毛のボリューム感
今日は毛のボリュームについて書いてみます。通常、毛のボリュームというのはその種類によって違いがあることは一般的に知られていることでしょう。今日、お伝えするのは、同じ種類の、例えばミンクに限って言えば、、、というようなテーマで書いてみようと思います。
毛皮の毛も、基本的には人間の毛髪と同じ性質を持ってます。ミンクやセーブル、フォックス、チンチラ等、ほとんどの毛皮でボリューム感を表現するのに毛量、いわゆる毛の本数がもっとも優先される項目であることは間違いがないことです。
そして、毛の一本ごとの太さも、もちろん関係しています。しかし、以外に知られていないのが、毛の根元にあるスパイラル状になったうねりがボリューム感に以外に大きく関わっているということです。
全てではないですが、ミンク、セーブルのように、より繊細な毛質になればなるほど、この根元のうねりがボリューム感をだすのに重要な役割を担っています。人でいうとアフロヘアーとストレートパーマがかかったような違いになります。
毛皮でもカラクルラムのようにすでに全体がクルクルしてボリューム感を出しているものもありますが、今回はこのタイプは除外してミンクやセーブルのような繊細な毛質のボリューム感について説明します。
同じミンクの毛でも、根元からストレートになっているものと、少しうねりのあるものがあります。同じ毛の本数が生えているとすれば、少しうねりのあるタイプの方がボリューム感が感じられます。しかし、このうねりがあり過ぎると、手で触ったときのサラサラしたシルキー感がなくなりますのでバランスが大事になります。
そしてここからが大事なことです。毛のボリューム感は毛皮の元々もっているものではありますが、3割くらいは処理の方法で調整出来ます。
先に、人間の毛髪と似ていると書きましたが、人の髪の毛が湿気の多い日には、もともとパーマっ化のある人の髪は少しずつクルクルになったりぼそぼそになったりしますが、毛皮の毛も同じで水分を吸収すると、特に蒸気(スチーム)などによって、毛の根元や毛先もうねりがでたりちぢれたりします。
この性質を利用して、毛のボリューム感を調整することができます。
もっとも良いと思われるのが、毛の本数がたくさんあり、根元が少しだけうねりがでて、毛先は真っすぐになっているものが一番、触り心地がいい毛質と言えます。
ヌートリアやビーバー等のプラクト(抜き毛加工した)した毛皮は、必ず原皮の仕上げの段階で高温の回転アイロンで毛を伸ばします。そして加工時にはそのストレートパーマがかかったような毛質を維持しながら商品にします。
しかし、元々、ぼそぼそしたタイプの毛質を無理に真っすぐにしているため、空気中の水分で徐々に表面は白っぽく、毛はぼそぼそした状態になってしまいます。ですから、時間の経ったヌートリアやビーバーなどは当初とは見る影もないほど毛質が悪くなり綺麗とは言いがたい状態になってしまいます。
このように毛質を整えるのにはスチームや回転アイロンを使用して、根元のうねりを適度にだして、毛先は真っすぐに整えるようにします。よくケーキとかで中がもちっとしていて外側がフワフワ等、そんな表現をよく耳にしますが、あんな感じです。
大事なことは、毛皮の毛も人の頭髪と同じで綺麗に仕上げることで本来の美しさが保たれるということです。そして、毛皮の魅力を熟知して、毛皮の持っている力を最大限引き出すのが作り手の大事な仕事のひとつなのです。
写真は、5月22日に掲載したデミバフミンクの毛の奥の部分が見えるように撮った写真です。毛の根元から2/3くらいが軽くうねっているのがわかります。これがボリューム感に大事な要素のひとつです。
長澤