毛のボリューム感

今日は毛のボリュームについて書いてみます。通常、毛のボリュームというのはその種類によって違いがあることは一般的に知られていることでしょう。今日、お伝えするのは、同じ種類の、例えばミンクに限って言えば、、、というようなテーマで書いてみようと思います。

毛皮の毛も、基本的には人間の毛髪と同じ性質を持ってます。ミンクやセーブル、フォックス、チンチラ等、ほとんどの毛皮でボリューム感を表現するのに毛量、いわゆる毛の本数がもっとも優先される項目であることは間違いがないことです。

そして、毛の一本ごとの太さも、もちろん関係しています。しかし、以外に知られていないのが、毛の根元にあるスパイラル状になったうねりがボリューム感に以外に大きく関わっているということです。

全てではないですが、ミンク、セーブルのように、より繊細な毛質になればなるほど、この根元のうねりがボリューム感をだすのに重要な役割を担っています。人でいうとアフロヘアーとストレートパーマがかかったような違いになります。

毛皮でもカラクルラムのようにすでに全体がクルクルしてボリューム感を出しているものもありますが、今回はこのタイプは除外してミンクやセーブルのような繊細な毛質のボリューム感について説明します。

同じミンクの毛でも、根元からストレートになっているものと、少しうねりのあるものがあります。同じ毛の本数が生えているとすれば、少しうねりのあるタイプの方がボリューム感が感じられます。しかし、このうねりがあり過ぎると、手で触ったときのサラサラしたシルキー感がなくなりますのでバランスが大事になります。

そしてここからが大事なことです。毛のボリューム感は毛皮の元々もっているものではありますが、3割くらいは処理の方法で調整出来ます。

先に、人間の毛髪と似ていると書きましたが、人の髪の毛が湿気の多い日には、もともとパーマっ化のある人の髪は少しずつクルクルになったりぼそぼそになったりしますが、毛皮の毛も同じで水分を吸収すると、特に蒸気(スチーム)などによって、毛の根元や毛先もうねりがでたりちぢれたりします。

この性質を利用して、毛のボリューム感を調整することができます。
もっとも良いと思われるのが、毛の本数がたくさんあり、根元が少しだけうねりがでて、毛先は真っすぐになっているものが一番、触り心地がいい毛質と言えます。

ヌートリアやビーバー等のプラクト(抜き毛加工した)した毛皮は、必ず原皮の仕上げの段階で高温の回転アイロンで毛を伸ばします。そして加工時にはそのストレートパーマがかかったような毛質を維持しながら商品にします。

しかし、元々、ぼそぼそしたタイプの毛質を無理に真っすぐにしているため、空気中の水分で徐々に表面は白っぽく、毛はぼそぼそした状態になってしまいます。ですから、時間の経ったヌートリアやビーバーなどは当初とは見る影もないほど毛質が悪くなり綺麗とは言いがたい状態になってしまいます。

このように毛質を整えるのにはスチームや回転アイロンを使用して、根元のうねりを適度にだして、毛先は真っすぐに整えるようにします。よくケーキとかで中がもちっとしていて外側がフワフワ等、そんな表現をよく耳にしますが、あんな感じです。

大事なことは、毛皮の毛も人の頭髪と同じで綺麗に仕上げることで本来の美しさが保たれるということです。そして、毛皮の魅力を熟知して、毛皮の持っている力を最大限引き出すのが作り手の大事な仕事のひとつなのです。

写真は、5月22日に掲載したデミバフミンクの毛の奥の部分が見えるように撮った写真です。毛の根元から2/3くらいが軽くうねっているのがわかります。これがボリューム感に大事な要素のひとつです。

長澤

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あたりまえのことをあたりまえにこなす

ロシアンセーブルヘビーシルバリーで作った4用ショールをご紹介いたします。以前に原皮の説明をさせていただきました。実際にあの原皮を使用して仕上がったものをご紹介させていただきます。

左右のバランス、キャラクター(背筋)の濃さ・太さ、そして原皮そのもののボリューム感、原皮のつなぎ目の自然さ(特に頭同士の綺麗なつながり)シルバリーの量とバランス、悪い部分を全て落とし不自然な毛流れが一切見当たらない等。。。このような仕上がりのものはアトリエで作ったきた中でも、なかなか見当たりません。

アトリエの理念にある「あたりまえのことをあたりまえにこなす」という、その言葉をそのまま表したようなショールです。このシンプルな形にセーブルのショールとして必要な要素が全て詰まっています。

長澤

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ロシアンセーブルファームのシルバリー

ロシアンセーブルの種類のなかに養殖のファームと呼ばれるものがあります。養殖もののために原皮のサイズもワイルドに比べると大きめなものが多く傷もワイルドに比べ少なめです。

今日、写真でご紹介するのは、そのファームセーブルの中でも、ほんとに数少ないシルバリーの原皮です。通常、ワイルドの原皮には、シルバリーと呼ばれないものでも白い刺し毛が少しだけ混ざっているものがよくみられます。

しかし、ファームはワイルドに比べると白い刺し毛が混じるのは、ほんの僅かです。そのファームにも、ほんとにまれに白い刺し毛がワイルドのシルバリーのように綺麗に入るものがあります。

一般的によくみかけられるのは頭の一部分に不自然に入っているものが多くありますが、これは白い刺し毛が入っていたとしても、逆に価値がさがるくらいで、あくまで写真のようにバランスよく入っていることが重要です。

ワイルドのシルバリーもそうですが、なかなか同じタイプのシルバリーを揃えようと思っても、相当な枚数を仕入れてシルバリーのタイプやカラー、サイズ等を揃えるか、毎年でてくる同じタイプ(色、シルバリーの量等)シルバリーを根気よくストックしていくかしか、コートのバンドルにすることが出来ません。

この写真のファームのシルバリーも、何年もかかって集めているものです。まだコートを作れるほどはありませんが、ボレロからジャケットくらいなら作れるかもしれませんが、全て同じシルバリーのタイプとはいきませんので、もう少し枚数が増えるのを待っているところです。

このようにセーブルのシルバリーでガーメントを作ろうとすると、ワイルド、ファームどちらにしても原皮を調達するだけで、とても大きな労力が必要とされます。

資産を何年も寝かすという意味ではワインや他の熟成タイプのお酒に少し似たような部分もあるかもしれません。それだけ、一般のセーブルの商品と比べるとシルバリーのセーブルで作ったコートは価格や価値そのものが上がるのは必然なのかもしれません。

長澤

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シェアードミンク・ハーフコート(ダークブルーグリーン)

こんにちは、スタッフ服部です。北陸地方までの梅雨明けが発表されましたね。一気に気温も30℃を超えて・・・夏本番!という感じでしょうか。毛皮にも、アトリエにもツライ季節がやってきますね(アトリエ内はアイロン等の設備の為に気温上昇中…(´Д`;))熱中症の報道が増えておりますし、皆様も体調管理にはお気をつけくださいませ。

さて、そんな今日も新作コートのご紹介です。先日のバイカラーのコートに続き、こちらも新色☆ダークブルーグリーンのシェアードミンクコートです。名は体を表すという感じの色ですが(笑)深みがありながらも暗くなく、青と緑が絶妙な加減で共存しています。

英国王室のオフィシャルカラーのロイヤルブルーという濃い青色が有名かと思いますが、ロイヤルグリーンとか・・・・・・例えても良さそうな、そんな気品ある色になりました。

デザインとしては、上につまった感じの甘めのテーラーカラーと前端&ポケット部分に付いている装飾パーツが特徴でしょうか。衿の丸みやフラップポケットの存在が可愛らしくありますが、色と装飾パーツが甘みを抑えており<ちょっと甘口or辛口な要素を取り入れたい>という方にオススメなコートに仕上がったと思います。

着丈も75cmと一番着やすい丈になっておりますので、ワンピースやスカートと合わせたり、シャツ&パンツスタイル等のカッチリ感を出したコーディネートにも幅広く使えるデザインになっております。

一般的なテーラーカラーよりも、衿つけの位置が上になっていますので、それが少しは防寒の役割も果たしてくれるかと思います(*´∀`)v

寒い季節のアウター等は無難に白・黒・茶・グレーなどを選びがちですが、このような色から色味と華やかさを取り入れてみてはいかがでしょうか。

服部


シェアードミンク・ハーフコート(ダークブルーグリーン) sheared mink half coat (dark blue green)

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毛皮の軽さと柔らかさ

毛皮を軽くする方法はいくつかあります。一番、簡単にトライすることができるのが、付属を出来るだけ軽いものにすることです。ケスカも純正のケスカは金属で出来ているので、個数は増えると結構重みがあります。同じ形で金属以外の素材で出来ているものがありますので出来るだけ軽いものを使用します。

さらに以前は毛芯とかを使っていたのかもしれませんが、今は軽さを考え別の素材を使うことが多いかもしれません。

コートの中に以前はシルクオーガンジーのようなものを毛皮の裏全面にはって、毛皮の縫い目のあたり止めや型くずれ防止の為に使用していましたが、縫い目もあたりの出ないような薄い縫い目にしたり、型くずれのしない作り方をすればオーガンジーをはる必要はありません。

裏地の選択も以外に重要です。毛皮でよく使われているキュプラとアセテートの混紡のものがありますが、これは以外に重い感じがします。匁数にもよりますが、シルク系がやはり軽いです。

二つ目は、皮の厚さの問題です。なめし上がった毛皮の皮を再度、なめしに出します。そうすると一度では絶対に出来ない皮の薄さと柔らかさが得られます。

一回目に、しっかりと皮をすけばよいと経験のない方は考えてしまうかもすれませんが、何故か二回なめすということをしないと本当の柔らかさと薄さが得られません。もちろんこれは私の経験でのことです。何度も試した結果はやはり再なめしの効果は絶対的に大きいと感じています。

さらにその皮を私たちは独自の機械で、皮の表面を毛根が出るギリギリまですき、皮の表面の繊維の一部を壊すことで軽さと柔らかさをさらに引き出します。但し、全てが同じように薄く鋤ける訳ではありません、ミンクの場合はオス、メス、サイズの違い等でそれぞれに限界があります。

そして皮の最終的な状態も、毛流れが縦の場合は、縦横比6対4くらいで仕上げます。これによってコートの型くずれも起きずに毛の美しさもそごなわずに仕上げることが出来ます。

横流れの作りの場合は、また少し皮を張るバランスが変わります。

そして最後に脂を抜く方法があります。これは専門の機械で溶剤の中に毛皮をつけ脂を抜く方法があります。しかし、これだと、脂の抜き加減が難しく全てが抜けてしまいますので、私たちは手間はかかりますが少しずつ抜く独自の方法で行っております。

これによって、脂の量をしっかりと調整し、軽さと柔らかさ、さらに毛のさらさら感を出します。この方法を使うと毛皮をドラムのなかで動かしながら脂を抜き、乾燥させるために毛皮本来の柔らかさがでるのです。ただ、溶剤に浸けただけでは柔らかくはなりません。

20年くらい前に、仕上がったコートをドライ処理をしてカラカラの状態にして、軽さと柔らかさを出した時代がありました。

この手法では、コートの形も崩れ、さらに脂を抜き過ぎてしまい、万が一水に付けてしまうことがあれば、皮は乾くと同時にパリパリになってしまうというリスクがあり、最近はあまり見なくなりました。

柔らかさと軽さは毛皮の仕上がりの生命線で、その大きな原因は脂の量なのですが、この調整が、なかなか難しいのです。なめしも常に同じ状態ではないからです。そして、脂を抜き過ぎると皮の強度が極端に低下し粘りがなくなり切れやすくなります。

私自身が、このブログのなかで脂ということに特に拘りをもって書いているのは、脂は入りすぎると酸化や、劣化、さらに重さにつながり、少な過ぎると皮が切れやすくなったり、硬くなったりする等、様々な問題を引き起こすためです。

毛皮の柔らかさと軽さというテーマで、一番大きなウエイトを占めるのが以上の三つだと私は考えています。

写真のコートはメスのパールミンクのロングコートで、1.4キロの仕上がりです。レットアウトしたものは普通の作りのものに比べ2割くらいは重くなりますので1.4キロは、かなり軽いほうの仕上がりです。

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アーミンのブリーチとホワイトニングの違い

前回のオーダーメイドの記事でアーミンのブリーチについて少しだけ書きましたが、今日は少し、このブリーチについてお話をしてみます。

このブリーチに似たような処理で、結果は大きく違うホワイトニングという処理があります。この二つの処方について私の経験で感じたことを書いてみます。

ホワイトニングは、あくまで白いところを青白くするという用途に使います。ですから、白とは言えないような色を純白にすることは出来ません。

ブリーチは白くないもの白っぽくする(結果ベージュっぽくなる)、または少し白っぽいが真っ白ではないという原皮をほぼ白に近づけるという用途に使います。

ではこのブリーチとホワイトニングの違いはなにかというと、ホワイトニングは白をさらに青みのある白にして純白に見せるということが出来、ブリーチはそれと比べると、白っぽいものをブリーチしても青白くはならず、どちらかというと薄いピンクっぽくなるか、薄いベージュのような、または生成りのような白になります。

ですから、あきらかな黄ばみのある原皮をホワイトニング処理しても青白くはなりません。なんとなく出来そうな気がしますが、出来ませんでした。

もう一つ付け加えるなら、サファイアミンクのような青味のある原皮をブリーチしても、青が薄くなって白に近づくのではなく、薄い茶系の色に変わります。私たちの髪の毛をブリーチしても黒髪がゴールドのような色になりますが、毛皮も同じで、全てどんな色をブリーチしても茶系になって色が抜けていきます。

簡単にまとめると、ブリーチは色をマイナスしていき、ホワイトニングは色をプラスしていきます。そう考えるのが解りやすいでしょう。

そして、ブリーチした毛の特徴として、強いブリーチをしたものは、人間の髪の毛と同じように痛みます。良い毛皮特有のボリュームがあってサラサラした毛さばきから少しガサガサした手触りになります。ホワイトニングでは毛が痛むことはありませんでした。

結果として言えるのは、アーミンの高いランクの、全体がほとんど白に近い原皮でも、わずかに腹やお尻は黄ばみがあります。それをホワイトニングで白くすることは出来ません。出来る部分は白または薄い生成りの白を青味をつけて純白にできるということでした。

これで解るように、どんなにランクの高い原皮を買っても、お尻と頭でジョイントすると、必ず白さに差がでますので白として使うにはたくさんのお尻と腹を落とさなければなりません。何故かアーミンは頭は真っ白のものが多いからです。

そしてその無駄がでる分、一着にかかる原皮の枚数も増えます。だからアーミンの白のコートのお値段は他の染色ものに比べて、かなり高くなります。

次回は、再度このアーミンの全体を真っ白にする方法が頭にありますので、それを試して見ようと思っています。もちろん、生成りやピンクっぽい白ではありません。純白にする方法をです。

 

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シェアードミンクコート | Sheared Mink Coat

スタッフ服部です。今日は新作コートのご紹介です☆パショーネが得意とする素材のひとつ、シェアードミンク(シャドーグリーン&アンバーゴールド) のコートです!!

シェアードミンクとはミンクの毛を短く刈ったものです。毛を刈る事によって通常のミンクよりも軽くなり、一見は毛皮のように見えませんので、とても洋服に近い感覚で着ることが出来る素材です。

今回はシェアードミンクの染色を身頃と衿で色の違うバイカラーの配色にして、幅広のブロードをあしらいました。身頃はシャドーグリーン(ごく薄いグリーン)衿はアンバーゴールド(柔らかなオレンジ)に染色しております。

毛皮ではなかなか見ないお色ですが、着ると自然と肌に馴染むような色に仕上がっていると思います。ドロップショルダー(肩線の下がった低い袖付けの袖)の形になっていますので、肩幅を気にすることなく着ることができ、腕や肩まわりも動かしやすいです。

袖口は軽くコクーンシルエットにしてあり、さり気ない可愛らしさを表現しています。裾のブロードも衿に近い色のものを使用して全体の雰囲気をまとめつつ、細かな刺繍柄がアクセントになっております。

このブロードを取り付ける作業がとても大変でしたが、付けるのと付けないのでは仕上がりの表情が全く違い、とても良いエッセンスになっていると思います☆

また、パショーネの作るシェアードミンクはとても柔らかく・軽く・しなやかなので(従来の毛皮をお持ちの方はこの軽さと柔らかさに驚かれます)外出のお供にはもってこいです。このコートに帽子と手袋を合わせて上品なコーディネートで街歩きしたら最高に画になりそうですね…(*´∇`)ステキ♪

染色もホワイトミンクの刈毛を使用しての染色加工にすることで、様々な色の染色に対応できるようにしています。どうしても黒や茶などのダーク系か白系などが多くなりがちな毛皮のコートですが、シェアードミンクのコートであれば洋服感覚で自然にお好きな色を取り入れていただけると思います。

服部


Sheared Mink Coat (Shadow Green & Amber Gold)

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毛皮のオーダーメイド(原皮の調達) 

当社の仕事の大きな柱の一つにオーダーメイドというくくりがあります。いつか、このことについて書かなければと思っていました。

同業者のサイトをみても、どこにでも、リフォームとともにオーダーメイドの言葉が見つかります。要はどこでもやってることなのです。しかし、そのサイトの多くが、サイト構築のためのオーダーメイドであって、ほんとうにやっているようには見えてきません。

一般的には、貴方だけの一着を・・・世界で一着しかない・・・などと言うどこにでもあるようなキャッチコピーがあって、後は、いくつかの行程が記載されているというのが多く見受けられます。

本当にどの程度のオーダーメイドをやっているのかが伝わってこないのです。オーダーメイドを現実にやろうとすると、いくつかの大きな問題にぶつかります。

ひとつは、原皮をどう調達するのか?です。

オーダーが決まってから原皮を調達するのでしょうか?サンプルの原皮を一二枚見せて、あとは仮縫いの時まで探すのでしょうか?私も仮縫いまでに探すことはよくありますが、なかなか自分の目にかなった原皮が仮縫いまでに手にはいることは珍しいのです。

受注の時期が1月くらいであれば、来期までにということで信頼出来る取引先に調達を依頼することは出来ます。しかし、あくまで来シーズン用にお作りするということが前提です。

今期の受注ということになりますと、原皮屋さんに原皮が一番豊富にあるのは、毛皮の販売のピークになるシーズンとは大きくズレます。

私たちの大きな悩みはここにあります。オーダーという注文の受け方になると、確かにシーズンオフの時期にも受注は出ます。しかし、やはり一番お客様の気持ちが動くのは、シーズン直前の11月くらいからです。

この時期になると原皮屋さんの在庫はピークからは、ほど遠い状態になり、問い合わせしてもないものが多くなります。

そんなこともあり、ロシアンセーブル、ロシアンブロードテール、アーミン、チンチラ、ミンク各種などを広範囲にストックしなければなりません。

セーブルに限ってみても、ワイルド、ファーム、ゴールデン、ワイルドシルバリーというように種類があり、これをオーダーと謳う以上、小物程度を作る数量で済むはずもなく、相当枚数をストックしなければなりません。しかも、オーダーである以上はランクの高い品質のものをストックします。

ミンクのオスは大体は原皮屋さんで手に入るにしても、メスのコート用バンドルなどはどの原皮屋さんを探しても、簡単に手に入れることが出来ません。

あっても、色が変わった売れ残りのようなものしかないことが多く、結局、気に入った原皮は早めに抱えておかなければならないということになります。しかもコートバンドルです。少なくても40~50枚です。

それをミンクの色ごとに揃えるといったら、一体どれほどのストックをしなければならないのかと、本当に毎年どの色をストックするか悩みます。そして、今年の自分のお勧めとして自分が惚れ込んだ原皮を常時5~6種類ストックします。

それでもメスのミンクのオーダーが毎年、ストックしてたものがちょうどよく受注があるとは限りません。

ロシブロやアーミンに至っては欲しいときに手に入るものではなく、気に入った出物があるときにストックしておかないと手に入りません。

オーダーが決まってから調達では、なかなか良い原皮が手に入らないのが現実です。そして、お客様のために原皮の目利きも高いレベルが要求されます。

さらにバンドルで買って使った残りも必ず発生し、それを小物にしたり、ベストやショールにしたりと、残った原皮の用途も常に考えて使っていかなければなりません。

必要な枚数ぴったりに仕入れられれば無駄は出ませんが、ちゃんとしたものを作ろうとすれば、必ず余分に仕入れることになります。

このように、原皮の調達ひとつをとっても、会社の機能として、またはサイト上に、オーダーメイドと謳えば、これだけの問題と常に向き合わなければなりません。

写真はアーミンの原皮です。 シッポの先が少しブラウンになっていますが、これは軽くブリーチしたためです。ナチュラルのシッポの先は本来は真っ黒です。次回はパターン、その他の問題についてお話いたします。

長澤

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毛皮のコートの重さの原因

毛皮のコートの重く感じる原因は大きく分けて四つあります。

一つは中に入れる副資材の問題があります。以前は毛皮であれば何でも売れた時代があり、どんなに重くても売れた時代でした。

その頃のコートには毛芯から始まり、分厚いドミット芯、そしてオーガンジー等を中に使い、裏地は裾に刺繍の入ったものやルーシングが全体についたもの等、付属全体で400gくらいになってしまうようなこともありました。これがまず、第一の原因でしょう。

次に、皮そのものの問題があります。

なめし上がった毛皮の皮には、柔らかくするために脂を入れます。その脂が水溶性であるために湿度の高い日本ではたくさんの水分を吸収してしまいます。皮に入っている脂自体の重さも重なり、かなりの重さになります。

さらに、皮の厚さを決定する”すき”の問題もあります。最終的に毛根ギリギリまで、すけるかどうかで皮の厚さが決まりますが、最近のものに比べると以前のものは厚かったように思われます。

皮を薄くすくということは、場合によっては大事な毛皮を破いてしまう可能性もあり、なめし工場さんにとっては大きなリスクがありますので、なかなか全てをギリギリまで均一に薄くすくということは難しいのです。

しかし、なめしの技術もどんどん進化しており、脂の分量やすき加減の度合いも最近は少しずつ良くなる傾向にあります。しかし、それは、最終的にドレッシング(なめし)をする工場の技量によって決まると私は思っています。国内でも良い工場はあります。

もうひとつ、加工方法によっても重さが変わることを説明致します。

毛皮の皮はドレッシングという方法でなめされており、通常のレザー等と比べると良いなめしをされたミンクの皮等はとても柔らかく、よく伸びます。そのため、コートを作るなかで歩留まりを考えると、皮を強く張り大きく引き伸して使うことがコスト面から考えても有効な手法と考えられています。あくまで一般的にですが。

基本的には、しっかり皮を張って使うか、張り過ぎないように風合いを大事にして加工するかは、コストを優先するのか、仕上がりを優先するのかによって選択されます。ただし、誤解のないよう言っておきますが、皮を強く張ることの全てが悪い訳ではありません。良い仕上がりに向けて、強く張らなければならない場合もあります。あくまでどう仕上げるかで、その強さが決まります。

ここにひとつ、参考になる加工方法をご紹介します。

毛皮の加工方法のなかにレットアウトという技法があり、その技術の中にもいくつか考え方があります。中国製のように歩留まりを最優先にした作りと、以前のニューヨークで作られたコートのように皮の繊維を縦に引き、毛のボリュームをだし、ラインを綺麗に揃えて綺麗に見せるという方法があります。

後者の作りはミンクのメスの軽い皮を使っても、毛皮を縦に引き綺麗に見せようとするために枚数をたくさん使用するという結果になり、コート重量もとても重くなります。これは、加工方法や作り手の考え方次第で軽さや柔らかさが大きく変化するという、ひとつの良い例でしょう。

以前は、ニューヨーク仕立ての綺麗なミンクにとても大きな価値がついていましたが、最近の傾向では、デザインと同じくらいの割合で軽さや柔らかさが購入の大きな要因のひとつになってきています。綺麗だけど重い、、、では売れない時代になってきています。

一般的にロングコートの重量はどんなに重くても2キロが限界だと思います。しかし、重いものの中には2.4キロくらいのロングコートも以前はよくありました。私たちが作るレットアウトのロングコートの基準は1.5キロくらいと考えています。

次回は私たちの作るコートの軽さについて書こうと思います。楽しみにお待ちください。

写真はスカングローミンクをレットアウト加工したものです。

長澤

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ダイドウィーゼル・ロングマント | Dyed weasel long mantle

こんにちは、スタッフ服部です。今日は先日のウィーゼル・ドルマンスリーブコートに続きまして、新作コート2号☆ダイドウィーゼル・ロングマントのご紹介です(*`・ω・)b

ダイドウィーゼルとは染色(ダイド)されたウィーゼルのことで、今回は毛付きのウィーゼルをネイビーに染色しました。今回は原皮を横に使っていますので、原皮の背中~腹にかけての微妙なグラデーションがとても良い表情をしています。

デザインはシンプルなロングマント(着丈98cm)で普通のお洋服で考えると、なかなか着ないアイテムのような気もしますが…毛皮アイテムとしてはケープ・マントはかなり人気のあるアイテムです。お洋服のコーディネートもしやすく、とても様になりやすいです。

サイズもあまり関係ないようなアイテムなので、年齢・体型を問わずどなたでも着られるデザインです。お色も濃いめのネイビーのため、他アイテムとのコーディネート次第では様々なシーンに対応できるものになっています。

そして、この絶妙なネイビーの色が光の当たり具合や歩いたりの動作が加わることで、くるくると表情に変化が出ます。そのため、全身が毛皮で覆われても重い印象になりすぎません。身長の低い方は着丈を気にしがちだと思いますが、少しヒールのある足元にすればとっても格好良く、お洒落になります(^^)

前には飾りのベルトが付いていますが、ケスカ(毛皮用ホック)がしっかり下まで付いていますので歩いていて、裾が開いてバサバサと気になることもありません。前身頃には手を出せるようにスリットもありますので、普段の生活運動には差し支えないようになっていると思います。

さらにポイントなのが、両面毛皮のフードです。これはボタンで完全取り外し可能になっておりますので、お洋服・気分・お出かけ先などTPOに合わせて着用いただけるようになっております。

私自身が身長150cm位とチビッコなのですが(笑)試着してみましたが、マントに着られる感じもなく、動くたびにたっぷりのフレアーが揺れ・変化する毛皮の表情にうっとりでした(。´ω`)♪

製作方法もとても丁寧に作っていますので、まるでアーミンのような仕上がり…。アーミンのコートと並んでも遜色ないマントです。ぜひ、アーミンのコートと並んでいるところを見ていただきたい逸品です☆

服部

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