品にも他社の商品にも厳しいですが、半額といわれて買っても意味はないなと考えてしまいます。

半額といっても何万もするものです。

大事なのは、全ての内容でそれぞれに価値が決まるのです。

他社商品やサービスと比べる必要も、比べる価値もありません。

適正なんて書いてあると自信がないのかな?と思ってしまいます。

他に、お客様に伝えるべきことがたくさんあるはずです。

長澤祐一

 

 

技術職の技術の出し惜しみと価格

今日は、技術職の技術の出し惜しみと価格 というタイトルです。

今日も難しいテーマです。

出し惜しみというよりも、出し惜しみが出来ない職業だという意味のほうが正しいかもしれません。

 

例えば、価格に応じてやることが変わるということがあります。

私たちのような、物を作る仕事や、それ以外にもたくさんあります。

最初に書いておきますが、価格に応じて、やる仕事のクォリティーがコントロールできる仕事もあります。

しかし、私のような毛皮を作る仕事では、料金が低くても高額であっても、やる作業の内容に差は出にくいのです。

もちろん、作業に見合った料金設定をするのですが、受けた仕事の作業内容が想像以上に難しい場合もありますから。

私は字が下手ですが、字の上手な人が下手に書けないと同じで、わざと下手には作れないものです。

 

よく、いろんな仕事のなかで料金次第でもっと綺麗に作れますという人もいるかもしれません。しかし、自分の手で作るものや、自分の感性で仕事をするような場合には、わざと下手には作れないものです。

 

明かに作業内容が違っていて価格が違う場合には、それもありですが、普通に絵をかいたり、物を作ったりする場合には自分の持っている能力の最大限を出すのが普通です、、というか普通にやっても力のある人は自然に高いレベルの仕事が出来てしまいます。

言い方悪いですが、手抜きをしたつもりでも勝手に高いレベルの作業になるのが普通です。それが力があるという証です。

 

量的な問題で手間がかかるということは理解できます。しかし、一つの仕上がりの質の部分で言えば最初から高いレベルというか質の高い仕事が出来るひとがいて、逆に何度やり直しをしてもらっても出来ない人もいます。

そんなときに、この料金ではな、、、と心のなかで考えるかもしれません。しかし、よく考えてみてください。出来るひとは最初から出来るのです。

相手の望むものを理解して、最初から納得できるものを提供します。

前々回のブログで手間がかかるから儲からない、、という記事を書きましたが、力があれば最初から納得させる結果が出せるはずなのです。

もちろん私がどうかといえば、なかなか一発OKというのは目指してはいますが、なかなか出来ていません。

それでも、例えばデザインやパターンなどでは、結果を見せる前は散々、考えて作業をやり直したりしますが、お客様の前に出すときは完璧な状態で出そうと考えています。

まだまだ、綺麗な字を書く人のように、サラッと綺麗に仕上げることができません。七転八倒しながらです。

そんなときに料金のことなど頭からは消えています。

そして、出した結果に、お客様も自分も納得したときに初めて充実感が味わえます。

たまたま、お客様が喜んでくれる時もあります。しかしそれは自分のちからで出した結果ではありません。単純には喜べません。

それで喜んだら進歩などしませんから。

私達のような仕事では料金次第でやることを変えるということが本来は難しい仕事なのです。

たまに料金を頂ければ、もっと質の高いものを、、、なんてところがありますね。

でも、初回の作業をみれば、仮に金額を出してもどうかな?と思うこともあります。

ほんとうに自分に備わった技術や能力があれば、料金に関係なく綺麗な仕事ができて、技術を持たなければ、高い料金をもらっても、何度やり直しても出来ないものです。

だからこそ、自分の技術がひとの期待に応えられているのかを継続して考えるのです。

再度、読み返し付け加えます。記載にあるように私が出来ているわけではありません。ただひとつ言えることは、誰よりも時間と自分の現在の能力を使い切るまで、一回一回の ”作り” に向き合っているという自負はあります。

シーズンが迫ってきていて、作業に追われていますので、以前のように、また投稿の間が空くかもしれません。すみません。

 

 

長澤祐一

 

クリーニング溶剤と毛皮クリーニングについて

今日は、クリーニング溶剤と毛皮クリーニングについてという話題です。

先日、あるサイトで毛皮クリーニングで、お客様の要望を聞きながら使う溶剤の種類を選ぶと記載がありました。

私のブログで書いていることと似たような記載もあったり、出来ないところは既存のパウダークリーニングに逃げていたりと、実際やっていないで書いていることが露骨にわかるようなサイトでした。

私は、通常のドライクリーニングは詳しくは解りません。

しかし、毛皮のことなら解りますので少し誤解があるので書いてみます。

用途に応じて、または要望に応じてという部分には理解ができません。どんな用途があるのか?溶剤を使い分けるほどの具体的な用途とは? それをお客様側から要望できるのか?

そんなことはありません。大半の毛皮業者も具体的に何十年も経った毛皮素材をみて、劣化の進行状態や毛の傷み具合を見抜けるひとはほとんどゼロに近いはずです。

お客様が溶剤を使い分けるための要望を具体的に提案することなどできません。

なぜ溶剤(有機溶剤)を使うかという意味は、毛皮の皮面や毛についた、または元々残留していた汚れや脂を溶かして、気化させるかオガに吸収させて取り除くかという目的です。

ドライクリーニングでは洗剤も一緒に入れると聞いたことがありますが、毛皮に洗剤は使えません。生地と違って洗いずらい素材です。

以前ロシアから仕入れたバイオクリーニング剤は洗剤ではありませんが、多少泡立ちはします。皮面に染みこむほど濡らすことはしませんが、毛の部分の半分以上は濡らして汚れを拭き取る感じで作業します。

私も、何度かやりましたが絶対的な結果は出ていません。

しかし、国内業者がメインにしているパウダークリーニングよりは良い気がします。

話戻しますが、溶剤の使い分けがあるとすれば、速乾性や油汚れなどを溶かすスピードのために使い分けがあるように感じます。

理由は簡単です。一つの作業を終えるのに、より短い時間で同じ効果が得られるからです。そうすれば、儲かるからです。

液体フロンのようなものも以前毛皮でも使ってましたが、今は使えません。

お客様の要望を聞いて溶剤を使い分けるというのは、一見正しいことを書いているように見えますが、自信があるならば、その詳細を逃げずに記載すべきだと思います。

今、私のところもホームページを作っていますが、それらしく、、、それっぽく、、、 やってはいけない気持ちのよい表現に、つい手を出したくなりますが、1を100に、表現だけで見せるなんてことはやりません。

そんなホームページを作ったら、このブログやオンラインショップで書いてきたことの信頼が総崩れします。

最後に問われるのは、書いていることがどこまで信頼してもらえるかです。

そのために多面的に記載もし、さらにそれに応えるだけの作業を提供しています。

生地のクリーニングで生地の特性を知らずに仕事をする人は少ないでしょうが、毛皮のクリーニングにおいても、適当に表面だけの知識でクリーニングが出来るほど甘い仕事ではないはずです。

せっかく、お客様の要望に応じて溶剤を使い分けると記載するならば、その内容まで踏み込むべきです。

深く突っ込んで記載しても、お客様にはわからないからという理由で記載しないというならば、お客様の要望に応じてなどと、まるでお客様が細かい部分まで知ってて要望を出し、それに対応して溶剤を使い分けるという記載はそもそもが違うだろう、、と思ってしまいます。

でも、こんな記載はネットのいたるところに見られます。

最後にタイトルに戻りますが、毛皮という曖昧な素材のクリーニングの難しさは、毛皮を作ることと同じくらい難しいと私は感じています。

その意味もあって、これだけたくさんのクリーニングの記事を書いています。

長澤