毛皮で一番軽い素材は? 

毛皮で一番軽い素材は?という検索で入ってくることが多いので、今日は昨日徹夜して納品したアーミンについて書いてみます。

今回の作りのテーマはとにかく軽く柔らかくです。このことで一番問題になるのは軽く柔らかくすることと、形を綺麗に表現することを同時に行わなければならないことです。一般的にアーミンの作りは、他社ではアーミンの皮が薄く切れやすいと理解されているらしく、毛皮と裏地の間に一枚の薄い芯を抱かしています。もちろん、前芯やその他の芯もしっかり使って仕上げています。

そのためにせっかくの軽く薄い皮の利点が表現されずにいます。結局は、作る技術者と求めるお客様との接点がないために、技術者は皮が切れるリスクを避けたり、形が崩れるリスクをさけたりして、無駄な芯を貼ってしまいます。しかし、お客様がアーミンに求める姿は、 (さらに…)

毛皮の褪色、赤の褪色

以前、染色した毛皮やナチュラルのものも、おおかた赤が褪色して黄色やグリーンっぽい色に変化すると5月19日のブログで書きましたが、たまたま、会社の窓際のペン立てにずっと使わずに立てていたマジックのキャップが何年もの時間を経て、ペン立てから飛び出している部分だけ、赤が抜けてしまったものをご紹介します。

赤が抜けると黄色っぽい色に変化すると書いていますが、それは青や黄色が入っているもので、例えばグレーやパープル等のことで、今回は赤一色の赤マジックのキャップなので、赤が褪色し元のプラスチック製品の原料のままの白っぽい半透明の色になってしまいました。もっとわかりやすく言えば (さらに…)

毛皮の毛の癖をとる

今日は毛皮の毛の癖をとりたい、、、という検索で当ブログ入っていらっしゃる方が以前いらっしゃったので、これについて書いてみます。毛皮の毛は髪の毛とほぼ同じ性質を持っていると思われ、高温の熱をかけて引っ張ればほぼ真っすぐに(ラム系は完璧にはなりません)なりますし、水分を与えれば縮みます。

違いがあるとすれば、毛皮の皮は温度を感じることがなく、人は熱い蒸気がかかれば熱いと感じ、皮膚からスチームを離すことです。よくあるのがアイロンの蒸気をかけて毛皮の皮をニカワのように硬くなって縮んでしまうことがあり、直して欲しいという依頼があります。専門業者のクリーニング屋さんでも、よくスチームをかけ過ぎてしまい縮ませてしまい、直して欲しいということもあります。

縮んだ皮は、蒸気のかけかたの度合いで元に戻るものと戻らないものがあり、 (さらに…)

誕生日、そして毛皮の日

今日は私の誕生日です。私がギターで音楽の道を目指すことを諦め、毛皮の仕事にアルバイトでついたのは多分、30年前くになると思います。当時は、毛皮の仕事といっても、始めたばかりで何もわからずに夢中でやっていました。

音楽、、、いやロックが好きで始めたにも関わらず、歌謡曲だったりニューミュージックと言われるようなものをやりバックミュージシャンとしてお金をもらう、そのことにいつしか疑問を感じ、やっぱり当初、福島の田舎から出てきたときに目指したものをやろうと、父親が亡くなったことをきっかけに、僅かにやっていた名ばかりのミュージシャンとしてのいくつかの仕事をやめバンドに打ち込むことにしました。そんなときに始めたアルバイトが毛皮だったのです。

接客業に向いてはいないということと、 (さらに…)

毛皮用スチーマー

今日は毛皮用のスチームという言葉で、よく検索されて、このブログに入っていらっしゃるケースが多いので、この「毛皮用スチーマー」というタイトルで書いてみます。

アトリエでも、以前はナオモト工業(株)さんが毛皮全盛期に作っていた小型ヒーターの付いたスチームを使っていました。これはガンタイプになっていて、美容室で使うドライヤーのような形をしていて、ガンの先にバネがついていて毛皮に先のノズルが直接触れないようにできています。

しかし、これは小物くらいのものを仕上げるのであればいいのですが、コートクラスになるとパワーが足りなすぎるのとガンタイプなので、要は一つのポイントしかスチームをあてられず、とても時間がかかってしまったり、ノズルの跡が出来てしまったりとコートをメインで作る私たちにとっては欠点が多過ぎました。

その後、ガンタイプから (さらに…)

モデリストI氏のいうの技術とテクニック違い

今日は前回のブログ記事に出てきたモデリストというテーマで書いてみます。私が本当にモデリストと尊敬するのは、以前、HBというアパレルの会社に在籍し、その才能が生かしきれないまま、今は退社されたI氏という方です。

私が毛皮をアルバイトで始めたころの30年くらい前のことです。彼はHBという会社を辞めて一時的に毛皮を勉強してみようとされていて、私が働いていた加工会社に入社してきました。その後、私も、その会社を辞めI氏も辞め、I氏は毛皮で一時独立をされました。私は、別のところでお弟子さんとして一時働き、その頃に、彼のところに、度々お邪魔して、仕事のやり方、考え方、彼の哲学も学びました。

I氏氏はそんなことは記憶にないでしょうが、私は必死に何かをつかもう、盗もうとしていたのを今も思い出します。

当時、彼の元で作業をして、今でも、印象に残っている言葉は、  めんどくさいということに慣れたおしまいだ、面倒くさいと思うなら簡単に出来る方法を考えろ  さらに、こうも言いました。技術とテクニックは違うと、、、 私は聴いた時、技術とテクニック?? 同じでは? と思いましたが、I氏が言ったのは技術とは会社に蓄積していくものであり、会社の中の誰でもが使えて、人が変わっても品質が変わることがなく続いていくものだと。テクニックは個人の技で、その人が辞めてしまえば、企業には何も残らないというものだ。それは技術とは言わない、、、と、厳しい口調で言い放ちました。だから、人が変わっても品質が変わらない技術というものを考えていかなければ考える意味がない。と熱い口調で語り続けていたのを今も思い出します。

その後20年以上もお会いすることがなく、三年前程に、また古巣に戻っていらっしゃるということを聞いて、直接、HB社に電話を入れて連絡がとれましたが、丁度退社する直前で、あ~~せっかく戻っても、また彼の大きな能力を使いこなすことができずに退社されるのかと思いました。

I氏は各方面でも、派手な知名度や活躍はされていませんでしたが、会ったかたは、おそらくほとんどの方が彼の能力の高さを認めていたのだろうと私は確信しています。モデリスト協会というのがあるらしく、そこに誘われたと言っていましたが、あまり興味もなく入ることはなかったそうです。私は、I氏こそがモデリストと呼んでまちがいのない高い能力を持っていたと今も確信しています。

最近、どこかの毛皮業者のサイトにて、女性の方でしたが(女性だからという訳ではありません)ファーモデリストとサイトに紹介されていて、おいおい、そんな簡単にモデリストという名前を使うな、、、と、苦笑いしたものです。私も長年、この仕事を学んでいますが、いまだ毛皮の分野においてさえも、I氏のレベルに達したとはいえず、道は深いと技術を知れば知る程、余計に不安にかられます。それほど、あまり一般には知名度のないモデリストという言葉ですが、その意味は広く深く、そして価値があるのです。

技術とテクニック、私にとってはI氏からいただいた永遠のテーマ。このテーマこそがパショーネの哲学である、あたりまえのことをあたりまえにこなすという思想につながっているのだと思っています。

下記の日本モデリスト協会のリンクにモデリストの定義らしきものが書いてあります。
http://ifashion.co.jp/jnma/modelist/background.html

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外注委託加工を使わない訳は?

当アトリエでは基本的には、アトリエで絶対に出来ない、毛皮のなめしや染色等の加工以外の縫製に関わる全ての作業はアトリエ内で行っています。一般的に毛皮部分の加工は工場内で行われ、残りのコートのまとめや裏地付け等は外注(下受けや内職)にまわることも多く見られます。

今日は弊社(PASSIONE)が全ての製造及びリフォームをアトリエ内で作成する理由と、外注委託加工に出さない理由をご説明したいと思います。

一般的に外注加工に出す理由がいくつかります。例えば、縫製機能を持っていないメーカーもそれにあたります。そして、縫製工場が外注委託加工を使う場合もあります。今回は二番目の縫製工場自らが外注加工を使うケースについて当社との比較をしながら書いてみます。

外注加工や内職に出す理由はいくつかあり、例えば生産が間に合わないとか、出来るだけコストを下げようとかが、その理由にあたります。

毛皮の職人さんのなかには毛皮しか出来ない人、または針仕事ができない方もなかにはいらっしゃいます。もの作りの完成度をあげようとするならばパターン、デザイン、染色、原皮、なめし、毛皮縫製、生地縫製、まとめ等の全てを熟知しているエンジニアのようなタイプの技術者が全体を仕切る必要があると私は思っています。

アパレル業界で言えば例えば、モデリストというような位置付けになるでしょうか。

余談になりますが、私はどちらかというと職人というよりはエンジニアであったりモデリストであったり、、、というようタイプを目指して、これまで仕事をしてきました。ですから、自分は確かに職人ではありますが、職人と呼ばれることには、あまりしっくりとこないのです。

話は戻りますが、アパレルではテキスタイルとパターンや縫製はアパレルというひとつの業種のなかに括られますが、業態としては少し距離があるようにおもわれます。ところが、毛皮は、生産数量が少量ということもあり、洋服に例えれば、一つの工場で生地もつくり、さらに同じ場所で形にする縫製を行うという流れになり、大半のことは一つの工場内で行われることが多いのです。

そんなこともあり職人さんの能力の大半は毛皮本体の部分を作ることに使われてしまい、かたちや風合いを表現する意味では以外に大切な最後の芯や綿入れ、それ以外のまとめ部分に、なかなか関われないことが多いのです。もちろん全てではないですが、そういう傾向も多くみられます。

私たちのアトリエでは、最終的な”求めるカタチ”や風合いを表現することに最後まで、とことん力を注ぎます。アトリエ内での作業は、価格に左右されないと言えば嘘になりますが、基本的には仕事を受けた価格に応じて、というよりも目の前にある問題や表現したいテーマに集中していきます。軽さや柔らかさが必要なデザインならば出来る限りのトライはします。場合によっては自分たちで皮を鋤くこともします。

都度、作りの途中でパターンも変更していきますし、加工の方法も様々に変化していくことになります。

そして、ここが以外に今回のテーマで大事なところですが、リフォーム等では、特に求められるのは、お預かりしたコートのデザインを替えて、さらに出来るだけ着丈を長く作りたいというような、作り手からすればかなりハードルの高い要望が、少なくありません。

例えば、元の毛皮のエリでで新たに作ろうとするデザインのエリが取れない場合は、エリ等を身頃の裾から取らなければなりません。そうなると、身頃を一旦最初の予定の長さまで出して、その後、エリを残った裾で作り、万が一、身頃を長くするゆとりがあれば再度、パターンを修正し、最終的に着丈を決定していくという臨機応変な作業が常に求められます。

更に、リフォームで最も大事な皮の状態は、作業をするなかで部分的な劣化を発見したり等、様々な問題が発生いたします。それを無視して求められたパターンに入れようとすれば皮は切れるか切れる寸前の状態になり、完成後にも大きな不安を抱えることになります。そんなときにはパターンを瞬時に変更し、使う水の量を控えたり、場合によっては水を使わない方法も選択しなければなりません。これは、現場で都度、毛皮の状態をみながらではないと出来ないということです。もちろん、気の効いた職人さんのなかには、お客様の要望を出来る限り聴いていこうとするひともいるでしょう。

しかし、外注加工の現場では、途中での作業の変更や段取り替え、またはパターンを都度修正するというのは、思ったよりも手間がかかり加工賃もあらかじめ決められているので、なかなか難しさがあります。パターンについても場合によっては外注であったりすれば、パターンメイカーは毛皮を見ながらパターンを引く訳ではないので、発注する側が、あらかじめゆとりをもった設定のなかで発注をしていきます。そんなこともあり、お客様との打ち合わせでは、この着丈が限界ですと言い切られてしまう場合も、おそらく少なくはないでしょう。

そんな意味からも、パターン作成から始まって、最終の仕上がりまでアトリエ内で行うというこだわりは私たちの理想であり、考え方(哲学)でもあり、外注加工を使わないという、ひとつの大きな理由です。

動画は、ヌートリアの皮の劣化を映しています。このヌートリアやビーバーは皮がしっかりしてる割に劣化が多いようです。このブログ記事でも何度も書いてますが、水がタンパク質に与える影響は大きく、通常のドレッシング(毛皮用のなめし)では特に影響があります。染色したクロム鞣しがされたものの劣化は以外に少ないということもあり、毛皮がどんな状態かを見て加工をしなければなりません。最初の映像は水に濡らすまえの皮です。ほとんど紙のような状態ですが、まだ強度があります。そして次の映像が水に濡らした皮です。もうほとんど、皮の繊維のチェーンが外れた状態で、紙を水に濡らしたような状態になっています。見た目、しっかりしている皮でも、劣化が進んでいる皮は水につけると、ほぼ映像と同じようになります。作る側にも常に大きなリスクがあるのです。

長澤


皮の劣化 – PASSIONE

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リフォーム品 | 保管の仕方考

今日はリフォーム品を承るにあたっての縫製以外での注意点を書いてみます。リフォーム品には多かれ少なかれ、毛皮にはほこりや汚れ以外に、香水、カビ、場合によってはダニなども付着している場合が多くみられます。コートから裏地や芯を外しているときにも、よく私たちの手や身体にかゆみがでることもあり、個々のお預かり品ごとに、かなり慎重な取り扱いをしなければなりません。コートを預かっている期間または加工期間は、常に他のお客様のお預かり品と触れることのないように厳重にカバーを幾重にもかぶせます。

その理由は、預かったコートには香水やカビ、さらには樟脳(きものなどを虫やカビからまもる薬)などの匂いが混ざり合って、とてもきつい匂いになっている場合が多く、隣同士にハンガー掛けしていると確実に匂い、その他のものも移ります。カビ等が一旦移ったら、まず取れないと思って良いでしょう。ですから要注意品は特に厳重な保管が必要になります。

アトリエでは全体をほどいて毛皮と裏地が外された後に、必ずドラムという毛皮の毛を落としたり柔らかくしたりする機械にオガと脱脂溶剤、さらに消臭剤を入れて余分な脂や汚れ、ほこり、匂い、さらに出来る限りのカビやダニ等の駆除を行います。

この記事を読まれて、同じことをされる方がいるかも知れませんので、念のためお伝えいたしますが、消臭剤は液体で水(H2O)を含んでいて、劣化しかけた毛皮の皮のタンパク質をその水分によってさらに劣化させることもありますので、ご注意ください。

基本的にはクリーニング用のオガには消臭効果もありますので皮の劣化状態を見ながら、消臭剤を追加するかどうかは決めるべきでしょう。

このようにして、一着ごとに一般的なクリーニング屋さんでやるパウダークリーニングと言われるもの以上のクリーニングをしていきます。そうしなければただ形が変わっただけのリフォームになってしまいます。もちろん、オガも通常の毛とりのときは再利用しますが、クリーニングの場合は都度、新しいオガでクリーニングします。余談ですが、パウダークリーニングしたコートのほとんどが裏地とコートの裾の隙間や袖口などにオガが入った状態になっています。おそらくオガドラムに入れて最終仕上げの段階でオガを落とし、さらにポケット等の中のオガを掃除機等で吸い取るのでしょうが、コートの中に入り込んでしまったオガは取りきれていません。時には裾や袖口に一杯入っているときがあります。

そういう意味ではリフォームの時以外に、徹底したクリーニングと皮のメンテナンスをする機会はないのです。よく裏地交換をする場合もありますが、あれはあくまで裏地のみを交換するだけで、芯を外して軽いものに付け替えるということはしませんので、結果としては完璧なクリーニングができる条件にはなりません。

そして、このクリーニング処理はリフォームが決定してお預かりした段階ですぐにやります。そうしないと保管期間に他のコート同士が触れ合い、匂いやカビ、ダニ等が他のお客様のコートに移るのを防ぐことができません。

あと、やれることがあるとすると、よく布団乾燥機のカバーのようなものがありますが、あの中で高温状態でダニ等を殺すことです。

しかし、やれるだけのことをやっても、100%取れるとは限りません。匂いなどは毛の表面はとれますが、毛の奥や皮のなかに染み付いたものは完全に取りきることができません。オガドラムをかけた直後は良いのですが、時間の経過とともに空気中の水分などと混ざり合い、匂いが出てきます。それでもやらないよりは格段に違いがあります。元の匂いのきつさはほぼ取れると私は考えています。

このように、リフォームをするには、小物クラスのリメイクならば問題がないでしょうが、着用するものに再度作り替えるならば、毛や皮の状態を出来るだけ綺麗な状態に戻す必要があるでしょう。

そして、毛以上に注意しなければならないのは皮に入っている脂の状態です。少なくて、このまま放置すれば、間違いなくパリパリと紙のように劣化していく皮か、もしくは脂が入り過ぎていて、そのため空気中の湿気を吸収してしまい、皮のタンパク質を壊し劣化が進むのかをよくチェックして脂を抜くのか足すのかを都度考えなければなりません。

毛についてもただオガドラムをかけただけでは本来の美しさにはなりません。毛の癖や縮れをとったり、スチームで毛のボリュームを出したり、汚れた髪の毛が生え際で束になってしまうような状態が毛皮にも起こりますので回転アイロンで毛の根元からサラサラにしたり、つや出しの薬品を場合によっては使うなど、やることはたくさんあります。

一般的にはお客様との打ち合わせではデザインや作り方に話が集中しがちですが、リフォーム品としてお預かりし、仕上がり品になるまでには、目には見えませんが、メーカーとしてやらなければならないことがたくさんあります。そして、この難しいリフォーム品の保管は社内から一歩も外に出さないことが条件になります。その理由は、外注加工にでれば、社内アトリエと同じ保管条件を求めるのは難しいからです。

写真は皮の脂が黄色く変色してきたものを半分カットして、脱脂をしたものをもう一度縫い合わせたコートです。写真は触ってみることが出来ないのでわかりませんが、皮の柔らかさも違います。脱脂していない黄色い皮は表面に湿気が残り、硬さもあります。ただし、全てのコートで脱脂すれば良いということではありません。中にはドライ(脱脂)をしたあとはすごく柔らかいのに、加工段階で硬さや劣化が出てしまうことがありますので皮をよくチェックする必要があります。

長澤

 

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毛皮用ミシン(カップシーマーミシン)

今日は毛皮を縫うミシンのことを書いてみます。毛皮のミシンは一般的にはカップシーマーミシンと呼んでいます。日本名で巻縫いミシンと呼ぶ人もいます。

カップシーマーミシンを作っているメーカーはストローベル(ドイツ)、リモルディー(イタリア)、サクセス(イギリス?)、ボニス(アメリカ)、ポーカート(不明)、トレジャー(日本)、チャンピオン(日本)というように多数のメーカーが毛皮用のミシンを作っています。

私は、このなかでポーカートという高速用のミシン以外は全て使用したことがあります。今、仕事で使っているのはリモルディ社(Rimoldi)のミシンとチャンピオンという細井ミシンという会社が作ったものです。細井ミシンはもとは多分ボニスのミシンパーツを作っていたという話を聞いたことがあります。当時、国産で自動給油のタイプがなかった時期に自動給油を売りにした国産初のミシンです。その後トレジャー(奈良ミシン工業株式会社)が自動給油を作りましたが、毛皮産業自体が、バブル崩壊も重なり、その後どんどん衰退したこともあって、新たに新機種がでることはありませんでした。

毛皮用のミシンは本体の中にあるカムといくつかのパーツで出来ていて、他の本縫いミシンのように複雑ではありません。その分、調整する部分は限られています。そこが一番問題になります。わずかなパーツを前後左右上下に動かすこととカムとの関係で全てが決まります。動かすところは限られているのですが、それでも、大げさに言えば何千通りもの組み合わせ位置(設定)があり、限られている分、調整の壁にひとつぶつかるとなかなか解決しません。

それくらい難しいのです。原因はルーパーや針のセッティングだけではなく、ルーバーの大きさや形状がミシンごとに違い、カムも当然違う。さらにカップの高さもミシンによっては0.1mm単位を手動で設定しなければなりません。私が使っているリモルディ二台も微妙に縫い加減が違います。糸の締まりの強さや強く絞めて糸が切れる限界点もそれぞれに違いがあります。

今日は私の使っているメインのミシンを写真にて紹介します。私がたくさん使ったなかで、行き着いたミシンはリモルディというイタリア製のミシンです。カップシーマーの中では小さい方ですが、値段は結構します。一般的な工業用の本縫いミシンの新品価格の1.5倍くらいします。それもヘッドだけです。モーターもテーブルもつかずに、そのくらいの値段がします。毛皮用は扱うものが高いからか、それとも売れる台数が少ないからかわかりませんがとても高額です。

写真①のパーツは細井ミシンさんに特注で作ってもらった定規の上下を都度ドライバーでやらずに手でネジを回し高さの調整が出来る仕様に作ってもらった部品です。写真②はこれも特注で作ってもらった部品で毛をエアーで入れる装置です。モーターの下にペダルがあり、そのペダルに同期してエアーが吹き出すオンオフが切り替えられます。

モーターは停止位置自動検出器付きの電磁式モーターです。クラッチがなく素人でもコントロールしやすいモーターです。国内の一般的な職人さんが使っているのはクラッチ式モーターで、いまどきアパレルでは皆無に近いほど見ることはできません。私は韓国の工場に一度行ったことがありますが、30年くらい前でもすでにクラッチモーターなど使っていませんでした。こんなところを比べても、国内の毛皮の工場が海外に置いて行かれるのは致し方ない気もします。

話はもどりますが、このエアーノズルは自由に曲げることができ自分で好きな位置にセットでき、さらに使わないときは脇にノズルを移動することもできます。私たちのように、毎日同じものをつくるということがなく都度、セーブルやチンチラ、アーミン、ロシブロ、ミンクというように素材や加工方法が変わるアトリエでは一台で多機能なミシンが求められます。そんな意味からも、こんなミシンのセッティングに必然的になってしまいます。大昔ならレットアウト専用のミシンもあってもよかったのかもしれませんが、今はPFAFF3560を使えばいいので特にレットアウト専用のミシンはいりません。

とにかくこのミシンをいじりだすと一日はまってしまい、結果、もっと悪くなることもあり、そうとう気持ちと時間にゆとりのあるときでもないと調整に挑む気にはなれません。

長澤

補足 最近、トレジャーのブランドで販売しているミシンでサクセスのロゴが入ったものが売っていました。トレジャーがサクセスの代理店になったのかどうかはわかりませんが、確かにサクセスのミシンでした。私は以前、サクセスの自動給油タイプも持っていましたが、私には、いまひとつだったような気がします。サクセスはどちらかというとオールマイティーなミシンです。

私が使っているリモルディのよさは縫い目が綺麗に揃うというところです。その効果は、縫い目がそろっているということは後々の糸のゆるみが起きないということにもなります。一般的に他のミシンはルーパーのサイズや動きが大きく、その分針が手前に出て糸を絞めた最後に残る糸の長さが多くなり、その分糸の絞まりがまばらな状態になりやすいのです。しかし、リモルディはほとんど、糸が余らない縫い目なので最後にルーパーで絞める糸が左右にぶれることがなく、最短で締まります。これが私が選ぶ理由です。ドイツのストローベルも散々使いましたが、イタリアっぽくない、精度の高いこのミシンが私は好きです。

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ホワイトミンクマフラー

今日はストレートのホワイトミンクマフラーについて書いてみます。素材はアメリカンミンク/メスの4サイズです。以前はメスのミンクは3サイズが主流でしたが、今はその上の2サイズが全体のなかで大きな割合を占めています。中にはメスで1サイズや0サイズもあります。

今日のミンクは今では珍しいメス4サイズです。このミンクはサイズは小さいのですがアメリカミンクらしく毛のボリュームは素晴らしい逸品です。そして、サイズが小さいぶん、毛質もとても柔らかく刺し毛も短く、素晴らしい肌触りです。人間の肌も、男性より女性、大人の女性より赤ちゃんの肌が柔らかい、、、というようにミンクもオスよりメス、大きいサイズより小さいサイズのほう、、、というように毛質は繊細になります。 (さらに…)